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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年06月14日

2015年上期ヒット商品番付を読み解く 

ヒット商品応援団日記No617(毎週更新) 2015.6.14.

2015年上期の日経MJによるヒット商品番付であるが、パッと見てどんな印象を持たれたであろうか。それこそパッとしたヒット商品が見当たらない。あるいは新聞やTVの報道を見ればわかることで、ヒット商品の理由、なぜ売れているのかその価値潮流が見当たらない。こうしたヒット商品の不作は消費増税や円安=物価高が消費を収縮させている大きな要因になっていることは言うまでもない。

東横綱 インバウンド旋風、 西横綱 北陸新幹線
東大関 ピケティ現象、  西大関 ベア
東関脇 セブンドーナツ、 西関脇 イートイン
東小結 アップルウオッチ、  西小結 ドローン

コインの裏表

訪日外国人市場の急伸、特に中国観光客による「爆買い」については連日のように報道されてきたのでこれ以上コメントすることはないが、1月~3月累計の買い物額では昨年同期の2倍近い2972億円。よくTVの報道で中国人観光客の「爆買い」の様子として「いくら買うつもりか」と聞いているが、お金の使い方が今の日本人とは異なるため「爆買い」といった表現となる。自分の興味ある商品を前にした時、その行動を左右するのは「どれだけのお金が自分にあるか」である。カメラの前で札束を見せてこれだけ買うつもりであると誇らしげに取材に答える。自分が「お金が払える」範囲で、できるだけ品質が良く高いものを、できるだけたくさん買おうという金銭感覚である。ちょうど1960年代の日本人の生活のように物で生活を埋めることで満足を求める意識と根底は同じに見えるが、一種独特な金銭感覚であると理解することが必要である。現在の日本人のように「必要」「好み」という志向から、我慢をしたり時には無理をしたり、ローンを組んだりして買う、こうしたいわば「どうお金を使ったら良いのか」という論理的計画的な購入行動ではないということだ。

円安によるインバウンド旋風とは逆に、GWの日本人の旅行は海外旅行は減り、国内旅行が増え、その象徴が北陸新幹線となる。GWの顧客数は39万1000人と在来線特急の前年比3.1倍になった。実はこうした円安=お金の使い方が変わりそして金額自体も減ったこともあるが、北陸はまだまだ未知の観光地で新しい発見を求めてのことと理解すべきである。海外旅行についても安近短という傾向は変わらないが、例えばベトナムにはまだ行っていないので。あるいはカンボジアのアンコールワットにも。遠いヨーロッパであっても、パリではなく、チェコといった東欧、あるいはトルコといった国々となる。
こうした傾向は国内の旅行先についても当てはまることで、まだまだ未知の地方は多いと理解すべきである。何度でも書くが、課題は興味を引く、どんな「未知」を提供できるかである。

さて東西大関についても横綱同様コインの裏表にような関係となっている。周知のピケティは仏の経済学者であるが、ちょうど1年ほど前米国で英訳された「21世紀の資本」がベストセラーになり、格差の大きい米国でその格差の源を多くのデータをもって解き明かした書であった。当初は「21世紀の資本論」としてあのマルクスの「資本論」と比較され、「現代のマルクス」と呼ばれていたが、そんな言葉の表層をなぞったものではない。ピケティ本人が取材に答えているように「マルクスにはデータがない」とし、グローバル時代の不平等をデータをもって仔細に解き明かし、グローバル富裕税を課すべきと提言している。実は14万部を超えたベストセラーであるが、和訳された本を書店で見て購入しようと思ったが、その膨大なページ数からこれは読めないなと断念。私にはピケティを語る資格はないが、国を超えたビジネスの問題、従来から米国の経済学者であるクルーグマンなどが指摘してきた「市民主義」のような国家が果たすべき社会性への指摘についてはわかる気がする。

一方、日本におけるグローバルビジネスの中核を担う大企業の多くが賃金の基礎となるベアを大きく伸ばした。ちなみに大企業の賃上げ率は平均2.59%と極めて高い水準となっている。しかし、従来のような革新的技術、製造業、輸出立国、・・・・・・こうした産業からの転換が求められており、新しいビジネスへの転換の模索が始まっている。例えば、東京オリンピックで好況となっている建設業や不動産業も既に次なるテーマへと動き始めている。そうした結果としてのベアであると理解すべきであろう。つまり、中小企業であっても、地方企業であっても、高水準の収入を得る道はある。ちなみに、経済の地盤沈下が叫ばれている関西においても、IT関連ベンチャーへの投資を行うファンドも組成され既に動き始めていると聞いている。

これからのヒット商品市場

ところで、問題なのは大きな価値潮流として産みだすことが求められている高齢社会・少子社会へのヒット商品がまるでない状態である。せいぜい待機児童の解決策や高齢者の買い物を含めた諸対策が若干行政レベルで行われるているに過ぎない。勿論、咀嚼が困難なお年寄りにもっと美味しく食べてもらえるようなプロ仕様の食や介護道具類が開発されていることは知ってはいる。しかし、社会が「アレ!」と思うようなヒット商品、「元気に老いる」ための行政や医師、そして、地域コミュニティ、あるいは企業に未だ出会ってはいない。前回の未来塾「スポーツから学ぶ」の長寿県長野がそうであるように、食だけでもなく、スポーツだけでもなく、日々仕事もし、温泉といった楽しみをも生活へと取り入れる。そうした全体としてバランスある生活そのものが問われている。

