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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年10月07日

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) 

ヒット商品応援団日記No659(毎週更新) 2016.10.7.

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) 




パラダイム転換から学ぶ


戦後の物不足・欠乏の時代を終え、1980年代以降生きるための食から健康のための食へと大きくパラダイムの転換が起きてきた。そして、その質的変化を表したのが表紙のカロリー摂取量のグラフで、終戦後間もない頃と比較し、経済的豊かさにも関わらず、新たな豊かさを象徴するかのようにカロリー摂取量は減少する。そして、スーパーの食品売り場には、糖質0、カロリーオフ、トクホ(特定保健用食品 )といった表示商品が棚に並んでいる。過剰な情報時代というが、「健康」もまた過剰な時代となり、どんな「健康」を選択したら良いのかわからない時代を迎えている。
一方、物の豊かさの陰には新たな問題も生まれている。肥満による成人病という現代病から始まり、過食や拒食といった摂食障害という病も10~20代の女性の間で出てきている。ストレス社会ならではの病であるが、その発症のきっかけがダイエットであると専門家は指摘する。あるいは無菌社会と呼ぶ専門家もいるが、アトピーやアレルギーといった免疫疾患も生まれてきている。免疫力の低下とは、身体の持つ自然力・生命力の低下でもある。このパラダイムは今後どんな方向へと向かうのか、仮説を含め考えてみたい。

江戸時代にもあった飽食の是正

前回の未来塾「江戸と京」では、その江戸という町の都市化の構造を京との関係の中で考えてみた。そして、江戸時代における生活は1日の食事が2回から3回になり、屋台のような外食産業が栄え、しかも24時間化も進展していた。元禄時代をバブル期と呼ぶ専門家もいるが、今日の「健康・からだ・食」を彷彿とさせるような現象も起きていた。

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) 例えば、当時は既に大食いコンテストも行われ、江戸の豊かさの象徴として「江戸に行けば銀シャリが食べられる」と言われ、幕府の人返し令にもかかわらず、多くの人が地方から江戸へと向かった。当時は1日の食事量としては白米5合ほど食べられていたと言われている。しかも、豆腐や野菜、魚も食べられていたが、その量は極めて少なく、一汁一菜と言われているように、主食の白米がほとんどであった。結果、江戸の武士階級を中心に「脚気患者」が増加する。ビタミンB1の欠乏症による末梢神経障害であるが、「江戸わずらい」と呼ばれていた。
ある意味現代における飽食生活と同じで、「健康・からだ・食」に対し警鐘を鳴らし啓蒙活動を行ったのが『養生訓』を書いた儒学者の貝原益軒であった。長寿を全うするための身体の養生だけでなく、精神の養生も説いているところに特徴があり、今日の振子消費のように揺れ動く心理状況にも的確な示唆をしてくれている。貝原益軒は内なる4つの欲望を抑え、我慢することによって長寿が得られると説いている。その4つであるが、ウイキペディアによれば
1、あれこれ食べてみたい食欲
2、色欲
3、むやみに眠りたがる欲
4、徒らに喋りたがる欲
江戸時代は乳幼児の死亡率が高く、今日の平均寿命と単純比較はできないが、一般的には50歳程度と言われている。しかし、実際には30~40歳ほどではないかという説もある。ちなみに、自ら「養生訓」を実践した貝原益軒は85歳で亡くなったと言われている。


沖縄料理から学ぶ;「ルーツに遡る」

戦後米軍統治下にあって、SPAMに代表される加工肉を日常的に食べてきた沖縄の人たち、特に男性については肥満度全国No1という事実によって「健康・からだ・食」という問題の所在は明らかになっている。そうした事実を踏まえ、県も盛んに是正策、長野県などをモデルに幾つかの施策、職場健診などを行っているようだ。
実は沖縄の食文化を調べていくと分かるが、一時期までの長寿の島である所以はその歴史、伝統料理に残されている。”美味しゅうございます”という決めセリフで知られている料理ジャーナリストである故岸朝子さんは沖縄生まれであった。その岸さんは沖縄の中でも一番の長寿村であるやんばるの森に囲まれた大宜味村の元村長との対談の中で、「私の子供の頃は食べるものも少なく, 生活が大変だった。飽食しない,食べ過ぎないのがいいということでしょう」と。まさに養生訓の言葉通りである。
沖縄には命草(ぬちぐさ)という言葉がある。語の意味そのもので命を支え育む草のことで、沖縄にはどこにでもある野草のことである。その代表植物が長命草で、沖縄ではよく知られたセリ科の植物である。

