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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年11月19日

劇場型政治の行方

ヒット商品応援団日記No538(毎週更新)   2012.11.19.

過剰情報の時代、しかもデフレ下にあって、一定の価格帯、より安いゾーン価格への消費集中が起き、消費増税はそうした集中を加速するであろうと前回のブログに書いた。そして、過剰情報とは、選択肢があるようでいて、実は「何」を「どう」選んで良いのか分からないということである。結果、どのような消費現象が起きるか、一極集中、一店集中、そうした集中は話題を呼び、それらが連鎖して行列が絶えない、という現象となって表れる。

このブログは消費を入り口とした生活者のライフスタイル変化をテーマとし、政治ブログではない。ただ、過剰情報時代の先駆けとして小泉元総理が演出し、自ら舞台へと上がったいわゆる「小泉劇場」というメディア化社会の特徴について書いたことがあった。今回の野田・安倍党首討論における衆院解散劇を見た時、そのサプライズ度は小さいものの、当時の郵政解散を思い出させた。過剰な情報が錯綜するなかでのコミュニケーションの在り方として、意表をついた強烈なインパクトのあるメッセージでないと伝わらない時代の到来であった。そして、私は当時(2005.8.13.)”小泉総理の「ブランド戦略」分析”というテーマで次のようにブログに書いた。

『今回の解散サプライズをより具体的にブランディングの視点で分析をしてみたいと思う。勿論、ブログにはおびただしい意見が出ているが(これはこれで今後の選挙メディアとして活用されていくものとは思うが)政治的にその良否、意見を述べるものではない。さて、「小泉ブランド」を代表する「何か」(=構造改革の旗手)という視点で分析すると、

戦略−1:本業、得意領域戦略/郵政民営化は勿論小泉総理にとってライフワークであり、得意としている領域での競争である。勝負をするならこのテーマでということになる。
戦略−2:一点突破戦略/構造改革は「分かりにくい」テーマである。この分かりにくさを郵政民営化を入り口→構造改革へとした図式のように一点=郵政民営化という特化戦略を採っている。
戦略−3:劇場舞台戦略/特に際立っているのがこの戦略である。総理経験者でこれほどメディアに取り上げられた人はいない。歴代の総理も多くの舞台に上がってはいるが小泉総理はテクニックではなく生来の「役者」としてである。パフォーマンスとして揶揄される場合もあるが、回数化していくに従い、いつしか、それも「小泉らしさ」を形成していく。ブランドとして言うならば、ある種の期待値を抱かせる訳である。』

過剰情報時代における期待値創造を目指すブランド戦略、コミュニケーション戦略の構図としては上記の通りである。小泉劇場と野田劇場の類似点を指摘する政治評論家やジャーナリストは上記「劇場舞台戦略」を踏まえたものだ。そして、こうした劇場型コミュニケーションが成立するのはTVメディアの露出を前提とする。
既成政党vs第三極という図式を創ってTVメディアに露出してきたのが日本維新の会の代表代行である橋下大阪市長である。最近ではその合流が話題となっている石原前都知事も劇場型舞台戦略を採る役者である。菅内閣の内閣官房参与にあの劇作家であり演出家でもある平田オリザさんが演出していたことは周知の通りである。多くの政党が政治家がこうした劇場型サプライズ戦略を採っているのも、過剰情報時代ならではのことである。特に今回は短期勝負の解散であり、この短期勝負を勝たない限り、次の政界再編へのチャンスはないと考えているからであろう。

さて、冒頭の文章に戻るが、『過剰情報とは、選択肢があるようでいて、実は「何」を「どう」選んで良いのか分からないということである。』消費と政治は次元の異なる選択ではあるが、投票行動は人気度ランキングと同じであると指摘する専門家もいる。消費の場合、せいぜいランキング上位1〜2位しか選択の幅はない。東京には東急系のコンビニ型ランキングショップがあるが、ランキングの下位グループ商品は売れ行きは良くないと言われている。書店のプロが選んだ本屋大賞も同様である。
今回の総選挙を戦う政党数は14となっている。過剰政党、政党デフレと言ったら少数政党の方々から叱責を受けると思うが、次の再編を見据えた少数党である。覚えきれない程の政党数にあって勝負を分けるのは、まずは情報量である。その情報量は常に「鮮度」を保たなければならない。橋下大阪市長率いる大阪維新の会が世論調査などの期待値が徐々に下がりつつあるなか、東京という最大メディア発信地にいる石原太陽の党が合流することは、こうした情報の鮮度維持をはかるための戦略である。

小売業においては1週間の間売り場がそのままであったら、この1週間売り場は死んでいたと指摘される。スーパーも百貨店も曜日単位、時間単位で売り場を変化させているのが普通である。いつも瑞々しく注目を惹きつける魅力的売り場づくりは基本だ。例えば、スーパーに買物に来る主婦の6〜7割は売り場を見て、その日の献立を決める。これが基本であるが、昨年秋ぐらいから、一部のオピニオン消費者の間で「塩麹」が注目され始めた。多くの商品はそれで終わる場合が多いのだが、塩麹の場合は塩麹を使ったメニュー・レシピとして雑誌メディアが取り上げ、そしてTVメディアも取り上げて一斉にマスプロダクト化していく。更にはファミレスや居酒屋といった飲食施設にまで塩麹鍋といったように浸透するに至る。そうした広がりは取り入れやすくしたメニュー化と美味しい健康と共にその効能によってである。
選挙での「広がり」という視点に立てば、メニュー化とは政策であり、効能とは当該政党が果たす力、実現力ということになる。第三極で言うならば、連携・合流に際し、橋下大阪市長がこだわっている政策一致こそが広がるパワーとなると考えているからであろう。そして、結果太陽の党が合流したのである。これはある意味必然である。しかし、今回の選挙の争点となる政策は消費増税、原発、TPP、地方分権等極めて多い。政党数も多く、しかもわずか1ヶ月程で選択投票という答えを出さなければならない。
その手法の是非ではなく、小泉劇場が成功したのは上記1及び2の戦略という単純明確で分かりやすかったからである。つまり、ワンフレーズポリテクスと揶揄されたが、極めて分かりやすいメッセージで、得意とする政策テーマ郵政民営化の是非を問う一点突破戦略であったからである。しかし、当時の情報環境から更に過剰で複雑な情報環境となっている。

こうした過剰情報の時代の選択は小泉劇場を経て、今回の政治劇場がスタートした。この10年間の学習体験はどのような結果となって表れてくるのであろうか。過剰情報時代の選択が難しい現実にあって、しかし賢明な選択を消費の面においては既に行動してきたと思う。
そして、政治に過剰な期待はしないといっても、政治は生活そのものであり、選択しなければならない。過剰情報を発信しているマスメディアは機会均等という原則に立ち、14党を次から次へとTV出演させる。そして、あたかも選択出来るようにと政党毎の政策比較表を作る。しかし、そうした表面だけの政策比較は、分かりにくく混乱させるだけである。この10年間学んできたことは、劇場型政治のシナリオや演出の奥にある実像にせまることであった。つまり、その実像とは、個人が信頼し得る個人としての知恵ある真摯な政治家、その目指す政策に投票することであろう。しかし、次から次へと過剰情報の波が押し寄せ、既に興味本位の刺客情報が飛び交い、極めて困難な情報環境にある。結果、残念ながら分からないまま選択することになるかもしれない。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:46│Comments(0)新市場創造
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