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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2013年04月02日

激変の幕が上がった

ヒット商品応援団日記No551(毎週更新)   2013.4.2.

先月27日、流通大手のイオンが、現在約20%を出資するダイエーへの出資比率を引き上げ、子会社にする方針を固めたと報じられた。大丸ピーコックを傘下に収めた再編の第二弾、というより以前から食品スーパー業界の再編の流れのなかの一コマと言った方が正確であろう。既に1年半ほど前であったと思うが、イオンは英国大手小売業テスコの日本法人をわずか1円で買収したと話題になっていたが、この頃から弱点を埋めるべく都市戦略が始まっていた。他にも昨年夏には東京の中堅食品スーパーの三浦屋がいなげやグループの傘下に入ったことにも現れているが、あるいは数週間前のブログにマクドナルドの100円バーガー値上げ実験についても書いたように全て来年4月に実施予定の消費増税に焦点を合わせた対応策である。以前から指摘してきたことであるが、消費税5%が導入された1998年4月前後にもこうした再編統合、あるいは新しいビジネスフォーマットによる業態誕生が見られた。生活者の消費変化を見て行くには、まず小売り・流通の変化対応策を見ていけば分かる。つまり、今回もそうした激変への幕、価格をめぐる競争劇の幕が上がったということだ。

イオンがダイエーを子会社化するとの発表に対し、日経MJ(3/29号)は”誰がダイエー追い込んだ”と特集を組んでいる。日本の小売業界を牽引したダイエーの歴史が掲載されていたが、低迷の原因であるGMSからSMへの業態転換について書かれており懐かしく思った。確か2005年頃であったと思うが、その転換モデル店「フーディアム」が東京三軒茶屋にオープンし見に行ったことを思い出した。産業再生機構が立て直しのためにつくったプランの具現化店舗であるが、当時の印象としては売り場づくり、特に生鮮三品についてはシズル感や季節感もあり、これならうまくいくであろう、地価の高い都市部においても採算に見合った売上をとれるであろうというのが私の印象であった。
その後再生機構が抜け丸紅が筆頭株主なったが、私はその後SCの新規出店プロジェクトに関わりダイエーにはあまり注視することはなかった。というのもSMという業態についても「フーディアム」以外に、更に進化の芽が中堅スーパーに見られ始めたからであった。今や全国から業界関係者が視察に訪れる福岡のハローデイや米国のウォルマートを見に行かなくても東京のオーケイストアを見ればその業態を実感出来る。あるいは低迷を脱する為にいち早く買物のアミューズメント性を付加した業態への転換をはかったクイーンズ伊勢丹。地域と共に生きることを業態化したスーパー、仏壇から車まで売る鹿児島阿久根のAZスーパーセンターもそうであるが、誰を顧客とするのかを明確にした特徴あるSM業態が出現してきたからである。

ところで消費税5%が導入された1990年代後半の激変を促した主要因はインターネットをはじめとしたIT技術の活用であった。そして、言わずもがなであるが膨大なWebの世界を一人ひとりの手の中に収めてくれるサーチエンジンGoogleの誕生が後押しをした。
さてこうしたビジネス世界はもとより生活そのものを今後一変させるようなものは何であるかを考えてみると、1998年当時と比較するとすればそれほどの大きな変革への芽は未だ出てきてはいない。
しかし、変革への土壌となる顧客変化を挙げるとすれば、まず第一に挙げられるのが少子高齢化時代における人口動態の変化、特に都市部への人口移動に伴う商業の変化であろう。その中心化現象にいち早く対応しているのが小売り各社であり、加速するネットスーパーの拡充とセブン&アイのようなご用聞き&宅配といった顧客に更に近づくサービスの導入に表れている。前者は主に都市部の有職女性、後者は全国まだら模様の如くある商業過疎地の高齢者、といった買物難民、買物弱者と呼ばれる顧客への対応である。いわゆる顧客自身の集中と過疎が更に激しくなっていくことが新たな業態転換を促していくということである。異なる表現をするとすれば、消費増税における価格競争を超えるサービス、競争力としてのサービスをどうビジネスとして成立させるかといった、新たな顧客主義ビジネスが生まれてくる。