そして、その沖縄の歴史であるが、琉球王朝は,中国から来た冊封使を接待するために福建省へ料理人を派遣して,中国料理を勉強させたと言われている。更には島津藩の支配が始まると,日本の役人を接待するために,鹿児島へ料理人を派遣して,日本料理を勉強させる。 中国や日本の料理は,始めは接待料理であったが,次第に庶民の間に広がって,沖縄料理にバリエーションが増えていく。

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) 沖縄という島の地政学上からであると思うが、実はインドネシアからは,「ゴーヤーチャンプルー」で有名なチャンプルー(混ぜ合わせる)料理も伝わって来ている。沖縄にはよく食べる家庭料理の一つにヒラヤーチーがあるが、これも韓国のチヂミが源流だと考えられている。
 このように沖縄の料理は,昔から伝えられていた郷土料理に中国,日本,朝鮮,東南アジアのいろいろな国の料理が融合して 成立した、これが沖縄料理の歴史である。
私は日本文化を東京渋谷のスクランブル交差点のようだと指摘をしたが、そうした東京以外の沖縄もまさに東アジア~東南アジアの海道の交差点となっている。「ルーツに遡る」ならばチャンプルー(融合)こそが健康長寿の源であるということである。
岸朝子さんが整理した沖縄長寿食の特徴は以下となっている。
(1)良質のタンパク質
(2)長寿を支える緑黄色野菜
(3)サツマイモでバランスのとれた食生活
(4)ミネラル豊富な海藻類
(5)塩分を抑える調理法
(6)生き甲斐のある暮らし

上記の特徴は沖縄料理のどんなところにその工夫があるのか、いくらでも書けるがこのブログは料理レシピのブログではないので割愛する。実はこうした特徴は長野県をはじめ地方の郷土食の多くが有している特徴である。全国の学校給食においても地産地消・食育を含め郷土食を取り入れ始めている。更には、京野菜や加賀野菜だけでなく、地方に埋もれた伝統野菜の復活も始まっている。こうした地方に埋もれた、あるいは忘れられ過去となってしまった郷土料理の復活こそが待たれている。但し、過去をそのまま復活させることではなく、「今」を味わうことのできる郷土料理であることは言うまでもない。地方の生活に今なお残されている伝統料理、京都で言うならば「おばんざい料理」に次なる可能性の芽があるということである。

健康におけるグローバリズムとローカリズム

2016年世界保健機関(WHO)が発表した世界保健統計2016によると、世界一の長寿国は前年同様日本で男女平均が83.7歳だった。長寿大国ということはある意味裾野の広い食を中心とした健康産業大国ということである。サブカルチャーのクールジャパンと共に、長寿の国のライフスタイルはこれからの輸出産業の中心となりえる。その第1番目が「日本食」である。ある意味日本型LOHASを世界へと輸出するということだ。
少子高齢化をマイナス面でしかとらえられない発想の貧困さには辟易してしまうが、ポジティブに見ていく視座を持てば宝の山となる。日本の場合、ips細胞といった先端再生医療から食生活まで、世界における固有な健康資源を保有している。今までは若い世代を中心に海外セレブの健康法などトレンドとして取り入れてきた。しかし、例えば従来からの発想であるアンチエイジング=若返りという発想から、老いる=成熟という美しさへの発想へと、実はシニア生活の転換が始まっている。勿論、若い世代において若返り・美容についてはこれからもトレンドとして取り入れていくと思うが、老年を迎える団塊世代にとっても健美同源、つまり年相応の健康である美しさへと価値観は変わっていく。そんな事例ではないが、私の住む世田谷砧には大きな公園があり、老若男女がジョギングしている。遠くから見る限り年齢は全く識別できない。それはファッションもさることながら、走るスピードやスタイルによっても識別できないということである。いかに元気な若々しいシニアが多いかである。
独居老人の孤独死といった負の側面もあるが、長寿の国のライフスタイルを輸出していくといった発想、欧米諸国が既に認識している日本食を健康ダイエット食として売っていく、そうした試みが必要な時を迎えているということだ。
台湾には台湾素食という菜食主義料理がある。日本における精進料理に近いもので「もどき料理」もあるようだ。日本ではあまり注目はされていないが、着目すべきは「素」にある。素という、そのまま、自然体であること、そんなライフスタイルこそが健康の源である。そして、その素はまずは郷土料理に残されている。そんなローカルフードこそグローバル市場を開拓する新たな戦略ツールとなり得る。

