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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年12月15日

2012年ヒット商品番付を読み解く 

ヒット商品応援団日記No539(毎週更新)   2012.12.15.

今年も後わずかとなり、流行語大賞や日経MJによる2012年ヒット商品番付の発表の時期となった。ちょうど衆院選挙の終盤であるが、国の進路を決めるエネルギー政策など大きなテーマ選挙であるが、ここにきて景気対策、デフレ対策といった身近な経済への声が大きくなってきた。EUは依然として混乱の最中にあり、米国も財政難に陥っており、日本の景気もチャイナショックも含めじわじわと後退し始めている。
ところで今年の流行語大賞はお笑い芸人のスギちゃんの「ワイルドだろぉ」であった。スギちゃんによる取り返しのつかない勢いにまかせた行動に対する自虐ネタで、最後のきめ台詞が「ワイルドだろぉ」である。毎年清水寺で発表される今年の世相を表す一文字は「金」であるという。オリンピックで活躍した日本選手を誉めたたえる金であり、京大山中教授のノーベル賞受賞の意味もあり、・・・・・しかしなるほどそうだなと思わせるキーワードではない。それを表すように投票総数259,912票の内わずか3.54%であったという。つまり、昨年の「絆」のように誰もがそうだろうなと感じられる世相の一文字ではないということだ。
政治の混乱と停滞が加速するなかで、澱んだ空気、弛緩した感覚にまみれ、年々少なくなる収入「金」に、「ワイルドだろぉ」と誰もがつぶやきたくなる2012年である。

ところで日経MJによる2012年ヒット商品番付はこうした時代の空気感や消費の在り方をヒット商品として鮮明にしている。主要なヒット商品番付けは以下となっている。

東横綱 東京スカイツリー、 西横綱 7インチタブレット
東大関 LCC、    西大関 LINE
東関脇 N BOX、西関脇 マルちゃん正麺
東小結 阪急梅田本店、   西小結 メッツ コーラ

日経MJのキャッチコピーは「新定番 閉塞感破る」とある。なんとしてでも消費の出口を見出し、指摘したいという思いが出ている。しかし、逆に消費心理は明るさへとは向かってはいないと言うことでもある。
以前、ブログには格安航空会社の利用は「常態化」したと書いた。わけあり商品は最早特別にわけありなどと言わなくても「安い」ことは至極あたり前の日常のこととなった。東大関のLCCもそうであり、西大関の LINEは通話が無料になるスマホアプリで多くの顧客支持を得た。デフレ経済ならではのヒット商品である。
そして、こうしたデフレ経済のなかに新たな芽も出始めている。その代表的商品が東関脇のN BOXである。第三のエコカーと言われる軽自動車であるが、ホンダのN BOXのように燃費の良さだけではなくその室内の広さで多くの顧客支持を得、安さの「次の」在り方を示してくれた。これら全てがデフレ心理市場における市場着眼を良く表していると言えよう。

更に言えば、東横綱の東京スカイツリーもそうであるし、東小結の阪急梅田本店も同様で、新しい、珍しい、面白い名所観光という「都市観光」の象徴的ヒット商品である。前頭に入った「東京駅」もその赤煉瓦の復刻駅舎も同じで、更にはミュージカルなどの劇場を併設した複合商業施設「渋谷ヒカリエ」も同様である。デフレ心理的に言うならば、あまりお金を使わずに名所観光し、唯一使うのは良き思い出としての「食事」だけである。
ちなみに予測される年間集客数としては東京スカイツリー4400万人、阪急梅田本店5000万人(リニューアル以前においても4000万人以上の日本一の集客数であった)、東京駅は特別なものとして集客数は公開していないが周辺商業施設の売上は2割増、渋谷ヒカリエは1400万人を予測していると言う。都市観光がレジャー産業のコアになってきたと言えるであろう。

