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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2017年02月25日

衝突する仲間幻想 

ヒット商品応援団日記No671(毎週更新) 2017.2.25.

この1ヶ月間忙しさもあってブログの更新が出来なかったが、トランプ米国をはじめ国内でも築地市場の豊洲移転問題ををはじめとした多くの社会現象が立て続けに起こってきた。
昨年のブログでもオバマ時代の政策の真逆を進めるトランプ大統領(当時候補)は想定通り就任後大統領令を次々と発行し、それに反発するデモが米国以外の欧州においても行われていると報じられた。こうした一連のニュースの中でトランプ大統領の記者会見で大手メディアに対し「フェイク(偽)ニュース」であるとのコメントを連発していた。この「フェイクニュース」という言葉は「ポピュリズム」と共に今年度の流行語大賞にノミネートされても良いほどの時代のキーワードとなっている。日本とは少しメディア事情が違うようだが、米国民の多くはCNNテレビやニューヨークタイムスといった大手既存メディアから情報を入手するのではなく、その多くはネットメディア・SNSにある多くの情報(ニュース)サイトからと言われている。大手既成メディアは真実を語って来なかったという理由で、真実はネットメディア・SNSにこそあるというのがトランプ支持者の言い分であるとも報じられている。しかも、ツイッターのように140文字という短文ニュースはその短さもあって、人から人へと物の見事に拡散していく。

誰が言ったかわからない、発信者不明の噂やデマは日本においてもいくらでもあった。最近では昨年の熊本地震の時のライオンが動物園から逃げ出したというデマ情報がツイッターに投稿されたことがあった。そんな不安による問い合わせが100件を超えたと言われ、社会的影響から後に発信者が特定され警察に捕まったのだが。このような発信者不明の拡散メディアの時代とは、発信者と情報とが分離し、情報だけが一人歩きする時代のことである。
実は以前流行語大賞にノミネートされた言葉に「KY・空気が読めない」というキーワードがあった。ちなみにそれまでの流行語大賞は、
2004年度/「チョー気持ちいい」、「気合だー」
2005年度/「小泉劇場」、「想定内(外)」
2006年度/「イナバウアー」、「品格」
それまでの流行語はあっと驚く感嘆詞、劇場型、サプライズ的な過剰な世界を象徴したキーワードであった。しかし、KYは言葉になかなか表しにくい微妙な世界、見えざる世界、こうした世界を感じ取ることが必要な時代に生きている、そんな時代の最初の流行語であった。善と悪、YesとNo、好きと嫌い、美しいと醜い、こうした分かりやすさだけを追い求めた二元論的世界、デジタル世界では見えてこない世界を「空気」と呼んだのだと思う。
元々中高校生が日常的に「分かっていないヤツ」という意味で使っていた言葉である。面白いことに、翌年ローマ字式略語約400語を収めたミニ辞典「KY式日本語」が発売された。2007年の流行語大賞の一つに選ばれたKY(空気が読めない)も数年前から高校生の仲間言葉として使われていたが、出版元に寄せられた新語募集ではこのローマ字式略語が上位を占め、発売に踏み切ったとのことであった。ちなみに1位はKY、上位にはJK(女子高生)やHK(話変わるけど)といった言葉遊びが中心となっている。面白い言葉では、ATM、銀行の自動支払機ではなく(アホな父ちゃんもういらへん)の略語やCB、コールバックや転換社債ではなく(超微妙)の略語で若者が多用する言葉らしさに溢れている。

ところでKY語の発生はコミュニケーションスピードを上げるために言葉を圧縮・簡略化してきたことによる。既に死語となったドッグイヤーを更に上回るスピードであらゆるものが動く時代に即したコミュニケーションスタイルである。特に、スマホのメールなどで使われており、絵文字などもこうした使われ方と同様である。こうしたコミュニケーションは理解を促し、理解を得ることにあるのではない。「返信」を相互に繰り返すだけであると指摘する専門家もいる。
もう一つの背景が家庭崩壊、学校崩壊、コミュニティ崩壊といった社会の単位の崩壊である。つまり、バラバラになって関係性を失った「個」同士が「聞き手」を欲求する。つながっているという「感覚」、「仲間幻想」を保持したいということからであろう。裏返せば、仲間幻想を成立させるためにも「外側」に異なる世界の人間を必要とし、その延長線上には衝突という「いじめ」がある。これは中高生ばかりか、大人のビジネス社会でも同様に起こっている。誰がをいじめることによって、「仲間幻想」を維持するということである。