こうしたサービス力をもって顧客に近づく背景を私は中心化現象(中心への集中化)と呼んでいるが、地域や場所、立地の中心へと移動&集中するからである。以前は都市と地方の格差と呼んで人口の流出を問題としてきたが、この傾向は都市内部においても、地方においても規模の違いはあっても同様の現象が起きる。つまり、私たちは顧客を追いかけるように変化しなければならないということである。従来の「売れ筋」(=集中)は価格帯だけでなく、エリアも立地も同様である。残念ながらシャッター通り化した商店街は都市部、地方を問わず更に閑散となり、その真逆となっているのが最近の事例では東京渋谷である。東横線と副都心線がつながることによる移動活性から多くの人が中心となる渋谷に集中する街もある。小判鮫商法ではないが移動する顧客について行くということだ。勿論、例外はあり、その例外とは他にはない、真似ができないオンリーワンの場合だけである。

嫌な言葉であるが、激変は最も分かりやすい現象となって浮かび上がる。1990年代、他社との違いをどうつくるかが重要なマーケティング課題であったが、それを「付加価値」と呼んできた。しかし、1998年以降デフレの進行と共に「付加」程度の価値は低価格の前に価値足りえなくなり今日に至る。
日銀による2%の物価安定目標をはじめとしたマクロ経済についてはその是非を論じられる専門家ではないが、消費という生活実態を見続ける限りデフレは終わらない。どんな市場であれ価格は市場の需給によって決まる。株式市場は投資家によって決まるように、消費市場は生活者によって決まる。景気の気は気分の気であることは間違いないが、その気を決める収入は大企業や特定業種以外は減りこそすれ増えることはない。マスメディアはこの1か月程春闘の賃上げ結果を報じ消費気分を盛り上げようとしてきたが、円安による値上げが始まり、気分は元へと戻る、いや更に収縮するかもしれない。こうしたことは生活者にとって全て織り込み済みである。どんな価格か、どんなわけありなのか、それは他ではどうか、・・・・・・・私が「キョロキョロ消費」と名づけたように、見事なくらいシビアである。都心のオフィス街では500円ランチには行列ができるが、1000円近いランチの店は空席が目立つ状態である。4/2の日経新聞によると、米国産牛肉の規制緩和により大手牛丼チェーンの「すき家」は期間限定で30円根下げ(並盛り280円→250円)し、大手2社も追随するという。これが消費実態である。

一方、これは推測に過ぎないが、特定分野・地域でのミニバブルが起きるかもしれない。例えば、2003年後半〜2006年頃の東京ではこのミニバブルが特定業種(金融、不動産、専門職)、特定エリア(3A、赤坂、青山、麻布)において起きていたように。誰も東日本大震災の被災地の苦難を考え指摘はしないが、復興バブルは仙台の歓楽街である国分町を見れば分かると、東北を担当している知人が話してくれた。復興という人、モノ、カネが集中する中心が仙台である。東京では地下化した東横線渋谷駅の跡地に百貨店を含めた商業施設のタワー建設が予定されている。過去の例を持ち出すまでもなく、こうした集中はミニバブルを引き起こす。

ところで、ビジネス世界はもとより生活そのものを今後一変させるような大きな変革への芽は未だ出てきてはいないと書いた。もしあり得るとすれば、Web2.0という革命的世界の延長線上、SNSのその先であるWeb2.0、例えばガバナンス2.0のように市民参加による新しい解決策による独自な消費の在り方が生まれるかもしれない。例えば、過疎地の消費、買物弱者を支え確立するために、行政も、企業も、そして市民も参加し、より満足度の高い消費を目指すということである。被災地東北でいち早く復興ファンドを募り生産者と消費者をつなぐプロジェクトもそうしたWeb2.0の進化系の一つである。
私が好きなドラッカーともう一人コトラーは顧客満足こそ企業が目標とすべきであると繰り返し語ってくれた。 「多くの企業が顧客満足度よりも、市場シェアのほうに注意を払っている。だが、これは誤りだ。市場シェアは過去に関する指標であり、顧客満足は将来に関する指標である」と。激変の幕は上がったが、繰り広げられる消費という舞台のシナリオには顧客満足とは何かを常に問い続け顧客に近づくこと以外に答えは無い。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:58│Comments(1)新市場創造
この記事へのコメント
あなたのウェブサイトは非常に美しいです
Posted by คาสิโนออนไลน์ at 2013年04月04日 03:03
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