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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2013年05月09日

街起こしの今、未知を競争する時代

ヒット商品応援団日記No555(毎週更新)   2013.5.9.

ネットメディアをはじめいくつかのマスメディアにおいて、宮崎県日南市の商店街活性化のための人材公募が話題となっている。テナントミックスサポートマネージャーの募集で市長の月収(78万3000円)を上回る月額90万円の委託料が話題となり全国から問い合わすることであるいう。日南市も多くの地方と同様に人口流出が進み、商店街はほぼ半数が空き店舗や空き地状態でその再建策が主要な仕事であると。
私も鳥取県でアンテナショップをつくったり、新しい産業育成のためのいくつかの委員をやってきたが、対象となる商店街や行政、あるいは地場産業のリーダーとの良き連携無くしては極めて難しい課題である。都市機能の増進、経済活力向上をはかるための中心市街地活性化法による国の助成を受けての計画であると思うが、全国至るところでいわゆる街起こしが実施されている。

最近のデータを分析していないので正確ではないかもしれないが、数年前のデータによればコンビニの地域毎の出店分布を見ると分かるが、首都圏、あるいは都市部への集中化が進んでいる。コンビニ全体として店舗数は増加しているが、減少している地域はというと、山形、奈良、和歌山、香川といった地方となっている。都市部への集中と地方の商業空洞化という実態をコンビニは物の見事に映し出している。このことは逆にこのブログでも取り上げたことのある鹿児島阿久根市のAZスーパーセンターが買い物のための100円バスを自ら運行するところまで実施している。つまり、単に商業施設をリーシングすればそれで済むということではないということである。ある意味、商業、特に小売業は社会のインフラとなっているということだ。ところで、その阿久根市は公募した日南市のすぐ近くにある市である。

このGW連休中に鳥取米子の友人に、浅草を始めとした都市観光のガイド役をさせてもらった。その友人は米子の街起こしのリーダー役をしているのだが、会えばいつもそうであるが、どんなテーマによる産業起こし、街起こしが米子にはふさわしいかを論議する。その議論のなかで、先の日南市と同様の中心市街地活性化法の助成を受けて、米子の中心にある空きビルを借り受けてそこに新たなサブカルチャーをテーマとしたコンテンツ事業者を集めたビジネスを開始したとのことであった。そして、そのビルの隣にあるまさに米子の中心となっている商業施設米子高島屋に話が及んだ。閑散とした中心市街地にテーマという新たな芽を植えると同時に、実は小売業の原則である顧客の近くに出向く動きが始まったとのことであった。いわゆる買物難民対策ではないが、中山間地域などの買い物を支援しようと始めた事業で、2トントラックの「ローズちゃん号」には、生鮮食品やパン、総菜、菓子、衣料品などが載せられ、30集落を三つのルートに分けて月曜から土曜まで巡回する。これは米子高島屋と南部町、鳥取県の間で中山間集落見守り活動協定の具体化策の一つとしてである。阿久根市のAZスーパーセンターが100円バスを巡回させるのと同じように、米子高島屋は移動販売車で中山間地の集落を回るということである。

ところで日経MJ(5/8号)に2012年度の上場小売業の決算内容を集計した記事が載っている。激しい価格競争の結果、増益企業は半減したとの記事であるが、このブログにも取り上げたが、消費増税を睨んだ流通の再編と出店戦略が取り上げられている。つまり、都市部への出店加速であり、地方は更に売り上げ減速&撤退が予測されるという内容であった。これらは勿論、人口移動、都市部への流出・集中とパラレルな関係としてあるのだが、逆にプラン次第ではあるがAZスーパーセンターや米子高島屋のように商業にとって市場機会があるということでもある。但し、このブログでも指摘してきたようにエリア間の競争は更に激しくなる。モノ集積、情報集積、人の集積、金融の集積、それら集積力が都市部の魅力として人を引きつける。その魅力とは常に変化という刺激を与えてくれることに他ならない。新しい、面白い、珍しい「何か」と出会えるのが都市であり、商業はそうした「未知」を提供する競争の時代となっている。特に、東京は世界のTOKYOであり、変化し続ける世界中の「今」を体験できる都市となっている。

