2023年12月23日
2023年ヒット商品版付を読み解く
ヒット商品応援団日記No819(毎週更新) 2023.12,23.
ここ数ヶ月私の専門である主にコンセプトプランの企画書や分析資料などの整理に追われブログの更新が進まなかった。それらについては年が明けたら「マーケティングノート」として公開したいと思っている。
ところで日経MJによるヒット商品版付については例年通り読み解くこととする。
誰もが注目した事象としては横綱大関に挙げられたものについては理解納得するが、消費あるいはマーケティングといったビジネス視点では新鮮味がないものとなっている。2023年という1年は「コロナ禍」を終えた」年であり、「コロナ禍」前とどのような変化が生まれたかを消費という視点で見ていくことが必要であると考える。以下、そうした視点からこの1年を振り返ってみることとする。
どんな「日常」「変化」が戻ってきたのか
一番の変化は人と人との関係が「感染」を防ぐために規制されたことであった。ビジネスで言えば、「リモート」という言葉に象徴されたようにオフィスに出社せず自宅での仕事へと変化し小さな仕事部屋が生まれ、通勤ラッシュが激減した。コロナ明けの状況はどうかというとリモートで済む仕事へと向かった領域もあるが3年前の通勤へと戻った企業は多く見られた。
そうした延長線上に忘年会もあった。面白いことに敬遠気味であった若い世代も今年の忘年会にはぁなり参加したようだ。勿論ゲームなどの遊びが中心でノンアルコールでの参加ではあるが。
こうしたビジネスに大きな変化を生み出したのが生成AIであった。その対応については既にブログに書いたのでここではコメントしないが、新たな情報リテラシーがこれからも企業ばかりでなく個人にも問われる時代となった。以前ブログにも書いたが、リアル、実感、と言ったアナログな感性がますます重要な時代になったということだ。リモートでは得られないことをこのコロナ禍で学んだ。
ところで、もう一つの話題に挙げられた大谷翔平については大谷翔平らしさと共にこの時代らしい一つことを学んだ。それは7億ドルという巨額な契約金もさることながらその契約金の90数%は10年契約終了後に得るという契約である。しかもそれは無利子であるという。普通であれば何らかの事業に投資し資金運用をと考えるがそうした「合理的な方法」を選びはしなかった。それよりもその資金を使って有望な選手獲得に使った方がドジャースの未来にとって良いという判断である。すでにアスリートの枠を超え「経営」の領域にまで広がっている。その象徴だと思うが、10年契約の中に契約破棄できるとした項目がある。それはマーク・ウォルター・オーナー、アンドルー・フリードマン編成本部長のいずれかが役職を退いた場合に、退団という権利行使が可能となるとのこと。今日の常勝チームを作り上げ、MLBの世界進出を狙う経営陣である。大谷翔平がドジャースを選んだ理由、「勝ちにこだわる」とは良き経営陣によってであることがわかる。ある意味非合理的な判断、アナログ的な判断であると言える。
こうした判断が生まれたのもエンゼルスの6年間、怪我をし勝てないチームの実態を経験したからである。謙虚な大谷翔平がドジャース入団の会見で繰り返しエンゼルスへの感謝の気持ちを述べたのもこうした背景からだ。
消費マインドは順調に回復しつつあるが
年末年始の移動も回復傾向にあり、コロナ禍前の70%ほどとなっている。但し、海外旅行については円安もあって以前のようには当分の間は戻らないであろう。逆に円安の恩恵を受けたのはインバウンド市場で再びオーバーツーリズムが課題に上がっている。但し、インバウンド需要も今までの観光地から地方の隠れたところへと変化している。これは団体旅行を終え個人旅行となり、SNSのガイドによるものが大きく分散化している結果である。こうした傾向の芽は既にコロナ禍以前に世界の旅行ガイドであるトリップアドバイザーなどによって紹介され、例えば大阪西成のお好み焼き屋に訪日観光客が集まり賑わいを見せたように。こうした傾向はSNSによって拡散し、日本人が見過ごしてきた、いや知らない横丁裏通りが観光地となっている。勿論、円安の恩恵を受け1週間以上の長期滞在型旅行へと変化し地方のホテル・旅館など景気回復へと向かっている。一方、年末年始の日本人の旅行客はコロナ禍前の2800万人と回復しつつあるが、宿泊費などの高騰もあって、やりくりが大変な状態となっている。
毎年行われる新語・流行語大賞も阪神タイガースの優勝から「アレアレ」と言った関西の人間にした通用しないものとなっていたり、YOASOBIのアイドルが注目されたり、つまり一部の人間にしか支持を得ないような「拡散」したものとなっている。こうした傾向の背景には物価の高騰による「重苦しさ」があり、今年を表す一語が「税」であったように数年後に待ち構えている少子化対策、防衛費などの「増税」を感じ取っているからである。しかも賃金アップを超える物価高騰といったインフレはこれから先も続くことから、コロナからの解放を素直に喜べない心理である。ヒット商品番付を見てもわかるが、誰もが納得する商品は極めて少ない。今人気となっているのは業務スーパーやコストコ、あるいは地域の安売りスーパー、飲食で言えば食べ放題やデカ盛り飲食店など、つまりデフレ再来を思わせるような消費が注目されている。
年末にかけて自民党におけるパーティ裏金づくりへの検察による捜査があり、「政治とカネ」という問題は今尚続いていることが表へと出てきた。あるいは軽自動車大手のダイハツが開発に欠かせない多くの検査に不正が明らかになった。これら全てを俯瞰的に見れば、失われた30年、問題を引きずった30年であり、次に向かう転換期のラストシーン現象であると言えよう。(続く)