ところで以前「消費都市TOKYO」というテーマで、市場の特性について考えたことがあった。結論からいうと、東京はグローバルなTOKYOという市場と地球市場から見ればローカルな東京という市場の2つの市場から成り立っている「グローカル市場」だ。つまり、TOKYOという市場を狙うことはそのままグローバル市場につながっている。また、国内市場という視点に立つと東京という都市市場の2つの側面、前回は江戸と京についてその構図を明らかにしたが、まさに混在したスクランブル交差点市場となっている。どんな市場を狙うのか、誰を顧客とするのかが最も重要なテーマとなっている。東京は一つの地球都市国家として見ていくことが必要で、そこには都市と地方が混在しているということだ。別の視点で見れば、グローバル市場への玄関口でもあり、世界へ向けた一大実験市場、テストの場でもある。例えば、ヒット商品という視点に立てば、一昔前にはルイヴィトンがパリ観光のお土産であったように、東京でのお土産あるいは記念品といったことが大きなビジネスチャンスとなるであろう。
訪日外国人、特に中国人観光客の家電製品に見られた爆買いは終わり、ドラッグストアに化粧品や目薬などを買い求める訪日外国人が増えている。そして、富士山観光は一巡し、富士山登山や花見や花火に興味関心は移ってきている。食についてもラーメンと共に、しゃぶしゃぶの食べ放題といった日本人の実生活にどんどん入り込んできた。つまり、日本人のライフスタイルそのものに興味関心は移っているということである。ビジネスチャンスが変化していることに気づかないのが日本人ということだ。


過剰情報の時代にあって

過剰な情報の時代にあって、どう取捨選択したら良いのか誰もが考えざるをえない時代にいる。2008年の直木賞に天童荒太の「悼む人」が選ばれた。読まれた方も多いと思うが、マスメディアから流される過剰な情報の中で「何」が自分にとって必要で、大切な情報なのか、その疑念から「悼む人」が書かれたという。亡くなった人を訪ね、その死の扱われ方を聞くことによって自身の心変わりをテーマとした小説である。生前どのように生き切っていたかを探し求めた小説であるが、情報の持つ意味合いを考えさせる小説である。マスメディアから流される情報、いや流されない情報の裏側で「何」が起こっていたのかを気づかせてくれた小説であるが、実は生活者がこうした裏にある事実へと気づき手に入れ始めた時代と言えよう。裏にある何か、それは自らの想像力によってであるが、今や過剰な情報が行き交う時代であるが故に、情報の裏にある何かへと想像に向かわさせる。
どんな人が、どんな場所で、いつどのように作られているのか、こうした産地見学や自ら無農薬による菜園作りが進んでいるのもこうした想像の故である。圧倒的に足りないのは実体験、追体験、そのリアリティの時代にいるという事実である。

同様にダイエットにおいても、ライザップ(RIZAP)のように「結果にコミットした徹底サポート」と言った特徴に人気が集まった。如何に「結果」の得られないダイエットが多かったかである。実績として2016年現在、2ヶ月という短期間で99%のお客様がライザップでダイエットに成功していると。ただし、リアルな結果を得るには、入会金は5万円、コース料金で29万8千円とかなり高額である。
商品に対し、サービスに対し、更には企業に対し、顧客が想像力を働かせる時、つまりどれだけリアルな結果を提供できるか、実質を約束出来るか、それを可能とする本当のプロ、専門家しか生き残ることはできないということである。既に情報だけのイメージだけの競争は終わっているということである。私たちがそのことに思い至らなければ、消費の輪郭は明らかにはならないということである。

自己解決型健康法の時代へ

ひと頃ブームとなっていたプチ整形の韓国旅行、南のリゾート地でのエステ三昧、こうしたメニューが話題に上ることは少なくなった。収入が増えないデフレマインドが充満した時代であると言えばそうであるが、健康も、美容も、過剰であったことを削ぎ落とし、「ルーツに遡る」つまり普通に戻ったということだ。

