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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年02月03日

スマートライフという新価値時代へ

ヒット商品応援団日記No524(毎週更新)   2012.2.3.

スマートライフのスマートとは従来の価値観とは全く異なる新しい価値をもたらす、そんな賢明な価値世界であると理解して欲しい。その新価値を先行し代表する商品がスマートフォンであるが、既に携帯電話市場の半数を超えてしまっている。携帯電話機能はあるが、携帯電話にあらず、インターネットに接続しPCが行なう世界がコンパクトに手軽に提供される全く新しい価値商品である。
実はこうした新しい合理的商品がスマートフォン以外にも続々と商品化が進んでいる。
例えば、住宅メーカーのほとんどが賢い住宅、スマートハウスを開発・販売している。いわゆる創エネと畜エネで快適で経済的な住宅である。同じ合理的商品であれば、車の場合はHV車であり、ガソリン車ではあるがリッター30キロを走る軽自動車も加わるかもしれない。
スマートフォンの開発者である亡くなったアップルのスティーブジョブズが思い描いたように、人の手に馴染みあったらいいなと思い至り得るヒューマンな新しい価値概念である。この概念、考え方を敷衍したライフスタイルのことを私はスマートライフと呼んでみた。

このスマートライフについては既に3年程前に「個人サイズの合理主義」というタイトルでその賢い「合理性」に着目しブログにも次のように書いている。
『個人サイズの合理主義は平成世代ばかりでなく、他の世代、他のエリア(都市と地方)においても浸透していくと考えている。「何が合理であるか」が、あらゆる消費の最大キーワードになってくる。昨年のヒット商品の一つであるパナソニックの電球型蛍光灯のように価格は高いが長持ちし電気代も節約できて結果として安く済む、といった費用対効果を物差しとした合理主義もある。1年前から生活者の消費キーワードとなっている「わけあり消費」も、その「わけ」が合理的判断の物差しとなっている。数年前から始まっている単位革命、例えば大家族の場合は業務用食品ショップで大量に買うことが合理主義となり、単身者やDINKSのような場合は小単位、食べ切りサイズが合理主義となる。1980年代から始まった個性化の時代、好き嫌いが消費の第一義であった時代を終え、価格認識に基づく個人サイズの合理主義の時代に入った。』
こうした新しい合理的価値によって生活再編集が始まったということだ。

そして、こうした一種の生活見直しが行なわれている真っ最中に、あの3.11東日本大震災を経験したのである。どんなライフスタイルへと変化を促したか、その第一は自己防衛市場として現出している。ブログにも書いたが、その合理的な自己防衛策として、地震などによって家を無くした場合を想定しアウトドア派ファミリーに売れ始めたのが避難住居にもなるキャンピングカーである。こうした大きな買物だけでなく、若い女性の足下ファッションも大きく変わった。多くの帰宅困難者が駅に幹線道路に溢れた経験からであろう、細いヒールの靴から長時間歩いても大丈夫な靴へと変化した。更には節電自己防衛策として冷感衣料を始め多くの自己防衛対策グッズが売れたのは周知の通りである。こうした変化は、首都圏には4年以内に70%の確率でM7クラスの直下型地震発生が想定されると東大地震研究所から発表もあり、今後のライフスタイル変化を更に促すと考えられる。

今後商品やサービスが選ばれる第一の理由として、「新しい合理性」が問われてゆく。その合理性の中心には創エネと省エネ、省マネーが置かれ、結果コストパフォーマンスが良いかどうかが競争軸となる。この「新しい合理性」という賢明さ、知恵ある工夫は、例えばLED電球のような新技術によるものが多いが、現在は忘れ去られてしまった「おばあさんの知恵」ではないが、古くから伝承されてきた方法論や商品にも焦点が当てられてくる。
以前、そうした合理的商品の一つとして、炊く、煮る、焼く、蒸す、万能調理道具土鍋に着目したが、高額商品である圧力鍋の代わりとして、普通の鍋を保温袋でくるむだけで十分代用することができる方法もある。こうした昔からの知恵を今様に復活させることもスマート商品となる。道具以外でも日本が誇る発酵技術による食品、健康食品は世界の調味料として醤油があるが、最近ブームとなっている塩麹などもヨーグルトやチーズと同じように世界に向かうスマート食品に育つかもしれない。

こうした消費の在り方を見ていくと、右肩下がりの時代、失われた20年と言われてきたが、実は成熟した消費社会であることがわかる。1980年代後半のバブル時代を経て、1990年初頭のバブル崩壊以降グローバル経済の荒波に洗われ大きく産業構造が変わる。更に2000年代に入り小さなITバブル、規制緩和による不動産バブルの生起と破綻を経験し、リーマンショックという世界の金融経済破綻まで経験してきた。消費もこうした変化を映し出してきた訳だ。
そして、今も大変化の途上にあるが、変化の波にもまれながらも新しい価値観による消費を実感し始めてきたように思える。但し、国会での議論をまたなければならないが、多くの生活者は数年先には消費増税が行なわれることを既に想定している。現政権の増税案が実施されるかどうかわからないが、10%の税率へと2回に分けて段階的に行なわれるとすれば一定の駆け込み需要はあるものの買い控えといった消費にはなりにくい。つまり、情報化社会にいる私たちは既に心理的には「増税」は始まっていて、買い控えではなく、いわば賢明な「計画消費」へと向かっているということである。別な表現をするとすれば「自己防衛計画」と言ってもかまわない。そして、実はこうした消費心理がデフレを後押ししている。デフレ下での開発戦略着眼をキーワード化するならば、それは新合理という価値世界、「スマートライフ」を目指すことのなかにある。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 10:33Comments(0)新市場創造