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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年06月08日

未来塾(18)「スポーツから学ぶ」(4)

ヒット商品応援団日記No616(毎週更新) 2015.6.8.

今回の「スポーツに学ぶ」は高齢社会におけるスポーツの意味するところを学ぶこととする。2021年に世界大会「ワールドマスターズゲームズ」が関西で開催されるが、この大会を機に高齢者の「スポーツビジネス」についてもそのコンセプトが問われている。今回も井上氏に寄稿いただき学ぶこととする。

未来塾(18)「スポーツから学ぶ」(4)



「スポーツから学ぶ」

時代の観察

高齢社会のスポーツ


世界有数の長寿国の日本は、「高齢化社会」の「化」はとれて、はっきりと「高齢社会」を迎えた。どのような課題が噴出し、うまい解決策があるのか、マスコミでも「高齢社会」について、連日といっていいほど何らかの報道がされている状況だ。
 さて、スポーツの世界では、「高齢」や「中高年」といわず、少しスマートに「マスターズ」という言葉で表現される。2020年の東京五輪の翌年、2021年には、関西で4年に1度の世界大会「ワールドマスターズゲームズ」が開催される。大会日程は、5月15日から30日までの16日間に決まっている。関西でも、もちろん東京五輪への興味度は高いが、身近な世界のスポーツ祭典として、この「ワールドマスターズゲームズ」の準備が進んでいる。
 関西経済同友会は2015年5月7日、「関西全体の活性化の観点から、(関西の)各地域が一つにまとまって準備を進めていくべき」という提言を発表した。「関西ワールドマスターズゲームズ」は、経済界が強い関心を持っている。日本のスポーツは明治時代の発祥以来、教育界がリードしてきたが、21世紀は、経済界がお株を奪おうとしている、といえなくもないのだ。
 すなわち、「スポーツビジネス」のチャンスを嗅ぎ取っているのである。振り返って、昭和39年の東京五輪は、日本が国際社会に認められる絶好の機会であった。使い古された言葉だが「国威発揚」を五輪に求めた。現在のような「スポーツビジネス」が支える五輪ではなかった。五輪は、1984年のロサンゼルス大会を機に、一気に「商業化」する。税金を注ぎ込む大会から、利益が上るイベントに変貌した。それは、すぐに五輪だけでなくスポーツ全体に波及した。
 スポーツが生む「利益」。代表的な例はテレビの放映権料だ。スポーツがスターをつくる。大衆がスターを見たがる。テレビがスターを放映すれば大衆がとびつく。大衆がとびつくなら、テレビ番組にスポンサーがつく。テレビは巨額の放映権料をスポーツに支払ってでもスポンサーを獲得し、放送する。
 「ワールドマスターズゲームズ」もスポーツビジネスと切り離せないが、おそらく放映権ではなく、「スポーツ観光」という新しい考え方とつながる。大会には、原則として30歳以上の個人が、予選を経ずに自由に参加でき、国家を代表することなく、“身銭”で出場する。しかも、家族、友人というプライベート応援団を引き連れている場合が多い。
 もう、死語であろうが「フジヤマ ゲイシャ」を見るために日本に来るのではなく、「クールジャパン」へのあこがれだけでなく、日本製品の「爆買い」でもなく、「スポーツを目的に」関西にやってくる。もっといえば、スポーツをして、家族も一緒にお金を落として帰るのである。願わくば、日本に新しい友人をつくって、再び日本に来る動機づけをしてくれれば、何よりなのだが…。
 2020年の東京五輪が、日本にとって、どんな財産を残してくれるのか、その推測、検証は別の機会に譲ろう。2021年「ワールドマスターズゲームズ」は、少なくとも、国内の中高年のスポーツ、「マスターズスポーツ」への関心を高めてくれるだろう。
 私は、京都を拠点に活動しているので、最近、京都であった「マスターズ」に関する催し、報道などについて、少し実例を紹介したい。