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) かなり前になるが日経MJに「フットパス」の記事が載っていた。森や田園、古い街並を散策する英国発祥のリフレッシュ法で愛好家が増えているとある。10年ほど前にベストセラーとなった「えんぴつで奥の細道」の、その書を担当された大迫閑歩さんの言葉を思い出す。”紀行文を読む行為が闊歩することだとしたら、書くとは路傍の花を見ながら道草を食うようなもの”という言葉である。大迫閑歩さん風にいうなら、フットパスは心と身体の道草、お金のかからない健康法であろう。
あるいは、私の友人もそうであるが、日常の健康法として、通勤時一駅分を歩くビジネスマンが増加しており、「一駅族」と呼ばれている。10数年前にシニアのハイキングブームからウオーキングへ、最近ではフットパスや一駅族まで、自分で歩く健康法はお金をかけない方法である。その根底にある価値観は、激変する環境への自己防衛、自活、自助、自己解決へと向かっている潮流の中にあるということだ。

冒頭の摂取カロリーのグラフではないが、日常の食事をバランスよく摂取カロリーを控える食事メニューの提供に注目が集まったのがタニタ食堂であった。1回の食事はほぼ500kcalに抑えられている。東京丸の内のビルの地下にある食堂である。価格もリーズナルブルで近隣のビジネスマンに好評で、以降他の地域にも同様のタニタ食堂が出店している。
また、鹿児島にある鹿屋体育大学は、皇居をジョギングするアスリート向けの食堂を東京竹橋に作ったのだが、これもアスリートだけでなく近隣のビジネスマンの人気となり、いかに日々のカロリー管理を含めた健康メニューが大切であると認識されているかがわかる。
その日々の食事メニューを提供しているcookpadではライザップではないが、「ただしく食べて痩せる」をポリシーに専属のパーソナル・ダイエットトレーナーによる有料カウンセリングが行われている。

そして、自己解決型健康に欠かせないのが「今」という時代ならではのインターネットを活用した「モバイルヘルスケア」であろう。今や万歩計のような記録だけでなく、摂取した食べ物のカロリーなど。そうした記録をもとに健康維持に役立つトレーニングメニューの提供と管理などそのアプリは多岐にわたっている。モバイルアプリというとゲームを思い浮かべるが、実は数年先には世界の市場規模としては350億ドルを超えると言われている。アプリのプラットフォームはアップルのiOSとグーグルのandroidでそのシェアは75%。そのビジネスモデルは現在の有料アプリからインターネットサイトと同じように広告によって収益を上げる無料化へと進展していくと推測されている。但し、「ポケモンGO!」によってゲームアプリが注目されているが、ここ数年こうしたゲームアプリの供給が過剰になり、ダウンロード数は横ばい状況となっている。こうした中、健康アプリはまだまだ成長の可能性が見込まれる。健康長寿大国である日本こそ独自なアプリ開発に集中すべきであろう。

また自己解決法としてブームとなっているのが糖質ダイエットである。痩せるという結果が出るからといって糖質ダイエットに傾倒する若い女性が多くなっている。炭水化物を極端に取らない自己流は危険であると多くの医師が警鐘を鳴らしている。痩せるという見た目の結果からはわからない隠れメタボ、中性脂肪は逆に増えてしまう。あるいは脳の働きが悪くなり、更にだるい体調の日が続く、とも言われている。命を育む体は、ファッションのようにブームが終われば着なくて済むわけにはいかない。自己解決法にも落とし穴があるということだ。

成熟時代の新たな概念、ライフデザイン

一定の物質的豊かさを手に入れたが、精神的豊かさはどうかという課題もあるが、それは個人化社会における自立した「個」が未だ成長段階にあることから、一概に結論には至らない。これから先も常に成長段階ということになるかと思うが、成熟社会の入り口に来ていることだけは間違いない。しかし、成熟とは何か、100人に聞けば100通りの答えがあるので、誰もこれだと決めつけることはできない。
そうした大仰に構えた考えとしての「成熟」ではなく、もう少し狭い消費生活という視座に立てば、人間の持つ欲望を自らコントロールできる時代に向かっている。

