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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2020年02月23日

人通りの絶えた街へ 

ヒット商品応援団日記No758(毎週更新) 2020.2.23.


少々おどろおどろしいタイトルになってしまったが、消費経済が危機的状況へと真っ直ぐ向かっている、いや爆発的に突進している状況をパンデミック(感染爆発)と表現した。その背景は勿論新型肺炎の拡大が進行しているのだが、根本には昨年10月に実施した消費増税がある。その紛れもない事実が先日発表された10月ー12月のGDPである。その値が年率で6・3%の下落で、年率6・3%と言えば、1年で35兆円もGDPが縮小したという意味である。その異常さについては京都大学の藤井教授が分析をしている。そのGDPの下落の内訳を名目GDPで明らかにしてくれているが、その中で個々の縮小率について分析してくれている。その内大きい縮小率が「民間投資13・7%」と「消費9・0%」となっている。これまで商業統計など多くのデータ類を見てもわかるように極めて深刻な「病気」になっている。

前回のブログで新型コロナウイルスの感染に関し、「移動抑制は直接消費を落ち込ませる」と書いた。書いた翌週から観光産業をはじめ流通業にも具体的な影響が明確になってきたと報道されるようになった。それは中国人観光客だけでなく、更に訪日観光客だけでもなく、日本人観光客へとしかも「全国レベル」で抑制が広がった。問題なのは「移動の抑制」が東京マラソンをはじめ多くのイベントの中止あるいは規模縮小へと急速に向かった。最近ではサンリオピューロランドも3月中旬まで休館するとの発表があった。移動の抑制は消費経済の縮小へと直接繋がっていく。こうした自己抑制は全国にわたって行われ、それを追いかけるように新型肺炎の陽性反応患者が広がっていく。感染源を追跡できない、いわゆる「市中感染」が日本感染症学会が指摘をしたように散発的な流行が始まっているということだ。

ところで10年数年前になるが、2008年9 月15 日にリーマンブラザーズが破綻して、大不況が押し寄せたことを思い出す。記憶を呼び戻してほしいが、サブプライムローンに関係する証券化商品を保有する金融機関にどのくらい損失が生じているのかが見えず、金融機関同士の資金取引が停止する「市場機能の麻痺」が起きた。この状態を後に疑心暗鬼が伝染したことによると明らかにされた。この「伝染」というキーワードが今また日本を覆いつつある。これまで社会不安について「うわさの法則」を踏まえこれ以上書くことはしないが、伝染の元は「不確かさ」にある。新型肺炎の場合も、「見えない」ことによる不安や恐怖で、よく言われることだが、デマや噂を連れてくる。いや、その不安は今や危機的状況にあり、人のこころにある差別などの潜在意識が表へと出てきている。武漢からチャーター便で帰ってきた帰国者はもとより、クルーズ船から陰性により下船した人に共通しているのは、人に感染の迷惑をかけたくないという不安な思いと共に、例えば近所を歩き回ってうつさないでほしいと言った言われのない差別の眼や声が出てきている。

実はもう一つの大きな出来事を思い出す。それはリーマンショックと比較しより鮮明であるのが、周知の2011年3月11日の東日本大震災である。東日本大震災の時の景気の落ち込みを比較する経済アナリストもいるが、私が思い出すのは福島原発事故による放射能汚染の「対応」である。この対応は政府の対応と共に、消費者・生活者の2つの対応である。当時も多くの風評・デマが飛び交った。その根源には原子力発電所で発生した炉心溶融(メルトダウン)は無いと繰り返し発表されていた。しかし、後に誰の目にも明らかになったように、メルトダウンが実際に起きており今日に至っている。
そして、放射性物質の汚染情況について、「安全です」、「安全基準値以下です」といくらアナウンスされても不安は解消されはしない。パニックを起こさないためという理由から放射能汚染の拡散情報、スピーディのシュミレーション情報の開示を遅らせた政府に対し、不安ではなく不信の塊となっていた。
当時の放射能汚染を今回の新型肺炎に置き換えてもその不安の程度の違いはあっても基本の構図は同じである。この原発事故直後に放射能汚染を計る線量計がヒット商品になるであろうとブログに書いたが、今回は線量計がマスクとアルコール消毒液に変わったというわけである。。