そうした時代ならではのヒット商品ではないが、街場の日常ヒット商品、あるいはわが町のヒット商品といった小粒だが、意味あるヒット商品が誕生してきている。例えば、シニア固有のものではないが、街場の商品と言えばパン屋さんであるが、優良商店として農水大臣賞となった千葉のパン店ツオップのようなヒット店である。焼きたてパンは鮮度が命で4分に1回焼きたてパンを店頭化しているパン好きにはたまらない行列店で、多い日には1日5000個を売るパン屋さんである。ちなみに、同じ千葉にはメロンパンでお馴染みのピーターパンがあり、勿論街場の先行する人気パン店として流行っているが、そのピーターパンの焼き立ての目安は30分としている。ツオップはこうした焼き立ての鮮度を手間と仕組みとして超える努力をしてきた結果ということである。

さらには、今年のGWに首都圏で行われた「肉フェス」の来場者であるが、開催会場を広げらこともあり、東京が55万2000人、千葉が27万人、神奈川が11万5000人。合計で約93万7000人を記録した。2014年は約71万人であったが、わずか3年目で93万人超の集客はいかに「フードイベント」が人気となっているかがわかる。これもあのB1グランプリを契機に各地・各店の自慢料理イベントに人が集まり、そして定着したといっても過言ではない。
どんどんつまらなくなっていくTV番組にあって、「グルメ番組」だけが視聴率をとることができる。それは町歩きをしながらの「食べ歩き」から、これでもかといった「食べ放題」、更にはちょっと変わった漁師飯や旬の魚料理、そして注目のデパ地下から道の駅まで。つまり、日常の小さな「発見」、まだ味わったことのない小さな「美味しさ」に興味が惹かれるということだ。

都市市場の可能性とリスク

これが東京、首都圏の注目すべき消費の傾向であるが、人口減少時代、少子高齢社会にあって、地方だけでなく都市もまた同様の問題というより、更に大きなリスクを負った時代に向かっている。それは最近ニュースとなっている「空き家率」として目に見える問題として露出している。
2年ほど前、ブログにも書いたが東京湾岸地帯のマンション群に人気が集まり、さらに都心の高層億ションも順調に売れていると。実はこのマンションを含め大きなリスクが表面化してきたことがわかってきた。空き家というと過疎、地方固有の現象であると思われがちであるが、実は都市部においても同様の傾向が見られる。総務省によれば空き家は全国では820万戸、総住宅戸数に占める率は13.5%と過去最高であると。ちなみに都内で一番空き家率の高いのが豊島区で15.8%となっている。(東京平均では11.4%)
高齢社会は人口減少とともに地方も都市も同様に押し寄せており空き家の発生につながっているが、都市の場合マンションについてではあるが仔細に調べていくと、千代田区36%、中央区28%、と驚くべき空き家率の数字となっている。多摩ニュータウンなどの郊外団地なら分かる話ではあるが、都心の良い立地、分譲マンションについて大きな変化が実は出てきている。1980年代後半から増えてきたいわゆる「ワンルームマンション」という投資用のマンションで、今や狭い上に老朽化が進み、改修には多くの同意者が必要からそうした試みも進まず、・・・・・結果、空き家が増え続けるというリスクが年々増大してきている。
更には都心の高層億ションについても今は売れており住民が住んではいるが、これも中国富裕層の投資用となっている物件もあり、活況を見せる上海株式市場を始め中国経済次第ではあるが、株バブルの崩壊が起こればいつ売却されるかもしれないというリスクも孕んでいる。

こうした景気次第の問題とは異なり間違いなく高齢社会は進み、人口も減少し続ける。空き家だけでなく、商店街もさらにシャッター通り化していく。そして、例えば乗用車の場合、1980年代にかけては新車を所有することが一番であったが、1990年代に入り中古車が一番売れるようになる。さらには環境やエネルギーコストの視点からHV車から水素自動車へ。また、普通乗用車は軽自動車へ、そしてカーシェアリングも普及し始めた。自動車の場合は技術的なイノベーションが必要であるが、高齢社会を解決する一助となる自動車はまだ現れてはいない。コンパクトシティといった交通インフラの方策が考えられているが、都市においても高齢者の買い物難民は少なからず存在している。

自分創生時代へ

つまり、社会の変容とともに消費価値観自体が変化してきたということである。しかし、高齢社会ならではのヒット商品は生まれてはいない。少子化社会ならではのヒット商品も同様である。せいぜい5ポケットや6ポケットならではのヒット商品、例えば祖父母から孫へのプレゼント、ランドセルなどが入学シーズンを待たずにどんどんプレゼント時期が早まり、そして豪華なものになっている。しかし、少子化社会、プレゼント対象となる孫はどんどん少なくなっていく。こうしたランドセル市場であるが、実はそのデザインとユニークなスタイルが海外の人気商品となっている。その背景にはクールジャパン、ドラえもんやコナンをはじめとした日本アニメの登場人物が愛用するランドセル姿から影響を受けてのこと。結果、海外セレブはもとより訪日外国人のお土産として百貨店や空港で売られ、輸出するまでのヒット商品となっている。

このように何がどのように売られヒットするのかわからない時代、またまだ社会の変容に追いついていない時代。そのためにも、街場のヒット商品、街場の衰退商品をより丁寧に見ていかないと間違ってしまう時代にいるということだ。ランドセルのように海外で売れる理由を見いだすことも必要であり、少子化だから、あるいは高齢社会だから売れない、衰退していくと勝手に決めつけてはならないということだ。そして、売れない理由がわかったら、自らの発想自体をイノベーションすること、自らの行動も変えていくこと。地方創生ならぬ、自分創生が必要不可欠な時代にいるということだ。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:06│Comments(0)新市場創造
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