今年のGWの国内旅行先は言うまでもなくだんとつNo1は東京である。こうした魅力を超える「何か」が地方活性のポイントとなる。その「何か」とは、まずそのエリアに住む人達が「これからも住みたい街」と感じ、その人達を見た人達が「私もそんな街に住みたい」と思える街づくりである。その一つが逆説的ではあるが、都市が失ったものへの着眼であり、但し単に失ったものをそのまま提供することではなく、都市のライフスタイルに沿ったものとして提供することである。私が鳥取県の委員会で繰り返し言ってきたことは、この都市生活者のライフスタイル研究、消費研究である。
結論から言うと、既にエリア間(都市と地方)の格差は拡大し続けているが、消費増税はこの傾向を更に強めていくこととなる。その最大理由は、職とそれによって得られる経済的豊かさは都市への流出の最大理由となっている。そして、首都圏は今なお人口が流入し続けており、今後もこうした傾向は続くものと予測される。都市の集積力に唯一勝ち得るものは何か、それはその土地ならではのオリジナリティ、固有、唯一、他にはない「未知」の産業化であり、それらと一体化した街起こしとなる。

日南市の人材公募の締め切りは5月10日となっているが、その後いくつかの審査を経て、この夏から実働入るとのこと。地元住民に対しどんな魅力あるプランが立案されるか、1年後ぐらうには日南市のHPに経過を含めレポートして欲しいものである。以前から言われているように、街起こしにはバカ者、ワカ者、ヨソ者の3者が必要とされている。人口の流出を止め、住みたくなる街づくり、地方づくりを成功させているところには必ず良きバカ者のリーダーが居る。7年程前に訪問した福岡県岡垣町の「野の葡萄(グラノ24K)」という農業の6次産業化の先駆者である小役丸さんもその一人であるし、東京浅草の駅ビルに「離島キッチン」という郷土料理の店をオープンさせた島根県隠岐の島海士町の町長、あるいは全国的にはほとんど知られていないが森林資源を生かした「森の幼稚園」などユニークな活動をしている鳥取県智頭町の町長もそうである。日南市にもそうしたバカ者が今回公募されるヨソ者と、更には地元のワカ者と共に挑戦し、その内容を多くの地方起こしの人達のためにレポートを公開して欲しいものである。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:50Comments(0)新市場創造

2013年05月02日

賢明なデフレ型消費

ヒット商品応援団日記No554(毎週更新)   2013.5.2.

三井アウトレットパーク木更津が1周年を迎えたが、当初目標であった320〜340億円を大きく上回る410億円強の売上となったと発表があった。その背景について、来場客の7割を都内や神奈川から、残り3割を千葉から集客するとしていたが、実際には5割近くを県内の地元客が占め、しかも地元客は来場頻度が高く、売り上げ拡大につながったと説明があった。その記者会見でTVレポーターからアベノミクス効果によるものですかとの的外れな質問があったが、さすがに担当者も苦笑していた。想定以上の売上を残せたのは、「アウトレット」という業態が日常利用業態へと広がったということである。少し短絡的表現をするならば、アウトレットというデフレの象徴である業態がより浸透し日常化したということである。結果、地元顧客の集客が多く売上増はこうした顧客によってでつくられたということだ。

ここ数回来年4月の消費増税対応としての流通再編、イオンの戦略など書いてきたが、そうした大きな変化以外にもテナント編集や売り場改装など個々の対応が既に始まっている。例えば、首都圏の中堅スーパーであるサミットストアでは惣菜部門において店内調理を進め売り場を拡充し、更には単なる一般書店を外しデフレの象徴でもあるブックオフを入れるなど、ある意味デフレは当分変わらないとした対策を講じている。更にわずか500mほどしか離れていない場所にあったクイーンズ伊勢丹が撤退し、その跡にサミットストアが入るといった想定顧客を睨んだスクラップ&ビルドが進んでいる。

また、1月から九州での値上げ実験を行なってきたマクドナルドが「100円バーガー」を始めとした大幅な価格改定を5月7日から実施するとの発表があった。結論から言うと、収益性を高めるために「100円バーガー」をはじめとした100〜200円の低価格帯商品を見直しだたけでなく、特定地域ではあるが、4月19日から290〜320円だった「ビッグマック」を330〜360円に引き上げ、ほかに270〜280円だった「てりやきマックバーガー」も290〜320円に値上げする。また、420〜490円だったハッピーセットは410〜480円に値下げ。バリューセット(460〜790円)の価格は据え置く。こうした価格改定は収益性を高める方法として、どこでも行なう一般的手法であるが、「顧客単価を上げる」ことによって目指す戦略である。

