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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

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Posted by さぽろぐ運営事務局 at

2015年10月21日

再び、心は内へと向かう 

ヒット商品応援団日記No627(毎週更新) 2015.10.21.

横浜都筑区の大型マンションが傾き、その原因が建築にとって最も重要となる杭打ちにおける施工不良・データ偽装によるものではないかとの疑惑が浮上している。住民が傾きを指摘した当初は東日本大震災によるものであると説明してきたが、実は施工不良に原因があると次第に明確化され今日に至っている。多くの人は10年前の耐震偽装事件を思い起こさせたが、そうした不安心理は社会へと広がり、次第に増幅し始めている。
1年ほど前にはあの日本マクドナルドによる消費期限切れの鶏肉が使用されていることから始まり、東芝における不正な会計操作事件、更には1か月前にはトヨタを急追していたあの独フォルクスワーゲンによる排ガス規制を潜り抜けるためのソフトプログラムの違法な組み込みといった事件、立て続けに起きた事件は全て私たちにとって「見えない世界」における偽装事件である。

2005年耐震偽装事件の時は、その後2007年12月には中国冷凍餃子事件が起き、社会不安が増幅したことがあった。更に2008年には汚染米を使った事故米不正転売事件が起きる。周知の嘘をついた美少年酒造は潰れ、正直に全ての商品を廃棄し再生を掲げた西酒造(宝山)は、逆に今や人気焼酎ブランドとなった。「不安」「不信」が蔓延する中での再生であり、その後のリスクマネジメントの良きモデルとなった。
そして、社会不安が蔓延する社会には必ず一つの現象が生まれてくる。それは「うわさ」である。良いうわさ、評判は生まれて欲しいものであるが、悪いうわさ、いわゆる風評・流言飛語が飛び交う時代は最悪である。その「うわさ」が生まれる原因は、「不可解さ=曖昧な情報」への過剰反応の連鎖によるものである。
こうした過剰反応の連鎖については、「うわさとパニック」など既に多くのケーススタディ、社会心理における研究がなされている。その原点ともいうべき「うわさの法則」(オルポート&ポストマン)を簡単に説明すると以下の内容となる。

R=うわさの流布(rumor),
I=情報の重要さ(importance),
A=情報の曖昧さ(ambiguity)

< うわさの法則:R∝(比例) I×A >  

つまり、話の「重要さ」と「曖昧さ」が大きければ大きいほど「うわさ」になりやすい、という法則である。但し、重要さと曖昧さのどちらか1つが0であればうわさはかけ算となり0となる。例えば、今回の横浜都筑区の大型マンションが傾き、その原因が施工不良によるもので、データも偽装されており、疑念が深まっていることに即して言うとすれば、

・重要さ:人命にかかわるものである   
・曖昧さ:データ偽装など原因かわからない  
・うわさ:私の住むマンションも同様かも?

今、杭打ちの実態調査が行われているが、これは「曖昧さ」を払拭するための調査である。しかし、報道によれば住民からは、「第三者機関」による調査が要望されているという。既にデベロッパー三井不動産をはじめとした大手企業の「ブランド」信用力は失われ、毀損し始めている。
杭打ちの施工事業者である旭化成建材の担当者による工事はマンションや商業施設だけでなく、学校など公共施設も含まれており、2005年の耐震偽装事件と同様更に広がる可能性がある。その工事リストは公表するとされているが、曖昧な公表は更なる「うわさ」を生むこととなる。その更なるうわさとは「施工工事」以外の「うわさ」となる。どんな内容となるか現時点では予測することは難しい。つまり、平たく言えば「あること、ないこと」と言った話の流布、「うわさ」の連鎖とはこうした広がりのことである。既に、杭打ちを担当したベテラン社員に関する実名の犯人探しが2ちゃんねるで始まっている。

ところで何故こうした連鎖が起きるのか、それは漠然とした「不安」が日本社会のベースにあるからである。その不安がどのようなものか整理すると次のようになる。

1、健康に対する不安:癌といった病気から身近な不眠といった不安まで。一番重要なのが、「食」への不安である。あの日本マクドナルドの不振はまさに不信によるものであることは明白であろう。
2、経済に対する不安:世代によっても変わるが、社会保障から勤務先企業の経営や仕事への不安。特に消費増税導入による家計への圧迫が漠とした将来不安を醸成している。
3、社会に対する不安:主に、凶悪犯罪からオレオレ詐欺などへの不安。凄惨ないじめから猫などの小動物への虐待など不可解な事件は上記と同様漠とした不安を醸成している。
4、人災に対する不安:住まい、エレベーター、電車など生活インフラに対する漠然とした不安。今回の傾きマンションが人災なのかどうか未だ不明ではあるが、専門分業化されガバナンスが問われている現代に於いては「誰」が起こすかわからない不安がある。

キレる子どもたち、モンスターペアレント、犯罪に近いクレーマー、多発する老人犯罪・・・・・・・このように子供ばかりでなく、大人も、老人も感情を抑えることができない超ストレス社会となっていることは周知であろう。こうした現象は特に都市に多いのも特徴的であるが、攻撃的に「外」へと向かう心理によるものである。しかし、多くの生活者は不安が蔓延すればするほど「内」へと、自己防衛心理がより強くなっていく。リーマンショックから立ち直り始めた時に、消費増税によって腰が折られてしまい自己防衛心理が強まってしまった。消費が心理市場化されているとは、デフレ心理もそうであるが、こうしたメカニズムによるものである。
さてこうした「内」に向かう心の扉を開けるにはどうすべきか。以前にも指摘したことがあるが、まず「見える化」を入り口に、「心まで見える化」にトライすべきである。心まで見えるとは、心底信じてもらえる関係、ある意味恋愛関係、同士関係、こうした現場=顧客接点でしか創ることができない関係ということになる。嘘が見えた時、これ以上言わなくても結末は言わずもがなである。大企業だから、世界ブランドだから、安心・信頼できる時代にはいないことを再び認識させられた。逆に街のパン屋さんに行列ができたり、老舗に根強い支持が集まっているのも、安心コンセプト、心が通い合う関係が創られているからだ。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 10:31Comments(0)新市場創造