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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年06月17日

消費変化の兆し

ヒット商品応援団日記No5267(毎週更新)   2012.6.17.

百貨店協会を始めとした多くの指標を見ても分かるが、3月から6月にかけて消費は順調に戻りつつある。数字上もそうであるが、生活実感という面から見ていくと、自由時間の過ごし方を見ていくとよく分かる。その証左として、5月のGWにおける国内外旅行、更にはこの夏の予約情況を見ていくと、大震災3.11以降の「消費へのためらい」が終えたと言える。この1年間どんなことにためらい、どんな変化が出てきているかがこのブログのテーマの一つであったが、現段階での兆しについて書いてみたい。

ここ10数年、SC(ショッピングセンター)を始めとした商業施設のコンセプトづくりに携わってきたが、その主要な仕事はと言えば、顧客サイドの変化をデベロッパーや専門店はどのように受け止め、顧客創造への着眼点を見出すかその提案であった。前回、「観光都市TOKYO」というタイトルで商業都市観光について書いたが、先日東京スカイツリーの商業施設である東京ソラマチを見てきたので、それらを踏まえこの1年程新規オープンしたSCにおける新しい「傾向」について指摘をしてみたい。

その傾向の第一は情報の時代ならではの「売れ方」についてである。新規オープンであれ、リニューアルオープンであれ、オープン当日が顧客の期待値は最大となり、時間経過と共に減少し、「いいな〜」と思う顧客が継続して利用することとなる。よく商品のライフサイクルが短くなったと言われるが、オープン後1〜2週間で最初の「答え」が出る。どんなに事前に話題的であっても、話題とは一過性である。東京ディズニーリゾートが素晴らしいのは顧客期待値を継続させるために常に「アトラクション」という変化を提供する仕組みを持っているからである。東京スカイツリーがそうした仕組みを持ち得ているか、夏の花日大会や元旦の初日の出といった眺望変化程度では仕組みにはなりえない。そこで水族館や企業情報PRを用意していると思われるが、これも集客のコアとしてはパワー不足である。残るは東京ソラマチといういわゆる巨大SCである。

事前に話題としてパブリシティされたのが、「新しい下町」というコンセプトによる江戸情緒溢れたお土産商店街であったが、その集積度合いは極めて少なく弱い。実際に歩くと実感できるが、圧倒的スペースにファッション専門店が出店している。UA(ユナイテッドアロー」の各ブランドやビームス、ユニクロ、ZARA、あるいは109系のセシルマクビー、更には下着のトリンプや生活雑貨のアフタヌーンティー、LOFTに至まで。更に驚かせたのが、「フードマルシェ」といういわゆる巨大「デパ地下」である。地元ならではの「浅草今半」や「ニ木の菓子」といったところも出店しているが、そのほとんどが「魚力」「ニュークイック」「林フルーツ」「柿安」「神戸コロッケ」・・・・・・誰もが知っているデパ地下専門店群である。

まだ東京ソラマチには話題の余波が残っていて来館者数は1日10数万人であると思うが、こうしたファッション関連、あるいは食品物販店は総じて売れている様子が見えない。その理由の一番は海外観光客の多くが展望台での眺望が限定予約となっているからであろう。現状は国内観光客の多くは飲食施設の利用と江戸土産の購入といったところだと思う。
東京スカイツリー観光は、どちらかというと欧米観光客ではなくアジアからの観光客であり、1970年代の日本人観光客がパリ観光のお土産としてルイ・ヴィトンを買ったのと同様に日本のファッションブランドがお土産になる可能性もなくはない。しかし、こうしたファッションブランドは香港、上海、シンガポールといった主要都市に出店している。そう考えると地方の観光客が対象となるが、果たして若い世代は東京ソラマチで買うであろうか疑問である。

