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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2021年07月17日

失ったものの取り戻しが始まる   

ヒット商品応援団日記No793(毎週更新) 2021.7.17.

失ったものの取り戻しが始まる   


東京都に対し4回目の緊急事態宣言が発出された。今回は6週間、8月22日までとのこと。オリンピック開催、夏休み、帰省と言う「移動」が激しくなる期間に対し、移動を封じ込める意図であるが、果たして封じ込めることが可能となるのであろうか、甚だ疑問に思える。案の定東京では感染者が1000人を超え拡大基調に変わりはない。半年前の1月2回目の緊急事態宣言発出の時は2000名を超える新規感染者数に驚き、首都圏の人たちは「自制」へと向かい、以降感染者数は減少へと向かうこととなった。3回目の緊急事態宣言の時はいち早く2回目の緊急事態宣言解除に踏み切った大阪がイギリス型によって急激な感染の拡大によりある意味医療崩壊寸前、自宅待機療養者から死者が出る状態となった。結果府民の「自制」によって感染拡大は収束へと向かう。一方、こうした状況を首都圏の住民はニュースを通じ横目で見ながら自制へと向かう。このように「自制」を促す「シグナル」が必ずあり、それは1年余りのコロナ禍と言う学習によって生まれたものだ。よく緊急事態宣言発出のメッセージ性について議論されるが、「緊急」は既に日常になっており、生活者・個人が各人こうした「シグナル」を受け止め行動へと反映させていると言うことである。国会では分科会の尾見会長は感染対策に触れ「もはや行動制限による対策は終えなければならない」とはyすげんしている。私の言葉で言えば、国民も事業者も「自制」に頼った対策から科学的なサイエンステクノロジーによる対策への転換を提言していた。しかし、こんなことは1年以上前から指摘されてきたことで、今更という感がしてならないが、前回のブログにも書いたように「不安から不信へと」、社会心理は変化している。特に、「不信」については、ここ1週間ほどのコロナ担当相である西村発言騒動のようにその度合いを強めることとなった。

ところで2回目の時の宣言の規制のテーマは飛沫感染を背景とした「飲食業」であった。3回目は集客の核となる大型商業施設をはじめとした「人流」であった。そして今回4回目ののテーマは「酒類」の禁止となっている。繰り返し言われてきたことは、そのエビデンス・根拠は何かと言う指摘であったが、今回初めて酒類の禁止のエビデンスが厚労省の「アドバイザリーボード」によるレポートで、飲酒を伴う会食に複数回参加すると感染しやすくなると言う分析結果からであると。このレポートは国立感染症研究所の分析結果を踏まえたもので、陽性者の過去2週間の行動を分析したところ、飲酒付きの会食に2回以上参加した人は、参加が1回か0回の人に比べて約5倍、感染しやすかったと言う内容である。この調査は都内の医療機関で新型コロナの検査を受けた人を対象に、3月30日から6月8日の期間で調査したとのこと。調査期間は分かったが、対象となったサンプル数はどれほどなのか。抽出法は、そのサンプルの年齢や属性は。感染源と思われる飲酒時間は、利用した店の業態は。喚起の状況は・・・・・・これだけの「情報」は最低でも必要で、発表された内容では調査の体をなしておらず、これがエビデンスになることは常識的にはあり得ない。公開されたレポートから読み取れることは、飲酒の回数が多ければ多いほど感染率は高くなる、と言う至極当たり前のことしかわからない。飲酒回数を減らせば済むことで、一律に「飲酒禁止」することではない。政治家が良く使う手であるが、自らの正当性をわかりやすく理解してもらうために必ず「敵」を作る手法である。

