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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年09月19日

デフレ時代の「行列の法則」  

ヒット商品応援団日記No658(毎週更新) 2016.9.19.

マクドナルドが¥550のバリューランチセットを発売したが、更に平日のランチに低価格メニュー¥400のバリューランチを発売すると発表した。ハンバーガーは「ビッグマック」か「チキンフィレオ」のどちらかを選べ、Sサイズのドリンクとのセットで、平日の午前10時半から午後2時までに限り、全国の店舗で売り出すとのこと。いずれも、単品で組み合わせた場合より50~80円安くなる。つまり、大規模なリストラを終え、本格的な低価格戦略に踏み込んできたということである。
「2016年上期ヒット商品番付を読み解く」にも書いたが、ユニクロにおける中価格帯ラインへの値上げの失敗、そして吉野家が豚丼を4年ぶりに同じ価格¥330で復活させ、これで1990年代後半からのデフレ御三家が足並みを揃えたことになる。以前から指摘してきたことだが、デフレは日常化していることが更に明らかになったということだ。

こうした日常化したデフレ型消費における突破口の着眼として、私は「こだわり」を挙げた。勿論、2年ほど前の「こだわり」メニューは、そのことによって値上げし、客単価を上げる戦略であったが、間違えていたということである。その「こだわり」は、低価格(今まで通りの価格)プラス「こだわり」であって、値上げの理屈にはならないということである。消費者はこのことをよく理解しているということである。「こだわり」は、純粋に顧客のための新たな価値でなければならないということだ。10年ほど前から指摘していることだが、生半可な付加価値など見破られる時代になっているということである。

ところでどんな「こだわり」をしたら良いのかである。その着眼について下記の「行列の法則」を参考にしてほしい。実は8年ほど前に整理したものだが、原則としては今も変わらない。

1. リミティッド limited
時の限定、場の限定、個数限定、対象者限定、生産過程の限定
2. プレ・アクション pre-action
どこよりも早く、先行性、前倒し先取性、テスト、プレ実験などによる実験
3. オンリー only,origin
独自性、特徴、オリジナリティー、ブランド力、記銘性、パーソナリティー
4. キーパーソン key person
看板娘、熱意ある心をもって汗をかく職人、リーダーシップの発揮
5. ライブ&ショー live&show
その時ならでは、旬、感動、実感、体験学習、今を生きる
6. ハッピー&ヒーリング  happy&healing
幸福感、癒し、充足感、安心感
7. コレクション collection
文化という固有世界、回数性、リピート率、ストックカルチャー、サブカルチャー、
8. パーソナルユース  personal use
私のお気に入り、個人を対象に据えた手軽なデザイン、大きさ、価格
9. ニュース&ジャーナル news&journal
話題性がある、注目度が高い、口コミで伝わりやすい
10、リーズナブルプライス Low Price
どこよりも安く、手軽に気軽に、コスパが良い、

例えば、リミティッドという限定にこだわる戦略は多くの専門店が取り入れている手法である。最近では行列の出来る店として注目されている神田神保町の焼きそば専門店「みかさ」は自家製麺ということから麺がなくなり次第閉店。こうした限定戦略は初期のラーメン専門店を始め、最近では自家製酵母によるパン屋さんも同様である。こうした専門店の場合、その多くはリーズナブルプライスとなっており、日常使いの場合は行列が絶えない店となる。勿論、顧客にとって意味ある「限定」であることは言うまでもない。

3番目のオンリーであるが、このオンリーには「今」という時代ならではの唯一性・希少性を売り物にする場合が特徴となっている。競争市場下における「差づくり」をテーマにした未来塾「テーマから学ぶ」おいて「今」ならではのアイディアを整理したのが以下の4つである。
1、迷い店:なかなかたどり着けない面白がり・ゲーム感覚を売り物にした「差」づくりの店
2、狭小店:都市が生み出したデッドスペースを活用した狭いを売り物
3、遠い店:例えば山頂のパン屋さんといったとにかく遠い場所
4、まさか店:デカ盛りのような量のまさか、価格のまさか、あるいはこだわり過ぎのまさか
いずれの場合も遊び心をくすぐった「面白店」である。勿論、こうした店を面白いと感じる顧客のみが行列を作っており、このアイディア次第で100点にもなれば0点にもなるといった世界である。

4番目の看板娘であるが、最近の看板娘は「おばあちゃん」や「まだ幼い子供」の場合が多い。美人といった看板娘はある意味どこにでもいるので、つまり一般化された世界から離れないと「差」を創ることは難しい時代である。
また、人間ばかりではなく、和歌山電鉄の駅長たまではないが動物も看板娘になる。ここ数年犬から猫にペット人気が移り、猫と遊べるカフェや旅館までが看板猫ではやる時代となっている。こうした「看板」は6番目のハッピー&ヒーリングのように癒されることを目的とする場合が多い。これもある意味、時代ならではの傾向であろう。

7番目のコレクションについては文化という歴史が堆積した固有性についてであるが、デフレ時代にはどうしても価格やコストパフォーマンスを伴わないと難しい時代にいる。ただし、少し視点を変えれば、アニメやコミックといった日本のサブカルチャーは、周知のようにアキバのようにまさに行列そころか聖地となっている。コレクションというと、収集家の世界のように思われがちであるが、私の言葉で言うならば、「オタク」となる。こだわりにこだわった世界こそオタクの世界である。例えば、アニメに描かれた風景のみならず色彩までをも追体験すべく、そのモデルとなった誕生の地を訪れる、聖地巡礼が全国各地で起こっている。そうした「こだわり」を起こさせるようなコンテンツの創造である。

9番目こそ情報の時代ならではのことで、SNSなどのネットワークによって行列ができる。そして、間違ってならないことは、行列という「ブーム」は必ず終わるということである。この情報・話題作りの場合、その多くは激安、激盛り、激辛、・・・・・・激であればあるほどまさかという「情報」を求めて行列ができる。行列という情報は、また次なる行列を呼ぶこととなる。しかし、激はさらなる激によってしか「次」に行くことはできない。そして、情報=「ブーム」は一過性であることを忘れてはならない。

こうして見ていくと分かるが、デフレマインドの壁を越えるにはリーズナブルプライスを基本に幾つかの組み合わせによって戦略を組み立てることが必要となる。これが8年前の行列と今の行列の違いである。そして。繰り返しになるがなんといっても「差」をつけるコンテンツ次第である。以前、そのコンテンツに触れて、新しい、珍しい、面白いコンテンツばかりでなく、過去のヒット作・ヒットメニューの復活劇が始まるとブログに書いたことがあった。吉野家の豚丼もそうした復活メニューであるが、過去のヒット作を見直してみることも必要な時代になった。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:32│Comments(0)新市場創造
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