さて、リーマンショックと福島の原発事故の経験を踏まえどのように新型肺炎に「対応」すべきかである。そして、思い起こしてほしい、そこから生まれたのが「見える化」であった。つまり、福島原発事故においては放射能汚染の数値化による「納得」であった。それは専門家の理屈ではなく、明確な数値で示すことによる納得であった。見えない不安や恐怖を明確に数値化すること、いわゆる見える化が消費現場に要請されていた。確かHP上でその数値の公開を率先したのが「雪国まいたけ」であったと記憶している。そして、数年後福島の生産者は米作りであれば、収穫したコメの放射能汚染を正確にするため全数検査の実施に踏み切る。調査という視点に立てば、サンプル抽出で放射能汚染の精度は十分と考える専門家の「理屈」では納得は得られないということであった。実はこうした納得を通じ、次第にデマを含め風評被害は少なくなっていく。

今回のクルーズ船における場合も同じで、初期の段階でPCRによる検査を「全員」行わなかったことから不安は始まる。勿論、後にPCRによる検査の処理能力がせいぜい1日300程度でしかなかったことがアナウンスされる。国民は「後追いの理屈」としか受け取らない。「だったら初めからアナウンスしてくれよ」ということである。しかも、この検査の陰性・陽性の精度は万全ではないことも後にわかってくる。その証明であると思うが、クルーズ船乗客の内チャーター便で自国に帰ったオーストラリア人6名とイスラエル人1名から、陽性反応が出たと報道されている。さらに言うならば、2月5日以降は乗客は隔離されているので船内感染は防御できたとして、陰性乗客の下船の前提とした。確かにデータを見る限りその傾向は理解し得るが、支援のために乗船した官僚から2名の陽性者が出ていることから見ても、果たして精度の高さを持った防疫管理ができていたのか不信に思うのも、これもまた逆の意味での「見える化」によるものである。しかも、下船した乗客の内23名はPCR検査を実施していなかったと、ニスしていたことがわかった。更に、クルーズ船の支援に従事した厚労省職員がPCR検査をすることなく日常業務に従事していたこともわかってきた。こうした杜撰な対応が重なると不安は不振へと変わっていくのだ。

心理市場化と言うキーワードが生まれて20数年ほど経つが、そうした中で生まれたのが「見える化」であった。見えない世界を見えるように、わかりやすいようにと行われた経緯がある。それは過剰とも思える情報社会にあって間違えた判断をしないようにするための知恵であった。しかし、それでも全てが見えるわけではない。
心理とは外からは見えない世界であるが、少しの想像力があればわかる世界でもある。つまり「感じとること」であり、社会には嘘や欺瞞が充満していることから、「感」が今まで以上研ぎ澄まされてきたと言うことであろう。SNSなどで使われる「いいね」の場合も、「悪いね」の場合も、そうと感じた人が圧倒的多数を占める時代になったと言うことだ。それはある意味言葉の裏側にある「何か」を感じ取る敏感社会になったということである。その敏感さに応えるのはものは何か、それは「正確さ」である。福島原発事故の時のそうだったが、パニックを起こさないために敢えて「事実」を隠し、公開を先延ばしたと多くの人はそう感じていた。それが「政治」であると言う意見もあるが、そうした政治に対し「正確」に事実を知らせて欲しいと考える人は多い。確かにパニックを起こす人もいる、差別意識丸出しの人もいる、しかし正確な判断をしたいと考える人もいる。政治はそうした中、その正確さを受け止める「人」を信じることだ。その正確さが「感」を動かし、納得へと向かう。

ところでこの新型肺炎の広がりと収束時期についてである。この2つのテーマに正確に答える専門家は少ないが、感染初期は過ぎ、既に拡大期に入ったとする感染症の専門家は多い。そして、誰もがどうなるのか心配しているのが東京オリンピックの開催である。既に多くのイベントや催し、多くの人が集まる会合などで延期や中止が始まっている。これが前回ブログに書いた「移動抑制」である。観光だけでなく、日常の移動の抑制であり、まるで氷河期生活に入ったようになると言うことである。2011年の東日本大震災直後の東京を「光と音を失った都市」であると書いた。もし同様の表現をするとするならば「人通りの絶えた街」となる。こうした人通りの絶えた街が全国に広がると言うことである。
あと一ヶ月ほどで桜が開花する。花見の季節を迎えるが例年のような賑わいを見せることはないだろう。インバウンドビジネスにおける人気ツアー「花見観光」も限定されたものとなるであろう。

