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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年09月20日

低欲望社会のなかの消費牽引 

ヒット商品応援団日記No622(毎週更新) 2015.9.20.

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は9月16日,日本国債の格付けを従来の「AAマイナス」から,上から5番目の「Aプラス」に1段階引き下げたと発表し、日経をはじめとした新聞各紙が報じている。S&Pによれば安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果を疑問視し,「経済が今後2~3年で国債の信用力を好転させるまでに改善する可能性は低い」と判断したとの理由からであると。金融の専門家ではないので、日頃あまり関心をもたないが、気がかりなのはCDS(日本国債の保険料率)が上昇していることにある。周知のように、CDSは債券がデフォルト(債務不履行)した場合のいわば保険料。高くなれば、デフォルトの確率が上がっていると市場がみなしていることを示す。但し、長期金利はあまり上がってはいないので、心配はないと思うが、ギリシャの事態は他人事ではない。

ところで、今月末には発売されると思うが、電子書籍「未来の消滅都市論」のテーマとした「人口減少」という危機についてである。消費は勿論のこと、商店街も、街も、都市も少しづつ消滅へと向かっている現実がある。少し前に「空き家率」が戦後最大の13.5%になったと小さな話題になったが、安保法制や中国のバブル崩壊など多くの情報によってかき消されてしまった。しかし、本当の危機は「空き家率」の後ろにある人口減少問題、勿論少子高齢社会をはじめ、東京への人口集中・地方の更なる過疎化、いや無人化地帯の増大となって表われ始めている。結果、田畑ばかりか森林も荒れ、鳥獣被害が増大している現象となって表われている。多くの人にとって、できれば忘れたい出来事ばかりである。

こうした根本的な危機への対策については拙書「未来の消滅都市論」を是非読んでいただきたいが、今回は喫緊のテーマとなっている「消費」の低迷についてである。なぜ低迷しているのか、消費の中心となるべき若い世代、特に30代における低欲望実態にその答えの一つがある。実は4年半ほど前のブログ「2010年ヒット商品番付を読み解く 」の中で次のように書いたことがあった。

<欲望喪失世代というマーケット>
2010年度もそうであったが、ここ数年前頭程度のヒット商品は生まれるものの、上位にランクされるような若い世代向けのメガヒット商品はほとんどない。1960年代~70年代にかけて、資源を持たない日本はそれらを求め、また繊維製品や家電製品を売りに世界各国を飛び回っていた。そんな日本を見て各国からはエコノミック・アニマルと揶揄された。1960年代からの高度成長期のいざなぎ景気(1965年11月~1970年7月/57ヶ月間の年平均成長率11.5%)が象徴するのだが、3C(カラーTV、クーラー、車)と言われた一大消費ブームが起きた。そうした消費欲望の底にはモノへの渇望、生活のなかに多くの商品を充足させたいとした飢えの感覚があった。国家レベルでは資源への飢え、外貨への飢え、多くの飢えを満たすためにアニマルの如く動き回り、個人レベルにおいても同様であった。1980年代に入り、豊かさを感じた当時の若い世代(ポスト団塊世代)は消費の質的転換とも言うべき多くの消費ブームを創って来た。ファッションにおいてはDCブームを始め、モノ商品から情報型商品へと転換させる。情報がそうであるように、国との境、人種、男女、年齢、こうした境目を超えた行動的な商品が生まれた。その象徴例ではないが、こうした消費を牽引した女性達を漫画家中尊寺ゆっこは描き「オヤジギャル」と呼んだ。
さて、今や欲望むき出しのアニマル世代(under30)は草食世代と呼ばれ、肉食女子、女子会という消費牽引役の女性達は、境目を軽々と超えてしまう「オヤジギャル」の迫力には遠く及ばない。私が以前ネーミングしたのが「20歳の老人」であったが、達観、諦観、という言葉が似合う世代である。消費の現象面では「離れ世代」と呼べるであろう。TV離れ、車離れ、オシャレ離れ、海外旅行離れ、恋愛離れ、結婚離れ、・・・・・・執着する「何か」を持たない、欲望を喪失しているかのように見える世代である。唯一離さないのが携帯を始めとした「コミュニケーションツールや場」である。「新語・流行語大賞」のTOP10に入った「~なう」というツイッター用語に見られる常時接続世界もこの世代の特徴であるが、これも深い関係を結ぶための接続ではなく、私が「だよね世代」と名付けたように軽い相づちを打つようなそんな関係である。例えば、居酒屋にも行くが、酔うためではなく、人との関係を結ぶ軽いつきあいとしてである。だから、今や居酒屋のドリンクメニューの中心はノンアルコールドリンクになろうとしている。
断定はできないが、これからも前頭程度の消費は見せるものの、世代固有の世代文化を象徴するようなヒット商品は生まれてはこないであろう。』

