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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2019年06月02日

楽しむデフレから深刻なデフレへ 

ヒット商品応援団日記No738(毎週更新) 2019.6.2.

楽しむデフレから深刻なデフレへ 


長い令和休日も終わり令和の時代が具体的にスタートした。その国賓の第一号として米国トランプ大統領が来日し、その話題でTVニュースの多くがが埋まっていた。こうした中で懸案であった1-3月のGDP速報値の発表がなされた。多くの民間シンクタンクのマイナス予想とは大きく異なる年率プラス2.1%成長という結果であった。しかし、日本の経済に問題ないかと言えばその逆で、プラス成長の理由が大幅な輸入減少であることがわかった。つまり、このプラス成長の数字に貢献したのが輸入の減少によるもので、内需の拡大や輸出の拡大によるプラスではないという事実であった。マクロ経済の専門家ではないので専門家の論を借りれば、名目値で言えば102.9兆円もあった輸入が94.7兆円へ。8.2兆円も輸入が減少したということであった。この8.2兆円の減少が見かけ上のGDPを押し上げたというわけであった。この輸入減少がなければ、多くのシンクタンクが予測したように名目で年率マイナス2.7%であったということである。

さて問題なのはこの「輸入減少」にある。国も人も同じように景気の良い時は多くのモノを買い生活を満たすことであったが、実は日本の購買力が落ち始めていると分析する専門家は多い。購買力の低下とは内需の冷え込みのことであり、その内需とは個人消費と設備投資がその多くを占める。私流の表現に従えば、個人消費で言えば「デフレを楽しむ生活」であり、設備投資で言えば「人手というロボット」という単なる生産性の視点によってしかビジネスを見ようとしない経営、そんな時代を迎えようとしている。極論ではあるが、生産性の視点に立てば、お金がお金を生む投資がリスクはあるものの一番効率が良いとする考え方である。例えば、設備投資ではなく、ビットコインのような金融投資へと向かうことである。しかも、それら投資は「企業」だけでなく、「個人」によっても行われるが、その世界を広げれば企業における海外の有望企業への株投資や買収と同じ発想である。設備投資とはその設備を使うのは「人」であり、人への投資へと向かうこととなるのだが、現段階ではその設備(ロボット化)の方が人より生産性高く働いてくれることが多くなってきている。少し前から、コンビニや飲食チェーン店のバックヤードなどでの悪質な「悪ふざけ」動画のSNSへの投稿が問題となっているが、各店のオーナーや店長はレベルの低いアルバイトを使わざるを得ない人手不足状況によるものと理解はしているが、本音はそんな低レベルのアルバイトなど使わずに、「ロボット」に全てを任せたいと思っている経営者は多い。勿論、こうしたロボット化とは異なる道、「人」への投資を実践している企業も多くあり、このブログでも取り上げてきたが、現在はそうした過度期にあるといえよう。

前回の再掲したブログでは競争市場にあって5つの違い(差)づくりの事例を再度取り上げた。なぜ取り上げたのかその背景は勿論消費増税を迎えどんな違い=戦略を採ったら良いのかその判断材料の一つにしてもらいたかったからである。多くのビジネスマンが注視するのがやはり「価格」であり、内需冷え込みの最大の課題である個人消費の低迷の「今」を少しの事例を含め報告することとする。
「価格」について一番わかりやすいのが食品スーパーであろう。今、神奈川県の専門店において注目されているのが食品スーパーのロピアとオーケーの戦いであるという。エブリデーロープライスをポリシーとしたオーケーについては何回かブログで取り上げてきたのでここでは省略するが、一方のロピアはここ数年前からオーケーに対抗できる食品スーパーとしてデベロッパーによる戦略テナントとして導入されてきた企業である。そのロピアの強みは高品質で低価格な精肉という商品で主婦の圧倒的な支持を得ている食品スーパーである。神奈川の大手デベロッパーである海老名のららぽ~とを始め、橋本のSCミウイ、さらに以前価格帯市場というキーワードで取り上げた横浜港北ニュータウン・ノースポートモールにそのロピアが今年3月に導入されている。ある意味SC集客の立て直しの戦略テナントとして導入されたのだが、その競争相手が同じ商圏内にあるオーケー対してである。
今年3月にノースポートモールにロピアが導入され周辺市場はどうなったかというと、オープン以降ロピアと近くにあるオーケー以外の食品スーパーは極論を言えば客数が激減したと言われている。実はノースポートモールの食品売り場の一つであったブルーミングブルーミー(いなげやグループ)の撤退に伴い富士ガーデン(ニュークイックグループ)も併せて導入されている。少し専門的になるが、ニュークイックは首都圏のSCなどの精肉売り場を展開している大手専門店であり、ロピアもまた精肉関連の強みを持った食品スーパーである。ロピアとオーケーそれぞれの強みを生かした売場作りを行っているが、勿論その競争軸は「価格」にあることは言うまでもない。どんな価格帯で市場を制するか、プライスリーダー競争が始まっているということである。この競争から学ぶべきことの一つは、この2社に顧客は集中し、同一商圏内の他の小売業・専門店は大きな打撃を受けるということにある。
実は「価格帯市場」というキーワードを使ったのは今から2年半ほど前からであるが、ロピア対オーケーという競争軸がら見えてくることは、その価格が更に押し下げられ消費移動が始まると理解認識すべき点にある。
ライフスタイルの変化は「日常」、しかも「小さなこと」から始まる。その変化が一番わかりやすく出てくるのが「食」である。売れない雑誌にあって、発行部数を落とし続けてきた「レタスクラブ」は編集長を変え、それまでの料理における「こだわりレシピ」から「簡単レシピ」へと変更し、特に1ヶ月分の献立カレンダーは読者から好評を得ているという。あれこれ考えることなく、忙しい主婦の味方になっているように、「時短」コンセプトによる「使える雑誌・情報」に支持が集まっているからである。

