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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年12月25日

真逆の時代に向かって  

ヒット商品応援団日記No667(毎週更新) 2016.12.25.

まもなく新年を迎えようとしているが、この1年起こったことはこれから先5年10年のパラダイム転換となるようなことばかりであった。簡単に言ってしまえば、時代のベクトルが逆方向に向かう潮流が表に出てきたということである。実は2016年に入り年頭ブログでは「混迷の年が始まる」というテーマで次のように書いた。

『年明け早々、外にも内にも、嫌な事件が続発している。昨年横浜都筑区の傾きマンション事件の時、「再び、心は内へと向かう 」とブログに書いたことがあった。杭打ちどころかほとんどの商品は見えないところで作られており、一度の嘘はたちまち疑心暗鬼を生むそんな心理市場となっている。CoCo壱番屋は異物が混入しているのではということから自主的に廃棄処分としたが、ペヤングやきそばもそうであったが、日本マクドナルドのその後を良き反面教師として学んでいる。よくリスクマネジメントというが、そんなテクニカルなことではなく、心底顧客を信じ公開し真摯に応えるという商人として至極当たり前のことが求められている。そんな混迷の年が始まった。』

「見えないところ」で生まれている問題や危機に対し、こうした暗い予感のブログを書いたのだが、これは昨年11月に起こったパリ同時テロを踏まえてのことであった。以降国内外には従来の常識や価値観、思い込みとは真逆の変化が次々に起こった。特に、海外で生起している新たな潮流については「見えない世界」そのものであった。半年後、英国では6月23日に欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が行われた。多くの予想、特に日本のマスメディアやEUに関する国際政治の専門家はこぞって離脱はないと予想&断言していた。
ちょうど2016年を半分経過した夏に、これまでの価値観とは異なる大きな潮流が政治に、経済に、社会に、当然ながら国内外に起き始め、未来塾において「パラダイム転換から学ぶ」と題したブログを私は書き始めた。それは一種の気づきであったが、スタートした最初のブログではその気づきを次のように書いた。

『英国ではEUからの離脱が国民投票によって決まるという「大転換」の地震が突如として発生し、日本も過去大きな転換を経験してきたことを思い起こさせた。そして、その転換から生まれる変化の痕跡は今なお街のいたるところに残っている。そうした痕跡を抽出し、それがどんな転換期のマーケティングとしての意味があるのか、無いのかを読み解いていくシリーズとする。その巨大地震から生まれる転換を引き起こしているのが「グローバル化」である。ローカルからグローバルへ、そうした価値潮流は経済的利益を背景に日本のみならず世界のメガ潮流として戦後続いてきた。しかし、今回の英国のEU離脱に見られるように、統合から離脱・独立へという内向きな精神的価値観が強く見られた。』

こうした今まで進んできた従来の価値観、当たり前として受け止めてきた価値観、そのキーワードが「グローバル化」であった。日本の場合、資源を持たない国ということもあるが島国という歴史的な地政学上、「海道」を通じた周辺諸国との交流は必然としてあった。短絡的ではあるが日本にはその宿命としてグローバル化があったということである。歴史を紐解けばわかることだが、江戸時代の鎖国政策はある意味明治維新政府によって創られたことが多く、特に庶民レベルでは「海道」を通じた周辺諸国との交流は中世以降行われてきたことは既に明らかになっている。沖縄が好きでその生活文化を調べたことがあった。「海道」の交差点であった沖縄には、朝鮮半島から、あるいは中国はもちろんフィリピンどころかインドネシアからもたらされた文化が食などに今尚色濃く残っている。

そして、米国では英国のEU離脱の時と同様、ヒラリークリントンが僅差でも勝つであろうと、これまたマスメディアも専門家も予測していたが、見事に真逆のトランプが勝利し、次期大統領となった。そして、金融アナリトを筆頭に株価は急落するであろうとこれまた予測していたが、急落の翌日からは真逆の上昇となり、今尚続いている。つまり、トランプ当選=ドル安=株安、クリントン当選=ドル高=株高という今までの常識とは全く異なる世界が現出している。勿論、米国FRBによる長期金利の利上げが想定されてのこともあるのだが、真逆の現象が起こっている。付け加えれば、EU離脱によって英国経済はダメになるであろうと言われてきたが、これまた真逆の結果で英国株価は史上最高値を更新し、英国経済も好調を持続している。
ところでそのトランプ次期大統領について「逆襲が世界に広がる」というテーマで次のようにブログに書いた。

『日本のメディアは常にそうであるが、暴言王とか、差別主義者、排外主義者といった極小部分のみに焦点を当てたおもしろ報道しか行って来なかった。しかし、トランプ氏が言う米国第一主義とは言葉を替えれば国益を最優先する愛国者であり、中西部の田舎のおじさん、おばさんの代表であるということだ。そして、グローバル化から取り残された白人労働者、破綻した鉄鋼などの製造業工場群、そうした人たちの思い、本音を代弁したと言うことだ。そうした意味でグローバル化=自由貿易協定のTPPには反対であるし、保護主義的になるであろう。』

