さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2018年04月01日

「四季の国」というコンテンツ  

ヒット商品応援団日記No708(毎週更新) 2018.4.1.

砧公園


東京では今年の花見はほぼ終え、桜前線は東北へと移った。例年であれば、花見弁当など季節の旬やアイディアが話題となるのだが、今年の話題の中心は花見を目的とした訪日観光客の多さであった。特に、上野公園に集まった花見観光客の半数が訪日観光客ではないかと言われるほどの混雑ぶりであった。勿論のこと、そのほとんどがリピーターで、桜観光が目的で来日し天気も良く日本美を満足されたことと思う。
少し前に観光の概念が変わってきたとブログに書いた。その主要な変化として、山陰地方と青森を例にあげて、日本の裏側・路地裏観光、つまり地方観光が本格的に始まり、地方創生の新しい芽が出始めたという主旨であった。実は表と裏という表現を使うとすれば、もはや表も裏もない狭い日本の至るところが「観光地」になり始めたということである。今までの日本観光のゴールデンルートのコアとなっていた「富士山」や「京都伏見稲荷・清水寺」から「桜」へと変化し、その変化の先には「四季の国」という観光コンテンツが見え始めたということである。その桜の花見は日本固有のものであり、「日本さくら名所100遷」がある様に、全国いたるところで花見が楽しめる国である。

ところで一番重要なのがその「観光コンテンツ」についてである。桜の花見が象徴している様に、日本は世界で唯一の四季のある国である。四季の変化についてはニュージーランドも近いと言われているが、これほどまでにはっきりとした四季の変化がある国は日本だけである。よく言われているように「春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は雪」、しかも小さな島国日本にはすぐ近くに海があり、山もある。国土の7割が森林で、北と南に細長い国だ。
日本には「五風十雨(ごふう じゅうう)」という言葉がある。五日ごとに風が吹き、十日ごとに雨が降る意味で湿潤で豊かな風土を表した言葉である。こうしたことから、気候が温暖で、世の中が穏やかに治まっていることの意味もある。こうした言葉に象徴されるのが自然が持つ「旬」という概念である。日本人の精神世界にはこうした豊かな自然に対し八百万信仰があるように、万物には聖霊が宿り、自然との共生が基本となっている。例えば、桜は開花から10日余りで満開となり散り始める。その艶やかさとと共に儚さをも感じるのが日本人である。そんな桜は愛でるものであって、そこから花見を始まっているということだ。ここに日本文化の土壌がある。

四季というコンセプトによる観光地化は今始まったばかりである。この四季の日本にあって、冬の日本においても既に数年前からインバウンドビジネスが始まっている。先日地価の公示価格において北海道のニセコが全国一上昇していると発表されたが、パウダースノーという雪質の良いニセコは以前から世界中のスキーオタクにとって人気のスキー場となっていて、訪日スキーヤー向けのホテルや別荘需要がらの地価上昇であった。こうした地域は長野の白馬でも起きており、また兵庫の新設スキー場「峰山高原リゾート」がオープンし、新潟では閉鎖した施設が「ロッテアライリゾート」となり、11年ぶりに同日再開業している。これらスキー場も雪に馴染みのないタイ、ベトナム、中国などアジアからの旅行客が訪れているという。

夏は海のレジャーとして既に多くの訪日観光客が沖縄を訪れている。5年ほど前から本島のみならず石垣島を始め離島にもリゾートホテルの建設ラッシュがあった。それまでは日本人観光客の夏のレジャー、あるいは中学生の修学旅行先としてある意味低迷していたが、訪日観光客という新しい需要によって沖縄も一つの転換点を迎えている。
そして、夏の観光コンテンツと言えば、やはり全国各地に残っている祭であろう。人口減少、過疎に悩む地方において、祭も衰退の瀬戸際に立たされていることは事実である。しかし、祭は今後は訪日観光客の観光コンテンツの一つになることは間違いない。そして、恐らくその入り口となるのが夏祭の一つとなっている花火であろう。訪日観光客を驚かせているものに、浅草雷門の巨大提灯や大阪道頓堀の巨大ネオン看板があるように、花火もそうした驚きの一つになり得るイベントである。しかも、これも花見と同じ夏の風物詩で、日本人観光客向けには花火観劇ツアーが組まれているが、少しづつ地方の花火大会にも訪日観光客が増えて行くであろう。