こうした感慨をもって東京ソラマチを見た翌週に昨年11月辻堂にオープンしたテラスモール湘南を見てきた。オープン1週間後に見てきたが、8ヶ月経ってどんな変化が表れてきているか実感したかったからである。つまり、東京ソラマチとは比較にはならなくぃが、鳴り物入りでオープンした郊外型の巨大SCであるが、既に観光的「話題」という期待値はなく、日常型、週末休日型のSCに戻った姿を実感したかったということだ。
案の定行列ができていた店は激減していた。激減というより、行列店は数えられる程度のわずかな店である。例えば、昼少し前であったが、9店によるフードコートはかなり空席が見られ、数名が並んでいたのは佐野実がプロデュースしたラーメンの「湘南 野の実」と地元の海産問屋による「しらす問屋 とびっちょ」の海鮮丼。他には昨年から話題となっている「パンケーキカフェ」には相変わらず行列ができていた。名前を出すと差し障りがあるので出さないが、数年前には行列ができて並んでも食べたいという一種の社会現象にもなったドーナツ店には行列どころか店内にはわずか数名の顧客がいるだけである。
つまり、「話題先行」が問題なのではなく、2回目も3回目も購入・食べたくなる「何か」を見出せないとこのような状態に向かうということだ。商品MDを変える、メニュー業態を変える、売り場・陳列を変える、勿論時代ならではの課題である価格を変える、・・・・・どこに顧客がいるのか探るということである。その時期は業態にもよるが、まあ半年後が最初の「答え」を出す時期となる。
昨年から話題となっているのがスイーツの「マカロン」である。マカロン専門店は未だ行列ができているが、一昨年話題となった「かりんとう」には最早行列はない。周知のように5〜6年前話題となった「モチクリーム」は退店し市場にはほとんどない。単品型専門店の場合、こうした傾向は特に強い。行列という話題を食べに行っているということだ。これが情報の時代の傾向の一つである。

もう一つの傾向が圧倒的な市場、特に惣菜という中食市場を創り牽引してきた「デパ地下」に変化が出てきたことである。今なお力のある専門店は売れている。しかし、次々と生まれるSCに対応できる専門店が少ないことから、どこのSCに行っても同じ、金太郎飴の如き専門店群の編集に出くわす。ある意味、つまらない、欲望を刺激する鮮度ある「何か」が枯渇し始めていると特に実感する。
そのような実感を更に促したのが、4月26日にオープンした「渋谷ヒカリエ」の地下の「ShinQ`s Food」という食品売り場である。古くは「暖簾街」、10数年前には「Foodshow」と新しい食品売り場を創ってきた東急百貨店であり、どんな売り場編集を見せてくれるか期待していたのだが、従来の延長線上となっていて、私が見る限り売れているようには思えない。

まだ正確には把握してはいないが、数年前からの傾向として「おうちでごはん」が「おうちで料理」へと少しづつ変化してきているからである。高額な炊飯器が売れ、パン焼き器は既に常備道具になり、健康に配慮した蒸し料理には専用の鍋に人気が集まり、更にはプロ用の調理道具が売れ、素材についてもかなりプロ的な素材まで売られている。周知のように、道具ばかりでなく、cookpadのようにレシピ情報は互いに交流し合っている。つまり、「楽しむ料理」市場が増え始めているということである。こうした影響を最も受けるのが中食市場である。

こうした変化は少し理屈っぽく言うと、「消費者から生産者(作り手)へ」の変化である。受け身から作り手へ、ホームクリエーターへの変化であり、その変化自体を楽しむ生活へと進化してきている。その変化の芽が顕著に出始めているのが「食」であり、「小さな日常」生活からと言えよう。ブームを超えて定着した家庭菜園が自家製農家料理へと進化しつつあるのと同じ傾向である。
この進化は、私がスマートライフと名づけた知恵ある新しい合理的生活へと向かうと仮説している。例えば、3.11というパラダイム転換を単なる節電・省エネを単なる節約としてではなく、昨年から始まったグリーンウオールのように緑を楽しんだり、知恵や工夫すること自体を楽しむといった生活への進化である。ライフスタイル変化について、10数年前から量から質へ、上質な生活への転換と言われてきたが、3.11以降の「消費へのためらい」はホームクリエーションを楽しむところに新しい芽として出てきたと考える。つまり、一時期中食市場を創ってきたデパ地下の専門店は作る楽しさを超えた「次なるプロ」のクリエイティビティが問われているということだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:34Comments(0)新市場創造

2012年06月01日

観光都市TOKYO 

ヒット商品応援団日記No526(毎週更新)   2012.6.1.

今年のGWは国内、海外を問わず、数年ぶりの観光移動が見られた。昨年の3.11以降小売りレベルの消費現場では少しづつ回復し、昨年秋からは順調に推移してきた。そして、今年に入るとリーマンショック以前の高い消費、時計等の高額商品も動きを見せるようになった。その証左であろうか、今年のGWは被災地東北を含め多くの観光客が訪れ旺盛な消費を見せた。そうした観光地で群を抜く集客を見せたのが観光都市TOKYOである。
特にTV局による過剰な事前報道によるものであるが、、東京の新名所となった東京スカイツリーには連日20万人超の観光客が押し寄せた。実は東京スカイツリーの下にある東京ソラマチのお土産を含めた商業施設を見てからこのブログを書こうと思ったが、あまりの混雑のため時間をおいてからにすることにした。

