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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2014年03月24日

消費増税による消費変化への視点 

ヒット商品応援団日記No575(毎週更新)   2014.3.24.

消費増税前の最後の駈け込み需要が始まっている。売れる時に売るというのが小売業の原則であり、「今がお買い得!」、あるいは「ラストチャンス」のキャッチコピーによるPOPが店頭を飾っている。昨年秋から住宅需要を始め何度となく駆け込み消費について書いてきたので繰り返し書くことはしないが、いち早くお歳暮やお中元商品のアウトレットセールで注目されてきた松坂屋上野店では缶詰などの賞味期限の長い食品セールが始まった。アウトレットセール同様、シニア世代を中心に多くの顧客が催事場に押し寄せている。
今回は今までのまとめと予測されるマーケティング上のポイント、消費変化をどう見ていくかを整理することとする。

1、消費の移動を見極める

多くのメーカー、あるいは専門店では「価格据え置き(実質値下げ)」と「値上げ(消費税アップ分)」の2つに分かれた。前々回のブログに吉野家の新メニュー「牛すき鍋膳」(580円)が大ヒット商品となり、新メニューによる価格アップがはかられたと指摘し、これは丼ではない、新しい鍋スタイルに顧客支持が集まったと分析をした。そして、同時に季節メニューであり同様のメニューが競合からも出されるであろうと。面白いことに競合であり最大手のすき家も同様のメニュー「牛すき鍋定食」(580円)を出し、これまたヒット商品になっている。丼スタイルとは別の鍋スタイル需要があり、こうした「変化」に着目することが重要である。そして、周知のように4月1日以降吉野家は牛丼を値上げし、すき家は逆に値下げをする。
昨年はあのマクドナルドの顧客は牛丼店とコンビニへと移動した。コンビニは煎れたてカフェを始め、新しいメニュースタイルを導入し、今年はシニア市場を対象に小単位冷凍食品を導入拡大するという。牛丼専門店はと言えば鍋スタイルという新メニューによって新しい需要を創り、ある意味顧客離れを食い止めたと言える。一方、マクドナルドの新メニュー「アメリカンヴィンテージ」はどうかというとそこそこ売れているが全体を押し上げる「復活メニュー」にはなってはいない。そして、急遽ビッグマックについては3%値上げするが、昨年あの「100円バーガー」を120円に値上げをしたが、元の「100円バーガー」に戻すとの発表があった。「値上げ」そして「顧客単価アップ」という戦略の失敗を認めた訳であるが、果たして顧客は戻ってくるであろうか。米国マクドナルドにはサンドイッチタイプを始め多すぎるほどのメニューがあるが、牛丼店における「鍋スタイル」のようなメニューが待たれている。

そこでこうした消費の移動を以下のような「仮説」をもってシュミレーションしておくことが必要である。例えば、都心のランチについては「ワンコイン(500円)ランチ」が人気となっているが、次のような「移動」が考えられる。
・新たな「400円台ランチ」へ ・お弁当族(セルフスタイル)へ ・コンビニで400円程度の弁当等と飲料持参
単なる値上げでは間違いなく顧客は離れていく。競争相手はジャンルを超えて無数存在し、いつでも「消費の移動」は起きるということだ。価格を含め、今以上に「顧客」を見つめなければならない。

その顧客の見極め方であるが、情報の時代であり、顧客は顧客を呼ぶ、結果商品や店、あるいはエリアに集中することとなる。そして、その集中の理由を明らかにするということである。リーマンショックの時顕著に見られた例であるが、丸の内のサラリーマンは安くてボリュームのある飲食店が集中する新橋まで歩いて食事に行っていた。
既にこうした芽は出てきている。予測されるその集中とは、例えば以下のような点となる。
○特定価格帯への集中/ランチの場合、ファミリーユースの場合、あるいは例えば消費のシチュエーションが変わる旅行といった各ジャンル毎の集中を見ていく。そして、間違いなく4月の消費動向を見て、6月のボーナス時期に向けた大規模なバーゲンが想定される。その値引き率を注視しなければならない。前回の増税時にはヨーカドー・イオンという大手スーパーが「消費増税分還元セール」を行い圧倒的な顧客支持を得たことを想起しなければならない。
○特定エリアへの集中/移動の中心(駅、空港、都市はどうか等)、集積の中心(商業施設、娯楽施設、リゾート施設等はどうであるか)、こうした中心の変化を見ていく。また、マクロ的にエリアを見ていくならば、消費の集中は圧倒的に都市部になる。
○特定話題への集中/特定の都市、街、店、人物、テーマ、といった情報の集中。今回の駈け込み需要へのアイディアとして、1月に行われた東急百貨店による5%のままでのボーナス払いのような「お得」な話題がどう創られていくか、ヒットしたアイディアを自社、自店にどう取り込んでいくか、「話題の波」に乗るということである。

