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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年03月15日

商品が消えた日

ヒット商品応援団日記No488(毎週更新)   2011.3.15.

はじめに、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、今なお寒さのなかで避難されている多くの方々にお見舞い申し上げたい。
私と東北との出会いであるが、20数年前ある得意先のテストマーケティングの対象エリアの一つが岩手や宮城であった。そのテスト実施を現場で見て回る為に、盛岡市や仙台市を中心に全県くまなく回ったのだが、その時の記憶が蘇ってきた。担当者の車に同乗し、盛岡から釜石にぬけて、三陸海岸を北上し、確か宮古や陸前高田まで行った記憶である。それらの街並が大津波に教われ、惨憺たる光景が報道されるにつけ、当時現場でお会いした多くの方々や案内してくれた仙台に住む担当者の安否が心配である。

ところで、このブログの目的は「消費傾向」の気づきやそこに見出されるマーケティングやマーチャンダイジングへの着眼点を書き記すことにある。今回は、東日本大震災によって、東京の生活者がどんな消費行動をとっているかを書いてみたい。
3月11日の午後2時46分、私自身も東京の自宅で大きな揺れを感じたのだが、震源地はどこであるかを確認するためにNHKのニュースを見たところ、東北の三陸沖のようであるとアナウンスされていた。まさか、あんなに遠くの東北が震源地であるとすれば、とてつもない地震が起きたのだと直感した。そして、地震の被災情況やそのメカニズムなどはその後の報道の通りである。ただ、私はこうした大惨事が予感される場合は、2チャンネルを始めとした掲示板などを見ることにしている。翌日、TVを始めとしたマスメディアが散発的に惨状を報道していたのに対し、ネット上ではGoogle Mapを使って全体の惨状をコメントしていたのが象徴的であった。

さて消費についてであるが、大震災の翌日からスーパーの陳列棚から商品が消えた。こうした情況は土曜日より日曜日の方がひどくなり、翌月曜日の14日には生鮮三品を始め牛乳や卵、パン、豆腐といった日配品は全く商品が無く、空の棚だけが並んでいる状態となった。こうした葉もの野菜や鮮魚に代表される鮮度商品の欠品は当然であると思ったが、今回の消費特徴はお米とか缶詰、カップラーメンなどが同様に一切の商品が無いという点であった。ドラッグストアはどうかというと、トイレットペーパーといった紙製品がこれまた欠品となっており、卓上コンロ用のガスボンベや懐中電灯用の電池なども全て欠品となっている。つまり、自己防衛の巣ごもりへ冬眠生活へと、まるで買いだめのような消費へと向かったということだ。

こうした商品を求めてスーパーやドラッグストアには長い行列が出来た。この要因は、勿論東京にも同じような大地震が起きるのではといった不安と共に、この不安を増幅させたのが間接的には福島原発の事故と東京電力の「計画停電」である。
実は、両者について共通しているのが情報の「不確かさ」への不安である。特に、電力の需給バランスという曖昧さや不確かさが極めて大きく、私が住む世田谷区は東電がいうところの計画停電の第4グループである。このグループの計画停電の予定時間帯は14日午後1時30分から5時30分の間とのことで、地場スーパーではこの時間帯は臨時休業するところもあった。コンビニはどうかというと、セブンイレブンやローソンは欠品はあるものの、時間帯としては通常営業しているが、山崎のデイリーストアは臨時休業となっている。このように商店街も臨時休業するところと通常営業するところに分かれている。

つまり、東京の消費は東北・関東近県の生産に依存しており、大震災による生産どころではない情況と共に、この計画停電が追い打ちをかけた結果であった。こうした日常消費の商品だけでなく、トヨタを始め大手メーカーの部品工場が相次いで生産中止へと向かっている。また、東北あるいは千葉にある石油精製施設が壊滅状態でガソリンや軽油等が不足しており、道路が切断されていることを含め、全く物流が機能していないことによる。この物流に拍車をかけているのがマイカーによる交通渋滞である。特に、14日は鉄道各社が計画停電によって運行中止となり、マイカーで都心の勤務先へと向かう人達で大渋滞が起きている。
そして、商品ばかりか、現場の人材も出勤できない情況があって、店を開けることができない。つまり、こうした生活へ消費へと向かうシステム自体が壊れた、都市機能が麻痺したということである。

生きること、そのために今を必死に頑張っている被災地の方達とは較べようもないが、その生命への尊厳さと自らの不安は、東京の都市生活者の消費面にも映し鏡のような現象として表れている。当然のように株価も急落し、1万円を大きく割った。翌15日には9000円も割り込んだ。デフレの先に少しばかりの消費の明るさをこのブログにも書いてきたが、全く逆の方向へと振れてしまったように感じる。
私は、そうした消費の表現として冬眠生活という言葉が思い浮かんだが、今生きることに精一杯である被災地の人達と較べようもない生活である。
3月11日の夜鉄道が止まり、3時間、4時間をかけて帰宅する人達で幹線道路は溢れた。14日は前日夜に急遽計画停電が決まり、朝そのことを知らない都心へ向かう通勤・通学の人達でターミナル駅は人で溢れかえった。そして、各家庭では節電に務め、スーパーやドラッグストアの多くも照明を半分ほどとしている。普段であれば、政府や東京電力の説明不足や曖昧さに対し怒りがこみあげるのであるが、ほとんどの人は混乱のなかにあって寛容である。それは、今なお生きるために闘っている40数万人の人達がいるからであろう。黙々と、またそうした有形無形の共助の気持ちがそうさせていると思う。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:33│Comments(0)新市場創造
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