さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年08月06日

サプライズの終焉

 ヒット商品応援団日記No87(毎週2回更新)  2006.8.6.

少し前に「潮目が変わる」というタイトルでコミュニケーションも劇場型から日常型へと変わると書いた。ところで先日のWBA世界ライトフライ級のタイトルマッチ「亀田興毅×ファン・ランダエタ」戦に対する判定を含めた様々な「動向」は時代の潮目をよく表していると思った。ボクシング関係者やスポーツジャーナリストのコメントは別として、やくみつるさん曰く「安物のドラマ」と言い、Yahooの投票では約22万の内ファン・ランダエタの勝ちとする人が94%、ブログで人気の「きっこの日記」では疑惑の判定勝ちに対するアンケートが実施され13,767通もの声が寄せられ99.92%が同様に勝ちとし、しかもそのほとんどが疑惑やうさんくささのものであった。勿論、試合直後にTBSへ55,000件以上もの電話やメールが殺到したという。こうした反応を考えるにつけ、誰もが多くの情報を手に入れることはできるが、その真偽についてなんとなくおかしいと思っている状況が手に取るようにわかる。インターネットをはじめ多くのメディアには「何でもある」世界のように思えるが、取り出した情報が本当にそうなのか、自身にとってリアルで使えるものなのか、つまり自分の頭や体から出てきたリアルな情報ではないため常に躊躇してしまう。誰がプロデューサーなのかわからないが、今回亀田興毅をどう売り出すのか、採った方法が「劇場型」であったと思う。注目・話題になるようなニュースを連続してマスメディアに提供してきた。ワルを気取ったビックマウス、ユニークな練習法、親子の絆・・・・主役は勿論亀田興毅と父親である。シナリオ&演出については今回はTBS、舞台はタイトルマッチ放映ということになるだろう。エンターテイメントという面白がりは必要であるが、どこか「やらせっぽい」という感じは多くの人がもつようになっている。これが「潮目」である。プロデューサーであるTBSは劇場型ストーリー・ショーを展開し最高視聴率52.9%という成果を上げたと思うが、「判定」という現実に多くの人が疑念を持ち、この疑念はストレートに劇場型=TBSへの不信へとつながっていく。逆に、リング上で涙した亀田興毅の姿は、役者ではない19歳の少年として「素」の日常物語であった。もし、今後も劇場型のスタイルを踏襲するのであれば、プロデューサーはボクシングファンであり、視聴者であることを強く認識することが必要である思う。
もう一つの潮目がモラル・倫理の保持である。勝負の世界は勝たなければならないが、それだけではないというモラル・倫理喪失に対する反発だと思う。ある意味ではフェアプレイの精神であり、その受け止め方は採点方法というルールの問題にあるのではなく、「おかしいな」と感じる自身の実感、体感によるモラルである。ここ1年ほど、ライブドア事件や村上ファンド事件などの経済事件が立て続けに起こってきた。全てに共通しているのが、ルールやグレーゾーンの隙間を見つけることがビジネスであるが如くのやり方に対する反発である。勝つことだけ、儲けることだけを目標とした時代の風潮、藤原さんが書かれた「国家の品格」につながる問題でもある。以前、書いた「三方よし」ではないが、売り手(TBS、亀田親子)よしだけで、買い手(視聴者など)や世間はよしと納得しなかったということである。多くのコメンテーターが言っていたが、亀田が判定負けもしくはドローであったら、逆に今度こそがんばれと拍手が送れたのにとの指摘は的を得ていたと思う。ルール=採点方法に準拠したまでと、今後も同じルールでプロボクシングが行われるとするならば新しい市場拡大どころか既存の市場すら縮小するであろう。例えば1年前、流行っていたことば「勝ち組」「ヒルズ族」は、今や否定的な意味合いでしか使われなくなっていることに気づいていると思う。ここでも潮目が変わったのである。
今回の亀田親子によるボクシングイベントは従来の「やり方」とは異なる出来事創造によって新しいマーケット(=ボクシングもK1と同じショー)、女性フアンをはじめ市場を広げたことは事実である。私流の言い方をすると「新しい出来事を創れば新しい市場が生まれる」ということになる。ただ、劇場型手法についてはその受け止め方について賛否が分かれている。私は「一種のうさんくささ」「一種のやらせ」と書いたが、”そんなの当たり前””受け止める側が判断すればよい””結果が一番。成果が出ればいいだけ”といった考えがある。「うさんくささ」といった前者は40~50代の大人が多いのに対し、後者は圧倒的に若者が多い。ラジオという情報収集を経て今日に至った「大人」と、個室でAV機器に囲まれて育った「若い世代」とでは厳然とした情報格差がある。しかし、小泉さんによる劇場型サプライズコミュニケーション以降、多くの人は「情報」の学習をしてきている。その結果であろうか、今回の「判定結果」事件も世代を超えて、「どこかおかしい」と潮目が変わってきているように思う。短期的成果を求めた強いインパクト、効率の良いレスポンス、コミュニケーション投資に見合うサプライズ価値、こうしたコミュニケーション世界も、長い眼で見る持続型継続型の日常的対話コミュニケーション、奥行き深みのある実感・体感といった納得価値へと変わっていく。「猫だまし」のような、あっと驚かせて瞬間的に大きな売り上げを上げていくビジネスから、小さくても「いいね」と言ってくれる顧客への継続する誠実なビジネスへの転換である。(続く)

あなたにおススメの記事

同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
変化する家族観
常識という衣を脱ぐ
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)
 変化する家族観 (2023-02-26 13:23)
 常識という衣を脱ぐ (2023-01-28 12:57)

Posted by ヒット商品応援団 at 14:02│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
サプライズの終焉
    コメント(0)