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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年11月22日

デフレ下のヒット商品

ヒット商品応援団日記No421(毎週2回更新)  2009.11.22.

日本経済の情況について、やっと政府は「ゆるやかなデフレ」であると認めた。デフレとは商品やサービスの価格が持続的に下落する状態のことだが、国際通貨基金(IMF)によると、下落が約2年間続くことが条件とされている。しかし、このブログにも何回か書いてきたが、1997年をピークに1998年以降収入は減り続け、この10年間で100万円減った。六本木ヒルズのオープン前後数年間は、金融自由化を背景に世界の金融関連企業や外資ホテルに代表されるような企業群が大挙して東京に進出してきた。一種の金融バブル、不動産バブル、消費バブルが特定エリア(東京3Aエリア/赤坂・青山・麻布)、特定市場(ヒトリッチ市場)に起きて、インフレ的様相を見せたことは事実であった。しかし、それらは一部であり、私はそうした市場全体を「まだら模様」と名前をつけた。多くの企業、特に流通業、勿論生活者にとって、デフレは10年ほど前から実感もし、対策も立ててきた。消費で言えば、その象徴が「わけあり商品ブーム」である。デフレは今始まったことではない。

このデフレも問題ではあるが、1年半ほど前に「ねじれ現象」というテーマで書いたように、資源を持たない日本の場合、川上(輸入価格)ではインフレ、川下(消費接点)ではデフレという構造的問題を抱えている。今また、原油価格が上がり始めており、特に内需関連企業はその狭間で苦悩している。結果、有効求人倍率は40%台、正社員の場合は4人に1人しか求人はない。来年度の大卒における就職内定情況もひどいが、高卒の場合は更に深刻な情況だ。こうした雇用の情況下で、消費心理が上向く筈がない。
危機の本質はこの構造そのものにある。「わけあり商品」は、提供する側と消費する側とで生まれた一種のあだ花のようなものである。

先週は鳥取から大阪へと回ってきた。大阪ではいつものホテルが満室ということもあって、急成長している「スーパーホテル」に泊まってみた。セルフ形式ホテルという余計なサービスを削ぎ落とした、その分価格を下げて急成長しているホテルである。チェックインし氏名・住所を書くところはどのホテルも同じであるが、その後は全く異なる。コンピュータに入力すると、部屋番号と部屋の暗証番号が印字された、しかも領収書にもなるレシートが渡される。そして、最近のホテルや旅館では良く見かけるが、パジャマを渡される。後は全てセルフ、ご自由にというシステムである。翌朝の食事時間に集まった利用者は出張サラリーマン、OLから学生、シニア夫婦と多様な人達が宿泊していた。朝食は朝6時半から、勿論セルフ形式で、無料である。そして、スーパーホテルの特徴の一つが運営スタッフのほとんどが若い女性という点にある。しかも、ホテル経営における経費の中心となっている人件費が極端な位抑えられている。つまり、最小人数で運営されるビジネスモデルと言える。恐らく、中途半端なビジネスホテルはスーパーホテルのようなセルフ形式ホテルへと変わっていくであろう。

2年ほど前から、外食→中食→内食への傾向を書いてきたが、別な表現を借りればセルフ化への進行である。勿論、食ばかりでなく、生活全体に対する傾向としてある。商品やサービスの厳選傾向は回数を減らす減選へと進み、そしてセルフに至る。これが消費氷河期の最大特徴である。東京では過激なほどの弁当競争が繰り広げられているが、サラリーマン・OLの間では自分で作るセルフ「弁当族」が増えてきている。
セルフ化とは自分で行うことであり、道具や方法を必要とする。大不況下で売れるのはこうした商品群である。例えば、理美容院であれば、安いクイックサービスや髪を梳くバリカンのような道具が売れていく。調理道具が売れ、家庭菜園も更にセミプロ化していく、こうしたことも全てセルフ化、ビジネス用語でいうところの内製化である。そして、言うまでもなく省エネ、省力、省マネー型の道具が売れる。

前回、「回帰のゆくえ」というテーマで回帰現象の根っこについて書いた。回帰体験とは「自分の感性、自分の知を手に入れる、そんな体験である」、と仮説してみた。十数年前から言われてきた「成熟」、成熟した消費社会を迎えるということだ。安い商品についても単純に飛びつく訳でもなく、しかし「訳あり」に納得すれば購入する。勿論、生半可なこだわりにはそれに見合う費用等はかけない。長い目で見た費用と効果、それらを踏まえた満足感を手に入れる、そんなしたたかな消費者像が目に浮かぶ。
昭和30年代、戦後のモノも心も荒廃していた中で食べるのが精一杯であった時代、それでもどん底から這い上がる生命力だけはあったと思う。そんな時代の風景と「今日」の荒廃さを重ねて見る。モノは安くなり至る所に溢れていて、しかしモノへの欠乏感はない時代が今である。何が欠けているか、言わずもがなである。


川上ではインフレ、川下ではデフレという構造的問題に危機はある。先日鳥取県で委員会があったが、そこでもこうした構造的問題の一端を垣間みた。鳥取県を代表する地域ブランド商品と言えば、「20世紀梨」である。日経リサーチによれば果物部門で第4位の商品だ。しかし、作付け面積は昭和58年をピークに年々減り続け、昨年度はピーク時の1/3である。背景は全国どの地域も同じで、農家の高齢化と跡継ぎがいないと言う。自給率40%の日本農業にあって、若者の農業への労働移動はそれほど単純なものではない。しかし、中長期的な産業構造の転換をはかることが問われているのだ。
生活者は、生活そのものの構造転換がはかられつつある。セルフ化もその一つである。政府は「ゆるやかなデフレ」と表現したが、この「ゆるやか」という表現は正確である。生活者は「ゆるやか」に生活を仕分けし、構造転換を計ってきたということだ。そして、この生活仕分けであるが、子への教育費が下がり始めた時、その時本格的な消費氷河期に入ったと判断すべきであろう。何故なら、子は私たちにとって唯一の未来であるからだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:00│Comments(0)新市場創造
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