 ○ワールドマスターズゲームズのシンポジウム

 2015年2月21日、京都市内で、ワールドマスターズゲームズのシンポジウムが初めて開かれた。京都市が主催し、京都市体育協会などから参加者が集まった。大学の研究者が基調講演したが、当面の最大の課題は「関西 カンサイ」というエリア名称を世界にどうアピールするかだという。関西という名称は、関西空港ぐらいしか思い当たらないのだから。

未来塾(18)「スポーツから学ぶ」(4)



○京都500歳野球

 「ナインの合計年齢が500歳」の京都500歳野球大会が2015年3月7日から4月29日まで開かれた。毎年恒例の大会で、高校野球部のOBチームなど25チームが参加、トーナメント戦で行った。かつての甲子園球児らが出場した。京都には、別に「還暦野球」という組織もある。

○ラグビーの2015京都マスターズ大会

 3月15日に京都市内で行われた。この第12回大会には、40歳以上の約150人が参加し、福井県から「福惑RFC」チームを招待した。40歳代は白パンツ、50歳代は紺パンツ、60歳代は赤パンツ、70歳代は黄パンツと色分けに、楕円球を追った。(2015年3月28日付け京都新聞記事から)

 ○京都シニアサッカー大会

 40歳以上の大会で、第15回を迎えた。21チームが参加し、京都大学OBチームが3年ぶり2度目の優勝を飾った。チームは25年前の1990年に創部、そのときの平均年齢は29歳だったいう。この大会とは別に、京都府サッカー協会傘下の京都フットボールリーグには、30歳代、40歳代、50歳代のリーグ戦があり、60歳代のリーグも計画中だ。(2015年4月4日付け、京都新聞記事から)

 ○第111回全日本剣道演武大会

 京都市の旧武徳殿(現京都市武道センター)で、明治28年から(戦時の中断をはさんで)続いている大会。今年も全国から6段以上の約3800人が参加した。京都から参加した居合道の達人は、本職が京友禅デザイナーで、大会中、会場に掲示する演武者600人の名前を1カ月かけて手描きしている。名前の主は、演武が終わると、自分の名前が書かれた半紙を記念に持って帰るという。(2015年5月9日付け、京都新聞の記事から)

 ○100歳スイマー、1500メートル完泳

 2015年4月に松山市で開かれた全日本マスターズ水泳で、女子100~104歳の部に出場した山口県田布施町に住む女性が、1500メートル自由形種目に出場、(得意の背泳で)完泳した。水泳を始めたのは80歳。趣味の能楽で培った足腰と精神力が水泳にも生きているという。日本マスターズ水泳協会によると、60歳以上の登録者は全国で約1万7500人という。(2015年5月10日付け、京都新聞の記事から)

  ◇      ◇      ◇

  スポーツは手段か目的か

 マスターズスポーツの愛好者は、高齢社会とともに増えていくに違いないだろう。楽しむスタイルがどうなるか。旅+スポーツ、グルメ+スポーツ、ファッション+スポーツ、医療+スポーツ、はたまた、追悼+スポーツ(スポーツ葬)……。
 最近、こんな言葉を聞いた。日本では、『なにかスポーツをして健康になろう』と考える。あるスポーツ先進国では、『スポーツを楽しむために、健康になろうと努力する』。スポーツは「手段」なのか「目的」なのか、関西で開かれる「ワールドマスターズゲームズ」で答えは出るのだろうか。


[ワールドマスターズゲームズとは]
 主催は国際マスターズゲームズ協会(IMGA)。五輪と同様に4年ごとに開催する。第1回は1985年にトロント(カナダ)で開催。2013年の第8回はトリノ(イタリア)で開き、五輪の約半分の107カ国が参加した。2017年はオークランド(ニュージーランド)で開催、第10回の関西は、アジアで初の開催となる。
 30歳以上なら、だれでも参加でき、チームゲームの場合は、異なる国の選手でチーム編成も可能。2014年12月、関西7府県4政令指定都市や関西の経済界で組織委員会を設立した。会長は井戸敏三兵庫県知事、事務総長は木下博夫元京都市助役(国立京都国際会館館長)。2016年10月ごろに、約30の競技種目と会場を決定する予定。関西ゲームズには、海外2万人、国内3万人の参加を見込んでいる。
*日本で中高年向きスポーツとして人気のソフトバレーボール(京都・亀岡運動公園体育館)
未来塾(18)「スポーツから学ぶ」(4)