4月19日には東京台場に新たな商業施設「ダイバーシティ東京 プラザ」がオープンした。「劇場型都市空間」というコンセプトの下、、ショッピングだけでなく、遊び、くつろぎ、驚きや感動を体感してもらえるような“東京の新名所”を目指している。なかでも話題になっているのが、人気アニメ「機動戦士ガンダム」の世界を体感できる常設型エンターテインメント施設「ガンダムフロント東京」など154店舗が入る商業施設である。デベロッパーによれば、初年度の集客数2500万人、売上は300億円を見込んでいるとのこと。
4月26日には渋谷の新しいランドマークとして「渋谷ヒカリエ」がオープンした。渋谷におけるエリア間競争を勝つことを目的に、「大人の都市生活者」に向けた大型商業施設である。例えば、インテリア関連ショップとしてコンランショップは既に日本にも進出しているが、テープルウエアなど暮らしの雑貨関連を集めた日本では初めてショップ等新しい特徴的な商業施設だ。ちなみに、オープン2日間で約20万人が来館し、3億円弱の売上を挙げたとのこと。
首都圏という広域で見ていけば、4月13日には千葉県木更津に巨大なアウトレットパークがオープンした。年間来場者数500万人を見込んだ大型商業施設で、「BOSO CITY RESORT」をテーマに、屋上にオーシャンビューテラスを設けるなど、海沿いの立地を生かしたリゾート感のある開放的な空間が特徴。子供向けの遊び場や大人も遊べるパターゴルフ場、ペット連れの買い物客向けの「ドッグレスト」など、長時間滞在したくなる施設も設けられている。

そして、5月22日にオープンしたのが東京スカイツリー、東京ソラマチである。当然と言えばその通りとしか言いようがないが、634m世界一の電波塔の眺望という話題に集まった観光客によるゴミ捨て、違法駐車・駐輪等マナーの悪さ、あるいはタワーの写真撮影をするために住民の土地に無断で入ったり、・・・・・そんな人間をも集客する現実に押上周辺の住民は予想外であったようだ。また、周辺の商店街はどうかと言えば、スカイツリーの「あやかり商法」もそれほど商売になっていないと既に嘆きが始まっているいう。
そもそも「スカイツリー狂想曲」は、東京スカイツリーがある業平橋(なりひらばし)という駅名を東京スカイツリー駅に改名したことに象徴されている。高校の教科書に出てくる周知の話しであるが、伊勢物語の「東下り」に、在原業平たち一行が隅田川で渡し船に乗る場面がある。その業平にちなんだ名前である。そうした歴史を引き受けていた駅名を東京スカイツリーに改名したということは、墨田区も周辺住民も勿論デベロッパーである東武鉄道も大賛成し、「新たな街づくり」を目指したということである。
しかし、東京スカイツリー、東京ソラマチを見てもクローズされた建物で、周辺エリアを回遊させる導線や仕組みがまるでない。どちらかと言えば、東京ディズニーランドのような「完結」した閉じられた商業空間となっている。集まった観光客は建物内で眺望を楽しみ、食べ、お土産を買い、そして帰るだけである。東京ソラマチのコンセプトは「新下町流」であるが”街起こし”というエリアの視座はまるでなく、単なる普通の商店街である以上、周辺エリアを回遊し、経済効果も当然期待しえない。残るのは展望台に上がれなかった多数の観光客が残すゴミの山だけである。

東京タワーを「Always三丁目の夕日」が描いたように、あらゆるものが荒廃した戦後日本の復興のシンボル、夢や希望を託したタワーであったのに対し、東京スカイツリーにはそうした物語はない。あるのは世界一高い634mのタワー、その眺望である。しかし、それでも人が押し寄せるのは東京が複合的テーマパ−ク、観光都市として存在しているからである。
東京に象徴される都市商業を舞台化することによって更に世界中から集客する時代となった。その舞台空間は非日常的でそこに繰り広げられる、新しい、珍しい、面白い、そうした刺激に酔うことになる。
ちょうどそんなタイミングをはかったように、LCCのエアアジアから就航記念特別運賃の発表があった。成田ー新千歳、那覇が片道5円。時間に余裕のあるシニアやファミリーといった未開拓市場を狙ったものだが、その本質はアジアからの観光客を狙ったものである。従来の銀座や秋葉原に加えて、東京スカイツリーや台場エリアも観光スポットになったということだ。千年の歴史・文化をたどる京都や奈良観光はいわば楽習旅行であるのに対し、都市観光はTOKYOという巨大遊園地のジェットコースターに乗るような刺激的なエンターテイメン観光といえるであろう。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 12:33Comments(0)新市場創造