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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年07月26日

コミュニティ事業のゆくえ

 ヒット商品応援団日記No84(毎週2回更新)  2006.7.26.

欽ちゃん球団こと「ゴールデンゴールズ」の存続が決まった。欽ちゃんの責任の取り方について注目を集めた一つの事件であったが、メディアは好意的に球団の存続を含め報道したと思う。これは欽ちゃんの人徳だと皆思っている。今回の欽ちゃんによる存続判断は、判断を会社(内部)ではなく、社会(外部)にまかせた点にある。社会の声にまかせること、それが唯一生き残れる道であると欽ちゃんは判断したのだと思う。私は前々回「三方よし」というテーマで近江商人のビジネスの心得について書いた。今回の欽ちゃん球団の存続について欽ちゃんは欽ちゃん球団から市民球団へと変わりますと宣言してくれた。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方よしではないが、球場へ足を運ぶ地元フアンよし、世間・社会よし、となったが、広島カープのようにユニークな社会人クラブ球団よし、となって欲しいと思う。私流のことばで言うと、コミュニティ球団として経営していって欲しいと思う。今回の事件で「世間よし」となったのは、欽ちゃんの人柄・人気もさることながら「夢列車」にあると思う。夢という未来を語れるリーダーがいかに少ない時代になってしまったということでもあろう。三方よし、という夢列車だから多くの人が欽ちゃん劇場と言いながらも共感したのである。
さて、課題は「売り手よし」という球団経営についてである。欽ちゃんによるボランティアであってはならないと私は思う。夢列車という理念を欽ちゃんは掲げてくれた。後は、どう継続して夢列車を走らせるかである。つまり、継続は「経営」の最大テーマであり、コミュニティビジネスとして成長していかなければならない。NPO法人ゴールデンゴールズにはその芽が出てきていると私は思う。その1つはゴールデンゴールズをブランド化する試みである。現在は鶏卵や農産物にゴールデンゴールズのラベルを貼っており、逆の意味でゴールデンゴールズをPRしているにすぎない。ゴールデンゴールズというネーミングは糸井重里さんがつけたのだが、新しい野球の楽しみ方、欽ちゃんのパフォーマンスを含め、マーケティングでいうと新しいコンセプトを持っている。野球を新しい切り口のエンターテイメントとしてコンセプト化した訳だから、同じように鶏卵にも農産物にも”新しい面白がり方””楽しい食”としての「何か」が必要である。つまり、「食」の新しい物語づくり、コミュニティブランドづくりである。それは欽ちゃんファミリーではないが、テーマ設定としては安全・安心を踏まえた「食卓」「ちゃぶ台」を囲んだ家族の<食育物語>というコンセプトでブランド成長をはかるのも面白いかもしれない。
さて、今回の事件を取り上げたのも地域活性の良きモデルになると思ったからである。スポーツを街おこし、地域起こしに活用して成功しつつあるのは周知のアルビレックス新潟である。”スタジアムへ行こう!”をキャッチフレーズにお年寄りまでもがユニフォームを着て平均4万人を動員しているサッカー球団である。私も一時期京都サンガをお手伝いしたことがあるが、球場でのライブはまさに「感動」の二文字であった。今年4月の商標法の改正により、地域ブランドが可能となった。しかし、地域の名前をつければそれでモノが売れることなどありえない。「感」が動くような何かが問われているのだ。シャッター通りと化した商店街のなかにあって、今なお元気な商店街の代表は東京世田谷の千歳烏山商店街(えるも〜る烏山 http://www.elmall.or.jp/)であろう。地域通貨「ダイヤスタンプ」の交換のしやすさと豊富な特典で注目された商店街である。こうした特典の仕組みも必要と思っているが、このエリアには区の出張所でもある烏山区民センターという人が集まれる「場」が用意されている。そして、2ヶ月に1回程度のイベントやセールといった小さな出来事が実施されている。このえるも〜る烏山には「感」を動かすテーマと仕組み(=地域通貨)、集まれる場(=区民センター)と集積力(=加盟店120店)があり、それらの小さな出来事情報を各店で発信している。理屈っぽく整理したが、こうしたコト起こしには「バカもの」「ワカもの」「ヨソもの」が必要となっている。アルビレックス新潟もえるも〜る烏山もスタート当初には「バカもの」がいたと思う。今、ゴールデンゴールズは欽ちゃんという「バカもの」と野球好きの「ワカもの」がいる。後は「ヨソもの」という外からの眼が必要であると思う。コミュニティの場合、往々にして「ヨソもの」を排除したがるものである。今回の夕張市がそうであるように、手前味噌な投資による地域活性は必ず破綻する。行政であれ、メーカーであれ、生産者であれ、ゴールデンゴールズであれ、夢あるコミュニティ事業として、「継続」というテーマに取り組める<経営者>が今必要となっている。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:48Comments(0)新市場創造