ここ数ヶ月私の専門である主にコンセプトプランの企画書や分析資料などの整理に追われブログの更新が進まなかった。それらについては年が明けたら「マーケティングノート」として公開したいと思っている。
ところで日経MJによるヒット商品版付については例年通り読み解くこととする。
誰もが注目した事象としては横綱大関に挙げられたものについては理解納得するが、消費あるいはマーケティングといったビジネス視点では新鮮味がないものとなっている。2023年という1年は「コロナ禍」を終えた」年であり、「コロナ禍」前とどのような変化が生まれたかを消費という視点で見ていくことが必要であると考える。以下、そうした視点からこの1年を振り返ってみることとする。
どんな「日常」「変化」が戻ってきたのか
一番の変化は人と人との関係が「感染」を防ぐために規制されたことであった。ビジネスで言えば、「リモート」という言葉に象徴されたようにオフィスに出社せず自宅での仕事へと変化し小さな仕事部屋が生まれ、通勤ラッシュが激減した。コロナ明けの状況はどうかというとリモートで済む仕事へと向かった領域もあるが3年前の通勤へと戻った企業は多く見られた。
そうした延長線上に忘年会もあった。面白いことに敬遠気味であった若い世代も今年の忘年会にはぁなり参加したようだ。勿論ゲームなどの遊びが中心でノンアルコールでの参加ではあるが。
こうしたビジネスに大きな変化を生み出したのが生成AIであった。その対応については既にブログに書いたのでここではコメントしないが、新たな情報リテラシーがこれからも企業ばかりでなく個人にも問われる時代となった。以前ブログにも書いたが、リアル、実感、と言ったアナログな感性がますます重要な時代になったということだ。リモートでは得られないことをこのコロナ禍で学んだ。
ところで、もう一つの話題に挙げられた大谷翔平については大谷翔平らしさと共にこの時代らしい一つことを学んだ。それは7億ドルという巨額な契約金もさることながらその契約金の90数%は10年契約終了後に得るという契約である。しかもそれは無利子であるという。普通であれば何らかの事業に投資し資金運用をと考えるがそうした「合理的な方法」を選びはしなかった。それよりもその資金を使って有望な選手獲得に使った方がドジャースの未来にとって良いという判断である。すでにアスリートの枠を超え「経営」の領域にまで広がっている。その象徴だと思うが、10年契約の中に契約破棄できるとした項目がある。それはマーク・ウォルター・オーナー、アンドルー・フリードマン編成本部長のいずれかが役職を退いた場合に、退団という権利行使が可能となるとのこと。今日の常勝チームを作り上げ、MLBの世界進出を狙う経営陣である。大谷翔平がドジャースを選んだ理由、「勝ちにこだわる」とは良き経営陣によってであることがわかる。ある意味非合理的な判断、アナログ的な判断であると言える。
こうした判断が生まれたのもエンゼルスの6年間、怪我をし勝てないチームの実態を経験したからである。謙虚な大谷翔平がドジャース入団の会見で繰り返しエンゼルスへの感謝の気持ちを述べたのもこうした背景からだ。
消費マインドは順調に回復しつつあるが
年末年始の移動も回復傾向にあり、コロナ禍前の70%ほどとなっている。但し、海外旅行については円安もあって以前のようには当分の間は戻らないであろう。逆に円安の恩恵を受けたのはインバウンド市場で再びオーバーツーリズムが課題に上がっている。但し、インバウンド需要も今までの観光地から地方の隠れたところへと変化している。これは団体旅行を終え個人旅行となり、SNSのガイドによるものが大きく分散化している結果である。こうした傾向の芽は既にコロナ禍以前に世界の旅行ガイドであるトリップアドバイザーなどによって紹介され、例えば大阪西成のお好み焼き屋に訪日観光客が集まり賑わいを見せたように。こうした傾向はSNSによって拡散し、日本人が見過ごしてきた、いや知らない横丁裏通りが観光地となっている。勿論、円安の恩恵を受け1週間以上の長期滞在型旅行へと変化し地方のホテル・旅館など景気回復へと向かっている。一方、年末年始の日本人の旅行客はコロナ禍前の2800万人と回復しつつあるが、宿泊費などの高騰もあって、やりくりが大変な状態となっている。
毎年行われる新語・流行語大賞も阪神タイガースの優勝から「アレアレ」と言った関西の人間にした通用しないものとなっていたり、YOASOBIのアイドルが注目されたり、つまり一部の人間にしか支持を得ないような「拡散」したものとなっている。こうした傾向の背景には物価の高騰による「重苦しさ」があり、今年を表す一語が「税」であったように数年後に待ち構えている少子化対策、防衛費などの「増税」を感じ取っているからである。しかも賃金アップを超える物価高騰といったインフレはこれから先も続くことから、コロナからの解放を素直に喜べない心理である。ヒット商品番付を見てもわかるが、誰もが納得する商品は極めて少ない。今人気となっているのは業務スーパーやコストコ、あるいは地域の安売りスーパー、飲食で言えば食べ放題やデカ盛り飲食店など、つまりデフレ再来を思わせるような消費が注目されている。
年末にかけて自民党におけるパーティ裏金づくりへの検察による捜査があり、「政治とカネ」という問題は今尚続いていることが表へと出てきた。あるいは軽自動車大手のダイハツが開発に欠かせない多くの検査に不正が明らかになった。これら全てを俯瞰的に見れば、失われた30年、問題を引きずった30年であり、次に向かう転換期のラストシーン現象であると言えよう。(続く)
Posted by ヒット商品応援団 at 13:34│Comments(0)
│新市場創造