今回の安保法制については学生を中心としたSEALDsに話題が集まったが、その上の世代を見ていくと5年という時を経ても欲望は喪失したままである。ヒット商品どころか政治をはじめ「離れ」現象は今なお続いている。かなり前になるが、under30の世代に対し、「二十歳の老人」というネーミングをつけたことがあった。そのネーミングの意味であるが、幼い頃から多くの事件、不動産神話から始まる各種の神話崩壊を目の当たりにし、また自らも情報体験してしまった、まるで大人びたというより、人生を終えた老人のような醒めた達観した目をもっているという意味である。そして、唯一の消費欲望の特徴であるが、常に誰かとつながっていたいとする「縁」世代である。生まれたとき既に核家族化し、夫婦共稼ぎは普通となり、家族単位は個単位という個人化社会の申し子世代である。彼らの上の世代が都市漂流したのに対し、かれら二十歳の老人の居場所は「縁」という関係となる。実は無縁社会を一番恐れているのがシニア世代ではなく二十歳の老人世代である。同級生といった縁をはじめSNSのようなソーシャルメディアまで幅広く縁を結ぶ世代ということである。結果、消費となると、ケータイ、スマホだけとなる。最近の家計調査報告においても、落ち続ける全体消費にあってその通信費用のシェアーは増え続けている。

さて消費を牽引すべきこの世代にとっての消費増税であるが、実質賃金が下がったままでの増税。雇用率は良くなってはいるものの、非正規は123万人増えたのに対し、正規が22万人減少している。賃金は年収1千万円以上の人が14万人増え、2百万円以下の人が20万人増えたために平均値が下がった。この中心にいるのが30代世代である。当然消費増税は更に消費を減退させることとなる。前々回のブログ「消費後退の夏」で書いたように、お盆の利用交通機関については新幹線利用が減り、レンタカー利用が増えたと。つまり、ガソリンが値下がりしたことによる利用増大で、別名コスパ世代とも言われるほどの低欲望消費世代である。勿論、それら消費が問題あるという意味ではない。逆に、時代を見事なくらい受け止め、映し出している賢明な消費であると言えなくはない。

極論ではあるが、日本の消費を支えているのはシニア世代と訪日外国人であると言っても過言ではない。まずその訪日外国人の消費であるが、観光庁によれば平成27年1-3月期の旅行消費額7,065億円を超えて、4-6月期は8,887億円となって、前年同期(4,870億円)比82.5%増加と過去最高であったと。中国における株バブル崩壊によってその消費も少しの翳りは見せるであろうが、訪日外国人市場の裾野はこれからも広がることは間違いない。10年ほど前アニメやコミックの聖地秋葉原を訪れる外国人オタクを、「バックパッカー」として一種蔑んだ見方をしていた。しかし、少子社会にあって売れない業界と言われていたランドセル市場が活性化してきている。その象徴であるが、今やランドセルは訪日外国人の日本土産の一つとなっている。何故なのか、それはコミックを通じてランドセルを知り、ニューファッション、クールジャパンの一つとして受け止められていることによる。日本人の「大人」だけが知らないだけで、日本の精神文化への興味関心は極めて高いということである。
そして、もう一つの消費市場が周知のシニア世代によるものである。ここ数年企業における内部留保は膨れ上がり、300兆円(うち半分が預金)となっている。一方、個人にとっても、その70%以上がシニア世代であるが、資産1600兆円まで増加し、そのうち半分が預金である。子や孫への資産相続や孫へのプレゼントといった消費の移転。更には、夫婦あるいは気の合う友人との旅行にお金を使うことになる。そこには消費増税という壁はない。温泉+グルメ旅行から始まり、地中海クルーズや今まで旅したこのない未知の国々への旅行。中国人観光客を「バク買い」と揶揄したが、シニア世代のそれも「バク旅行」「バク消費」と言えなくはない。預貯金だけでなく、持ち家比率90%以上という世界一資産を持つシニア世代は、最後の10年間で欲望を発揮するある意味贅沢三昧な消費を行う。アリとキリギリスではないが、70歳近くまではアリの如く慎ましく生活し、後の10年で一挙にキリギリスに変身する。そして、それでもなお死亡時には平均2000万円の預金を持っている。
訪日外国人市場、シニア市場、この2つの市場が今日の日本の景気を牽引している。日本の産業構造の転換が図られない現状にあって、当分の間はこの2つの市場が景気牽引の頼みとなっている。(続く)

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