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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2021年05月02日

分散化した賑わいが始まる 

ヒット商品応援団日記No786(毎週更新) 2021.5.2.

分散化した賑わいが始まる 


ヒット商品応援団の主要なテーマは周知の通り「賑わい」で、その理由がどこにあるかを観察し分析することであった。そして、この1年コロナ禍によって賑わいがどのような「変化」を、街に、商業施設に、生活者心理に生み出してきたかを明らかにすることであった。
コロナ禍にあってよく使われる言葉に「不要不急」がある。不要不急の外出は控えて欲しいといった要請が盛んに使われてきたが、3回目の緊急事態宣言では「人流」という聞き慣れない言葉が飛び交っている。人流を止めないと感染防止ができないという理由からだが、この1年感染の主たる原因は「飛沫感染」であることがエビデンス、主に状況証拠の積み重ねでわかってきた。今回の緊急事態宣言においてはこの飲食店を中心とした飛沫感染に的を絞っただけでは感染拡大を防止できないということからであった。但し、政府分科会の尾見会長をはじめその「根拠」、エビデンス(証拠)はないという。ある感染症の専門家は100年前のペストの流行以来感染防止には人の移動を止めることが一番であるからと感染症学の教科書のような言説を披瀝する。結果、欧米のような都市封鎖まではいかないが、百貨店や家電量販店をはじめ生活必需品以外の流通の多くに休業要請、もしくは時短営業要請が今行われている。

さて、どんな「変化」がこのGWに起きているかである。まず不要不急の「人流」と言えば「旅行」となる。既にこのブログでも少し触れたが29日の新幹線の自由席の乗車率は東海道新幹線の下りで最大60%などと目立った混雑は起きてはいない。ただ、JR各社によればゴールデンウィークの指定席の予約状況は4月15日時点で去年の2.5倍を超えていると。また全日空によると、ゴールデンウィークの予約数は、去年と比べおよそ7.5倍と大幅に増加している。3回目の「宣言」発表前後での予約のキャンセルも7%にとどまったとも。つまり、不要不急の旅行は昨年の緊急事態宣言の時と比較し明確に増加しているということである。注視すべきは何故「増加」したかである。多くのコメンテーターは自粛疲れ解消とか我慢の限界を口にするが、表向きはそうした表現があったとしても裏側には昨年とは異なる生活者が見えてくる。それはいうまでも無く1年間コロナ学習をしてきた「生活者」の顔である。そして、昨年との比較ばかりが報道されているが、実はコロナ禍以前2年前と比較してどうかである。正確なデータではないが、昨年の2~3倍の増加ではあるが、2年前と比較し約20%弱にとどまっているという事実を踏まえなければならない。つまり、ある意味徐々に旅行へと踏み出したということであろう。ちなみにJTBの調査によれば、旅行に「行く」は10・3%で、例年の4人に1人から今年は10人に1人まで減少。「行く」と回答した10・3%を年代別にみると、男女とも若い世代をほど高く旅行日数は「1泊」が39・2%で最多。3泊までの旅行が8割以上で、旅行に行っても日数は控えめだ。ちなみに、例年報道されるGW期間中の高速道路の混雑情報はほとんど話題になってはいないが、やはり渋滞は起きているようだ。

こうした不要不急の代表となっている「旅行」を見ても分かるように、移動に使う新幹線や航空機でのクラスター発生は無く、感染拡大地域を外せば安全であると。例えば感染が治った沖縄には観光客は多いという。那覇には松山という新宿歌舞伎町のような繁華街があるがそうしたエリアを避ければリゾートライフを満喫できるということだ。そして、連休前には都内のPCR検査ショップには長蛇の列が伸びていた。移動の前に少しの安心を得るためであるが、これが昨年のGWとの違いであろう。
また、首都圏の知事が都と県の境を越えないでと盛んに自粛要請するが、GW期間中ばらつきはあるもののまんえん防止策の取られていないエリアへと見事なくらい「移動」している。例えば、首都圏郊外にある大型ショッピングモールなどへ出かけ映画を楽しんだり食事をしたり半日ほどの時間を過ごす。この1年キャンピングブームが加熱気味になっているが、周辺のキャンプ場は何処も満杯状況である。また、昨年の秋以降賑わいどころか混雑しているハイキングの高尾山であるが、緊急事態宣言発出前の駆け込み登山がひどい混雑であったと報道されていたが、期間中もケーブルカーや観光リフトの営業は続けており、「密」を避けたオープンエアな場所には賑わいを見せると思われる。また、「密」になることが想定される例えば観光地横浜の人気スポット「カップヌードルミュージアム」などは入館者の制限やアトラクションの一部休止など多くの措置が取られている。そして、桜木町とみなとみらいを結ぶロープウェイが開業し赤レンガ倉庫一帯は賑わいを見せるであろう。つまり、情報の時代であり、スマホで検索すればいくらでも楽しめる「場所」を探すことはできる。

