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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年04月22日

「意味」を理解できないAI (人工知能)

ヒット商品応援団日記No710(毎週更新) 2018.4.22.

AI画像今話題となっている『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著、東洋経済新報社刊)を読んだ。加熱するAI(人工知能)ブームにあって、AIのできること、できないことを、数学者であり、周知の「東ロボ」推進のリーダーで実験してきた人物でもあって興味深く読んだ。結論としては、AIは計算機であり、数式(論理、確率、統計)、つまり数学の言葉に置き換えることのできないことは計算できない。AIが自らの力で人間の知能を超える能力を持つシンギュラリティ(技術的特異点)が来るという言説は、すべて誤りであると。極めて常識的な結論であるが、分かりやすい言葉でそのできない理由が説明されている。そもそもAIは「意味」を理解できないという事実を持ってAIのできること、できないことを機械翻訳、自動作曲、画像認識などの例を挙げて整理説明してくれている。
例えば、今流行りの音声認識応答システムSiri(シリ)の実例を挙げて、「この近くのおいしいイタリア料理の店は」と問いかけ、次に「この近くのまずいイタリア料理の店は」と問いかけても同じ店が推薦される。つまり、「おいしい」と「まずい」の違いがSiriにはわからないということである。当たり前のことだが、言葉には記号の羅列以上の「意味」があり、AIには観測できないということである。勿論、それを持ってAIはダメであるといった論議になることではない。Siriも進化し、店内の雰囲気やメニュー写真を並べ、「好み」に合う店であるかどうかを提示してくれる。これで一応使える音声認識応答システムにはなるのだが、本質論としてはシンギュラリティ(技術的特異点)が来るということはないと指摘している。
そして、この「意味」が理解できなき中高生がいかに多いかという学校教育の問題を指摘している。具体的に全国読解力調査の事例をもとにいかにこれまでの詰め込み教育がダメであったかを指摘している。それは読解力にとどまらず常識、当たり前と思っていることがいかに理解できないかをも指摘し、読解力と偏差値教育の弊害というテーマで締めくくっている。

ところでAIの限界としてこうした「意味」の理解と共に人が持っている「感情」は更に理解不能になるということである。具体的ビジネスに置き換えて考えていくとわかるが、サービス業という顧客の気持ちを大切に考える場合はどうかというと、数年前にHISによるハウステンボスに「変なホテル」が誕生し接客にロボットが登場し話題になったことがあった。確かに安く泊まれるという生産性の高いホテルではあるが、これはロボットを娯楽の一要素として、いわばエンターテイメントホテルとして作られたものなので、AIのシンギュラリティ(とは異なるものである。ホテル業務の約7割をロボットが行う省力化の一つとして実施されており、人に替わるAIとは異なるものとしてこうした試みは進化していくであろう。ちなみにHISは2019年3月にかけて、東京・築地や大阪・心斎橋など10カ所で開業すると発表している。その概要として、100~200室規模で、観光客やビジネス客の取り込みを狙うとし、料金は2人1室で1人1万円以下を見込んでいるという。
こうしたホテル業にロボットを導入した事例はHISが初めてであるが、これからは多くの業種の随所にこうした技術による生産性向上は進んでいくこととなる。数年前に問題となった深夜の「ワンオペ」という人に過重労働を強いることによる生産性向上ではなく、調理など裏方への自動化・省力化はかなり進んでいる。例えば、けんちん汁など具材が沢山使われているものなどはセンサーによってひと椀に均等に具材が入るように自動化されている調理器具などはかなり前から既に開発されている。人の手によるものより数段上手に盛り付けられるということである。