ここ半年ほどの感染者の内訳は若い世代が半数を超えている他、感染経路の内訳としては「会食」は10%未満で、一番多いのが家庭内感染、次に多いのが職場。・・・・・・問題なのは半数以上が「経路不明」である。もし調査をしてエビデンスとして活用するのであれば、以前から何回も書いてきたが、日本の感染者約80万人、全てを対象とするのが無理であれば東京の18万人弱の感染者の分析をすべきである。つまり、「不明」のままではなく、何故不明なのか、答えたくない理由は何か、そして再度記憶を辿って答えてもらう。例えば、鳥取県の保健所がスーパースプレッダーを探し追跡しているように感染者の行動履歴を細かく追跡することである。そして、保健所のデータが手書きでデジタル化していないため「データ化」できないと言うことだが、今からでも「手書き情報」を入力する方法もある。民間の調査会社に依頼すれば少なくとも1ヶ月以内にまともな「分析結果」が得られる。感染経路を探ると言うことは、感染のメカニズム、飲食事業者も、利用する生活者・個人にとっても、具体的な「行動」として感染防止に向かうことができる。場合によっては、「どんな飲酒スタイルであれば感染を減らすことができるか」と言うことがわかるはずである。現在テストケースとして新宿歌舞伎町の飲食店を舞台に抗原検査をした陰性顧客による飲酒が行われていると聞いている。これも遅すぎることではあるが、飲食事業者も生活者個人も共に納得できる方策が求められていると言うことだ。ましてやワクチン接種が進んでいる中、先行するシニア世代が集い飲酒できるそんなテストケースも始めたら良い。分科会の尾見会長ではないが、「自制」に頼った対策からの脱却である。

さて、少し前に消費はワクチン接種を終えた高齢者から始まると書いた。その通りの動きが随所で見られるようになったが、旅行需要の「数字」については東京五輪が無観客となったことからJR各社、航空雨各社の予約状況の把握が出てはいない。受け皿となる旅行会社やホテル旅館ではワクチン接種に対する「特典付き」メニューが用意されているようだ。昨年夏はPCR検査付メニューが旅行者にとって必須のものであったが、今年の夏以降はワクチン接種済がキーワードになる。勿論、ワクチン接種がアレルギーによって難しい人もいて差別してはならないが、「特典」であれば大いに活用したら良いかと思う。
実は今回のコロナ禍によって失ってしまった最大のものは「人との触れ合い」であった。特に高齢者の場合、コロナ禍にあって最初で最大の衝撃はなんといっても志村けんさんの死であった。それは入院後わずか7日ほどで亡くなる、しかも死に目にも会えず、自宅に戻ったのは骨壺であったと言うことであった。日本人の死亡原因の1位は周知のガンである。ガンの場合、進行性の場合でも少なくとも1ヶ月以上の余裕はあり、会いたい人と会うことはできる。末期癌の場合でも家族旅行もできる。しかし、新型コロナウイルスの場合はそうしたことができない感染症の病である。

また、会いたいのは「人間」だけではない。ある意味終活の旅とでも表現したくなるような「旅」である。人生も終わりに近くなり、それまでの人生、仕事という言わば修行の「思い出」を辿る旅。若い頃の旅は「修学旅行」であったが、時代の経過と共に変わった街並や風景、変わらぬ場所や店もあったり、そんな修行時代を追憶する旅となる。
修行の日々を辿る旅であることから、100人いれば100通りの旅となる。パック旅行ではなく、行き帰りの交通、いやそれ自体もフリーなチケット購入となり、例えば修行中に食べた店を探し、そこで食べるラーメン一杯が嬉しいのだ。
「修学」には若い頃やりたくてもできなかったことへの思いが込められている。それが遊びであったり趣味や学びの世界もあるだろう。コロナ禍はそうした失ってしまったことの大切さを気付かせてくれた。失ったものを「思い出」の中から、再度探し出し出会う旅ということである。JRのチケットでロングセラー商品が青春18切符であり、元気なシニア世代には格好の旅が可能となる。また、昨年から人気となっているJR西日本の夜行列車「ウエストエクスプレス銀河」も更に人気となる。「昭和」を満喫できる旅ということだ。

