さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年03月25日

「差」が見えた今年の春 

ヒット商品応援団日記No707(毎週更新) 2018.3.25.

新しい年度が始まるこの時期には新しい市場が生まれる時期でもある。新入社員、新入学生、あるいは転勤など新しい生活が始まり、各社、この時期に新商品を含め新しい試みが実施される。その中心は「新生活応援」というフレーズと共に、家電量販や室内インテリア、ビジネススーツ、あるいは新しい口座獲得のための金融機関など需要開発の真っ最中である。デフレが常態化し、しかも人手不足にあってどんな需要開発を目指しているか、主要な企業の戦略を見て行くこととした。

まず牛丼大手はどんな戦略・戦術で臨んでいるかというと、吉野家の場合毎週金曜日にソフトバンクとのコラボ企画「SUPER FRIDAY」を展開しており、業績に大きく貢献したプロモーションとなっている。その企画とはソフトバンクのスマートフォン所有者には牛丼並盛を1杯、所有者で25歳以下ならば2杯無料にするというお得プロモーションである。25歳以下という赤手に見られるように若い世代の需要開発を目指している典型的なプロモーションである。結果がどう出たたかというと、客単価はマイナス11.5%と大幅に減ったものの、客数はプラス54.0%と飛び抜けた形となり、売上もプラス36.3%と跳ね上がる結果となった。つまり集客をテーマとしたプロモーションが成功した典型的な事例となっている。
すき家の場合は新メニューのプロモーションを行っている。旬のあさり汁と牛丼とのセットメニューで「牛丼あさり汁たまごセット(通常価格(並盛):580円)」「牛丼あさり汁おしんこセット(通常価格(並盛):600円)」をお得な560円で販売している。ある意味王道的なプロモーションである。一方松屋の場合は逆に4年ぶりの値上げで、通常の牛丼にあたる「牛めし」の並盛りを290円から320円に引き上げた。米国産牛肉とコメの価格の上昇やアルバイト店員の人件費の高騰で採算が悪化しており、価格に転嫁したという。常態化したデフレ環境にあって、新たな需要の開発というよりも、経営の立て直し策の一つとなった結果である。

ところで大幅な非採算店舗の閉鎖によって経営を立て直したマクドナルドであるが、新商品の導入以外に面白い「夜もマクドナルドで!」キャンペーンを行っている。毎日17時から閉店までの時間帯にレギュラーメニューの定番バーガーを対象に、100円をプラスすると“パティが倍になる”倍バーガーを「夜マック」としたお得なプロモーションである。一時期「朝食」競争が激しかったが、「夜マック」という夜という時間帯需要の掘り起こしの試みでその結果が待たれるところである。このプロモーションを推進するために、「パティが倍」が無料になるデジタルクーポンが当たるルーレットキャンペーンを実施している。「100円ハンバーガー」の撤退、復活、あるいは高級バーガーと言った迷走、更には期限切れのチキンナゲット問題によって顧客離れを起こしたが、やっと需要開発という本来の経営に戻ったということであろう。

こうしたファストフードの最大の競争相手がコンビニであるが、中でもセブンイレブンは好評だった「朝セブン」を復活させ、パンとコーヒーがお得に買えるキャンペーンを実施している。周知のコーヒーとパンのセットが200円というキャンペーンである。実質としては最大40円引きになるキャンペーンで、リニューアルしたコーヒーの促進も兼ねたものとなっている。そして、更にコーヒーとサンドイッチのセットを300円で販売するという連続キャンペーンを実施。
一方、ファミリーマートの場合は、セブンイレブンをどう追いかけるかという根本課題に取り組んでいる。その一つがサークルKサンクスとの統合であり、顧客集客のためのフィットネスジム併設。対消費者につては「ファミキチ」という商品を擬人化した人物による商品プロモーションを行っているだけで、特別な需要開発の戦略はない。次にローソンであるが、一番力を入れているのがスマホ対応で、独自なローソンアプリを開発し、「Ponta」という共通カードサービスによるポイント取得やコンテンツ利用などスマホ世代にマーケティングのウエイトを高めている。また、ローソンの基本戦略は地方に根ざした丁寧な商品MDを展開、例えば健康寿命の短い青森県では減塩おむすびを販売するといった地域戦略を採っている。

