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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年10月15日

変化の時代であればこそ、老舗から学ぶ

ヒット商品応援団日記No535(毎週更新)   2012.10.15.

前回のブログ「消費増税をチャンスに変える」の続きである。情報の時代の競争は、誰よりも早くが基本だとビジネス教科書に書かれ、実際のビジネス現場もそのように動いていて、消費増税における競争を勝ち抜くために、新しいローコスト業態、新しいローコストを可能とするシステムの開発に取り組んでいる企業、あるいはオンリーワン商品の開発を目指す企業も多数あると思う。あのヘッジファンドのジョージソロスではないが、「いずれ誰かがやるであろうから、そうであれば私が先にやる」という世界である。それを先行者利益として享受する。それ自体決して間違ってはいないと思うが、それらと異なるビジネス世界もあると考えている。

その一つが「老舗から学ぶ」ことにある。老舗と言われ得る会社とはどの位の時を経てきたとお考えであろうか。人も企業も生き物で当然寿命がある。老舗から学ぶとは、不況といった景気の問題だけでなく、戦争といった極限の困難にあってもつぶれない、その持続力の源は何か、ということを学ぶことにある。
私がよく行く鳥取に、明治元年創業の「ふろしきまんじゅう」という老舗の商品がある。賞味期限は3日という生菓子で、田舎まんじゅうとあるが品のある極めて美味しいお菓子である。鳥取県人、和菓子業界の人にとってはよく知られた商品と思うが、東京の人間にとってはほとんど知られてはいない商品だ。ところで企業理念には「変わらぬこと。変えないこと」とある。変化の時代にあって、まさに逆行したような在り方である。いや、逆行というより、そうした競争至上主義的世界から超然としたビジネスとしてあるといった方が正解であろう。人はその世界をオンリーワンとか、固有、他に真似のできないオリジナル商品と呼称されるが、学ぶべきは「変わらぬこと。変えないこと」への着眼・発想にある。

言葉を変えて言うと、「非競争の力」、外側からは見えない、何百年後かにしか分かってもらえない、そんな視座が必要ではないかということである。非競争というと、オリジナリティやオンリーワンといったキーワードを思い浮かべると思うが、何のためにビジネスするのかといった原初的なことである。ブランド名は明らかにしないが、変化を追い求め、わずか1年半ほどで数百店舗にまで急成長した和菓子屋があった。過去形で表現したが、商品の奥行きを創れないまま話題だけの情報的商品の臨界点を超え、急速に売上を落としあっという間に市場から退出した。これは変化市場で生き抜くために通らなければならない壁である。しかし、非競争市場にあっては、こうした壁はない。あるのは「変わらぬ何かであり、変えない何か」である。それらを真剣さ、誠実さ、品質、・・・・日本に少し前までごく当たり前であった商人、職人の心構えといってもかまわない。随分前にわけあり商品の代表事例で取り上げたエブリデーロープライスのOKストアにおける「オネスト(正直)」にもつながる世界だ。

激変&混乱期には創業に戻れと言われてきたが、「変わらぬこと。変えないこと」の大切さに今一度思い起こし、「今」に向かうということである。室町時代に創業した和菓子の「虎屋」は約480年の歴史をもつ老舗であるが、周知のように東京六本木ヒルズにはTORAYA CAFEEを出店している。和菓子の命である餡(あん)を材料とした洋菓子の提供も時代の「今」に応えたものだ。過剰な情報の時代であればこそ、TORAYA CAFEEのように目に見えるかたちにしたということである。この時代のマネジメントの主要な役割の一つは、壁にかけられた経営理念ではなく、こうした伝承すべき理念の「見える化」である。

実は、日本は世界の中で圧倒的に老舗、継続し続ける企業が多い。1400年以上続く大阪の宮大工金剛組を持ち出さなくても、地方を歩けば数百年続く会社は山ほどある。良く言われることであるが、継続を可能とするには「変化対応力」が不可欠であると。しかし、同時に「守るべき何か」「継続すべきは何か」を明確に持たなければならないということである。
企業経営における基本であるが、「有用性」という視座に立てば、まず「有るもの」を見直し、使い回したり、転用したり、知恵を駆使して生き延びる。「有るもの」、それは技術であったり、人材であったり、お金では買えない信用・暖簾であったりする。勿論、こうした無形のものの前に、有形の土地や建物、設備といった資産の活用も前提としてある。つまり、サバイバル時代の重要な戦略は、変えるべきことと、継続すべき、守るべき何かを明確にすることから始まる。老舗にはそうした考えこそが引き継がれてきたということだ。

例えば、老舗への第一歩であると思うが、洋食器の製造で知られている新潟燕三条では、金型製造技術や研磨技術が携帯電話や小型航空機の部品製造にまで転用されている。タオルの産地である四国今治のタオル製造の再生もしかりである。農産物でも、10年ほど前から米やりんごを中国を始めヨーロッパへと輸出している。日本酒もしかり、世界中で食べられ人気の日本食レストランであるが、日本酒もプレミアムなお酒として輸出されている。
増税を前に生き残るための知恵、それは既に「有るもの」に対し、少し離れて見る、俯瞰的な視座を必要とする。それは企業も生活者もサバイバル時代を生きることにおいて同じである。そして、提供する側の目的や意図とは違って、使い回したり、転用したり、何かの替わりに使ったり、思いがけないところでヒット商品が生まれる、それがサバイバル時代の特徴だ。消費もそうした視点で見ていくと増税対策への着眼・アイディアが生まれてくる。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 09:59Comments(0)新市場創造