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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2020年03月25日

間違えてはならない、「現場」によってのみ危機は乗り越えることができる

ヒット商品応援団日記No761(毎週更新) 2020.3.25。

前回ブログのタイトルは「パニック前夜」であった。そのパニックは日本国内から世界へ、「移動の抑制・制限」にとどまらず、「金融・株式市場」のパニックへと伝播し、周知のようにリーマンショックの時以上の株が投げ売りされている。私のブログに「巣ごもり生活」というキーワードでアクセスする人が増えているが、これは10%の消費増税が実施され、消費経済が大きく落ち込んだ背景を踏まえた予測であった。その消費増税の実際は、駆け込み需要もそれほどみられず、昨年10月以降は周知の通りGDPはマイナス成長となった。
ところで、「巣ごもり」といった少しの消費抑制程度の危機どころではなくなった。1990年代初頭のバブル崩壊の時に使われた「氷河期」というキーワードを前回のブログに書いた。その氷河期が表す意味は、就職時期に重なった世代がどの企業も採用を減らし就職できない若い世代が一挙に増えたことを言い表した言葉であった。以降、就職できない若い世代をフリーターといった言葉や、後に正規・非正規労働といった働き方自体を変えることになった。つまり、単なる就職難といったことが起きつつあることを指摘したのではない。つまり、これまでの価値観を変えなければならないフェーズに向かっていると理解すべきである。

一般論ではあるが、経済ショックは主に需要ショック、供給ショック、金融ショックの3つがある。この一年ほど起きた「事件」に沿って理解するとすれば、例えば需要ショックは増税等によって消費や設備投資が減少し経済が低迷すること、供給ショックは今回の新型コロナウイルスの震源地である中国湖北省周辺にある工場などの供給がストップあるいは製造能力の毀損によって経済が低迷すること、金融ショックは金融機関の破綻等によって経済が低迷することを指す。今回は新型コロナウイルスの感染拡大によって工場の生産能力低下、供給網や交通網の遮断、小売り店舗の一部閉鎖などが起こったこと、つまりサプライチェーンの機能不全である。そして、今回の金融コロナショックである。そもそも中央銀行による利下げは需要ショックに対処する金融政策なので(FRBが緊急利下げを行ったところで感染拡大を抑制(供給能力を回復)できるわけではない)、株式市場が「売り」で反応しても不思議ではない。つまり、3つのショックが日本のみならず、世界中で起きているという理解である。

ところでバブル崩壊によって「何が」起きたか今一度考えて見ることが必要である。まず社会現象として初めて現れてきたのが「リストラ」であった。リストラの舞台については後にベストセラーとなった麒麟の田村が書いた「ホームレス中学生」を思い起こしてもらえれば十分であろう。残業がなくなり「父帰る」というキーワードとともに、外食が減り、味噌・醤油といった内食需要が高まった時代である。現在の夫婦共稼ぎ時代で置き換えれば、半調理済食品やレトルト食品や冷凍食品になる。この内食傾向はスーパーマーケットの売り上げが前年比プラスであったのに対し、百貨店の場合は周知のように大きくマイナス成長であった。また、「リーズナブル」という言葉とともに、「価格」の再考が始まる。これは後にデフレ経済へと向かっていくのだが、注視すべきは流通の変化で百貨店からSC(ショッピングセンター)への転換と通販の勃興である。今回のコロナショックは百貨店の主要な2大顧客であるインバウンド需要と株式投資などの主要メンバーである個人投資家の消費が減少し、百貨店は更に苦境に陥るということである。この2大顧客は勿論のこと観光・旅行産業の中心顧客であり、コロナショックは直撃していることは言うまでもない。

ところで新型コロナウイルス感染症に関する中小企業・小規模事業者の資金繰りについて中小企業金融相談窓口が開設されている。梶山経済産業大臣は、新型コロナウイルスに関する国などの支援窓口への相談件数が、驚くことに6万件近くに上っていることを明らかにした。その内の、9割が資金繰りの相談だということ。いかに経営体力がない状態に陥っているかがわかる。観光や飲食だけでなく、製造業を含む幅広い業種に影響が広がっている。政府はすでに支援策を打ち出したが、中小企業の手元資金は1カ月分程度とされる。
1ヶ月ほど前のブログに「移動抑制は消費経済に直接影響する」と書いた。2月の東海道新幹線の利用者は前年同月比8%減だったが、3月に入って落ち込み幅が拡大。1日~9日の利用者は前年同期比56%減となり、東日本大震災が発生した2011年3月の落ち込み幅(20%減)を大きく上回った。「2月後半からここまでになるとは予想していなかった」と報道されている。
国連の国際民間航空機関(ICAO)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うキャンセルの増加で、世界の航空会社の売上高が今年第1・四半期に40億ドル━50億ドル減少する可能性があるとの試算を示している。ICAOは声明で、キャンセルは規模でも地域的な広がりの面でも2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時を上回っており、航空業界に与える影響もSARSより大きいとみられると指摘している。
ちなみにICAOによると、70の航空会社が中国に就航する国際線の運航をすべて停止し、これとは別に50社が減便している。これにより、中国に就航する国際線の直行便の旅客輸送能力は80%落ち込み、中国の航空会社は40%減少したとも。そして、この報道を追いかけるように日本のANA海外便の大幅な減少どころか国内便需要も大きく落ち始めている。ちなみにANA、JALともに3月の予約数は前年比で約4割減少とのこと。

