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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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2011年07月03日

パラダイム転換が始まる(3)

ヒット商品応援団日記No511(毎週更新)   2011.7.3.

前回新しいLOHAS的運動が始まるのではないかとブログに書いた。米国の物質文明、大量消費文明への批判・見直しからLOHASが生まれたのだが、10年を経た今日本固有のLOHAS的世界が生まれようとしている、そんな感が強くしている。
その理由の一つが、若い世代による新しい「公」概念、新しいコミュニティ社会あるいはもっとフラットなクラブコミュニティづくりが始まっていることによる。NPOやNGOといった既存の組織も含めてではあるが、同じ価値観を持つ者同士が出会い、そこで何事かを共有したい、そのことで喜ばれたい、そんな同じ価値観同士による共有社会・コミュニティの創造である。

共有社会などと言うと、何か大きな社会のことであるかのようにイメージされるかも知れないが、共有する価値観をもっと平易に言えば「こだわり」であったり、「志し」や「夢」を共有する小さな単位の社会でもある。
例えば、昨年断捨離という価値観が広く浸透したが、生活行動レベルで言うと、その価値観共有は「不要品交換」といった場となる。今までであれば「もったいない」とした靴や洋服といったモノのリサイクル交換であったが、最近では長年使ってきた愛用品を無償で提供する、そんなネット上のサイトが増えてきている。オークションではなく、愛用品を提供することを通じて、愛用の思いやこだわりを共有する仲間欲求がその裏側には存在する。交換の関係ではなく、一種の贈与の関係である。
こうした物にかかわる共有欲求ばかりでなく、それは日本固有の棚田を守る為の活動であったり、里山であったりしている。また、最近では大震災で被災した東北の中小企業への支援策として小額出資のクラウドファンディングといった手法も、理念共有、夢共有が第一で、リターンは二番目という側面からすると、新しい「公」社会づくりと言えるかもしれない。TV東京のWBSでも紹介されていたが、(株)八木澤商店による復興ファンド募集などはその良き例であろう。

先月末、昨年秋に行われた国勢調査の速報が総務省から発表された。予測通り、初めて単身世帯が30%を超えた(31.2%)。少子高齢社会を縦軸とするならば、単身世帯は横軸に該当し、日本社会を織りなしている。そして、単身世帯の増加はあの無縁社会の土台となっている数字である。無縁社会はNHKスペシャルで放送されたドキュメンタリー番組から生まれたキーワードであるが、以降「縁」を取り戻す動きが消費面においても明確に出てきている。大震災に関するブログのなかで、震災は絆の大切さを思い起こさせ、パートナーとの関係を再認識させると書いた。それを裏づけるように、5月度の東京地区百貨店売上のトピックスに、「母の日」関連グッズと共にウエディングリングの販売が好調であるとのレポートがあった。勿論、個人化社会は進行し、おひとりさま市場、ヒトリッチ市場も底流としてはあるのだが、3.11は縁を強く意識することに向かわせた。縁を取り戻す先に、家族もあれば、多様なコミュニティもある。

sぴした縁を取り結ぶ形のない夢や志し、理念といった共有ばかりではなく、勿論物などの形あるものへの共有着眼ビジネスが順調に伸びている。以前このブログにも書いたので詳しくは書かないが、オフィスやルーム、車、自転車、といったシェアービジネスを踏まえ、シェアという合理性の裏側にある価値観共有へと向かっている。リーマンショック以降、下がり続ける不動産価格&販売不振にあって、首都圏で売れゆき好調なマンションには2つの新たな価値機能が付加されている。一つは当然であるが自己防衛を柱とした耐震・防災機能の充実である。もう一つがコミュニティ施設とその運営であるという。例えば、大地震があった時、互いに助け合うことができる、そのためのコミュニティ施設と運営である。
価値観の推移変化として見ていくと、戦後の所有価値からシェアするといった使用価値へ、更には共有し合う互恵価値とでもいうような新しい社会価値に向かっているように、私には思える。

ところで、先月復興構想会議から震災復興への提言があった。この提言は「地震と津波、そして原発事故によって、この国の『戦後』をずっと支えていた"何か"が音を立てて崩れた」という文章で始まる。ところが「戦後の何が」崩れたのか明確になっていないどころか、情緒的文章が続き、抽象的な提言となっている。唯一の具体的提案は復興財源としては所得税や法人税といった基幹税による時限的増税が必要であると。
この提言のサブタイトルは「悲惨のなかの希望」である。本当に東北の被災した人々、企業や団体が願う希望は何か、私たちが共有すべき希望や夢であるならば、増税も必要であろう。しかし、戦後の価値観の何が音を立てて崩れたのか、それらの先にある希望や夢を思い描くことこそ必要であると思う。会議参加メンバーの専門分野を越境する知性を持った唯一のメンバーである梅原猛はどんな発言をしたのであろうか。20世紀文明の象徴である原子力発電とその事故に対し、梅原猛がどんな越境する知見を見せてくれたか興味深く注視していたが、肩すかしで終わったようだ。

こうした動きを促進しているのが周知のツイッターやFacebookといったソーシャルメディアである。まだまだ嘘と虚飾が横行するネット世界ではあるが、本音でリアルな対話が行える公空間が生まれているのも事実である。北アフリカから始まった若い世代によるFacebookを通じた民主化運動も、各国異なる課題解決への運動となっているが、日本の場合どんな運動として展開されるか興味深いパラダイム転換としてある。
現在は個人単位の活動が中心であり、その動きはマスメディア社会という表舞台に上がることはない。しかし、新しいソーシャルメディアという舞台には多くの若い世代が既に上がり、希望や夢を語り始めている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:55Comments(0)新市場創造