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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年03月11日

都心からわずか10数分の秘境駅 

ヒット商品応援団日記No705(毎週更新) 2018.3.11.

都心からわずか10数分の秘境駅 

新しい消費物語始まる」と元旦のブログに書いた。「その新しさ」とは”モノ充足から離れた成熟時代の「いいね文化」「共感物語」”という新しさで、SNS、特に Facebookやインスタグラムによるもので、その新しい物語の拡散スピードは極めて早く、しかも広く到達する。こうした傾向は情報の時代の特徴でもあるのだが、1990年代後半に多発した「ブーム」とは異なるものとなっている。その理由は周知のインターネットによるものである。

ところでその拡散世界は「商品」は言うに及ばず、大きく言えば「人物」から「自然」「歴史・文化」更には「出来事」、つまりインターネットに載るものであれば全てが拡散の対象となる。渋谷のスクランブル交差点からピコ太郎まであらゆるものが拡散する時代である。勿論、そこにはユーチューバーや炎上商法という「逆手」にとったものまで現れている。米国の調査では「フェイクニュース」ほど拡散スピードは早く、しかも広がる対象も広いことがわかっている。その根底には、いまだかって出会ったことのない世界への興味関心であって、一言で言えば「未知」ということになる。フェイクニュースも今までの常識とは異なる未知の情報ということだ。私の言葉でいうならば、新しい、面白い、珍しい世界となる。そして、これも持論ではあるが、未知は大通りではなく横丁路地裏にあると。

さて冒頭の写真を見てどう感じられたであろうか。JR鶴見線の国道駅の写真で、都心からわずか10数分で体感できる秘境駅である。廃線が相次ぐローカル線の秘境駅が鉄道フアンのみならず、TV放映され人気の観光スポットになっている。これも「未知」を面白がる世界の一つである。鶴見線は鉄道オタクには知られた鉄道路線である。その理由であるが、鶴見線は首都圏にあって秘境駅と呼ばれるように歴史遺構レトロラインとして現存している。この鶴見線が走るエリアは京浜工業地帯誕生の地であり、日本の工業化の痕跡が今なお残っている。現在は路線沿線の工場群に働く人達の通勤路線となっているが、昼間の利用客は極めて少なく、秘境駅と呼ばれる駅がほとんどとなっている。こうした歴史を体感できる良きレトロラインでもある。

都心からわずか10数分の秘境駅 鶴見駅から一つ目の国道駅はいわゆる無人駅となっている。駅高架下の通りは昭和初期の風情が漂う空間ではある。ちなみに古いデータであるが2008年度の1日平均乗車人員は1,539人である。こうした空間から、黒澤明作品『野良犬』をはじめ、2007年の木村拓哉主演テレビドラマ『華麗なる一族』最終話など、しばしば映画・ドラマのロケ地として使用されている。
高架下空間が異様なムードを醸し出す駅として、紹介されることもある。高架下通路は約50メートルで、居酒屋が一軒営業しているが、他は無人の住居と店舗跡となっている。

実は全てではないが、こうした未知はどこにあるのかを探るには、1980年代までは「オピニオンリーダー」という存在からの情報であったが、今やその役割は「オタク」に代わった。勿論、オタクとは特定分野に人一倍思い入れがあり、こだわる人物を指すのだが、その分野はそれまでコミック・アニメから極めて広い世界へと広がっている。20数年前までは奇人変人と言われてきたが、現在は「その道の専門家」としてSNSなどでは有名人扱いとなっている。最近は落ち着いてきたが、ブログの浸透とともに、例えば「ラーメン食べ歩き」から始まり「ラーメン二郎の食べ歩き」になり、地方の「ご当地ラーメン食べ歩き」へとどんどん進化している。今までは美しい景観写真はプロカメラマン専用の世界であったが、例えばインスタグラムの浸透によって、夕日を背景に友人たちがモデルを務めた写真を撮る、一種の「自撮り」が至る所で見られるようになった。これも「自撮り」という自分表現の進化であろう。つまり、以前は横丁路地裏の存在がいきなり表通りになったようなものである。結果、「いきなり観光地」になる時代である。そして、このオタクの一人が訪日外国人であるということも指摘しておきたい。
この「いきなり」の後に観光地だけでなく、飲食店やメニュー、あるいは裏通りであったり、趣味から始めた手作りショップであったり、小さな村の昔ながらの祭りや行事ですら、興味関心事であれば世界中からいきなり人が集まる、そんな時代になったということだ。

ところでこのブログを書いている最中に、朝鮮半島の非核化という課題に対し米中対話が実現するかどうかという大きなニュースが飛び込んできた。報道によれば案の定米朝対話が水面下で行われてきていたとのことで、「いきなり」発表もそうした背景からであることがわかった。国際関係の専門家ではないのでコメントする立場にはないが、起こった現象には必ずその「理由」「原因」があるということだ。更には社会から注目されていた佐川国税庁長官が辞任し、森友学園への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針がわかってきた。これも文書の書き換えの裏側、その理由も次第にわかってくるであろう。
敢えてこんな「いきなり」を例に挙げたのも、そこに至る小さな変化は必ず起きているということである。古くはガルブレイスが「不確実性の時代」を書いたのは第一次世界大戦」「恐慌」を転換点に大きく変わって行く時代を不確実な時代と呼んだのだが、私は小さな単位ではあるが、戦後の社会経済の転換点はバブル崩壊であると指摘をしてきた。ガルブレイスの言葉を借りれば、不確実ではあるがそれは「確実」なこともあったということでもある。皮肉でもなんでもなく、立ち止まり、少し引いた目で見ることによって、起こった事象の理由を読み解いて決断することはできる。私の場合、10年近く街歩きをしているが、少なくとも「街」に変化が現れるということは、「確実」に近づくとことであった。例えば、話題となった行列店も訪れるコとはあるが、1ヶ月後、3ヶ月後、そして1年後もまた観察することにしている。つまり、「いきなり」の理由は何かを明らかにすることであった。1ヶ月後とはコンセプト・話題力はどの程度なのか、3ヶ月後とは手直しした結果はどう出ているか、そして、1年後はビジネスとしてこれからどうすべきか、というビジネスの確実性を追求していく方法である。

都心からわずか10数分の秘境駅 さて、冒頭の写真、国道駅・JR鶴見線という戦前から京浜工業地帯が今尚歴史遺構として現存している面白さである。ある意味、時代の裏側を体感する面白さである。鶴見線で使われる列車は年代物で鉄道オタクだけのものにしておくのではなく、工場群の通勤列車のためほとんどの駅は無人駅である。また、海芝浦駅に向かう支線のほとんどが、東芝京浜事業所の敷地内を走る。ホームは京浜運河に面しており、海に一番近い駅と言われている。対岸には東京ガス扇島LNG基地、首都高速湾岸線の鶴見つばさ橋などがある。こんな「裏側」も観光地になる可能性があるということだ。秘境駅を走ることから1日に数本という支線もあるので事前に十分列車ダイヤを調べて行くことをお勧めする。こうした眼を持って時代の変化を見ていくことによって、「いきなり」もまた異なる見え方ができるということである。(続く)



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Posted by ヒット商品応援団 at 13:22│Comments(0)新市場創造
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