ところでライフスタイルという言葉がある。私もよく使う言葉であるが、生活の様式・営み方を指し示すことだが、実はその裏側には多様な価値観が潜んでおり、時として「消費行動」を左右する。。その多様な価値観の中でも生命観や人生観といった個人の生き方が生活に占めることが年々大きくなった感がしてならない。食であれば、生きるために必要な食から楽しむ食への転換が良き事例である。その「楽しむ」という欲をはじめ、もう少し意志的な考えに基づいた欲もある。豊かさとはこうした欲の変化の多様性が叶う時代になったということであろう。
ライフスタイルという概念だけでなく、多様な「欲」、1980年代以降社会の表舞台に出てきた「欲」を包含した概念が必要となっている。私はその概念を「ライフデザイン」と呼び、次のような図解で表現してきた。
次の図解は生活全般についてであるが、今までの生活・ライフスタイルは「人生観」と「生命観」によって再編集されるという仮説である。この仮説の背景には市場が心理によって動く時代を迎えていることが最大の要因となっている。逆の言い方をするならば、心理が働くほど「豊かに」なったということである。

前述の「フットパス」などはシニア世代に人気となっているが、これもここまで生きてきたという道草人生観が強く出てきた行動である。また、シニア世代のジョギングもブームになっているが、そのスポーツウエアはカラフルというより派手な柄のウエアでこれも少女の如き衣装となっている。いつまでも若く少女でありたい、そんな心理がウエアにも表れているということである。こうした生活生命化市場と呼ぶにふさわしい市場、「生きていること」を感じさせてくれるような市場はこれからますます拡大していくであろう。

あるいは「パワーリング」というキーワードで言うとすれば、沖縄の長命草などを使った野草料理などはまさに生命活性食、元気食、パワーフーズと言えよう。今や若い女性の間では神社巡りなどのパワースポットブームとなっているが、沖縄の野草料理は一部ハーブとして使われているだけで、主菜として美味しく食べさせる工夫や店舗がほとんど無い。お手本とすべきはアリス・ウオータースの食育菜園のように、素材だけでなくメニューとしてレストランとしてやっていくような運動が必要であろう。こうした芽の一つが日本の場合は農家レストランであるが、まだまだ田舎料理レベルが多く、もう少しコンセプト的なメニュー業態、しかも日常業態を目指すべきである。

未来塾(25)「パラダイム転換から学ぶ」 健康時代の未来  (後半) 


心理市場を解く鍵、ライフデザイン

こうしたことは沖縄以外の地方に埋もれている食材・料理も同様である。東京には多くの地方のアンテナショップがあり、中にはレストランを併設させている店もある。しかし、アリスのようなコンセプト&テーマを持って運営しているアンテナショップは聞いたことがない。
私もアンテナショップをつくるプロジェクトに携わったことがあるが、現在のアンテナショップは単なる食材のPRやお土産的物産販売にとどまっている。これからは上記の図解にならって言うとすれば、生活の文化化、つまりその土地ならではの文化食を特徴とするようなコンセプトとなる。アンテナショップも個々の地域文化を楽しめるような場所への進化が必要な時期に来ている。

ところで上記図解に人生観とあるが、例えば前回の未来塾「回帰から見える未来」で書いたようにシニア世代では懐かしさもあって給食メニューを食べたいと思うことがある。しかし、こうした懐かしさは若い世代にとっても同様に持っている。そんな商品の一つが揚げパンでコンビニのヒット商品になったこともある。どちらも「思い出消費」であり、思い出時間の長短はあっても、当時を思い起こさせる人生観に裏付けされた心理市場のことである。
そして、ここでは生命観、人生観を新たな価値軸としたが、他にもシニア世代になれば終活としての死生観も生活編集の鍵となる。また、独身男女が30歳前後になれば恋愛観・結婚観も当然出てくる。こうした価値観が大きく消費生活をも変えていく。これが心理市場を構成する新たな生活編集の鍵となる。

今回は生きるための食から、楽しむ食へ、更には「健康・からだ・食」という多様な食へと大きくパラダイムの転換が進み、そうした豊かさから見える未来を考えてみた。市場は心理化してきたと言われてから10数年経つ。それまでは顧客心理は広告はじめとした情報によって動かすことができると考えられてきたが、生活者は多くの体験学習により一定の方向に向かっていることがわかってきた。ある意味、従来の欲望とは異なる欲望消費に向かっていることだけは確かである。例えば、環境に優しいエコライフもそうであるし、物をできる限り持たない断捨離という暮らし方もそうした新たな欲望の一つである。過剰なまでの「健康」に囲まれながら、こころはどこへ向かうか、それを見極めることこそがビジネスの鍵となる時代だ。(続く)

注) 「アリス・ウオータース」:世界にスローフードを普及させ、アメリカで最も予約が取れないと言われるレストラン「 シェ・パニース」のオーナーでもある。




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