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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2016年07月21日

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 

ヒット商品応援団日記No652(毎週更新) 2016.7.21.

概要編の後半では、大きな時代変化を受けて、どのように受容してきたのか、その根底には江戸時代の長屋生活にその源があった。

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 


『類聚近世風俗志』より



パラダイム転換から学ぶ


生活という大きな意味での転換期として、バブル崩壊を境に昭和から平成へと、日本社会、経済、働き方や消費までグローバル化という強力な波が押し寄せてきている。この潮流は世界全体の趨勢でもあるが、今回の英国のEU離脱に象徴されるように、ローカルという言葉に内包される「歴史」「伝統」・「文化」・・・・もっと消費生活に即して言うならば「慣れ親しんだ」「心地よさ」あるいは「懐かしさ」を求める希求が表へと出てきている。そうした現象を「回帰現象」と呼んでもいるが、生活者価値観そのものの変化が根底にはある。今回はそうした根底にある価値観はどのように消費という表面に出てきているか、今回はその概要について学んでいくこととした。
こうしたグローバル化の波を直接受けているのが東京、いやTOKYOである。表紙に渋谷のスクランブル交差点の写真を出したのも、世界のあらゆるもの、ヒトも、モノも、おカネも、もちろん情報も「交差」している場所がTOKYOである。私はエスニックタウンと呼んでみたが、東京を分析すればグローバル化とその揺れ戻し変化が見えてくる。

TOKYO(グローバル都市)と東京(ローカル・江戸)

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 今、東京で進められているのが日本橋を中心とした「江戸」400年のルーツを楽しむ街歩きが盛んである。主に今なお残って商売をしている老舗で山本海苔店、にんべん、千疋屋、包丁の木屋、室町砂場、洋食のたいめいけん、・・・・・さらには人形町にかけて老舗の名店が数多く残っている。例えば、元祖親子丼の玉ひで、江戸前蒲焼の梅田、日本料理のかねまん、といった江戸あるいは明治時代の風情を残した老舗がシニア世代の人気スポットになっている。さらに、中央区には銀座があり、周知のように世界のインポートブランドショップとこれも銀座の老舗名店が集積している。この銀座も2012年にはユニクロの旗艦店がオープンし、さらにファストファッション専門店もH&Mを始めオープンし、あらゆる商業がまさにスクランブル交差点のように「老舗」と「トレンド」が混在したエリアとなっている。そして、やはり、大手百貨店が集積しており、特にいち早く訪日外国人へのアプローチをした銀座三越には専用の免税売り場が用意され、中央通りには観光バスが並ぶ光景が日常となっている。
古い老舗が残る江戸東京と訪日外国人が日本の「今」をショッピングする街、まさに消費都市そのものとしてある。しかし、その消費傾向もこの1年ほど前から変わってきている。それまでの炊飯器やトイレから薬や化粧品などのドラッグストアへ、そして体験型商品へと。今まで遠い裾野から見る富士山観光から、実際に登ってみるという体験。あるいは書画から始まりお茶、さらには握り寿司体験まで。そうしたことを指してのことだが、実はその本質は日本の文化観光、もっと簡略化して言うならば東京は「江戸文化観光」であり、京都は「貴族文化観光」である。

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 つまり、文化観光都市であり、以前から指摘してきているのだが、浅草も雷門・浅草寺観光ではなく、銀座も同様に表通り観光ではなく、横丁路地裏観光にこそ「クールジャパン」という文化に出会うことができる。グローバル化はこうした表通りから裏通りへと、表層からコトの本質に向かわせる。そこに新たなビジネスの芽が生まれているということである。余談になるが、グローバル企業日本マクドナルドが「裏メニュー」キャンペーンを行っている。定番バーガーにトッピングがチョイスできる期間限定のサービスキャンペーンであるが、以前から世界各国ではトッピングはチョイスできるのだが、「裏メニュー」という表現を取り入れたこと。更には期間限定ではあるが、「1971炙り醤油ジャパン」というモスバーガー並みの「和風味」のバーガーを発売したが、これもローカルマクドナルドジャパンとしては当然のことで、やっとマクドナルドも気がついたということであろう。
ところで、このクールジャパンは訪日外国人だけのキーワードではなく、実は日本人にとっても同様である。それまでの「洋」の世界からの揺り戻しであり、前述のシニア世代の老舗めぐりも、吉祥寺ハーモニカ横丁のような若い世代の昭和レトロな街人気も、その根底にはローカルジャパンに今なお残っている和文化へと興味関心が向かっているということである。時代的に言うならば、平成から昭和へ、明治へ、そして江戸へ、大仰に言うならば「日本とは何か」というルーツ探しである。

