さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年11月12日

逆襲が世界に広がる

ヒット商品応援団日記No663(毎週更新) 2016.11.12.

次期米国大統領がトランプ氏に決まった。多くの人は、特にマスメディアや国際政治の専門家はその予測違いに驚き番狂わせであるとしているが、結論から言えば英国のEU離脱と同じことが米国でも起こったということである。私は「パラダイム転換から学ぶ」(概要編)というブログの第一回目に「グローバル化する世界、その揺り戻し始まる」と書いて、英国のEU離脱は単なるポピュリズムであると、したり顔で評論する識者とは異なるコメントをした。確かに世界の「パラダイム(価値観)」の潮流はグローバル化による垣根のない世界であった。

しかし、新大統領がトランプ氏に決まった瞬間、それまでの「隠れトランプ支持者」という言い方を止め、マスメディアもやっと英国のEU離脱と同じ潮流、反グローバル化が背景にあると言い始めた。グローバル化によって得られたこともあるが、同時に失ったものもある。格差の大きな米国にあって、グローバル化の象徴が世界の金融が集まっているウォルストリートであり、そこから資金を得てきたのがヒラリー・クリントン氏であった。一方、トランプ氏が訴えたのは、グローバル化から取り残された、あるいは負け組みとなったアイオワ州をはじめとした中西部の製造業に的を絞り、丁寧な対話を繰り返した結果であろう。ある意味、どんどん中流層がなくなり、グローバル化によって得られたのは一部の金持ちだけで、格差がいかに深刻であるかが表へと出てきた。大きく揺れ戻した振り子がドナルド・トランプ氏に触れたということだ。

日本のメディアは常にそうであるが、暴言王とか、差別主義者、排外主義者といった極小部分のみに焦点を当てたおもしろ報道しか行って来なかった。しかし、トランプ氏が言う米国第一主義とは言葉を替えれば国益を最優先する愛国者であり、中西部の田舎のおじさん、おばさんの代表であるということだ。そして、グローバル化から取り残された白人労働者、破綻した鉄鋼などの製造業工場群、そうした人たちの思い、本音を代弁したと言うことだ。そうした意味でグローバル化=自由貿易協定のTPPには反対であるし、保護主義的になるであろう。
しかし、面白いことにトランプショックから一夜明けた翌日には、米国及び日本の株価は大きく戻す結果となっている。トランプ氏の言う減税策、所得税減税の他に、法人税率を現行の35%から15%に引き下げる内容となっている。どこまで赤字財政としてやっていけるかわからないが、こうした景気浮揚策をはじめ公共投資策が没落製造業にとって光明になったことは事実であろう。
こうした経済政策はことごとくヒラリーー・クリントン氏とは正反対であった。つまり、今回のトランプ大統領を誕生させたのは、「ヒラリー・クリントンの下では何の変化も起こらない」と言う既成政治への不信、Noであったと言うことだ。8年前のオバマの「チェンジ」は製造業では「先進製造業」を重視した政策運営を進めてきたが、確かな成果は得られてはいない。いずれにせよ「変化」を求めた人たちがトランプ氏に一票を入れたということである。まさに、東部州やカリフォルニア州に対する、中西部州の逆襲であり、取り残された白人労働者や製造業の逆襲であり、懐かしき米国復活を求めた逆襲であると言えよう。新聞メディアを中心に「分断」「亀裂」の修復が必要であると言うが、元々米国は移民による雑種国家である。ただ今回の選挙によって、以前からあった溝が表に出てきたことは事実である。カリフォルニア州の反トランプの若い世代は、トランプ米国からの独立を主張しているが、これも英国のEU離脱の時と同じである。

実は前回のブログで創業者はワンマン経営者で、しかも現場経営主義者であるとし、ユニクロの柳井社長をはじめ創業経営者について書いた。トランプ氏にとって、外交や防衛といった政治のプロではない。しかし、ビジネスリーダーとしてやってきたその経験と才能は持っている。ワンマン経営者というと傲慢の象徴であるかのように思いがちであるが、ワンマンであるとは、めげない、諦めない、とことん成功するまでやり遂げる強い精神力を持った人物のことを指す。サラリーマン社長とは根底から違うということである。米国製造業の復活が可能であるか、それはわからないが、例えば米国とカナダ、メキシコは自由貿易協定(FTA)を結んでいる。そして、メキシコは今や年間290万台以上の車を生産するまでの自動車生産大国になっており、その8割が輸出されている。この生産台数は世界で8位、輸出台数では世界で第4位だ。ホンダ、マツダ、日産といった日本車もメキシコに工場を持っており、もちろん米国市場へと輸出されている。トヨタも2019年からカローラを北米市場向けに生産する予定だ。これから日本の自動車産業はどうなるか、トランプの米国がFTAから離脱する可能性は皆無ではない。トランプ氏がメキシコという国を取り上げ国境に壁を造るなどと発言しているのは、単なる不法移民のことだけではない。メキシコの労働コストは中国やブラジルよりも安く、しかも安定している。だから北米市場を睨んで多くの世界企業がメキシコに進出しているのだ。

トランプ大統領の誕生は、TPPがどうなるかといった問題だけでなく、日本を含めた世界のグローバル企業は多大な影響を受けることは間違いない。日本の場合もこの20数年で産業構造は激変してきた。「パラダイムの転換から学ぶ」(概要編)にも書いたことだが、例えば、産業の米と言われた半導体はその生産額は1986年に米国を抜いて、世界一となった。しかし、周知のように現在では台湾、韓国等のファ ウンド リが台頭し、メーカーの ランキングではNo1は米国のインテル、No2は韓国のSamsung である。世界のトップ10には東芝セミコンダクター1社が入るのみとなっている。 あるいは重厚長大産業のひとつである造船業を見ても、1970年代、80年代と2度にわたる「造船大不況」期を乗り越えてきた。しかし、当時と今では、競争環境がまるで異なる。当時の日本は新船竣工量で5割以上の世界シェアを誇り、世界最大かつ最強の造船国だった。しかし、今やNo1は中国、No2は韓国となっている。米国の製造業も同様だということだ。

ところでトランプ大統領によって米国が変わるとは世界が変わることでもある。多くのマスメディアや政治評論家は楽観視しているが、英国のEU離脱というショックどころではない。グローバル化という潮流から、自国第一主義へとその流れを変えていくことが始まれば、日本経済も当然変更を余儀なくされる。トランプ氏は強力な交渉人となって各国と渡り合うことだろう。ドゥテルテ比大統領が就任後、中国や日本から多くの資金などを手に入れたが、やり方は異なるとは思うが、トランプ大統領も同じ「やり手」であることは間違いない。そして、やり手の主要な交渉相手はまずは中国であり、対中交渉にその本質が見えてくる。(続く)


あなたにおススメの記事

同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
マーケティングノート(2)後半
マーケティングノート(2)
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 マーケティングノート(2)後半 (2024-04-07 13:03)
 マーケティングノート(2) (2024-04-03 13:47)
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:26│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
逆襲が世界に広がる
    コメント(0)