そして、誰もが心配するのは新型肺炎が本格的に市中感染した時、まさにパンデミック状態となるのだが、「移動抑制」は移動することなく「冬眠」状態となる。つまり、氷河期時代の冬眠生活である。そして、消費増税は中小企業、特にインバウンドビジネス関連企業を凍らせることとなる。嫌なことだが、信用調査会社では既に倒産企業が増え年間1万企業を超えるであろうと指摘をしている。
前回も書いたが、冬眠生活であっても、ご近所消費、利用し慣れた店には行く。消費現場の基本は危機にあればこそ、「正確さ」を失わないことである。それは顧客に対する正確さであり、言い逃れ、言い訳をしてはならないと言うことである。良いことも悪いことも隠さず事実を公開することである。デマも風評も、この正確さの前では力を発揮することはない。東日本大震災の教訓を今一度思い起こすことだ。(続く)
  
タグ :新型肺炎


Posted by ヒット商品応援団 at 13:16Comments(0)新市場創造

2020年02月11日

移動抑制が消費を直接低下させる 

ヒット商品応援団日記No757(毎週更新) 2020.2.11.



報道されるニュースのほとんどが新型コロナウイルスの感染で埋め尽くされている。ウイルスの正体が未だわかっていないためその「不可解さ」に不安が生まれ、マスメディア、特にTVメディアが不安を増幅させている。毎日のように感染者数や死亡者数が右肩上がりのグラフで図解される。ところが米国での季節インフルエンザによる患者数が1900万人、死者数は1万人を超えたことなど日経新聞以外はほとんど報道されない。挙げ句の果ては例えばクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の寄港地鹿児島でのオプションツアーでどこに立ち寄ったか感染させたか「犯人探し」までいきついている始末である。このことは日本国内ばかりか、例えばCNNなどでは新型コロナウイルス感染のニュースにおいては、中国からの感染の「ハブ」の象徴としてクルーズ船を取り上げている。世界における感染者数の多さについては日本は際立って多いのは事実ではあるが、世界の見方と言えば感染の媒介国であるかのようなニュースさえある状況だ。そこから中国人、日本人を含めたアジア人へのウイルス差別も生まれている。TVメディアをはじめとしたマスコミによる情報の「刷り込み」から自らを守ること、ここでも過剰情報からの自己防衛が必要となっている。

そして、今回新型コロナウイルス感染で明らかになったことは、検疫における法整備と治療体制の不備であった。こうした感染症の専門家ではないのでコメントできる立場にはないが、日本と中国の経済における密接な関係が数字だけでなく「実感」できることとなった。インバウンドビジネスを見ていくと、2019年の訪日外国人は 3,188 万 2 千人、観光消費金額は4.8兆円。内中国人観光客数は959.4万人、消費金額は1.7兆円となっている。
3年ほど前から東京浅草や大阪道頓堀・黒門市場などの賑わい観察結果を未来塾でレポートしてきたが、ここ数日前の浅草も道頓堀も勿論京都においても観光客のいない閑散とした観光地となっていると報道されている。勿論中国政府による春節における団体旅行の禁止によるものでいかに大きいものであったかを実感することとなった。また、こうした閑散とした状況は日本観光が敬遠されていることを物語っている。それは前述のCNNの報道ではないが、新型コロナウイルスの感染媒介国として、つまり武漢から広がる北京や上海などと同じような見られ方をしていることの「実際」ということ実感でもある。少し前に日本感染症学会がコメントしているように、見えないところで小さな感染が国内で続いているとの懸念を払拭できない。

さて、こうしたグローバル化した時代にあって、新型コロナウイルス感染拡大の少し前まではあの「カルロス・ゴーン逃亡劇」が世界の話題の中心であった。マスマスコミ、特にTVメディアの情報で右往左往しないことだ。そして、実はこうした情報から遮断されているのが消費増税による景気、とりわけ消費の落ち込みである。前回のブログにも書いたが、インバウンド市場の落ち込み、百貨店などの小売業や観光地のビジネスに大きな影響を及ぼすであろうと書いた。そうした影響は出てきてはいるが、観光とは「移動」のことである。インバウンドビジネスとはその移動によって生まれるビジネスである。今回の新型コロナウイルスはその移動に乗って拡散するのだが、感染のスピードに対策が追いついていないという現状がある。数日前、長野白馬のスキー客を対象とした観光産業の地元担当者が、白馬は欧米客が中心で中国観光客は少ないので大丈夫であるかのようにコメントしていた。まるで考え違いをしているなと感じたが、つまり、今起きていることの本質は新型コロナウイルスは「移動」そのものにストップをかけるということである。白馬は中国人観光客が来ていないので問題はない、オーストラりアのスキー愛好家は訪日してくれるなどと間違って考えてはならない。パウダースノー好きのオーストラリア客も移動は抑制されるということである。これがグローバル時代のビジネスの前提である。白馬もニセコも浅草や道頓堀ほどではないが、基本同じであるというこだ。