逆流するローカルジャパン化、日本探しの潮流

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 クールジャパンというキーワードが広く知られるようになったのはここ10年ほどであるが、アニメやコミックばかりでなく、以前から盆栽もまた欧州、特にフランスでは人気となっている。アニメ・コミックの聖地であるアキバと同様盆栽は大宮へと訪日外国人がやって来ている。サムライ、忍者しかり、以前からクールジャパンの象徴であると一部の専門家が指摘されてきた禅も同様である。歌舞伎も、相撲も、それらすべてが日本の精神文化の表れであり、ある意味「日本とは何か」を見つけにやってくる。
こうした「訪日」という逆グローバル化の波は、実は多くの失敗を含めた試みの結果であったことは認識すべきである。平成25年「和食」がユネスコの無形文化遺産となり、海外での日本食レストランが注目されるようになったが、はるかそれ以前の昭和50年代に北米を始め欧州、アジアに進出したのが、“Soy Sauce”のキッコーマンであった。今や世界の至る所で日本食ブームとなっているが、当時はなかなか受けいられなかったことは言うまでもない。和食、醤油文化、を売っていくことはなみたいての努力ではない。今、広島のおたふくソースが同じように海外へと進出し、お好み焼きと共にソース文化を普及させ始めている。ラーメンも同様で、訪日外国人がまず食べるのがラーメンで、コミックオタクがアキバに行くのも、盆栽オタクが大宮に行くのも、ラーメンであれば横浜のラーメン博物館に行くのも、すべて日本文化の「聖地巡礼」である。

多くの人を惹きつけるもの、それは日本の精神文化であり、そのことは文化が経済を牽引する時代を迎えたということである。実はそのことを一番理解していないのが日本人である。ただ、個人にあっては、NHKの番組「ファミリーヒストリー」ではないが、自分自身のルーツ探しは10年ほど前から「自分史」の出版、あるいは「家系図」作りとなって静かなブームとなっている。こうした過去へと向かう眼差しはシニア世代だけでなく、若い世代にとっても同様である。いきものがかりが歌うYELLの冒頭の歌詞のように”私は今どこに在るの”という問いかけのように。世界が境界のないボーダレス化になればなるほど、若者のみならず「自分探し」は社会の底流としてある。そして、大人になればなるほど、自分探しから生まれ育った故郷へ、街へ、世界へ、日本へ、そして、再び故郷へ、自分へと。少し理屈っぽく言うならば、外へ、内へ、また外へ、行ったり来たりの中に新しいビジネスの芽もまた生まれてきている。

和から洋のライフスタイルへ、そして、「和」の取り入れ へ

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 「日本探し」における一番大きな変化は、高度経済成長とともに物質的な豊かさとして取り入れてきたのが、住居における洋のライ フスタイルであった。その象徴であった「団地」も住人の高齢化ばかりでなく、建物自体も老朽化してきている。こうした背景も含め過疎化が進む郊外団地については若い世代向けにリノベーションが進んでいるが、それらを含め現在のライフスタイルの基本は「洋」のスタイルである。そうした住居を見てもわかるように、畳の和室はなくなり、フローリングとベッドになったように。また20数年前にはコンク ートの打ちっ放しという建築デザインの デザイナーズマンションが人気にもなった。そして、東京の郊外には写真のようなマンション群が次々と開発されてきた。
しかし、一方ではここ10数年の戸建・マンションの傾向を見ていくと分 かるが、和の素材である木や紙を使った内外装が増え、もちろん和室も増え、戸建の場合ではあ の懐かしい縁側を造る新築も増えてきている。勿論、こうした和への共感ルーツはというと10数年前からの古民家ブー ムや田舎暮らしへと繋がっている。最近では新国立競技場が和コンセプトに基づく緑に囲まれた 競技場として計画されるように。
こうした「和」の取り入れ方については、 日常身近なインテリア小物のようなものを入り口としている。これもいわゆる洋とのバランスであるが、小物であれば安価であることからも、気軽に「和」を取り入れることになる。最近では小さなミニ盆栽のようなものをインテリアとして取り入れる傾向も出てきている。あるいは和紙を使ったランプシェードなど癒しの空間づくりも人気となっている。こうしたインテリア小物をうまく使った「和」の取り入れである。

新しい「和」の暮らしへ

ところで住宅市場に関し、野村総研が面白い市場予測レポートを出している。(「2025年の住宅市場」2014年7月)
周知の通り、すでに人口減少時代に入り、空き家が社会問題となっているが、実は世帯数も2019年をピークに減少に転じると予測されている。つまり、世帯という「住まい」が減少に転ずることから、住宅需要の変化、特に新設・リフォームがどのように変化していくかの予測である。その予測の結論であるが以下のような数値となっている。

2013年(実績)  新設住宅着工(98.7万戸)約15兆円  リフォーム6.7兆円
2025年(予測)  新設住宅着工(62.3万戸)約10兆円  リフォーム6.1兆円
*2025年(予測)  新設住宅着工(62.3万戸)約10兆円  *リフォーム20兆円