さて、マクドナルドの価格改定はかなり大幅な値上げである。昨年度既存店の売上が低迷したのも、お得感が薄れ顧客離れしたからで、その多くは牛丼専門店やコンビニへと移ったからであった。遅まきながら「朝マック」など朝食メニューにも取り組み、新たな売上づくりをトライしているが、この朝食メニューも既に数年前からファミレスや牛丼専門店が実施しており、今や駅前のラーメン店までもが「朝ラー」をメニューにしているぐらいである。私の見立ては、勿論顧客単価は上がると思うが、客数は間違いなく減ることになる。そして、その掛け算としての売上は若干落ちることになると思うが、収益は改善の方向へと向かう。但し、このまま円安が続くと輸入原材料が上がり、収益は圧迫される。いずれにせよ消費増税を踏まえた「次」を目指した価格戦略である。

ところでこの価格改定に就いてマクドナルドの原田会長が日経MJのインタビューに答えており、100円バーガーが120円になってもまだまだ安くお得感はあると断言していたが、100円バーガーの主要顧客は低年齢層の子ども達であり果たして顧客離れを食い止めることができるかどうかである。また、この課題と共に懸念されるのが、ザ・マクドナルドである「ビッグマック」の値上げである。これまで成功させてきた「ビッグマック200円プロモーション」と同様の期間限定の200円〜250円程度の価格プロモーションを行なうものと想定されるが、果たしてどう展開されるのであろうか。デフレ下にあるなか、マクドナルドの価格戦略がどのような結果となるか注視すべきであろう。

2か月程前のブログであったと思うが、円安・株高の進行によっていわゆる資産デフレは解消できるであろうと書いた。その傾向は消費面においても好調な百貨店売上に表れており、一方スーパーなどのチェーンストアは相変わらずマイナスとなっている。マクロ経済の専門家ではないが、4月26日に総務省から発表された物価指数を見る限り3月の消費者物価指数(いわゆるコアCPI)は前年同月比-0.5%でマイナス傾向が続いている。日銀による「異次元緩和」の効果は出ていないということだ。また、現在の株価上昇は海外投資家によるものであることを考えると、より利益が得られるものが他にあればすぐさま資金は移動する。国内の個人投資家が株式市場に戻って来ているようだが、現在の株価水準はちょうどリーマンショック前であり、さて各企業の決算がどのようなものとなるか、株価もそれ次第であろう。

なんでもかんでもアベノミクス効果による景気回復が進み、安売りがさも問題であるかのような論調がTV1メディアを中心に1か月以上続いている。実はデフレという現象についても、物価下落がIT技術による術革新や生産性の向上などによって物の値段が下がる、いわゆる"良い物価下落"と、需要不足により発生する"悪い物価下落"がある。この二つを明確に峻別することは難しいが、現在起きている物価水準の下落は、需要不足によるもので、いわゆる需給ギャップによるものである。どう需要を作って行くか、日銀や政府がやれることは少ない。問題の多くはバブル以降リスクをとろうとしない企業側にあり、2か月程前のブログにも書いたが、北野一氏が「デフレの真犯人」において指摘されたようにROE(株主資本利益率)重視経営という安全経営にシフトしてしまっているからである。

さてその実体経済はどうかと言えば、マスメディアが報じる景況感とはかなり異なっている。その象徴例になるかと思うが、日本自動車工業会によれば輸出を牽引してきた自動車も3月は前年同月比10.1%減となり、8か月連続で前年を下回っている。勿論、円安により輸出採算の改善がなされ良い決算を迎えたことは言うまでもないことだが、日本経済全体が浮かれるにはほど遠いということだ。
また、GWの最中であるが、どの行楽地も人でにぎわっている。これは円高であった年末年始が海外旅行に出かける人が多かったのに対し、円安によりかなりの人が国内旅行へと移動したからである。そして、どこの観光地も飲食施設には長い行列ができている。極論を言えば、交通費と飲食費プラス若干のお土産消費のみ。これも私がキョロキョロ消費と呼んだように、所得が増えない以上極めて賢明な消費行動となっている。私に言わせれば、「明るく賢明なデフレ型消費」が続いているということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 14:58Comments(1)新市場創造