ところで業種は異なるが東京ディズニーリゾートが新しいパスポートの発売に踏み切った。この「首都圏ウィークデーパスポート」は4月6日(木)~7月14日(金)の平日に入園できるパスポートで、通常大人 7,400円、中人 6,400円、小人 4,800円のところ、大人 6,400円、中人 5,500円、小人 4,100円で購入できるとのこと。いわゆる平日というアイドルタイムを活用するもので、行楽シーズンの混雑を緩和することでもある低迷が続く東京ディズニーリゾートであるが、2020年春にオープンする予定である「美女と野獣エリア(仮称)」などの新アトラクションまでのいわゆるつなぎ策である。

今まで活性化してなかったアイドルタイムの活用については業種が異なるため比較にはならないが、午後のアイドルタイムに「食べ放題」を実施した回転すしの「かっぱ寿司」がある。16年10月から緑色の「カッパ」でおなじみのロゴをやめ、皿を数枚重ねたロゴに変更。「脱カッパ」でイメージを刷新した。17年には「食べ放題」や「1皿50円」といったキャンペーンを実施してきた。「食べ放題」の時には流石の私も失敗すると指摘をしたが、既存店客数が前年同月比で18年2月まで28カ月連続で減少している。回転寿司市場は全体としては5%近く伸びており、スシロー、くら寿司、はま寿司各社独自性を追求し順調に伸ばしている中での経営である。

こうした各企業の取り組みを見て行くと各社固有の課題も見えてくる。勿論、競争市場下での課題解決である。以前、この競争をどう勝ち抜いて行くか、その「差」をどう創って行くかについて考えたことがあった。インテリア業界に一つの革命をもたらしたニトリのコンセプト「お値段以上のニトリ」とは何か、その「何か」について整理したことがあった。それは従来の価格差だけのデフレにおける「何か」ではなく、新しい「差」の創り方、デフレが常態化した今日の「差」の創り方として次の5つの整理をした。

●業態としての「差」;ex「俺のフレンチ」
●メニューとしての「差」;ex「よもだそば」、「くら寿司」
●価格における「差」;ex「味奈登庵(みなとあん)」、「いわゆる激安店」
●話題性などコミュニケーションの「差」;ex「迷い店」、「狭小店」、「遠い店」、「まさか店」
●人による「差」;ex「看板娘」、「名物オヤジ」

詳しくは未来塾「差分が生み出す第3の世界」を今一度見ていただきたいが、「差分」という概念を持ち出したのは、「差」によって生まれる、顧客の脳が創りあげる「お値段以上の何か」「新しい何か」「第三の世界」をめぐる競争のことである。こうした視点から今回の各社の需要創造の動きを見て行くとより鮮明なものになる。
例えば、吉野家の場合は上記の整理から見て行くと、話題性などコミュニケーションの「差」による集客効果が極めて大きかったということとなる。復活したマクドナルドの場合は、メニュー(夕食)としての「差」づくりであり、すき家も同様の戦略となる。セブンイレブンもこのカテゴリーの中に入るが、「朝セブン」のセットをパンからサンドイッチへと連続浸透させて行く試みで、朝需要の開発としてはマーケットリーダー、つまり王道の進め方と言えよう。こうした整理の根底には勿論のこと「お得」があるのだが、価格における「差」づくりだけでは顧客の選択肢には入らないということはかっぱ寿司の失敗例を見れば明確であろう。なお、快進撃を続けるUSJと比較し集客面で低迷が続く東京ディズニーリゾートであるが、アイドルタイムという経営ロスの改善を行うということで2020年の新アトラクション待ちということであろう。また、経営内容の改善という大きなくくりで見れば、値上げをした松屋も同様となる。
顧客に対する「差」づくりは、100社100様という異なる取り組み方が生まれ、これも常態化したデフレ時代の特徴の一つとなっている。(続く)

あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:24│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
「差」が見えた今年の春 
    コメント(0)