トランプ大統領が候補から大統領になってもなお、ツイッターによるコミュニケーションを取るのは単なるアンチ大手既成メディアだからだけではない。昨年トランプ大統領の戦略について書いたことがあったが、ヒラリー候補に勝つ唯一のチャンスがあるとすれば中西部の鉄鋼や自動車といった廃れた製造業の白人労働者に直接「声」をかけることだと。つまり、職場が崩壊し、コミュニティが崩壊したバラバラとなった労働者に、「アメリカファースト」という「仲間幻想」を呼びかけたということである。そして、この仲間幻想を継続させていくには、外側に敵(大手既存メディア)を作り戦うこと、しかもツイッターというネットメディアを使ってである。そして、この「つぶやき」を心待ちにしているのが陽があたることのなかったトランプ支持者である。政権を維持していくには不可欠なコミュニケーションということだ。勿論、アンチトランプを掲げる移民を中心としたリベラルな人たちもまた「移民国家アメリカ」という仲間幻想を持ってのことは言うまでもないことである。当然、分断国家米国はこれからもより亀裂が先鋭化していくこととなる。これが米国の実態である。

さてこうしたコミュニケーションの時代をどう考えれば良いのかであるが、まずフェイクニュースという嘘情報の対応だが、嘘は論外であるが不確かな情報、例えば最近ではDeNAのまとめ医学サイト「WELQ(ウェルク)」における不正確な記事や著作権無視の転用である。問題指摘のきっかけは、問題記事が転職サイトの広告に誘導するものであり、「クリック」というお金=広告至上主義のためのものであったことが判明したことによってであった。
インターネットの普及と共に、その混沌とした情報に向き合うために盛んに「情報リテラシー」が叫ばれてきた。情報を使う能力、その前にその情報が正確であるか、正しいものであるかの慧眼、願力を必要とする時代認識である。ある意味、残念だが騙されたという「痛い思い」を通じてしか成長できない時代にいるということだ。そして、「痛さ」から立ち上がるには、古臭い言い方になるが「他者」によってであろう。それこそKY、見えない世界を通じての優しさである。優しさの向こう側には他者への寛容さがある。トランプ大統領が引き起こした様々な亀裂は今まで見えなかっただけで、実は地中深く存在していたということである。

ところで亀裂が生まれる根源となっている仲間幻想の垣根が崩れるのは、敵という外側の人間による「聞く」という行為によってであると指摘されている。実は精神科医の基礎を作ったジャック・ラカンは患者の「理解してもらい、認めてもらいたい」という希望を「丁寧に聞くこと」が病を治すことだと言っている。トランプ大統領に代わる「聞き手」が求められているということである。それは競争相手であった民主党ヒラリー陣営を指しているということではない。まずは大手既成メディア自身が「つぶやき」を心待ちしている人たちにまずは「聞く」ことから始めるということだ。
KY語世代を日本語を理解していない、何も分かっていないと嘆くのではなく、ビジネス現場でも社会生活を送る上でも、まず「聞き手」に徹することから始めている筈である。「KY式日本語」という文脈(言葉の土俵)に沿って対話していくことも、「大人」には必要な時代だと思う。米国もまたそうあって欲しいということである。
こうした「聞く」ことを繰り返していくことを通じて、仲間幻想の垣根が崩れ、そして「嘘」か否かがわかってくるはずである。「事実」は立場や視点によって異なるものである。場合によっては真逆のことすらあることは、多くの歴史認識の違いとなって現れていることを知っている。性急に「事実」は何かを迫るのではなく、時間がかかってもまず「聞く」ことから始めなければならない。これが情報の時代の鉄則である。(続く)


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