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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2021年05月30日

こころ折れず、なんとか倒れないで欲しい   

ヒット商品応援団日記No789(毎週更新) 2021.5.30.

こころ折れず、なんとか倒れないで欲しい   

ワクチン接種が加速している。やっとワクチン供給がスムーズになったこともあるが、新型コロナウイルスとの戦いの「先」が見えてきたことだ。その「先」とは、季節性インフルエンザと同じような「時」、日常が来ると言う意味である。そうした明日を確実にしてくれたのが横浜市大の山中教授グループによるワクチン効果の実証研究結果である。ファイザー製のワクチンの「有効性」についてで、変異型ウイルスにも中和抗体ができ、しかもその持続が半年だけでなく、1年間持続効果が見られたと言う実証結果である。多くの人が求めていたワクチンによる戦い方の意味、そのエビデンス(根拠・証拠)を明らかにしてくれたことである。この1年半近く、TVメディアに出演してきた感染症の専門家がただの一人も「答える」ことができなかったエビデンスを初めて明らかにしてくれた。飲食業における飛沫感染といった状況証拠としてのエビデンスではなく、「科学」によるエビデンスである。これまでの「出口戦略」から始まった「感染防止か経済か」「コロナゼロ」「人流による感染防止策」・・・・・全てが無用とは言わないが、生活者・個人のコロナに対する向き合い方を根底から変えることへと向かうであろう。

ワクチン接種は医療従事者から始まり高齢者へと進んできたが、残念ながらコロナとの共存と言う「日常」を手に入れるにはまだまだ時間がかかる。三回目の緊急事態宣言が6月20日まで延長されることとなったが、これも東京五輪の日程を見据えたものであることは明白で、こうしたことを含めほとんどの国民は宣言の根拠・合理性の無さに矛盾を感じている。唯一「先」を見させてくれているのがワクチンで、生活者個人だけでなく、今多大な犠牲を強いられている飲食事業者や観光産業にとっても同様である。生活者・個人にとっては感染発症のリスクが少なくなる「自己防衛」であり、事業者にとっても集団免疫が形成されることによる「社会防衛」と言う2つの防衛策となる。少し前になるが愛知でコロナ患者を診ている臨床医が東京五輪の開催について聞かれて答えていたのは「東京がイスラエルのようなワクチン接種状況であれば開催しても良いとは思うが、そうでなければ中止すべきである」と。ちなみにイスラエルの接種率は62.5%で、東京都の高齢者の第一回目の摂取率はわずか6.6%である。(NHK特設サイトより)

今心配なことは宣言延長によってほとんどの飲食事業者の心が折れてしまうことにある。古いデータで恐縮であるが4月末の日経新聞によれば、3回目の緊急事態宣言を要請した東京、大阪、京都、兵庫の4都府県で、時短営業に応じた飲食店への協力金の支払いに差が出ていると言う。2回目の当初の宣言中の支給率は東京や大阪、京都が4~5割台の一方、兵庫は9割に上る、と。遅れは店の経営に影響することは当然であるが、自治体は審査を担う人員を増やすなど対応を急いでいると報じられているが、少なくとも「根拠なき」要請に対し協力をしてきた店である。
またこの心配の延長線上には、もはや協力できないとした飲食店、特にアルコールを扱う居酒屋が増えていくことにある。勿論営業時間もである。当然東京都は違反企業として「命令」の措置を出すであろうし裁判所から「過料」が課せられることとなる。第二波の時にはあのグローバルダイニングのように裁判に訴える段階から、無数の飲食店が営業し、逆に多くの客が集まり、それこそ「密」を作ることとなる。つまり、行き場を失った若い世代が路上飲みからそうした「店」へと向かうと言うことだ。こうした情報はSNSを通じあっという間に広がる。ある意味で「混乱」が蔓延していくと言うことだ。

