さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年06月07日

価格競争のゆくえ

ヒット商品応援団日記No373(毎週2回更新)  2009.6.7.

ここ数週間、値下げ、激安、今時の価格、価格競争消耗戦、生き残りをかけて、・・・・・こうした価格に関する言葉がTVのニュースを始め日経MJに至る多くのメディアに踊っている。
銀座出店した紳士服のAOKIは洗濯機で洗えるプレミアムウオッシュスーツなどを50%オフ、目玉商品のワイシャツは525円。5月28日のオープンには3000人以上が行列をつくったと報じられた。6月1日にはパリの老舗宝石店「モーブッサン」が銀座に出店したが、そのイベントに0.1カラットのダイヤを先着5000名に無料配布するといって話題となった。昨年銀座にH&Mがオープンしたが、以降世界のインポートブランドが集まり、主要百貨店が全て集まっている銀座は価格競争のうねりの中にある。

「マンダリンオリエンタルホテル東京、ビジネス客減り値引き解禁。平日半額・早割プラン」(日経MJ5月22日)、「数字でくすぐる、弁当250円。スーツ2着目1円。」「ロッテリア、低価格で巻き返し」(日経MJ5月27日)、「改正薬事法スタート、小売り2強(イオン、ヨーカドー)大衆薬値下げ」(日経MJ6月1日)、「原宿にぎわす身の丈消費、1万円以下で満足感」(日経MJ6月5日)・・・・・これが最近の日経MJの価格に関する主要記事である。生活のあらゆる領域に価格の波が押し寄せているのがわかる。

1年以上前、「どんなに良い商品でも越えなければならないのが価格である」と私はブログに書いた。勿論、個人消費は低迷ではなく、明確に自己抑制していることを前提に書いたがほぼその通りになった。後に日経MJは巣ごもり消費とネーミングした。従来は同じ業種、業界での価格競争であったが、今やそうした境界は存在しない。選択肢は100%顧客の手に委ねられている。その良きケースがある。例えば、流動性の高い駅等のSCの飲食サービスの場合、必ずプライスリーダーが生まれる。1人でも多くの顧客を獲得するために、例えばランチ料金の価格帯をどこか1店が値下げをする。そうすると他の飲食店は見事なくらい価格帯を「右にならい」する。いや、せざるを得ないと言った方が正確であろう。

まず考えるべき第一は、価格競争のゆくえの前提である。市場は、パイは小さくなっているとの認識から始めなけれなならない。ブログでも繰り返し書いてきたが、収入が増えないどころか下がり続け、最早日本を安定成長させてきた中流層が崩壊してしまっている。もう一つがそうしたことを含め、未来が見えないという心理的な不安定さから積極的には消費に向かわず余裕がある場合は預貯金へと向かうという2つが主要な背景としてある。
つまり、市場が、顧客が変わったということだ。このことは数年後景気が回復したとしても、元には戻らない。何故なら、この2年ほどこうした多くの学習体験を生活者はしてきた。商品の在り方を始め、つまり売上・利益の考え方、つまり経営を変えなければならないということだ。

さて、その「元には戻らない」消費はどこへ向かうかである。未だ推測の域を出ないが、一番大きな学習体験は「わけあり商品体験」であると思っている。一年以上前から始まり、今も続いている「わけあり競争」の体験実感がその後の消費を大きく変えていくことになる。価値価格化というキーワードがあるが、価格実感を生活者自身が持ってしまったということだ。規格外商品、消費期限目前商品、問屋に眠る在庫商品、中古商品、アウトレット商品、大量仕入れ商品、流通中抜き商品、・・・・・・こんな「わけあり商品」を使用体験してきた生活者である。最近では築地などの卸売り市場の売れ残り商品を安く仕入れ販売するところが増加している。特に、まぐろ等は値下げしても売れずに残ってしまい、それら商品を極めて安く仕入れ急成長している回転寿司が見られるように。

以前、東京郊外の駅周辺の市場を見て感じたことをブログに書いたことがあった。その中にお弁当価格があり、従来より100円ほど安くなっていると。従来だと400円〜600円の3タイプであったものが、300円〜500円へと変わったという内容であった。このプライスゾーンの仕掛人の一人は西友であるが、こうした考え方と価格設定は他の業種・業態へと伝播していく。食ばかりか、リニューアルした新宿マルイ、あるいは原宿にオープンしたフォーエバー21のプライスゾーンは「上から下まで揃えて1万円以内」である。周知のようにファストフードにおいても牛丼戦争が始まっている。あらゆる業種において、ある一定レベルの価格帯のところまで進んでいく。この価格帯を私は「身の丈価格」と呼んでいる。単なる低価格ではない。顧客が選んだ価格ということだ。残念ながら、この「身の丈価格」競争に負け、市場から撤退していくところも出てくると思う。

ところで、価格を維持し、予約してもなかなか食べられない隠れた人気店・ヒット商品を取り上げた雑誌がある。Casa BRUTUSが過去取り上げた食の記事を再編集したムック版「日本で一番おいしいもの」である。ミシュランガイドとは全く異なる着眼で、地方の寿司店や2年ほど前に話題となった石垣島ラー油まで取り上げていて、BRUTUSらしさが良く出ている編集である。取り上げた店や商品の評価は別として、表紙には「厳選327店、すべて実食済み!」とある。「すべて実食済み」と書かなければならないほど、メディアはいいかげんな情報を基に記事を書いてきたということでもある。つまり、情報に左右されない、わけあり消費体験顧客が増えてきたという証しでもある。いずれにせよ、これも身の丈消費、身の丈価格の一つの例であろう。
どんなわけで安いのか、どんなわけで価格が通るのか、既に次の段階の価格競争に入っている。つまり、やっと成熟した消費時代へ向かっているということだ。(続く)

あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:37│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
価格競争のゆくえ
    コメント(0)