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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年06月17日

見える化から感じる化へ (前半)

ヒット商品応援団日記No715(毎週更新) 2018.6.17.

前回の未来塾で「共感価格」と言うキーワードを初めて使った。テーマとしては1年数ヶ月後に実施されるであろう「消費税10%時代」をどう超えていくべきか、その消費心理のキーワードとして使った。デフレが常態化した時代における価格意識はそれまでの「訳あり」に代表れたお得という納得価格から共感価格へと向かう、そうした主旨であった。未来塾では今一番元気な地域大阪のいくつかの事例を踏まえてこの共感価格を取り上げた。事例に於いては「何に」着眼・強化するのかに主眼が置かれたが、実は広く「社会」と言う視点に立っても、この「共感」が時代のキーワードになっていることがわかる。

少し前に5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが両親による虐待によって亡くなった事件が報道された。亡くなった結愛ちゃんがノートに書き綴った反省文を読んで多くの人はかきむしられる思いがしたであろう。詳しいことは既に新聞を始め報道されていることからこれ以上書くことはやめる。何故、虐待を止められなかったのか東京への移動に伴う児童相談所の連携、あるいは児童相談所の担当者が母親との面会を拒否された時何故警察と連携し保護できなかったのかなど制度上の問題は残されている。そうした問題点の解決はなされていくとは思う。しかし、そうしたこと以上に、いやそれとは全く異なる「思い」が噴出したのは私だけであろうか。新聞に掲載された船戸結愛ちゃんの反省文の一部を転用する。

もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんから きょうよりも 
もっともっと あしたはできるようにするから
もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもう おなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことを なおします
これまでどれだけあほみたいにあそぶって あほみたいだからやめるので
もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
あしたのあさはぜったいにやるんだとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ

これほど純粋に自分と向き合った「反省文」、わずか5歳の女の子が書いた反省文である。行き場のない怒りの感情が次から次へと湧いてくる。その後の報道によれば虐待が発覚して児童相談所や警察に介入されることを恐れ隔離し病院へも連れて行かず放置したと言う。厚労省によれば児童虐待はここ数年増加傾向にあり、平成27年度には103,260件となっている。その増加要因の多くは「心理的虐待」であると。虐待の内容にあって、それまでの「身体的虐待」に代わって「心理的虐待」が47.2%と半数近くにまで増えている。その心理的虐待とは、言葉による脅し、無視、兄弟間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうなどを指す。
船戸結愛ちゃんの場合は満足な食事が与えられなかったことを含めた「身体的虐待」もあっての無惨死であったと思うが、父親による執拗な言葉による虐待の中で書かれた「反省」である。結愛ちゃんが書いたメモの中に、「あほみたい」といった表現があるが、5歳の子供が使う言葉ではない。これは父親である船戸容疑者から繰り返し暴力的に「あほ」と言われてきた言葉であることが推測できる。

実は同じ「反省」が1ヶ月ほど前にもあった。周知の日大アメフト悪質タックル事件である。悪質タックルの理由が公になったのは、加害選手が謝罪会見に一人実名で臨んだことから始まる。記者からの質問にも真摯に答えていた当事者である宮川選手の「反省」であった。翌日やらざるを得なくなって記者会見をした日大アメフトの内田監督と井上コーチの「反省」とを比較し、どちらの方が真実か、どちらが嘘をついているのか、多くの人は明確に感じ取った。宮川選手の悪質タックルは精神的に追い詰められての行為であったことが明らかになり、被害を被った関学のアメフト部と被害選手も宮川選手の謝罪を受け入れ、逆に既に社会的制裁を受けたとしてそれ以上のことは望まないと言う立場に至っている。「パワハラ」と言う言葉で簡単に済ませがちであるが、本質的には結愛ちゃんへの心理的虐待と同じである。
「反省」という内なる自身に向き合い、何が問題であったかを自身の言葉で語る中に言葉では表せない「何か」が否応無く出てくる。それを多くの人が強く感じる時代にいるということである。

日大のアメフト事件についても同じように危機管理がなされていないと報道されているが、その多くは記者会見のやり方などイメージ操作のためのテクニックばかりである。ネクタイの色から始まり言葉づかいまでコメントしているが起こってしまったことに当事者が真正面から向き合うこと以外にない。向き合い方は各人が決めれば良い。事実を引き出す記者もいれば、ある意図を持っての意地悪な質問もある。視聴者はそれら全てを感じているのだ。よくもこんな人間が報道現場に身を置いているなと思うことも多い。
危機を超えたかどうかは視聴者が読者が決めることであって、当事者でも、危機コンサルタントでも、記者でもない。そうした意味で、悪質タックルという罪はあるが、危機を超えたのは宮川選手自身の間違っていたことを認め、その内なる原因までをも吐露したことであり、態度であった。記者会見に臨む100%の人間は「真摯」という言葉を使う。そのほとんどが嘘であることを知ってしまった社会にいる。そして、何よりも被害者への詫びる心、その誠実さがあったからである。

思い出すのは10年ほど前に起きた三笠フーズによるあの汚染米事件である。汚染された事故米の流通先は多様で、原材料として使用した酒造メーカーは、農水省が公開をためらっているなか、自ら公開した。いち早く汚染された米使用商品を公開し自主回収に向かった薩摩宝山をはじめとした焼酎・日本酒メーカーの事件である。そして、その後汚染米と知って使って嘘をついた美少年酒造は破綻し、本当に知らずに使っていた西酒造(薩摩宝山)は逆に顧客支持を取り戻し、焼酎の一大ヒット商品となった。この2社の間にあるのは顧客を信じる真摯さ、誠実さだ。そして、消費者は西酒造社長の記者会見という「情報」からそれらを感じ取ったからであった。
日大の宮川選手には「嘘」がないと多くの人は感じ、西山酒造と同様いつか復帰できる道があったらと思っている。

心理市場化と言うキーワードが生まれて20数年ほど経つが、同時に生まれたのが「見える化」であった。見えない世界を見えるように、わかりやすいようにと行われた経緯がある。それは過剰とも思える情報社会にあって間違えないようにするための知恵であった。しかし、それでも全てが見えるわけではない。見えないところで行われる不正の多くは情報の改竄、隠蔽でまさかと思われた不正が官僚・財務省の公文書偽造であり、企業では神戸製鋼所の製品の品質数字の改ざんであろう。数年前ドイツのフォルクスワーゲンによる不正の場合は、経営幹部が意図的にデータ改ざんを行う不正であったが、財務省も神戸製鋼所も組織上の「忖度」あるいは「組織風土」といった見えない世界での不正である。但し、財務省の職員の一人は推測するに改竄したことに苛まれて自殺しているのだが。これを日本的と言えばそうであるが、それだけ「こころ」が強く働く社会が日本という国である。2000年代初頭若い世代の間で「空気読めない」という言葉が流行ったが、これも同じこころを仲間内で共有する言葉であった。

心理とは外からは見えない世界であるが、少しの想像力があればわかる世界でもある。昨年の新語・流行語大賞になった「忖度」も同じである。つまり「感じとること」であり、社会には嘘や欺瞞が充満していることから、「感」が今まで以上研ぎ澄まされてきたと言うことであろう。感情の言葉である「いいね」の場合も、「悪いね」の場合も、そうと感じた人が圧倒的多数を占める時代になったと言うことだ。ある意味言葉の裏側にある「何か」を感じ取る敏感社会になったということである。後半ではこの敏感社会がどのように消費に結びついているかを考えて見た。(後半へ続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:01│Comments(0)新市場創造
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