こうした「人手」を無くしていくことのなかにAIを置きがちであるが 、実は真逆の方向に向かって進みがちである。10数年前から日本のサービス業の生産性が低すぎるとの指摘ががあり、「おもてなし」は過剰サービスであるとの考えがある。それはサービスの本質理解がなされていないことで、ちょうど「意味」が理解できないAIによるサービス、顧客の気持ちがわからない、読解力のないサービスに向かうということとなる。顧客の気持ちに応える本来のサービスとは言えないということである。勿論、前述の「変なホテル」のようにロボットサービスを一つのエンターテイメントとして活用することを排除するものではない。逆に、こうしたアイディア・工夫によって生産性を上げ、安く宿泊できるサービスも一つのサービスの在り方である。今までのホテル・旅館業における生産性の上げ方と言えば、例えばチェックイン・チェックアウトといった時間帯にはフロントサービスを行い、その他の時間帯では部屋や温泉などの清掃といった他の仕事に従事するといった一人で二役三役といった方法、いわば店舗経営におけるアイドルタイムの有効活用・二毛作三毛作と同じである。但し、これらを可能とするのも「人」であり、数年前からのブラック企業・ホワイト企業論議に行き着く。以前、競争時代の違い作りに触れ最も大きな「差」づくりは「人」であるとし、生活雑貨専門店のロフトにおける事例として次のようにブログに書いたことがあった。

『確か7~8年前になるかと思うが、生活雑貨専門店のロフトは全パート社員を正社員とする思い切った制度の導入を図っている。その背景には、毎年1700名ほどのパート従業員を募集しても退職者も1700人。しかも、1年未満の退職者は75%にも及んでいた。ロフトの場合は「同一労働同一賃金」より更に進めた勤務時間を選択できる制度で、週20時間以上(職務によっては32時間以上)の勤務が可能となり、子育てなどの両立が可能となり、いわゆるワークライフバランスが取れた人事制度となっている。しかも、時給についてもベースアップが実施されている。こうした人手不足対応という側面もさることながら、ロフトの場合商品数が30万点を超えており、商品に精通することが必要で、ノウハウや売場作りなどのアイディアが現場に求められ、人材の定着が売り上げに直接的に結びつく。つまり、キャリアを積むということは「考える人材」に成長するということであり、この成長に比例するように売り上げもまた伸びるということである。』

人口減少時代にあっては至極当然の経営である。「省力化・自動化」も、「人の成長」も、同じ生産性の向上という課題に向かう不可欠な方法である。以前、人手不足から深夜営業の廃止が続くなか、ホワイト企業の代表事例として「富士そば」を取り上げたことがあった。東京に生活していれば知らない人はいない24時間営業の立ち食いそば店である。富士そばではその経営方針として「従業員の生活が第一」としている。勿論、アルバイトも多く実働現場の主体となっている。そして、従業員であるアルバイトにもボーナスや退職金が出る、そんな仕組みが取り入れられている会社である。ブラック企業が横行するなか、従業員こそ財産であり、内部留保は「人」であると。そして、1990年代後半債務超過で傾いたあの「はとバス」の再生を手がけた宮端氏と同様、富士そばの創業者丹道夫氏も『商いのコツは「儲」という字に隠れている』と指摘する。ご自身が「人を信じる者」(信 者)、従業員、顧客を信じるという信者であるという。こうした経営理念・企業風土からは、どうしたら顧客に喜んでもらえるか現場から生まれたアイディアメニューが商品化されている。例えば、かき揚げそばとカレーライスといったセットメニューはどこでもやっているが、欲張りメニューとしてカレーライスとカツ丼を一つにした「カレーカツ丼」があるが、これも現場から生まれたアイディアと言われている。

製造現場であれ、サービス業であれ、これまで以上に単純化した労働はどんどん少なくなる。新井氏が言うように数学の言葉に置き換えることのできるような仕事は全て無くなっていくということである。課題は企業も人も「意味」を理解し何事かをつくっていく仕事、創造的な仕事に向かうということになる。ここに取り上げたロフトや富士そば以外にも多くの企業は、大きくは時代の変化、顧客市場の変化という「意味」を考えた経営である。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んで思い出したのが、異なる視点からこの読解力の無さを心配したある作家の書籍であった。その本は「日本語が亡びるとき」(水村美苗著:筑摩書房刊)で、英語が地球の共通語になった時代にあって、豊かな近代文学を育ててきた日本語が亡びつつあるという、言葉に生きる作家らしい本格的な警鐘の評論である。著者は創作の傍ら米国のプリンストン大学で日本の近代文学を教えているいわばバイリンガルの人物である。であればこそ、母国語・日本語への思いは深い。繰り返し繰り返し国語教育の必要を説いている。読解力のない子ども達を育ててしまった学校教育の問題を指摘した新井氏と同じ思いである。
企業も人も、「意味」を問わなくなった時、それはAIにとって替わるということである。(続く)


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