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ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2017年11月26日

「やり直し」は既に始まっている 

ヒット商品応援団日記No693(毎週更新) 2017.11.26.

前回「変わるなら、今でしょ」 というタイトルのブログを書いた。このブログを書いて大阪に向かったのだが、その大坂ではすでに「やり直し」が始まっていた。実は少し前に東京郊外横浜都築区のSCノースポート・モールのリニューアルを踏まえ、「新価格帯市場」という波が押し寄せていると指摘をした。その価格帯の象徴があのユニクロと妹ブランドGUで、特にGUのフロア面積がそれまでの標準店舗が約200坪であるのに対し、ノースポート・モールでは820坪となっている。更にこの価格帯戦略がキラーコンテンツの「何か」となり得るかはわからない」ともブログに書いた。
実は大坂で観察する目的は他にあったのだが、行けば定点観測しているSCの一つが大阪駅の駅ビル商業施設ルクアイーレである。オープンした当初三越伊勢丹によるフロアを見たときの感想は「従来の百貨店売り場・MD」で先行するしかも実績のある阪急および大丸百貨店に勝つことができるであろうか、従来の百貨店市場というパイの大きさはこれ以上大きくとはならない、そんな疑念が生じたことがあった。その数年後予測通り業績が低迷し撤退し始めるのだが、今なお地下2階の食品売り場はクローズされたままである。ところが地下1階の靴などの売り場が大幅にリニューアルされているのに驚かされた、驚いたのがノースポート・モールと同じユニクロ&GUがほぼ同じフロア面積で、この2ブランドでフロア全体を占めていることであった。正確な面積はわからないが、各400~500坪程度の規模になっている。やり直しは既に始まっており、その先頭をユニクロとGUが走り始めているということだ。
また、ルクアイーレの地下2階バルチカの「赤白」(コウハク)は変わらず流行っており、その今風の屋台のような店作りもさることながら代表的なメニューである大根の洋風おでんが1個180円という安さ。この「赤白」(コウハク)は阪急三番街を始め鉄板焼きなどの新しいメニューを追加し出店が加速している。

ところで今から3年半ほど前に未来塾「商店街から学ぶ」シリーズの第1回に「砂町銀座商店街」を取り上げたことがあった。砂町銀座商店街は東京江東区にある道幅3~5mという路地裏商店街で、周囲をアリオなど大型商業施設に囲まれ誰もがシャッター通り化するのではないかと思われていた。ところが人通りが絶えること無く、特に10日毎行われるバカ値市には人、人、人で溢れれ返る、そんな元気な商店街である。(詳細については「砂町銀座商店街」編をお読みください)
その元気な理由を以下のように整理したことがあった。
1、顧客の中心はお年寄り
2、商店街に不可欠な「界隈性」
3、名物商品と名物人物
4、人マネをしないという原則
勿論、「安さ」という魅力があるのだが、規格外商品であったり、大量仕入れによる「訳あり商品」の安さではなく、小さな商圏=仕入れ量も限られる砂町銀座のような中小零細商店にとっては「売り切ること」が経営を維持し持続させていく唯一の方法となっている。この「売り切る力」こそが商売の原点である。砂町銀座商店街の各店は生き続ける術として身につけたものであるが、ユニクロが今やろうとしていることはITを駆使して、需要を予測し、最適な生産を行い、デッドロスを出さない仕組みである。つまり「売り切る」システムの構築ということである。このことによって「価格帯」を維持し、しかも利益を出していこうということである。

