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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2019年01月02日

大変で、しかも厄介な時代になる 

ヒット商品応援団日記No725(毎週更新) 2019.1.2.

あけましておめでとうございます。例年新聞各紙を読み、それらを踏まえての年頭のコメント書くのだが、今年もまた特筆すべきことがなく、やはり消費増税をどう迎えるべきかについて書き留めておきたい。
昨年125年の歴史を誇る米小売業シアーズが日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用をニューヨーク州の破産裁判所に申請し、実質的に倒産した。裁判所に提出された資料によると、負債総額は約113億ドル(およそ1兆3000億円)と報じられた。
破綻の要因については中核となるカタログ販売に代わる収益基盤を長年構築できなかったこと。最後はアマゾン・ドット・コムなど新興のネット通販各社に対抗できず、息の根を止められたと専門家は指摘する。確かにそうした指摘は当たっているとは思う。実はアニュアルリポートによれば、シアーズの2017年の売上は167億ドル(1.87兆円)でピーク時の3分の1以下に減り、経営は3.8億ドル(418億円)の赤字となっている。総資産も、店舗の閉店と売却により、72億ドル(7920億円)に減っている。そして、2011年から7年連続の赤字であったという。

米国小売業に詳しい専門家によれば、2018年にはFRBの2度の利上げが行われた。資本市場から調達する米国においては、ゼロ金利による生命維持装置でシアーズは約8年延命したと言われている。つまり、赤字経営という店舗閉鎖せざるを得ない状況においては、満期がきた社債の返済ができなくなる。そして、更に金利が上がれば社債の追加発行もできなくなる。簡単に言ってしまえば、いやあたり前のことだが、売上・利益をあげ社債の金利を低くすることが求められるということだ。
このことは米国だけの問題ではない。ゼロ金利という生命維持装置とは俗にいうところの「ゾンビ企業救済」のことでもある。売上を上げることとは顧客の支持を持続・発展させることである。そのためには、言うまでもなく「自ら変わること」によってのみ可能となる。私が1990年代初頭のバブル崩壊によって大きく変わったことを「パラダイム転換」と言うキーワードでブログに書いたことがあった。その価値観の転換とは市場・顧客が変わったことのレポートであった。収入が減り、顧客が変わったことによって、デフレの騎手と呼ばれたユニクロなどの企業が消費の表舞台に上がったことは周知の通りである。
他にはない固有の価値を持つ商品以外は価格差が市場を支配する。この潮流は日本は勿論のこと米国においても同様である。市場から撤退した企業の多くは、顧客にとってみれば「なんでもあるが、買うものがない」と言うことになる。シアーズがおかれた市場環境を整理すると以下のようになる。
・GAPに代表されるようなSPA型の専門店ディスカウンター→ 日本ではユニクロ
・ベストバイなどの家電ディスカウンター → ヨドバシなどの家電量販店
・ホームデポ→各種ホームセンターやニトリ
あるいは日本であればドン・キホーテといったディスカウンターから「100均ショップ」まで価格を含めた多様な業態がある。簡単にいってしまえば,シアーズは「買いたい物」を提供し得なかったと言うことだ。

日本の流通業にあって、バブル崩壊後新しいパラダイムに応える戦略が数多く採られてきた。上記の日本企業もそうだが、その代表がシアーズと同じような業態である百貨店であろう。一億総中流と言われた中間所得層が縮小する中で店舗を縮小し、統合を果たし生き残ったきたわけである。そうした中で、シアーズとは根底から異なる戦略を採ったのが商品MDで、その代表的なものが「食品」である。それは周知の「デパ地下」で、百貨店の活路を見出したと言うことだ.
こうした「食」に活路を見出したのは実は最初はコンビニであった。1980年代から始まったおむすび、弁当、・・・・・・惣菜・スイーツに至るまで多くの食が用意されコンビニ自体の商品MDの変容を促してきたことは周知のとおりである。よく言われることだが、米国における食と日本の食を比較すれは一目瞭然であるが、多種多様な好みに応える、季節や地域によって得られる「旬」の食が日本にはある。同じような国としてはイタリアがそうであるが、日本はそれ以上の豊かさを持った国であるs。昨年、未来塾において「コンセプト再考」というテーマでブログを書いたが、シアーズは金融によって生き延びる策を行なったに過ぎなく、顧客変化に伴うコンセプトの再考がなされなかった結果ということであろう。大変な時代を迎えているということである。

少し横道に逸れてしまったが、要は今年は消費増税の年であり、間違いなく消費態度は厳しくなる。ある専門家がいみじくも言ったことだが、社会保険料などののアップにはシビアではないにも関わらず、2%の消費増税には厳しいと。その理由は明瞭である。自動的に徴収される各種保険料は高いと思うが、それはそのことによって恩恵も受けることとして割り切れる。しかし、財布の中から日々支払われる消費税は日々「実感」されることである。ある意味理屈ではない、「感情」としての抵抗感である。
昨年のヒット商品番付にも書いたことだが、「個人化社会の進行は<市場>をどんどん小さな単位にしていく」と。小さな単位の変化を見続けていくということだが、それを可能とするのは「現場」でしかない。言葉を変えれば、「答えは顧客が持っている」ということである。顧客はそれまでの生活学習を踏まえた「消費の仕方」という知恵を持っているということである。数年前から流行っている「セルフスタイル」や「立ち食い」といった業態は、人件費などをかけない工夫としての業態あるが、「答え」の一部を顧客に任せるという顧客にとっての「プラス価値=お得」を提供しているということでもある。

