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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年07月12日

ブームはバブル という認識の進行

ヒット商品応援団日記No618(毎週更新) 2015.7.12.

前回のブログから3週間ほど経ってしまったが、2015年上期の日経MJによるヒット商品番付を読み解く中で、「都市市場の可能性とリスク」では次のように「空き家率」の増大を踏まえそのリスクについて書いた。

『都市の場合マンションについてではあるが仔細に調べていくと、千代田区36%、中央区28%、と驚くべき空き家率の数字となっている。多摩ニュータウンなどの郊外団地なら分かる話ではあるが、都心の良い立地、分譲マンションについて大きな変化が実は出てきている。1980年代後半から増えてきたいわゆる「ワンルームマンション」という投資用のマンションで、今や狭い上に老朽化が進み、改修には多くの同意者が必要からそうした試みも進まず、・・・・・結果、空き家が増え続けるというリスクが年々増大してきている。』
更に、
『都心の高層億ションについても今は売れており住民が住んではいるが、これも中国富裕層の投資用となっている物件もあり、活況を見せる上海株式市場を始め中国経済次第ではあるが、株バブルの崩壊が起こればいつ売却されるかもしれないというリスクも孕んでいる。』

ギリシャの債務問題ということに加えて、案の定中国の株バブルがはじけ、日本の株式市場も大きく下落した。金融の専門家ではない私が見ても、中国の株式市場はバブル状態にあることぐらいは分かる。1980年代後半のバブルを経験した日本人にとっては今回の中国における株式市場は「いつか来た道」である。
そして、金融の専門家は中国観光客の「爆買い」は縮小するであろう、あるいは家電量販ラオックスのような中国企業や商社も下げるであろうとコメントしているが、日本の株価を支えているのは外国人投資家と周知の公的資金によるETF買いである。そして、まだ株価上昇用の公的資金は十分に残っているようであるから、中国政府と同様株価を買い支えるであろう。しかし、そもそも論として日銀がETF購入という形で株式市場に介入してもよいのだろうかという論議、あるいは骨太の方針にも次なる成長戦略が見えないところで日本の財政健全化という論議が再燃するであろう。

ところで、こうした株バブルの論議とは反対に「消費」についてはある意味賢明な志向を継続しており、こうした消費者の志向に応えるように百貨店やSCなどの流通企業の「サマーバーゲン」のスタートが元に戻ってきた。今までのバーゲンは年々早くなり6月後半からのスタートであったが、今年は7月に入ってからのところが多くなった。つまり、消費の購買志向が「とにかく早く、誰よりも先に」から、「お気に入りと価格をしっかり見て買う」という本来の姿に戻ってきたことによる。
こうした背景は言うまでもなく、消費増税に加えて円安による物価高の進行継続にある。デフレ時代の遺産のように言われてきた「激安」「メガ盛り」、あるいは「ワンコインランチ」は日常的に進行し、違いと言えばその中での「質」が問われる世界となっている。上半期のヒット商品のところでも書いたが、街場の日常利用の専門店に行列ができるのも「安さ」に「質」が伴っているからである。例えば、東京では最近肉食女子などと言われ行列ができる店がある。高田馬場のレッドロックというローストビーフ丼が売りものの店であるが、ある意味メガ盛り丼で価格も850円(並)とリーズナブルである。レッドロックの店の前には川があるのだが、その橋にまで行列がの出ている、そんな光景の報道がなされていたが、3週間ほど前その橋を渡ってミャンマー料理「ルビー」に
行ったのだが、店の前に若干待っている女性を見かけただけで既に行列はなかった。

また、以前から注目されていた「クロナッツ」でおなじみのドミニク アンセル ベーカリー トウキョウが6月20日、ついに表参道にオープンした。世界のどの国に初出店するのか、その場所はどこか、多くの関係者が注目されていた専門店であるが、レッドロックと同様オープン当初は行列が出来ていた。その後どうなっているか確認をしたかったので、表参道に面しているルイヴィトンの真裏の路地にあるドミニク アンセル ベーカリーには店内はほぼ満席であったが、既に行列は出来ていなかった。土曜日の昼で表参道から原宿に向かう通りや路地は多くの外国人や中高生の人波で溢れかえっていた時間帯であるにもかかわらずである。

勿論、今も行列が出来ている店はある。並んでも食べる価値はあり、それは安さであったり、質に見合った安さによるものである。月に1回といった工場直売が多い様だが、日常利用の代表的例が千葉にあるツオップという街場のパン屋さんで、常に3分ごとの焼きたてパンを出し続けており、その鮮度を購入するための行列である。新しい、面白い、珍しいといった情報興味だけの行列はせいぜい持続しても数週間ということであろう。こうしたブームという一過性の「人気」は行列の長さが長ければ長いほど、落ちるのもまた早いということである。こうしたブーム意識は一つの認識へと向かい、消費においては自らバブル回避に向かっているように見える。
但し、全て新しい、面白い、珍しいものへの興味がなくなった訳ではない。興味の内容が変わってきたということである。以前、「プロの逆襲」というタイトルでブログを書いたことがあったが、その逆襲の内容について京料理が廃れないことを踏まえ、「奥行きの深さ、見えないところにプロの技があり、それを支えるのが手間を惜しまないプロの精神である。見えないということは、小さな違いである。決して大きな分かりやすさはないが、どこか違う。そんなプロの技は細部の見えないところに宿るものだ」と。

つまり、既に足元にある先人たちの埋もれた「仕事」を学ぼうという「知らないこと」への興味関心が出てきたということである。その一つが伝統野菜のような日の目を浴びない野菜作りを黙々ととやってきたことへの評価である。決して安くくはない野菜を買い求める消費者が出てきているのはそうした背景からである。あるいは各地に残る伝統工芸についても後継者が見つからないまま途絶えてしまう状況にあって、若い世代がその技を継承すべく現れてきている。実は足元にそんな宝物が埋められていることに気づき、そんな世界の消費へと向かう。これからのヒット商品はそうした足元である街場から生まれる、そんな時代に向かっている。(続く)


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Posted by ヒット商品応援団 at 13:47│Comments(0)新市場創造
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