デフレの日常化については1年以上前から指摘をし、可処分所得が増えない現状、その背景には企業の側も社会保険料の負担増などから給与アップを図ることができない、結果消費の低位停滞が進行していると書いてきた。更には、その内実としては保有資産の多くを持っているシニア世代はあまり消費に向かわないこと、あるいは一番消費旺盛である30代の関心事は消費には向かわず貯蓄へと向かっている、これが大雑把にいうと俯瞰的に見た消費天気図の模様である。(詳しくはデフレというキーワードでブログ内を検索してお読みください)
こうした消費模様にあって「やり直し」によって成長を遂げている企業や街はいくらでもある。1年前、その象徴である「大坂」「USJ」「新世界」「難波界隈」・・・・・こうした観察については未来塾でレポートしてきた。今回も大阪の街を歩いてきたのだが、私の持論である「横丁路地裏」に隠れた面白さに出会うことができた。(詳しくは未来塾あるいはFacebookにて公開する予定である。)
その着眼はこうである。SCという商業施設の内部であっても、オフィスビルとビルとの谷間にも、駅高架下にも、勿論既存の商店街の中にも、それぞれ横丁路地裏はある。語の正確な意味とすれば、横丁路地裏的な場所、空間は数多くあり、そこに隠れていた「何か」を発見することへと生活者、消費者の興味関心事は向かっている。一見するとつまらないありきたりの中にも、それこそ小さくても光る「何か」がある。今までは見過ごされてきたということだ。
隠れた「何か」、そこにある「大切なもの」の掘り起こしは、10年以上も前から東京谷根千では行われている。まだリノベーションという言葉が一般化していない時期である。古いアパートや一般家屋の再生、いや新たな誕生が行われ「昭和レトロ」なエリアへと変貌し一大観光地になった。今同じように、空き家やシャッター通り商店街、とりわけデッドスペースとなっていた横丁路地裏空間を若い世代向けの「バル」にしようという試みが始まっている。メニュー業態の異なる数坪の飲食店を10店舗ほど集めた小さな横丁であるが、賑わいを見せている。その先駆け的飲食街の一つが大阪梅田の「お初天神裏参道」である。裏参道というネーミングの通り、お初天神の少し手前の横丁路地裏である。あるいは阪急梅田駅外れの「かっぱ横丁」の飲食街も賑わいを見せている。実は今回行くことができなかった街の一つが大阪京橋駅北口の立ち飲み屋台ストリートである。洋食からステーキ、あるいは居酒屋メニューなどあるが、その中でも大阪人にはよく知られている屋台「とよ」に行ってみたかった。「とよ」には名物オヤジと共に名物メニューであるいくらやウニ、マグロなどの海鮮料理があるという。
勿論こうした行列の絶えない立ち飲みの店ばかりだが、前述の東京砂町銀座商店街の4大特徴と「顧客はお年寄り」という点を除けば、極めて似ている点にある。現在流行っている「バル横丁」もこの4大特徴をどこまで貫けるか、その持続性が課題であると思う。しかし、実行する前からできない理由を見つけても意味はない。やりながら「次」を考えれば良いのだ。

消費活性のためのプロモーションとして日本においても「ブラックフライデー」が実施されている。活況を見せているようだが、既に何年も前から砂町銀座商店街では「バカ値市」が行われ近隣の顧客を始めた恒例行事となっている。米国で始まった「ブラックフライデー」だが、ネット通販を中心とした小売業の趨勢の中にあって、唯一活況を見せている有店舗小売業があると言われている。それは世界最大の小売業ウオルマートである。その理由は通販で頼んだ商品の受け取り場所に、その巨大な店舗ネットワークを活用するということである。逆に解釈すれば、それほどまでに通販小売が進化し有店舗事業が低迷しているということだ。そして、日本も同様で、コンビニが今以上に通販の受け取り拠点になる。百貨店は既にやり直しが求められているが、SCもやり直しが始まっている。その再編集の鍵となるのがユニクロ&GUに見られる「価格帯市場」である。

つまり、デフレが常態化するとは、従来のやり方であれば相対的に「高い」という消費感覚を持たれてしまう、そんな時代に入っているということである。ユニクロの値上げの失敗に見られたように、その「価格」に見合う商品、魅力ある商品ではないという評価ということである。結果は、客数が大きく減少し、単価アップによる売り上げに届かないということになる。こうした時代にあって、例えば低価格路線で急成長した中華そばの幸楽苑が大幅な店舗閉鎖へと向かっている。他の低価格選択肢がある中にあっては、相対的に「高い」と感じられ始めたということだ。つまり、同じことをやっていてはいくら「低価格」であってもダメだということである。デフレの日常化とは、デフレスパイラルのフェーズに入ってきたということでもある。前回、「変わるなら、今でしょ」と書いたが、まだ遅くはない。
砂町銀座商店街ではないが、「売り切る」ためのやり直しである。ユニクロのようにシステムとしての売り切り方もあれば、以前ブログにも書いたが、「そこまでやるか」というぐらいのやり過ぎに踏み切ることも一つの方法だ。顧客に喜んでもらおうと、とことん、そこまでやるか、その旺盛なサービス精神を発揮するということである。別な視点に立って言うならば、とことん「こだわる」ということでもある。(続く)  


Posted by ヒット商品応援団 at 13:24Comments(0)新市場創造