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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年08月30日

道草のすすめ           

ヒット商品応援団日記No94(毎週2回更新)  2006.8.30.

江戸時代のライフスタイルをスタディしていくとわかるが、当時の教育、識字率(読み書き)は極めて高かった。今日のような義務教育制度がなくても就学率は7〜8割で指南所と呼ばれた学校に通っていた。ひらがなから始まって、そろばん、地名や専門用語、礼儀作法、道徳まで多様な実学を教えていた。17世紀の世界三大都市といえば、ロンドン、パリ、江戸であったが、高い就学率といわれているロンドンでも2〜3割であったと言われている。当時の知的水準、文化の高さと今日の日本のレベルの低さを単純比較はできないが、実感として分かると思う。私が好きな天野祐吉さんは、こうしたことば理解の低さに対し、学習ではなくて、楽習を入り口にしたブログ「ことばの元気学」(http://blog.so-net.ne.jp/amano/2006-05-05)で、こんな話をしてくれている。

”なぜ、こんなことば(からだの一部をつかって感情を表現することば/胸おどる、血がさわぐ等)が生まれてきたか。それは、ことばって有限なのに、人間の感情には限りないひろがりがあるからですね。つまり、有限のことばで無限に近い感情の機微をあらわすために、ぼくらのご先祖さんは、すごい発明をした。そのおかげで、日本語はうんと豊かになりました”

デジタル社会はことばも例外無く圧縮し、いまや圧縮語を使ったコミュニケーションが日常となっている。周知の通り商品のネーミングなどの多くは圧縮を想定したネーミングとなっている。そして、教育という問題もあるが、結果豊かなことばを知らない若い世代が増加していることは、また周知の通りである。そして、感情表現をコントロールできない「キレル」子供が増えており、最近の脳科学では脳の発達を促す方法も模索され始めている状況にある。人間関係の基本である「会話」が、親子間で成立できなくて痛ましい事件に至ってしまうことも周知の通りである。
ところで、時々覗くサイトに糸井重里さんが主催している「ほぼ日刊イトイ新聞」がある。夏休み特集として、読者からの質問に詩人の谷川俊太郎さんが答えるという企画が載っていた。その中に「ことば」の本質を生きる詩人である谷川さんが、お母さんの質問に次のように答えている。

【質問六】
どうして、にんげんは死ぬの?
さえちゃんは、死ぬのはいやだよ。
(こやまさえ 六歳)
追伸:これは、娘が実際に 母親である私に向かってした
   質問です。目をうるませながらの質問でした。
   正直、答えに困りました〜
   
■谷川俊太郎さんの答え
ぼくがさえちゃんのお母さんだったら、
「お母さんだって死ぬのいやだよー」
と言いながらさえちゃんをぎゅーっと抱きしめて
一緒に泣きます。
そのあとで一緒にお茶します。
あのね、お母さん、
ことばで問われた質問に、
いつもことばで答える必要はないの。
こういう深い問いかけにはアタマだけじゃなく、
ココロもカラダも使って答えなくちゃね。

素敵な、なおかつ本質を踏まえた答えだと私は思う。「アタマだけじゃなく、ココロもカラダも使って答えなくちゃね」と答える谷川俊太郎さんの温かいまなざしに多くの人は共感すると思う。アタマという言葉を理屈という言葉に置き換えても、ココロを素直にと置き換えても、カラダを行動すると置き換えてもいいかと思う。
以前、ベストセラー「えんぴつで奥の細道」にふれたことがあった。「えんぴつで奥の細道」の書を担当された大迫閑歩さんは”紀行文を読む行為が闊歩することだとしたら、書くとは路傍の花を見ながら道草を食うようなもの”と話されている。けだし名言で、今までは道草など排除してビジネス、いや人生を歩んできたと思う。このベストセラーに対し、スローライフ、アナログ時代、大人の時代、文化の時代、といったキーワードでくくる人が多いと思う。それはそれで正解だと思うが、私は直筆を通した想像という感性の取り戻しの入り口のように思える。全てにおいて瞬時に答えが得られてしまうデジタル時代、全てがスイッチ一つで行われる時代、1ヶ月前に起きた事件などはまるで数年前のように思えてしまう過剰な情報消費時代、そこには「想像」を働かせる余地などない。「道草」などしている余裕などないのだ。そうした時代にあって失ったものは何か、それは人間が本来もっている想像力であると思う。自然を感じ取る力、野生とでもいうべき生命力、ある意味では危険などを予知する能力、人とのふれあいから生まれる情感、こうした五感力とでもいうような感性によって想像的世界が生まれてくる。ことばを知らないとは、想像力への入り口を閉ざしてしまうことであり、時に道草も必要であるということだ。天野祐吉さんがやっているように、ことば遊びをしてみたり、無駄を楽しんでみたり。そして、想像力を働かせるとは、谷川俊太郎さんの答えのように、ココロもカラダも使って答えを探すことだと思う。勿論、ヒット商品を生み出すことも同様である。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:27│Comments(0)新市場創造
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