前回「根拠なき抑制は破綻する」と書いた。それは何度となくロックダウン(都市封鎖)」した欧米諸国が感染者減少に向かったのは明らかにワクチン効果であった。つまり、強制力を持ったロックダウン、「人流」を強制的に止めても感染拡大を一旦は減少に向かわせても根本解決にはならないと言うことが世界的に実証されてきた。あの感染対策の優等生と言われた台湾は一挙にワクチン接種へと向かったように。
その「人流」抑制であるが、東京の場合GW以降繁華街の人流は夜間だけでなく昼間も減るどころではなく増加傾向を示している。しかし、感染者は減少へと向かっている。人流が増えれば、つまり賑わいのあるところに出かけて行けば感染は拡大するはずなのにここ2週間ほど「減少」していると言う「事実」である。感染症の専門家は行動と感染・発症には2週間ほどの時間差があると言うが、この真逆の結果に対しどのような分析がなされるのか聞きたいものである。「人流」と「感染」の相関を単なる推測ではなく、根拠あるものとして明らかにして欲しいと言うことだ。人流、つまり人の行動変容はつとめて社会心理が働いていることを明らかにして欲しいと言うことである。人流が増えてきたことを単に「慣れてきた」からと言ったど素人のような物差しで人流増加を決めつけてはならないと言うことだ。この1年半、コロナとの戦いと言う学習経験を積んだ生活者・個人、更に言えば飲食店などの事業者の心理変化を分析の大きな変数として組み込まない限り間違った判断となる。

こんなことを言う前に、GWの人流は昨年以上に増加しているのに、感染者数は減少しているのはなぜか。この人流は「都市」におけるもので、今回の第三波の特徴は全国への拡大、地方都市への拡大である。この拡大の主要な要因はどこにあるのか。GWによる地方都市への「移動」、例えばその象徴では無いかと思うのがあの「沖縄」であろう。観光産業以外に生きるっすべを持たない県である。こうした人流こそ分析の対象とすべきで、例えば鳥取県のようにスーパースプレッダーと言う感染拡大者の発見のために従来の疫学調査以上の追跡を行い、とことん感染源を追い求め隔離すると言う方法が取られている。結果、感染者が少ないのは当然の帰結となる。以前にも採り上げたが山梨県の感染撲滅の活動や、千葉市での認証事業活動、あるいは福井県なども同じような感染源をどう潰していくのかと言う「現場主義」こそが問われていると言うことだ。根拠のない人流抑止策から、感染現場に再び戻り、どう抑止していくのかが問われている。こうした現場主義こそがワクチン接種と並行して行うことだ。無症状者による感染という課題について、若い世代に再び注目が集まっているが、高齢者だけでなく、若い世代にも早急にワクチン接種すべきであろう。例えば、今尚、重傷病棟が逼迫している大阪などについては今以上の接種拡大策、若い世代への接種を戦略的に行うことだ。っp坂府知事も第二波の解除が早すぎたとして大きな批判を受けたと聞いているが、東京都のようなパフォーマンスとしての見回り他ではなく、行政も現場に入り事業者とt共に抑止を行い、良い実績を挙げた飲食事業者に対しては山梨県のように「認証」し、時短などの規制も緩和していく方法を取り入れていくと聞いている。規模の大きなとしては難しいと思いがちであるが、「小さな単位」で実効していけば良いのだ。商店街単位、飲食ビル単位、・・・・・・キタ・ミナミ単位のように。「認証」とは行政が一方的行うものでは成立しない。認証の主体は事業者であって、行政はサポート役・黒子である。もし、すべきことがあるとすれば、「認証」の精度を上げ、事業者と共に生活者・個人の信頼を勝ち取ることだ。

ワクチン接種が順調に行けば今年中には若い世代にも行われるであろう。しかし、例え集団免疫が得られたとしてもウイルスがなくなるわけではない。今、イギリス株の次にインド株に気をつけなければと報道されているが、ウイルスは常に変化していくものである。東京墨田区ではこのインド株の検出について力を入れ着実に対策を講じている。勿論、民間の分析企業と組んでのことだが、一番重要な東京都自身が検出数が極端に少ないのはそうした外部企業と連携する方法を持たないからである。横道に逸れてしまったが、つまりウイルス対策はこれからも継続されていくと言うことだ。一方消費者の側もきちんとした認証を受け止める正しい判断が求められていくこととなる。ある意味で1年半前までの「選択眼」に戻ると言うことだ。街を歩けば廃業店舗が目につくようになっているが、それまで、特に飲食事業者はなんとか倒れないで欲しい。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 12:59│Comments(0)新市場創造
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