2、新たなローコスト業態に注目

消費増税に向けて日銀が新たに1円硬貨を増産していると話題になったが、小売り側においても東急ハンズでは小銭入れ売り場を拡充しアイディアフルな小銭入れが店頭化されている。消費増税は価格表示の問題もあり、今まで以上に価格へと目が向くこととなる。しかも、1円単位の「違い」に対してである。
そして、顧客との関係づくりのためのカード戦略が盛んであるが、今後はそのカードを使ったリピートを促すポイントプロモーションがタイムリーに行われることとなる。そうしたことを踏まえ、顧客の側も、提供者の側も、新しいロープライス、ローコスト商品、お得心理が出てくる。例えば、
○セルフ化の更なる進行/居酒屋、理美容室、健康診断、週末農家(家庭菜園)等
ex調理までセルフの居酒屋、理美容道具が完備したニュー理美容室、簡易自己健康診断、
○共同化、協業化の更なる進行/顧客同士の共同化、コラボレーションの常態化
ex既に始まっているシェア(共有)自動車、自転車、あるいはキッチンやリビング共有のシェアハウス、
○Reの更なる進行/リ・デザイン、リ・フォーム、リ・サイクル、リ.バイバル、Reを促進させる修理、メンテナンス、などの活用と過去への注目。(「もったいない」の京都の知恵、おばあちゃんの知恵、等)
exTV番組ダッシュ村ではないが、ゼロビジネスの追求、「省」のテーマパークでもある。
また、「価格」というテーマ集積の視点に立つと以下のような発想となる。
・ワンコイン(100円)屋台村/例えば、立地にもよるが100円均一のランチメニューでも良いし、居酒屋メニューにしても良い。また、当然時間帯毎の2毛作、3毛作としても良い。
・ワンコイン市場/「100円ショップ」の更なる浸透として、食品だけでなく、趣味に至るメニューへの「100円化」で業態も含め、全てがワンコインというテーマ市場。  

3、余暇の過ごし方への注視

リーマンショック前後の不況期の余暇にはいくつかの特徴が見られた。その一つがいわゆる何泊かする旅行が減り、東京であれば昭和記念公園のようなところへのピクニック、日帰り旅行が盛んになった。更には東京スカイツリーやお台場でのイベント、あるいはアウトレットを始めとした都市商業観光が盛んになった。勿論、こうした余暇の過ごし方の延長に「道の駅」ブームもある。つまり、お金を使わない余暇の楽しみ方である。
ここ数年の余暇の楽しみ方のヒット商品がバーベキューである。郊外の河川敷やキャンプ場と共に、最近ではお台場などでのバーベキューで道具も食材も持たずに手ぶらで楽しむ、そんなバーベキューの楽しみ方である。
こうした余暇の楽しみ方を見極める最初がゴールデンウィークとなる。どんな時間の過ごし方となるか、どんなお金の使い方となるか、大阪以西では東京スカイツリーがそうであったように、あべのハルカスには都市商業観光客が大挙して訪れるであろう。4月中旬にはJTBからその動向が発表されると思うのでそれを踏まえレポートする予定である。

少し理屈っぽくなるが、何が売れているかといった消費変化は大きくはライフスタイル変化の表に現れる表層としてある。その内側には消費行動の指針となる価値観がある。全ての消費はその個人のなかではつながっており、日常の小さな消費、特に「食」の領域にその価値観変化の芽が表に出やすい。私がブログで「食」について多く取り上げるのもこうした理由からである。また、余暇という豊かな時代の時間の過ごし方については、その豊かさのあり方が見えてくる。極論を言うと、余暇支出にかげりりが出てくると、消費停滞は極めて深刻化していると見た方が良い。例えば、リーマンショック後通常であれば有料の遊園地で休日を過ごすファミリーであったが、道の駅の無料の遊戯施設を楽しむファミリーが増加した、といった変化である。但し、楽しみ方が変わることであり、海外旅行も急激には減少しない。以前から指摘をしているように、海のLCCと言われる近場を巡るクルーズ旅行なんかはその新しさと安く楽しめる旅行で今年も更に流行るであろう。

株価もそうであるが、現在は「リーマンショック前の水準」に戻ってきた。低すぎた株価を元に戻したという意味ではアベノミクスによるところが大きいと思うが、5年前と比較し、消費環境は極めて悪い。駈け込み需要の反動という意味合いではなく、周知のように、まず大手企業の賃金は上がったが、70%を占める中小企業勤労者の賃金は逆に下がっている。更には円安によるエネルギーコストのアップによる物価高が消費を萎縮させる。円安によって輸出が増えるどころか、輸入超過という赤字体質に陥ってしまった。そして、今回の増税である。現象としてではあるが、なぜかスタグフレーション的状況に向かいつつあるようで心配である。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 15:12│Comments(0)新市場創造
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