スポーツから学ぶ


高齢社会の楽しむスポーツ

人口減少時代を迎え、このまま推移すれば消滅するであろう市町村が数多くあると提言した日本創生会議は、その第二弾として急速な高齢化で医療や介護の体制が追いつかない「老いる東京」の姿を浮き彫りにし地方移住という解決策を提言した。
大分県など体制が整っている移住先候補の自治体からは歓迎する声が出る一方、東京都や神奈川県は反発していると報道されている。
1990年代末、生産年齢人口は減少に向かっており、全体としての人口減少は目の前に迫っていた。こうした大きな潮流は基本的な住まい、住居の変化として空き家率にも表れてきており、そこにも人口減少時代ならではの新たなビジネスが生まれてきている。建築の概念は新築からリフォームやリノベーションへ、空き家のセキュリティからその活用ビジネスに至まで、・・・・・こうした文脈のなかで高齢社会のスポーツを考えなければならない。井上氏は”スポーツは健康のための「手段」なのか「目的」なのか”と問い、「楽しむスポーツ」を提言してくれている。極論ではあるが、介護老人を少なくするためのスポーツではなく、老後の楽しみのなかのひとつとしてのスポーツということである。高齢者のオリンピック的競技スポーツ、マスターズスポーツとしてだけではなく、「楽しむスポーツ」という広い幅のなかでスポーツを考えようということだと思う。そして、事例として挙げてくれたソフトバレーボールのように、仲間と共に日常的な小さな楽しみとしてのスポーツによって、結果として要介護シニアが少なくなり、楽しみをもって人生を全うするためのスポーツであって欲しいものである。
そして、「楽しむ」世界はあ、旅+スポーツ、グルメ+スポーツ、ファッション+スポーツ、医療+スポーツ、はたまた、追悼+スポーツ(スポーツ葬)……と広がるのではないかと新しい市場について言及してくれている。

バランスのとれた楽しむ生活

こうした井上氏の見識を裏付けるようなデータがある。周知のように「日本一長寿の県」といえば、既に沖縄ではなく長野県である。2013年に発表されたデータを見ても、男性が80.88歳で1位、女性が87.18歳で1位と、名実ともに全国一の長寿県となっている。この長寿の秘訣として食生活を挙げる専門家が多く、確かに塩分の多い野沢菜などを食しているが、そうした塩分を排出する野菜の摂取量が極めて多くバランスがとれた生活を送っている。更に、他の長寿要因においても極めてバランスのとれた「生活県」となっている。
1、高齢者の就業率全国1位
長野の高齢者就業率(65歳以上)は26.7%で全国1位。ちなみに全国平均は20.4%。長野では定年がない農業従事者が多いことがその理由のひとつにあげられるが、平成2年から20年まで1人当たりの老人医療費は全国最低額だった。つまり、長野では老人が病気にかかることなく、元気で働いている、とも言えるだろう。
2、スポーツクラブの数全国1位
NTTタウンページのデータベースによると、長野県のスポーツクラブ数は人口10万人当たり4.97軒で、全国1位。ちなみに2位は鳥取県、3位は宮崎県だという。

他にも自然と共に生活するという昔からの生活習慣が残っており、そうしたストレスのない環境にある。そのなかでも長寿の一つに挙げられているのが温泉で、長野県の日帰り温泉は775軒でこれも全国1位。小さいころから温泉につかることが当たり前の生活を送ってきたお年寄りが少なくない。
こうしたバランスの上に長寿があるということである。長野のお年寄りを見ていくと、仕事を楽しみ、スポーツを楽しみ、長野の自然を愛で温泉を楽しむ、そんな楽しい人生が見えて来る。そして、スポーツを通して見えて来るもの、それは「バランス」というキーワードである。(続く)


元京都新聞社運動部長 
スポーツライター  井上年央
ヒット商品応援団 飯塚敞士



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