こうした「思い出」の中にある消費は勿論高齢者だけのものではない。若い世代、中学生の「思い出消費」の代表商品があの「揚げパン」である。学校給食で出されていたあの揚げパンである。その復活を作ったのがコンビニで一時期ヒット商品となったことはよく知られたことである。ある意味「リバイバル」「復興」「復刻」といった着眼が今後の消費舞台に上がると思う。団塊の世代であれば、ファッションであればヴァンジャケットやKENT、リーバイス。車好きであれば中古のスカイラインGTRやセリカ。音楽であれば吉田拓郎や井上陽水。
昭和レトロは時代のトレンドであるが、昭和を生きた高齢者にとって、思い出の中の昭和は昭和らしい「昭和」の世界である。昭和そのもので、例えばスパイスカレー全盛の現在にあってジャガイモやニンジン・玉ねぎがごろごろと入ったカレーライスとなる。

こうしたことを指摘するのも2008年のリーマンショック後に現れた多くのヒット商品である。コロナ禍という不安の時代から生まれたもの、それは巣ごもり消費といった大きな潮流を超えて、それまで大切にしてきたことは何か、不安がなくなった後取り戻したいものは何か、・・・・・・・つまり、過去をはじめとした回帰現象が多発する。ちなみに2009年のヒット商品は経MJが行った2009年度のヒット商品番付では次の通りであった。

東横綱 エコカー、 西横綱 激安ジーンズ
東大関 フリー、    西大関 LED
東関脇 規格外野菜、西関脇 餃子の王将
東小結 下取り、   西小結 ツィッター
東西前頭 アタックNeo、ドラクエ9、ファストファッション、フィッツ、韓国旅行、仏像、新型インフル対策グッズ、ウーノ フォグバー、お弁当、THIS IS IT、戦国BASARA、ランニング&サイクリング、PEN E-P1、ザ・ビートルズリマスター盤CD、ベイブレード、ダウニー、山崎豊子、1Q84、ポメラ、けいおん!、シニア・ビューティ、蒸気レスIH炊飯器、粉もん、ハイボール、sweet、LABII日本総本店、い・ろ・は・す、ノート、

デフレ時代の特徴と共に、実は回帰傾向が顕著に出た一年であった。しかも、2009年の特徴は、数年前までの団塊シニア中心の回帰型消費が若い世代にも拡大してきたことにある。復刻、リバイバル、レトロ、こうしたキーワードがあてはまる商品が前頭に並んでいる。花王の白髪染め「ブローネ」を始めとした「シニア・ビューティ」をテーマとした青春フィードバック商品群。1986年に登場したあのドラクエの「ドラクエ9」は出荷本数は優に400万本を超えた。若い世代にとって温故知新であるサントリー角の「ハイボール」。私にとって、知らなかったヒット商品の一つであったのが、現代版ベーゴマの「ベイブレード」で、1998年夏の発売以来1100万個売り上げたお化け商品である。この延長線上に、東京台場に等身大立像で登場した「機動戦士ガンダム」や神戸の「鉄人28号」に話題が集まった。あるいは、オリンパスの一眼レフ「PEN E-P1」もレトロデザインで一種の復刻版カメラだ。売れない音楽業界で売れたのが「ザ・ビートルズ リマスター版CD」であり、同様に売れない出版業界で売れたのが山崎豊子の「不毛地帯」「沈まぬ太陽」で共に100万部を超えた。

こうしたヒット商品はリーマンショック翌年の2009年のヒット商品である。今年のヒット商品はシニア世代による旅行関連商品、リアル昭和商品、・・・・・・こうした先行市場から消費市場は進展していくであろう。そして、「西武園ゆうえんち」のコンセプトは「昭和レトロ」で、「生きた昭和の熱気溢れる1日」がテーマとなっている。その背景であるが、昭和33年(1958年)の東京の下町を舞台とした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が描く世界である。ソーシャルデイスタンス、人と人との距離をとることを余儀なくされたコロナ禍。失ってしまったのは「人の温もり」「父性や母性」、あるいは「友情」であった。そんな「温もり」を感じさせてくれる商品やサービスに注目が集まるであろう。ちなみに、冒頭の写真は『ALWAYS 三丁目の夕日』のラストシーンである。(続く)


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