さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2015年05月03日

心が見える関係へ 

ヒット商品応援団日記No612(毎週更新) 2015.5.3.

5月1日総務省から3月度の家計調査(速報)が発表された。誰もが予測していたように昨年3月の膨れ上がった駆け込み需要と比較し、実質10.6%の減少。その主要な内容を見ていくと、駆け込み需要の主要商品の一つであった家具や家庭電化製品は-39.6%となり12ヶ月連続の実質減少となっている。こうした駆け込み需要の反動もあるが、一番気になるのが教養娯楽への支出で14.0%の減少となっており、これも12ヶ月連続の実質減少となっている。更に見ていくと自動車購入やガソリンなどの関係の支出が家計支出全体の減少に大きくはたらいていることだ。そして、縮小する消費の背景となっているのが世帯実収入であるが、これも予測通り0.3%の減少で18ヶ月連続の実質減少となっている。そして、消費者物価指数は数字で表現するまでもなく、消費を控えさせる水準にまで上がっている。つまり、消費の低迷状態はこの1年間ほとんど変わることなく、縮小のまま推移してきたということである。

ところで地方創生のための交付金として地域消費喚起などに2500億円。話題となった鳥取県のプレミアム宿泊券のようないわゆる官製販売促進である。同じように徳島県では「おどる宝島!とくしま旅行券」も実質半額で泊まれるものでこれも完売となっている。全国1700を超える自治体が似たり寄ったりの商品券を発行している。こうした商品券は以前にも行われたことがあったが、プレミアムというお得感が当時は10%程度でその率が少なく効果はほとんどなかったことから、今回は半額といった「お得」をエスカレートさせて注目を浴びているが、それらは瞬間的なパフォーマンスにすぎない。問題は継続させる抜本的な施策が不可欠であるが、継続・定着を促す施策は聞いたことがない。

この3月後半から4月上旬にかけてティーンの聖地原宿竹下通りとおばあちゃんの原宿巣鴨とげぬき地蔵尊を何回か歩いたが、竹下通りの集客数は年末の上野アメ横と同じ光景を呈していた。雑踏というよりすしずめの満員電車のようで、その観光地化の成功事例を目の当たりにした。これは次回の「未来塾」でレポートするが、巣鴨は別として、原宿にもかなりの訪日外国人が訪れていた。桜観光が中心で、原宿には少ないと勝手に思っていたが、ファッションもクールジャパンという日本の精神文化の嫡子、サブカルチャーの一つであると彼らは考えており、すでに定着化が始まっていると思われる。若いティーンに混ざって、年齢を重ねた外国人がいると、少しの違和感を感じるが、これもまた時間経過とともに当たり前の光景になってくる。こうした訪日外国人を地方に呼び込もうとしているが、それほど簡単なことではない。都市部の百貨店は訪日外国人、特に中国人観光客によって「一息」ついているが、これも4~5年前から準備体制を整えてきた結果であり、サプライズだけの地方創生メニューでは不可能である。にわか免税店を考える前に、自らの持つコンテンツがどうであるか今一度見直すことから始めることをお勧めする。

このGW連休中首都圏では多くのイベントが開催されている。特に、「食」に関するイベントに多くの人が集まっているようだ。 B-1グランプリから始まったフードイベントは、ラーメン、ご当地の食フェス、最近では3年目を迎える「肉フェス」に注目が集まっている。第1回目の駒沢オリンピック公園では約29万人、2回目の国営昭和記念公園では約42万人を動員し、国内最大級のフードイベントとなった。今年は東京・千葉・神奈川の3カ所で同時開催となり、動員数も更に増えることが想定されている。
また、同じ「食」であるが、数年前からBBQ(バーベキュー)が人気となり、何も持たずにファミリーやグループで楽しむといった傾向が強く出ている。以前は河川敷やキャンプ場が中心であったが、数年前から東京台場周辺の公園やホテルや施設の屋上がBBQ会場となり、仕事帰りのBBQが一つのスタイルとなり、その裾野が広がっている。消費が縮小するなかにあっても、こうした小さな楽しみには積極的な行動を起こしている。