消費氷河期とは単なる抑制した「巣ごもり生活」ではなく、残念ながら多くの凍死と言う倒産企業を産み、リストラされる労働者もまた続出する社会のことである。フリーター、アルバイト、非正規労働者にとどまらず正規労働者も解雇される時代ということである。ちょうど30年前のバブル崩壊後の風景に近い。
やっと与野党の政治家からコロナショック対策の発言が見られるようになった。そして、思い切った政策が必要であるとも。そして、論調の多くは2つに分かれる。1つは一定期間消費税を凍結、つまり消費税をゼロにして消費を活性させる案である。もう一つが子育て世代とか、生活困窮者といった従来の考えから離れ直接全ての個人生活者へ例えば5万円あるいは商品券を給付するという案である。共に、凍える生活者の財布を少しでも楽にする大胆な財政政策である。従来のキャッシュレスによるポイント還元などとは根底から異なるもので、こうした政策の進展と共に、「移動の抑制」緩和を徐々に進めていくことである。例えば、小中高の一斉休校のように「一斉」ではなく、感染者のいない地域、市町村では既に始まっているように通常の学校生活をスタートさせる。スポーツ・文化イベントもその規模やクラスター感染が起こる条件などを精査し、ガイドラインを作り徐々に緩和していくということである。ある意味、新型コロナウイルスと徐々に折り合いをつけていく方法である。その司令塔は現場である地域であり、独自な組織を持って対応していく「大阪」のような方法も一つであろう。

マスメディア、特にTVメディアによるPCR検査拡充の是非論議はもう終わりにすべきである。「不安」解消のためにはPCR検査が必要である、一方陽性反応が出れば入院させる病床が不足する、といった論議である。事態はそれどころではなくなってきている。また、大学の感染学の講義であるかのような解説も無用とは言わないがもっとわかりやすく番組構成されるべきである。ウイルス感染における「パンデミック(世界大流行)」程度はまだしも、オーバーシュート(感染爆発)やクラスター(感染者の塊・小集団)あるいは(ロックダウン(外出制限・封鎖)といった用語は使わないことだ。分からなければ、それだけ「不安」を煽るだけになってしまうということである。

ウイルスと戦っている現場の医師や看護士にとって「講義」のような世界とは全く無縁のところで頑張っている。思い起こすのは9年前の東日本大震災、中でも放射能汚染にみまわれた福島県の医療再生に今なお貢献している医師達がいる。その中心となっているのが坪倉正治氏で地域医療の再生プロジェクトを立ち上げ全国から同じ志を持った医師と共に再生を目指している現場の医師である。臨床医であると同時に多くの放射能汚染に関する論文を世界に向けて発表するだけでなく、福島の地元のこともたちに「放射能とは何か」をやさしく話聞かせてくれる先生でもある。ウイルスも放射能も異なるものだが、同じ「見えない世界」である。坪倉正治氏が小学生にもわかるように語りかけることが今最も必要となっている。「講義」などではないということだ。小学生に語りかける「坪倉正治氏の放射線教室」は作家村上龍のJMMで配信されている。残念なことではあるが、これから先間違いなく凍死者、凍死企業が続出する。その前に、どんな言葉で語りかけるべきか、講義などではないことだけは確かである。

こうした危機にあっては「現場」によってのみ乗り越えることができる。阪神淡路震災の時はボランティア元年と言われ、しかも瓦礫に埋もれた人の救出にはトリアージ的な判断が消防隊員は考え行動していたし、ちょうど同じ時期に起こった地下鉄サリン事件の時はバタバタと倒れる人たちのために聖路加病院はサリン被災者を受け入れるために病室どころかフロアを収容病棟にして危機を乗り越えた。そして、東日本大震災の時には、行政も病院も被災する中で、全国から多くの支援を行ってきた。それら全て「現場」によって為し得たことである。
今回の新型コロナウイルス感染による超えなければならない目標はどれだけ死者を少なくするかであるが、もう一つ超えるべきはこの災害による自殺者をどれだけ少なくするかである。厚労省のデータではないが、リーマンショックによる自殺者は8000名と言われている。東京オリンピック2020が1年程度延期になったと報道されているが、TV番組はその裏事情や裏話など感染学の講義と共に終始している。今回の「危機」をエンターティメント・娯楽にしてはならないということである。(続く)


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タグ :コロナ危機

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