そして、この「デフレを楽しむ」生活の知恵がやっと売れない雑誌をも立て直したということでもある。こうした傾向は郊外の主婦に向けた市場の中心的価値観の多くを占めているが、都市部のSCを中心とした「食」の分野も「低価格帯」とは異なるもう一つの市場が生まれてきている。そのリーダー的企業が成城石井であろう。低価格帯とは言えない市場であるが、それまでの輸入食品や生鮮品のこだわり食材に特徴を見出してきた成城石井であるが、一時期経営がおかしくなり、10年ほど前から立て直しが始まる。本店であった成城駅前店にはよく行くのだが、そこで立て直しの食として出会ったのが「パン」であった。勿論「手作りパン」であるが、こうした日常の小さな惣菜類に至るまで多くの「手作り食」を提供することによって売上利益ともに一つの軌道に乗せた経緯を記憶している。今成城石井が行っていることは「イートインスペース」が作られ成城石井らしさ、というライフスタイル感の創造の試みである。家庭で作るのは少々大変であるが、「こだわり食」をイートインでも食べることができるということである。雑誌レタスクラブのコンテンツであった「こだわり食」が成城石井であれは少し高い価格ではあるが、食べることができ。その食材を購入も勿論できる、そんなこだわりのライフスタイルの提供と言える。

成城石井のような都市型ライフスタイルの創造アプローチによる市場創造にはここ数年いくつかの企業が参入し始めている。その代表的企業が雑貨を本業とする無印とロフトである。取扱商品という側面からは「雑貨専門店」ではあるが、目指すところは成城石井と同様ライフスタイルの提供にある。この2社に足りなかったのが「食」でライフスタイルの提供には実は欠かせない商品となっており、どこまでやり切れるか注視していきたいと思っている。その無印であるがかなり以前から「食」についてはレトルトカレーなど販売してきているが、昨年秋に発売した「ぬか床」がヒット商品となった。しかし、発酵させるには時間がかかることもあって、今なお欠品が続いている。食は日常であり、欠品は致命的なことになる。ホテルに併設された銀座の店舗では弁当も取り扱っているようだが、単なる話題作りに終わらせないで欲しい。
一方、銀座ロフトもリニューアルを行い、その目玉としているのが「食」である。着眼としては無印と同様であるが、銀座ロフトの「ロフトフードラボ」では、ブランチやカフェタイムに、夜にはバーとしても利用できる約30席のイートインコーナー。素材にこだわった限定スイーツやフルーツドリンクを楽しめる一つのライフスタイルアプローチである。2社ともに言えることだが、単なるライフスタイルの演出ツールとしての「食」に終わらせないでほしい。

今回取り上げたのは価格帯市場の「今」とともに、もう一つのアプローチであるライフスタイルへの着眼。そうした競争市場が、同じ商圏内、同じジャンル内、更にはそうしたシェアーを得るべく軽減税率の対象となっている「食」を取り入れた競争が始まっているということである。2ヶ月ほど前のブログにも書いたが、乳製品を始め人件費や物流費の高騰により「値上げ」の春という表現を使ったが、6月になってもカップ麺など値上げが続く。こうした値上げは、消費税10%導入後の値上げは不可能であると考えているからである。政府のキャッシュレス化推進に合わせて各社の「ポイント」競争が展開されているが、この「お得競争」があらゆる業種・領域に浸透し、結果は当然であるが「デフレ」はますます深刻なものとなる。楽しめるデフレから深刻なデフレに向かうということである。500円ランチは400円になり、千ベロ酒場はおじさんだけでなく若い世代向けも含め一般化し手織り、その代表的な店が大阪ルクアイーレの紅白(コウハク)や「魚屋スタンドふじ子」である。中食は勿論だが、内食も更に進み、しかも「時短」でないものは売れなくなるであろう。一方企業の側もスーパーにおけるセルフレジのみならず、ユニクロのように購入商品をカゴに入れたまま精算支払いができる無人化も進む。経営体力のある企業は生き延びていくが、中小、特に家族でやっているような街場の飲食店は後継者もいないこともあってどんどん閉店していくこととなる。一時期話題となったTV番組「孤独のグルメ」に取り上げられた街場の名店も次々と閉店している。東長崎の「せきざわ食堂、江東区枝川の定食屋「アトム」、浦安にある静岡おでんが食べられるカフェ「Loco Dish」、私の自宅の近くにあった千歳船橋の「中華日和」も閉店したようである。名店と呼ばれた店ですらこうした状況にある。消費増税による影響は利便性の高い駅から離れた住宅地の商店街・商店からすでに消滅が始まっている。深刻なデフレとは、衰退ではなく、消滅へと向かうことである。

こうした購買力の低下に伴う市場・顧客変化が進むなか、少し視野を広げれば米中貿易戦争の影響が日本の産業界に押し寄せ始めている。それは両政府間の関税競争から、ファーウエイへのアンドロイドOSへの提供を打ち切ると発表したGoogleのように民間企業間に消費生活に直接その影響が出始めている。周知のようにソフトバンク始め、「5G」についてはファーウエイ排除へと動いており、至る所で影響は出てきている。勿論、その先にはAI(ビッグデータ)における競争、覇権争いがある。6月末のG20サミットが一つの山になると言われているが、簡単に終わる「戦争」ではない。両国とはその貿易面で密接な関係にある日本であり、「消費」への影響がどんなところに出てくるか注視していかなければならない。何が起こっても不思議ではないという時代に入りつつあるということだ。(続く)

 

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:09│Comments(0)新市場創造
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