そのトランプ次期大統領は政権中枢の人事が進められているが、「100日間行動計画」の発表を含めそうした人事や発表された主要政策を新聞紙上などで見る限り、それまでのオバマ大統領8年間の政策とことごとく異なる、極端ではあるが真逆の政策を取るのではと推測される。例えば、
○理念・理想:オバマ/理想主義(自由と民主主義)→トランプ/現実主義(ビジネスという物差し)
○貿易政策:オバマ/自由貿易(TPPの推進)→トランプ/保護貿易(2国間貿易)
○エネルギー政策:オバマ/脱石油(多様化の推進)→トランプ/?(石油誘導)
○金融政策:オバマ/金融危機を踏まえた規制強化→トランプ/?(規制撤廃)
○雇用・労働政策:オバマ/移民の促進&オバマケア→トランプ/空洞化の抑制、オバマケアの一部解体
そして、財政上どこから資金を捻出してくるのかわからないが、「減税」と「公共投資」によって雇用を創出し、消費を活性化させるという経済政策は米国では「トランポノミクス」と言われているようだが、ある意味「バブル誘導」を意図していることは明らかである。これが成功するとなると世界経済が回復基調になるであろうとの観測から米国を始めとした株式市場が活況を呈しているとの分析もある。
また、トランプ政権人事を見てもわかるように身内を除いて産業界における個人ネットワークと軍人出身者がほとんどである。いわゆる政治のプロは極めて少ない。そうしたことを俯瞰的に見ていくとオバマに象徴される「自由と民主主義」といった理念・理想を追う政治ではなく、トランプはその都度全てをビジネスライクに割り切る「打算」で動くことが推測される。国連も、G7も、そうした枠組みもこうした観点から見ていくこととなる。つまり、従来の常識や価値観から外れることによる「不安定な状態」「見えない世界」がこれから続くということだ。

ところで今年の「ヒット商品番付を読み解く」にも書いたことだが、その中で「本格的なサブカルチャーの時代」が到来したと。勿論、「ポケモンGO」や「君の名は。」を筆頭としたヒット商品を指してのことだが、裏返せば「物消費」から「カルチャー消費」「文化消費」に移行した、今までのパラダイムから転換したということである。ある意味、クールジャパンは次のステージに上がってきたということでもある。文化が先、物は後というビジネスモデルの時代になったということだ。これは右肩下がりのモノづくり、しかも少子化の時代を象徴するランドセル業界にあって、日本アニメに出てきたランドセルを見て「カワイイ」「クール」と感じた海外の女性たちからオーダーがあいつぎ空港などの免税店に置かれ、新たな価値を生み、つまり新たな市場が生まれている事例もある。ランドセルだけでなく、若い世代の車離れが進む自動車業界にあって、そのトップを走るトヨタが2017年のFIA世界ラリー選手権(WRC)の参戦体制を発表した。1999年をもって、WRCから撤退したトヨタだが、モータースポーツを通じたクルマ文化を豊田章男社長自ら総代表となって参戦するという。これもある意味では車好きユーザーに対する新たなクルマ文化の再創造と言えなくはない。

これは今後の日本のビジネスを考えていく場合、新たなテクノロジーの開発と共に文化型コンテンツを一つの戦略着眼を担っていくものとして考えていくということである。特に、これから起こるであろうトランプ米国と日本企業との衝突を回避し、競争を勝ち抜く良き戦略になり得ると考えられる。すでに評価されているクールジャパンだが、固有な日本文化を単なる観光誘致の手段として終わらせるだけでなく、戦略的に使っていくことが問われているということである。輸入制限をしている中国にあって、映画「君の名は。」は特別枠として上映され興行成績も良いと聞いている。そして、何よりもピコ太郎のPPAPが教えてくれたように、これから真逆の強風が吹き荒れ混迷の時代が深まったとしても、日本文化というコンテンツビジネスの風は世界中を席巻できる時代にいるということだ。
また、国内に目を移してみても、ファストフーズにおけるメニューの復活や老舗への再注目も、実は過去という「文化」の復活ということである。日本マクドナルドが15年ぶりに復活させた「かるびマック」も1998年〜2001年という「時代の空気」「懐かしい時代」を発売したということである。レトロ、リバイバル、復刻、再登場、・・・・・・それらヒット商品は歴史が詰まった「思い出」消費を再創造しているということである。そして、そこにはまぎれもなく思い出したい「文化」があったということである。忘れ去られた「過去」「歴史」の中に、文化コンテンツが眠っているということだ。(続く)

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