この移動が抑制されるのは何も訪日観光客だけのことではない。問題なのはインバウンドビジネス市場だけでなく、国内の日本人の消費も抑制されるということである。例えば、今までであれば欲しいな、食べたいな、と思ったら長距離の移動もいとわず行動する。デフレ時代にあってはより安いものがあれば、移動にお金がかからなければ長距離でも移動するが、コスパに合わなければ身近なところで済ませる。あるいは我慢するということになる。これが消費における氷河期の特徴、その本質である。
問題なのはこうした移動抑制心理へと向かわせているのが、「消費増税」である。前々回のブログにて危機的状況にあることを商業統計の数字をもとに書いたが、その時にも少し触れたことだが、増税前の駆け込み需要が予測以上に低かったのは「消費体力」が低くなっているからであると。1997年の5%増税時、2014年8%増税時、と比較し、「駆け込める消費余力」がなくなっているからであると推測した。それは消費を牽引するボリュームゾーンである30歳代の収入が上がらず、高齢者も予測以上に消費しないことが主な理由となっているからだ。特に、高齢者の消費は今回のクルーズ船に見られたように「旅行」が消費の中心となっている。勿論、高齢者も「移動抑制」は働く。

また、旅行という移動とは異なる視点ではあるが、「海外へのモノの移動=輸出」は2018年度は順調であったが、2019年度は前年と比較し、マイナスで推移している。これは多くのエコノミストが指摘しているように米中貿易戦争による理由からであるが、今回の新型コロナウイルスによってホンダ・トヨタを始め多くの日本企業の工場が操業中止になっている。そして、周知のサプライチェーンが機能し得ない期間が出て来ている。こうした中国に生産拠点を移動してきた企業だけでなく、中国に農産物などの委託生産・委託加工している大手スーパーや飲食チェーンも多い。つまり、消費生活に密接な関係を結んでいるということである。まだその影響は出てはいないが、新型コロナウイルスの感染が中国各地方都市に拡大し長期化するとなれば、工業製品だけでなく、食品にも影響が出てくる。つまり、内需だけでなく外需もさらに厳しくなるということだ。

こうした内需・外需共に厳しい状況でどうすべきかである。まず顧客の「移動抑制」についてであるが、逆に言えば「近場」「ご近所」利用が増えてくるということである。しかも、日常利用へのウエイトが高まる。例えば、旅行であれば国内旅行で今まで行ったことのない1泊温泉旅行とか日帰りバス旅、といった旅行になる。従来の人が集まる観光地は避ける傾向となる。しかもその根底にあるのは「安全」「安心」が担保されていることが前提となる。それまでのお得な旅、気軽な旅、しかも安全・安心な旅となる。安全な旅とは、まず利用者が安全を自己確認できることが必要であるということである。それは安全の「見える化」の徹底ということになる。しかも、感染対策の見える化だけでなく、避難や危険防止といった旅の「全体」に渡るものとしてある。

デフレといった視点に立てば「お得」も進化していくであろう。政府も6月までのキャッシュレスによるポイント還元が恐らく9月まで延長されることとなるであろう。そして、氷河期における消費の最大特徴は「自己防衛」へと向かう。それは節約といったことではなく、自己抑制消費に向かうということである。今回の新型コロナウイルス対策には手洗いが必要であり、マスク着用はそれほどの効果はないとされているが、昨年12月からの季節インフルエンザの流行は予測を下回る感染であることが報告されている。これは1月後半からの新型コロナウイルス
に対する自己防衛によるところが大きいと分析する医師も多い。増税やリーマンショック、東日本大震災を経験してきたが、その消費の根底には自己防衛意識が大きく働いていた。実はそこから「わけあり」といった新しいキーワードによる商品やサービス。業態も生まれてきた。どんな時代の次なるキーワードが生まれてくるか、まだ始まったばかりであるが、間違いなく生まれてくるであろう。昨年「サブスク」に注目されたが、顧客も提供企業も、共に納得できる「デフレ消費」社会の到来を象徴するキーワードになる。前回のブログに「何があってもおかしくない時代」が始まったということである。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:07Comments(0)新市場創造