*印のリフォーム・中古市場の数値については政府の政策目標であるが、着眼すべきはその20兆円という大きな数値に表れている意味である。このままでは衰退する第一次産業と同じように国内産業のコアとなっている住宅産業も右肩下がりの典型的な衰退産業になると誰もが予測している。こうした中、住宅産業を活性化するために中古住宅の流通を改革させていく方向で考えられており、他業種の参入も考えられているようである。こうした中古住宅の流通については、以前から指摘されてきたように高齢者住宅では「広すぎる」ことが問題であるのに対し、子育て世代にとっては「狭すぎる」といった課題から、若い世代にとってのシェアーハウスまで、多様な問題解決に向かうということであろう。
未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 高度経済成長期に建てられた問題多き団地である東京高島平団地では部分的には始まってはいる。このレポートから見えてくることは、「リノベーションのある暮らし」であり、今までの「洋」のライフスタイルに、部分あるいはインテリア小物といった「和」の取り入れといった暮らし方から、本格的な今の「和」住宅、洋の合理性を生かしながら、和の持つ歴史・文化性が生きる住宅が生まれてくるという予測である。地震国日本であり、木造造りに於ける耐震性、あるいは洋の合理性ではないがIoTを駆使した新しい電化型住宅で、和テイズトの新しい心地よさのある暮らしである。しかし、最大の課題となっているのが木材などのコスト高であり、解決し得るのであればクールジャパンのさらなる構想の一つになり得るであろう。そして、コンセプト的に言うならば、まさに「和モダン」となる。

こうした取り入れが本格化していくのは、前述のハロウィン世代が自らの好みで「暮らし」を考えていく時の美意識の物差しになるのではないかと私は仮説している。ベッキーの不倫騒動の一方である「ゲスの極み乙女」のステージ衣装を見た時、ああこれは彼ら若い世代が好む「和モダン」の一つなんだと理解した。著作権の問題があるのでビジュアルは掲載できないが、「DOUBLE MAISON」という着物のやまとのブランドである。そのブランドのHPには”着物と洋服を「身につけるもの」という大きな視点をもって従来のルールに制約されない生きたコーディネートを提案していきます。年齢や時代、場所といった境を超え洋服と着物の垣根から自由になっておしゃれが大好きな永遠の女の子たちの夢を共有するクローゼットでありたいと思います。”とある。
こうした若い世代のファッションについては、例えばきゃりーぱみゅぱみゅのアーティストデビュー時からライブの演出・美術デザインを担当している増田セバスチャンも含め、日本の美意識についてこれからも取り上げてみたい。

垣根のない時代は江戸から始まっていた

ところで、ローカルからグローバルへというパラダイムの転換という変化の只中に今もいるのだが、その反作用を「揺り戻し」と書いた。普通であれば外からの新しいパラダイムと衝突し、ハレーションを起こすのが常であるが、日本の場合激しい衝突に至ることは少ない。訪日外国人が必ず渋谷のスクランブル交差点を訪れるのも、交差しても誰一人ぶつかることなく横断している、その「不思議さ」に驚くのである。最近はスマホしながら横断するのでぶつかることはあるようだが、互いに器用に避けながら横断する。

未来塾(22) パラダイム転換から学ぶ (概要編) 後半 こうしたマナーやルールは小さな頃からの家庭での教育によって育まれてきたものだが、そもそも江戸時代では垣根のない「長屋社会」で暮らしていた。長屋には鍵というものがなく、ある意味開けっ放しであった。そして、互いの生活がわかっているので、当然助け合うようになる。そうした町コミュニティを成立させるには「大家」の存在が大きかった。大家は長屋の管理人ではなく、町の治安から店子の世話まで幅広く行う江戸にはなくてはならない存在であった。長屋には開けっ放しで垣根がなかったと書いたが、実は大家の活躍を含め、人と人との垣根がなかったのである。
勿論、現代ではそのままとしては考えられない社会ではあるが、発想としては一部シェアーハウスやタウンハウスに生かされている。このように日本人にはDNAとして「垣根」のない生き方、生活が今なお残されているような感がしてならない。
江戸から明治という大転換にあって、例えばそれまで共存してきた神仏習合が神仏分離、神道尊重を背景に、廃仏毀釈という寺院や仏像などが壊されたことがあった。しかし、これも仏教の持つ特権を無くすことが目的て、既に江戸時代からあった運動でもあった。
そして、「外」の世界との衝突があるとすれば、互いに衝突し壊れるのではなく、その交差点に火花が起き、まるで化学反応のように新しい「何か」が生まれてくる、そんな面白い日本の面白い時代に今もいる。

今回は「概要編」ということで、ローカルからグローバルへ、そうしたパラダイム転換を、洋から和へ、その変化を暮らし、特に住居を中心に考えてみた。そして、既に「転換」によってどんな現象が生まれているか、以下のようなことがテーマとなると考えている。例えば、

■消費生活に現れた回帰現象の「今」
■和と洋、その雑食文化の未来
■日本の美意識、「わびさび」から「カッワィーィ」まで
■老舗とトレンド、その市場の「今」
■日本語と英語、日本人って「何」

ところで上記はあくまで例えであり、「交差」という化学反応によって新しい「何か」が生まれてくると感じたものについては順次取り上げていくつもりである。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:07│Comments(0)新市場創造
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