こうした都市観光が大きな市場を形成しているが、2012年のヒット商品の多くはいわゆる大型ヒット商品が極めて少ないことが特徴となっている。新しい食感で人気となった「マルちゃん正麺」、トクホのコーラ「メッツ コーラ」、塩麹、コンビニのチルド和菓子、強い刺激のガム「ゼウス」・・・・・・全てが小粒のヒット商品ばかりである。
もう一つの特徴が数年前からの潮流としてある懐古型商品のヒットである。いわゆるリバイバル商品、復刻商品であるが、今年は山下達郎、松任谷由美といったアーチストのCDが売れ、ガンダムキャラクターを使った「ザクとうふ」や仮面ライダーの変身ベルトも売れていると言う。
数年前からのヒット商品を例に挙げるとこうした潮流の大きさが良く分かる。花王の白髪染め「ブローネ」を始めとした「シニア・ビューティ」をテーマとした青春フィードバック商品群。1986年に登場したあのドラクエの「ドラクエ9」は出荷本数は優に400万本を超えた。
 若い世代にとって温故知新であるサントリー角の「ハイボール」も同様で、現代版ベーゴマの「ベイブレード」は発売以来1100万個売り上げたお化け商品である。オリンパスの一眼レフ「PEN E-P1」もレトロデザインで一種の復刻版カメラである。売れない音楽業界で売れたのが「ザ・ビートルズ  リマスター版CD」であり、同様に売れない出版業界で売れたのが山崎豊子の「不毛地帯」「沈まぬ太陽」で共に100万部を超えている。
少し前のブログに団塊世代における「青春フィードバック市場」について書いたが、過去のなかに未来の芽を見出し、ヒット商品化する潮流は今後も続く。

更に今年のヒット商品は「ありそうで無かった」業態に注目が集まっている。その代表例が「俺のフレンチ・イタリアン」と「東京チカラめし」である。前者はキャビアなどの高級食材を使った一皿1000円未満のレストランであるが、大半が立ち飲み業態で1日の客回転が5回にも及んでいるという。東京新橋の立ち飲み居酒屋は中高年対象であるが、若い世代の立ち飲み業態、ショットバーは恵比寿を始め都内には無数存在している。しかし、食材にお金を使った本格フレンチ・イタリアンで一皿1000円未満、そのかわりに立ち飲みスタイルという「ありそうで無かった」レストラン業態に若い世代が支持をしている。後者の「東京チカラめし」はいわゆる「焼肉牛丼」をメインメニューとしたファストフード業態である。吉野家を始めとした大手牛丼デェーンが価格競争下にあって、「焼肉牛丼」という「ありそうで無かった」メニューに顧客支持が集まった事例である。

以前、消費増税が実施されれば「消費移動」が加速されるとブログに書いた。そして、「何」から「何」に消費の移動が起きたかを見極めることが最も重要であるとも書いた。今年のヒット商品番付にもそうした「消費移動」が出てきている。
その第一が、例えばシニアの国内旅行の一つとして、東京スカイツリーをはじめとした「都市観光」にお金と時間を使うといった消費移動である。付帯する商業施設「東京ソラマチ」を巡りレストラン街で食事をすれば、新しい、珍しい、面白い名所観光を満喫できるということだ。巣ごもり状態の生活者にとっては格好の観光レジャーとなる。そして、「俺のフレンチ・イタリアン」や「東京チカラめし」のように、従来の発想から離れ「ありそうで無かった」商品や業態を見出し、同質&類似にある価格競争下の外食産業にあって、そうした競争からの脱却の芽がやっと出てきた。敷居の高い本格フレンチ・イタリアンへの入り口・お試し消費という新たな市場が創られたり、消費現象としては牛丼から牛焼肉丼への消費移動であるが、これも新しいファストフード市場の創造である。デフレ経済における新たな市場、お得心理の広がりと進化、そんな芽が出始めた1年であったと言える。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 16:24Comments(0)新市場創造