さて秋は紅葉ということになるが、春が桜の花見というハレの日の生活行事であるとすれば、秋の紅葉はケの日の落ち着いた生活行事になる。例えば、奈良をはじめとした古い寺社巡りなどが観光コンテンツとなるであろう。そして、食において四季それぞれの旬があるが、中でも一番豊かな食と出会えるのが秋である。特に、全国各地特色のある郷土食が味わえるのが秋であり、温泉などとセットにしたメニューなども人気となる。

つまり、このように少し考えてもわかるように、日本人自身が忘れていた「日本」を思い起こさせるものばかりである。都市生活にどっぷりと浸かりきった現代人にとって、四季という季節のメリハリを感じることは少ない。夏は夏らしく、暑ければ避暑の工夫をする。冬になれば寒さをしのぐ工夫・・・無くしてしまったのは日本人が本来もっていた「五感」であり、そこで育まれた生活文化である。京都を始め全国各地には季節を楽しむ暮らしが、日々の食から衣、住まい、ライフイベントまでまだまだ残っている。私が路地裏、足元、日常、普通、と呼んでいる生活に、実は訪日観光客が興味を持ち体験してみたいと望んでいるということである。

そして、この「四季の国」というコンセプトはマーケティングの基本であるロングセラーの条件を満たしたものであるということだ。少し整理すると以下のようになる。
1、固有・唯一無二/他国には無いコンテンツである
2、幅広い顧客層が対象/多面的(性別・国・年齢など)に楽しめる
3、求めやすい価格/円安、デフレ、
これからはリピーターをその対象としたマークケティング&マーチャンダイジングが求められて行くこととなる。その構図としては以下のように整理することができる。

四季(春夏秋冬)✖️地域(主要都市及び連携)✖️目的(多様な関心事)=観光コンテンツのメニュー

数年前から日本食が世界でブームになっているが、その入り口の一つが寿司で最初はカリフォルニアロールという「なんちゃって寿司」であったが、次第に本物・本格寿司へと進化してきている。そして、上記の「整理」に即していうならば、地方固有の寿司(鯖寿司、温寿司、バラ寿司など)という奥行きのある寿司へと向かうであろう。ラーメンは寿司まで進化してはいないが、新横浜ラーメン博物館には今なお東南アジアの観光客を含め多くの人が押し寄せている。東南アジアにも多くのラーメン店が出店し始めているが、いわば「食」の聖地巡礼のようなものである。そして、更に都市にも出店している地方で人気のラーメン店へと向かうであろう。また、日本の歳時にあって、各地域の文化の違いを楽しめるものに正月がある。こんな歳時が観光コンテンツになる頃は恐らく訪日観光客は4000万人〜5000万人に至るであろう。いずれにせよ、「爆買い」に象徴された訪日観光をフェーズ1とするならば、現在は「花見」に象徴されるフェーズ2へと進化してきているということである。そして、次はと言えば日本オタクへの進化となる。(続く)

追記;なお空路による訪日観光客、中でもLCCによる観光客数を中心に変化を見てきたが、直行便やチャーター便による訪日観光客も多くなりはじめている。またクルーズ船による観光推進も盛んで。2017 年(1月~12 月)の訪日クルーズ旅客数は前年比 27.2%増の 253.3 万人、クルーズ船の寄港回数は前年比 37.1%増の 2,765 回となり、いずれも過去最高を記録している。ちなみに国交省では「 2020 年に 500 万人」を目標としている。この様に日本観光への多様なアクセスも整備されつつあるということである。


あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:36│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
「四季の国」というコンテンツ  
    コメント(0)