ところでこうした「賑わい」の中心は若い世代であるが、巣ごもり生活という一種の「自己隔離」を余儀なくされてきた高齢者はワクチン接種に殺到している。原因はワクチンの供給量が少ないためだが、公平平等を原則としたため、人口の少ない地方の市町村ではほとんど混乱は起きず、一方都市部では電話は繋がらず、HP上での予約サイトにもアクセスが殺到しシステムダウンを起こすなど一部地域の市庁舎には高齢者が押し掛けると言った混乱が見られた。重症化率、死亡率の高い高齢者にとってワクチンは不安や恐怖を解消してくれる唯一のものだからだ。政府も自治体も、高齢者の心理がどれほどであるかを推し量ることができなかったということだ。例えば、名古屋市の場合コールセンターに125回線を準備し、1日5000件の対応を想定していたが、実際には22日だけで、およそ1万5000件がかかってきたという。
こうしたことは高齢者心理だけでなく、例えば東京都の場合、若い世代の感染率が高く、人出も多くその実態をつかみかねてのことから、渋谷などの街頭でヒアリング調査を行なっている。何故「出かけるのか」などの質問を友人同士など複数の若い世代を中心にした調査とのことだが、コロナ禍でしかも人出が多い渋谷などの街頭で「まとも」な答え、本音を引き出すことなどあり得ない。調査の手法であれば、複数人ではなく、個別のパーソナルインタビュー。あるいは深層心理を探るデプスインタビューなどが考えられるが、素人の東京都職員がインタビューしてもまともな答えなど得られるはずはない。これも政治における「やってる感」を演出する、パフォーマンスであると言われても仕方がない。若い世代を弁護するわけではないが、1年前には路上での飲酒など一切なかった。単純な話お酒を売る居酒屋での酒の販売を禁止したからである。この若い世代のパーソナリティについては「消費」という側面からかなり前から分析したことがある。昨年の夏この世代を悪者化する報道があったとき、詳しく分析結果をブログに書いたが、いわゆる「草食世代」と呼ばれた世代で「離れ世代」と呼んだことがった。車離れ、恋愛離れ、アルコール離れ、・・・・・・趣味と実益を兼ねた貯金を常に考える合理主義者である。彼らの「合理」に答えてあげることが感染防止に役立つということだ。その「合理」には当然のことであるが、感染のメカニズム、そのエビデンス、証拠がある。例えば、飲食の際の飛沫が感染源であると言われているが、それはあくまでも状況証拠でその状況の積み重ねでカッコ付きのエビデンスとしている。カッコ付きのカッコを外して欲しいという意見もあるが、状況とは具体的であり、どんな街のどんな飲食店でどんな人たちで何時間ぐらい・・・・・・・・そうしたことを明らかにすることである。

思い起こせば、そうした具体的な事例が公開されたのは1年2ヶ月ほど前の大阪梅田のライブハウスでのクラスター発生で、どんな環境で何人ぐらいの客で、・・・・・・かなりの状況が明らかになった。こうした「事実」をもとにエビデンスが明らかになっていくと思っていたが、何故できなかったのか。それはこうした「状況」情報を集めていくのがいわゆる保健所による疫学調査であった。しかし、実態はこの「状況」情報はペーパーで行われており、・・・・・・これ以上言わなくも分かると思うが、デジタル化しておけば膨大な情報の解析、つまりビッグデーター解析に基づくより明確な証拠になり得たということだ。現在、約58万程の感染者の感染状況が明確になったということである。これはクラスター発生の追跡だけでなく、生活者にとっても事業者にとっても意味ある対策、特に若い世代にとっても合理的な「答え」となる。今となっては死んだ子の年齢を数えることになってしまうが、今も苦労している保健所、現場の情報が生かされることにつながる筈である。情報の活かし方が決定的に間違っていたということである。根拠がないまま対策がなされるということは後手後手になるのは必然であり、生活者は勿論感染防止の最前線となっている飲食店はじめ多くの事業者に犠牲を強いることに終始する。

今回の「人流」を止めることによる感染拡大防止策は解除の目標が示されないことから今回の緊急事態宣言の成功・失敗といった論議もない。ビジネスの世界で言えば破綻に向かうということだ。唯一免れることができるとすれば、ワクチン接種のスピード以外にない。俯瞰的に見れば、前回書いたように夏には旅行を始め高齢者の移動は活発化する。人流の中心は若い世代を含め高齢者が一挙に増加する。そして、新たな賑わいを含め、多様で小さな賑わいが都市部でも地方でも見られるようになる。日本経済の立て直しの先頭に高齢者がなるであろう。高齢者が求めていることは、何よりも子や孫と会うことである。三世代旅行をはじめ孫へのプレゼントなど大きな消費が生まれる。例えば、コースにもよるが37万円〜80っ万円という|JR東日本の豪華寝台列車「四季島」2021年夏季出発分の申し込み受付開始 が開始するが、こうした旅行商品に申し込みは殺到するであろう。またインバウンド需要のない苦労している百貨店も活況を見せるであろう。ワクチン接種によって消費都市は復活し、次第に地方へ波及していくであろう。そして、地方への波及のパスポートにはPCR検査証明ではなく、ワクチン接種証明書になる。安心へのエビデンス・証拠はワクチンということである。今年のGWはおそるおそるの移動であったが、本格的なコロナとの共生、季節性インフルエンザと同じような「日常」、小さな賑わいは高齢者市場から始まるということだ。(続く)


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