私のブログのテーマに「食」に関するものが多いが、これはライフスタイル変化や消費価値観の変化が一番出やすいのが「食」であり、「日常」であることからいきおいこうしたテーマが多い。例えば、苦戦している、いや危機的状況にあるマクドナルドについてかなり多く書いてきたが、そのマクドナルドから離れていった顧客はどんな顧客でどんな消費移動を見せているかである。正確な調査結果に基づいたものではないが、子供を含めたファミリーに力を入れ始めたファミレスや「食」の完成度の高いコンビニに移動しているようだ。つまり、2007年12月の中国冷凍餃子事件以降、「食」の安全が消費の大前提となり、その先には「子供」や「家族」がいるということである。このことに気づかない限りマクドナルドの再生はあり得ない。逆に、「子供」への安全、健康といった世界でどれだけ貢献できるかが課題であるということだ。このことは子供向けの商品メニューの開発に留まらず、例えば子供たちの健康を考えた「肥満」対策としてのメニュー開発や管理栄養士による日常の食生活の相談や提案など。子供だけではないが、米国の食品スーパーでは新たなサービス貢献として管理栄養士が売り場に配置しているスーパーも出てきたように。
周知の子供への教育をテーマとしたあのベネッセが顧客情報を流出させた事件後どんな変化となったか。先日あのマクドナルドの元会長でベネッセの経営リーダーである原田氏が記者会見に臨み、今年3月期の決算予測の発表があった。会員数は25%減少し、上場後初の赤字転落でリストラを加速させるという。そして、顧客名簿の流出の根っこにあるのが、販促策としてのDMであるが、こうした「量」にシフトしたマーケティングこそが問われていると自省しなければならないのだが。

通販ビジネスは「顔が見えない者同士」のビジネスである。「見えない」関係であればこそ、見えるように見えるようにすべきであってDMの量の問題ではない。よく顔が見える関係というが、心が見える関係こそが目標なのだ。そんなことをしていたら経済効率が悪いと指摘する人もいるかと思う。しかし、「危機」を超えるにはこうした方法しかない。しかも、前述のように消費は縮小したままである。
例えば、エブリデーロープライスを掲げる世界最大の米国ウオルマートを見に行かなくても、日本にあるOK(オーケー)というスーパーに行けば全てが分かると言われている。そのOKでは何故安いのか、何故高いのか、明確に店頭表現するオネスト(正直)コンセプトを徹底させている。安さだけでなく、この誠実さ、真摯さに共感・納得するから顧客支持を得て成長しているのだ。信用は、提供する企業・店が顧客を信じることからしか始まらない。その努力の結果が信用への入り口となる。顔が見える関係から、心が見える関係へと1歩踏み出すことである。
こうした企業は他にもいくらでもある。通販生活のカタログハウスでは、顧客からの問い合わせに対し、「お客様窓口」などとは言わず、「お便りありがとう室」としている。お問い合わせいただきありがとうございますという意味だ。今も継続しているかわからないが、いただいたお便りに対しては直筆で返事を書くという。あるいは九州にある皇潤というヒアルロン酸を販売しているエバーライフという通販企業がある。この企業ではシニアの悩みを聞くことが全てであると考えており、顧客は電話オペレータを指名することができる。つまり、電話オペレータ担当制を敷いている。人件費といった経済効率を考えたら「担当制」という発想は出て来ない。
マクドナルドも、ベネッセも、あるいは低迷する企業も、消費が縮小しているこの時にこそ、創業期がそうであったように、「心が見える関係」へと原点に帰ることだ。(続く)

あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(新市場創造)の記事画像
2023年ヒット商品版付を読み解く 
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半  
マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半
春雑感  
変化する家族観
常識という衣を脱ぐ
同じカテゴリー(新市場創造)の記事
 2023年ヒット商品版付を読み解く  (2023-12-23 13:34)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」後半   (2023-07-05 13:21)
 マーケティングの旅(1) 「旅の始まり」前半 (2023-07-02 14:15)
 春雑感   (2023-03-19 13:29)
 変化する家族観 (2023-02-26 13:23)
 常識という衣を脱ぐ (2023-01-28 12:57)

Posted by ヒット商品応援団 at 13:04│Comments(0)新市場創造
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
心が見える関係へ 
    コメント(0)