例えば、東京の人間でそば好きであれば知らない人はいない行列店として虎ノ門に立ち食いそばの「湊屋」がある。従来の蕎麦屋のイメージを変えたアートな外観・内装もさることながら、商品のそばもまるで異なるものである。店主は元銀行マンの脱サラで確かオープンしたのは2000年代初め頃で当時から注目されていたそば店である。そば粉に工夫があるようであるが、代表的なメニューは「冷たい肉そば/870円」でラー油がかかったたっぷりの冷たいつけ汁と、豚バラ肉、大量の刻み海苔、ゴマ、ねぎが載ったそばである。ラー油を使った日本そばはここ港屋が初めてであろう。そして、そのボリュームも極めて多い。最後まで飽きさせずに食べる工夫として卵、あげ玉がサービスとしてついてくる。
最近は食べに行ってないので行列の有無は確かめていないが、少なくともこうした従来のそばの概念を変えた市場は小さいながらもあるということだ。そして、多くの飲食チェーン業界はこの港屋から多くのことを学んでいるはずである。デフレ下にあって、静かなブームとなっている2斤1000円前後の食パン市場も同様である。デフレが日常化された時代にあっても、安さ以外の市場は必ずあるということである。

本題に戻るが、10月には消費税は10%となる。軽減税率を含めキャッシュレスによるポイント還元などいくつか税負担への軽減策が考えられているが、間違いなく消費現場においては「混乱」が起きる。残念なことだが消費現場、店舗と顧客との間での混乱である。例えば、キャッシュレスによるポイント還元策について言えば、ポイント還元という「お得」は期間限定であり、その本質はキャッシュレス化にある。最終的にはスマホなどによる決済であるが、地方、中小商店、高齢者にとっては使い勝手の良いものではない。ポイント還元終了後はどうなるのか、取り入れた事業者の支援はその後どうなるのかなど問題山済みである。そして、こうした混乱を含めた消費現場には「感情」という厄介な問題が噴出する。顧客の「答え」の中に感情というギスギスした世界が生まれるということである。

1990年代後半から消費市場は心理化していると指摘され20年が経とうとしている。消費は物充足ではなく、心理充足へとシフトし、若い世代からその志向は始まった。お気に入りには「かわいい~」の一言で消費するが、一旦嫌な感情が生まれれば一挙に嫌悪となって大きく振れる時代ということである。その傾向は今日のSNSにおける「いいね」表現へと繋がっていくが、その裏側には「いやね」「嫌いね」があるということである。当然、「いやね」も繋がり拡散していく時代であるということだ。つまり、「感情」によって消費は極端から極端へと振れるということである。
数年前、クレマーやモンスターあるいはキレるというキーワードが流行ったことがあった。そこには「過剰」な感情の高まりが見られた。その過剰な感情は徐々に「怒り」となって「顧客」から投げつけられることが頻発する。勿論、理不尽さは「顧客」の側にあるのだが、間違いなく社会問題化されることとなる。本来消費は欲望を満たす楽しみなことであったが、新たなストレスの元になる可能性を秘めているといっても過言ではない。逆に言えば、「楽しさ」のある消費現場作りが不可欠になるということである。それはポイント云々といったお得なことを用意することではない。今から5年ほど前、新たなデフレの騎手の仲間入りをしたニトリの似鳥社長はインタビューに答えて、「20%程度の安さでは顧客は振り向かない。やるのであれば30%は必要である」と。「安さ」という楽しみを売り物とするのであれば、例えばドン・キホーテ以上の業態を創ることだ。ちょうどユニクロの初売りキャンペーンが行われている。3日までの期間限定、商品もカシミヤセーターやヒートテックなど限定されてはいるが、「半額」である。つまり、従来のデフレにおける「価格概念」「消費概念」が更に変わり始めているということである。その価値観の中に「楽しさ」が今以上に求められてきたということだ。

チェーンビジネスの顧客に対する最大の「売り物」は規模の経営による安さである。しかし、ただそれだけの魅力では限界にきている。その良き事例がサラリーマンや学生などの空腹を満たしてきたラーメンの幸楽苑である。周知の通り赤字転落に陥り、不採算店舗はあの「いきなりステーキ」のFC店へと転換した。同時に「味の転換」と「メニューの広がり」によって客単価のアップと共に売り上げ増へとV字回復基調に向かっている。思い切った戦略で、数年前の国産野菜を使うことへと改革した長崎ちゃんぽんのリンガーハットと同じである。結果、「変わること」によって、その変化を顧客は「いいね」としたのだ。その評価は見事なくらい短時間で行われ、売上という結果となる。
今年も一年、そうした「変化」を未来塾における「事例」を中心に届けるつもりである。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:05│Comments(0)新市場創造
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