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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2012年11月12日

多発する集中化現象

ヒット商品応援団日記No537(毎週更新)   2012.11.12.

個人放送局という言葉を使って、膨大に膨れ上がった受発信メディアの有り様を表現したことがあった。勿論、インターネットの普及によるものであるが、過去10年間で流通する情報量が530倍になったと総務省からの報告もある。そして、こうした情報の消化不良がいたるところで起きている。それが単なる消化不良程度で済めば良いが、「食べログ」のやらせ問題のように、判断基準を丸ごとネット上のランキングサイトや口コミ等に求める生活者が圧倒的に多くなった。そして、スマートフォンの普及は更に便利な道具として身近な、いやスマホ依存症のような情況に至りつつある。簡単に言ってしまうと、情報リテラシーの課題になると思うが、過剰情報時代とは、活用すべき判断基準をなかなか持ち得ない時代のことである。結果、どういうことが起きるか、膨大な情報を前にして一見選択肢が豊かであるように思えるが、逆に限られた特定情報のなかの選択となる。つまり、特定情報への集中現象が多発するということである。

消費基準の多くは、自らの実体験と知識、見るだけでなく触って感触を確かめたり、実際に着てみたり、食であれば食べてみたりして、時には店頭のスタッフに疑問をぶつけたり、そんなリアルな物差しで購入し、消費し、学習してきた。最近ではネット通販サイト運営会社と百貨店といった有店舗とのコラボレーションによって、いわば実体験付き通販という解決策も生まれ、市場の広がりが促されてきた。こうしたバランスのとれた販売もあるが、まだまだ過剰情報を前に特定情報に右往左往してしまうのが現実であろう。こうした情報環境にあって、1年数ヶ月後に実施される消費増税によってどんな変化をもたらすか考えてみたい。

こうした情報環境下にあって、生活者の多くがどんな心理にあるか、デフレ心理について認識することが必要でその心理は以下のように整理することが出来る。

■不況感/10年前と較べ、年100万円弱の収入減。平成23年度のアルバイトを含めた勤労者の収入は前年 比較で年間4万円下がり続ける。つまり、消費を左右する意識「未来に対し悲観意識」が強まっている。
■幸福感/仕事を求めて都市へ、大企業へ、しかし第二次就職氷河期。そして、海外ビジネスへの就職ではなく、内向きな幸福観。
■未来意識/安定、安心、内へと向かう。就職は正社員、公務員人気。意識は過去へ、歴史へ。

つまり、その心理を一言でいうならば、安定を求めて内へ、中心へと向かうということである。そうした心理を消費行動で表現すれば「巣ごもり消費」となる。巣から顔を出してキョロキョロ見回し、関心事が「価格」であればよりお得な低価格へと一斉に向かう「集中消費」となる。巣の中には限られた特定情報しかない。しかし、外の世界に情報を求める時、あまりの「過剰な情報」に立ちすくんでしまう、というのが素直な感情であろう。これが情報の時代の特徴である。但し、前回の「青春フィードバック」で指摘したように、団塊世代だけは比較的自由に「巣」から出たり入ったりしている。

そのような情報の時代にあっては、失敗を含めた体験学習によって関心事はどんどん一定の方向に収束していく。例えば、東京で話題となっているのがワンコイン(500円)ランチであるが、昼時には行列となる。他にも出かけるには遠い山間のレストランにも他には無いオリジナルメニューがあってここでも行列となる。同じように3ヶ月先まで予約で一杯の旅館もあればレストランもある。東京大崎で行列ができるつけめん専門店である六厘舎が東京駅の地下街に移転したが、更に長い行列が出来ている。
ところが2年程前は行列に30分も並ばないと買えなかった商品が今では待つことも無く買うことができる。商品名を出すと問題があるので出さないが、そうした話題商品はいくらでもある。いわゆる「ブーム」に乗った商品で、その話題持続時間はどんどん短くなってきている。そして、売れない商品、売れない店と、ヒット商品、行列店とに二分されることとなる。そこそこほどほどといった販売可能なのはブランドとして確立し、しっかりとしたリピーター顧客・フアン顧客がいる場合だけで、それすらも極めて少ないのが現状である。つまり、2極化というより、一極集中、一店集中、になるということである。商品の鮮度は情報の鮮度であり、時間経過と共に鮮度は落ちてくる。情報にも賞味期限があるということだ。

そうした過剰情報の時代にあって、消費増税はどんな変化をもたらすかである。間違いなく、集中現象が更に多発する。そして、デフレから脱却できない日本経済にあって、想定されることは「ゾーン価格」に集中することとなる。例えば、東京においては前述のようにワンコイン(500円)ランチが人気となっているが、こうした動きに対しあのマクドナルドはフィレオフィッシュを始めとしたマックランチセットメニューを390円としたプロモーションを行なっている。消費増税実施期の2014年4月には4コイン(400円)、更には3コインといった「ゾーン価格」にランチメニューが集中することが予測される。

ところで、この「ゾーン価格」の基本単位は100円である。周知のように2000年代半ば以降ダイソーを筆頭に急成長している「100円ショップ」であるが、リスクを負った自社開発商品にはオリジナル機能ばかりでなく、デザインにも優れたものが多い。こうした生活雑貨だけでなく、生鮮コンビニのローソンもそうであるが、中堅食品スーパーのいなげやでは生鮮三品にも100円売り場ができ、同じ食品スーパーのサミットストアにも100円売り場が作られている。
今年7月に大阪ミナミのアメリカ村にオープンしたデンマークの激安雑貨ショップ「タイガー」もこうした「ゾーン価格」に位置した専門店である。このタイガーは3ヶ月半の売上予算をたった3週間程で売上てしまい、商品供給が追いつかないまま臨時休業を繰り返した。まるでゲリラ豪雨のような売れ行きであった。これも一極集中、一店集中というデフレ時代を象徴する集中消費の事例であろう。

こうした「ゾーン価格」への集中はあらゆるところに波及していく。食の分野では、人気のブッフェスタイル、食べ放題のメニュー価格も内容にもよるが1000円を切るゾーン価格へと向かっている。例えば、スイーツの食べ放題にはティーン女性で行列が作られているが、現在の1500円から1000円を切るゾーン価格に進化していくということである。
食品スーパーはエブリデーロープライスが基本となり、アウトレットも、LCCも常態化し、ほとんどの商品がわけありとなった。過剰情報社会、デフレ経済下の消費は一極消費となり、消費増税はそうした集中消費の多発を更に加速させる。どのゾーンに価格が移行し始めているか、見極めることが最重要課題となった。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:41│Comments(0)新市場創造
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