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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年08月09日

多極多様がせめぎあう世界

ヒット商品応援団日記No514(毎週更新)   2011.8.9.

今なお被災地では日常を取り戻せてはいないが、首都圏の都市生活者はその消費を見ても分かるように日常へと戻って来た。3.11から5ヶ月近くになろうとしているが、日常に戻るのと併行し周りを見渡すと世界はその変貌の度合いを更に強めていることが実感される。
米国債のデフォルト(債務不履行)をテーマに米国内の政局が注目され、結果は周知の通り民主・共和と政府との間で妥協がなされこれで一段落かと思ったが、やはり米国経済は予想通り悪いということが米国債の格下げにも見られるようにはっきりした。結果、ドル安・円高基調は変わず、しかも世界株安となった。ギリシャを筆頭に欧州もそうであるが、3年近く前のリーマンショックはまだまだ続いている。東日本大震災の情報に埋もれてしまっていたが、北アフリカから始まった旧体制への変革の波は今なお続いており、シリアでは反体制派と政府との間の衝突で多くの死者が出ている。世界の政治も、経済も、多極化という不安定さは変わらない。

少し前に震災復興担当大臣が暴言を吐いたとして辞任したが、その辞任は当然ではあるが、村井宮城県知事に対し宮城県の漁業再生のための特区構想について漁業関係者間の異なる意見調整をするようにとの会話が報道されていた。暴言ばかりが報道されていたが、実はこれからの漁業をどうすべきか、大きな問題提起をしていた。一言で言えば、競争力のある漁業とするために大手資本の進出を認め、産業として漁業を育成するのが特区構想の狙いである。つまり、津波によって船を失った漁業者は会社組織のサラリーマン漁師になるということである。一方、零細ではあるが、代々続けてきた沿岸漁業をいち早く始めることを復興の狙いとする漁業者もいる。漁業は生活の糧ではあるが、それは単なる収入だけの問題ではなく、生活そのもの、更には生きざまとして考えている。全てを奪い去った海に対し、憎いが海にまた出るとコメントした漁師がいたが、まさに生き方そのものである。

このことは漁業だけではない。農業も全く同様の問題を抱えている。結論から言えば、産業としての大規模農業を志向するのか、それとも特にお米の自給率を保持する為に他国と同様に一定の農家支援策のもとで農業を続けていくのか。しかし、漁業と同様に農業もまた後継者不足で耕作放棄地の問題は周知の通りである。この膨大な耕作放棄地をソーラーパネルで覆い尽くし、太陽光という再生エネルギー発電事業を立ち上げようとしているのが、あの孫正義氏である。
そのエネルギー政策であるが、このブログでも取り上げたが、自然エネルギーを巧みに取り入れた地方自治体もある。大分県では地熱エネルギーを主として25.24%を占め、小水力発電を主とした富山県では16.76%を自然エネルギーが占めている。ちなみに、東京はと言えば、わずか0.21%である。
福島原発事故によって、放射能汚染は直接・間接全国へと広がり、今なお被曝は続いている。そうした実態を見るにつけ、感情的には脱原発に向かうのが自然であるが、例えば先の漁業を産業として育成していくのか、それとも良き生活文化としてもその固有性を生かしていくのか、経済の効率、合理性といった同様の判断が求められている。いや、原発の問題はそれ以前に、善かれ悪しかれ地域経済に組み込まれている電源三法をどうするのか議論しなければならない。既に、あの南相馬市の桜井市長は、電源三法交付金を辞退すると発表した。受け取る市町村と辞退する市町村が出てきたということだ。どんな生き方をするのか、地域もまた多様である。

ところで、私は経済の専門家ではないが、日本の製造業はトヨタ方式と呼ばれる在庫を持たないサプライチェーンというシステムによって、更に安価なエネルギーのもとで、唯一国内生産・輸出産業を成立させてきた。ちょうど、日立製作所がTVの自社生産を止め、台湾企業に委託すると発表があったが、マザーファクトリーと呼ばれるように研究開発や人材開発といった先進技術を産み出す母なる工場は国内に持ったとしても、ライン生産の工場は海外へと移転される。つまり、否応無く更なる空洞化が進むということである。バブル崩壊後1990年代半ば、中小企業もこぞって中国や東南アジアに生産拠点を移したが、これを第一次産業転換と呼ぶならば、3.11を一つの契機とした空洞化・海外移転は第二次グローバル市場に向き合う本格的な産業の転換点となる。

話は変わるが、7年程前好きな沖縄に行き、地元の人達と話をしたことがあった。沖縄本島の南端糸満は漁師海人の町であると聞いていた。沖縄に行けば必ず食べる沖縄そばには必ずかまぼこが入っている。このかまぼこのほとんどの製造が糸満で行われている。かまぼこの材料となる魚はぐるくんという県を代表する小さな魚である。ところが、原材料となる魚のすりみはベトナムからの輸入であると聞いた。海人の後継者がいないうえに、漁のコストに見合う価格で取引できないという。その時感じたのは、日本全国隅々グローバリズムの波が押し寄せていると。

パラダイムチェンジ、価値観の転換が始まると書いてきたが、失われた20年と言われ続けて来た日本の構造、経済、社会、勿論政治もであるが、それら構造の転換が3.11によって進んでいく。トヨタやソニーといったグローバル企業はそのグローバルさを更に進化させていくであろうし、一方岩手三陸の漁師のように再び小船に乗りわかめ採りに出かける漁業がある。
私の考えはこうだ。両方あって良い、両方あるからこそクールジャパンと呼ばれるのだ。来年5月にオープンするスカイツリーが注目されているが、浅草雷門に立てば、スカイツリーを借景とした浅草寺もなかなかいいものである。戦後の復興がそうであったように、既成というがれきの山に立ち、第一歩を踏み出そうとしている。衝突・混乱は必至であるが、避けて通ることはできない。恐らく際限のない不安定さ、不確実さ、瀬戸内寂聴さんの言う無常、常ならずという時間は当分の間続く。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 11:26│Comments(1)新市場創造
この記事へのコメント
親韓反日で知られる菅直人は、孫正義らの富者がメガソーラーでさらに儲けるために再生可能エネルギー法案を成立させることに政治生命を掛けている。
同法案が不幸にも成立すると、電力会社はメガソーラーなどで発電した電力の買取を義務付けられる。
自社で発電している電力の原価に比べて高い料金で買い取らなければならない。
しかし、電気料金を上げることによって対処するから、電力会社は損をしない。
孫正義はノーリスク・ハイリターンの投資が出来る。
負担を強いられるのは一般の国民である。貧しい人は益々貧しくなる。
中小企業は赤字になるか又は倒産に追い込まれる。
大企業も電気料金の安い韓国企業と競争できなくなる。
孫正義は太陽光パネルを韓国企業から買うから、日本企業には恩恵がない。
孫正義が社長を務めるソフトバンクは、電力を食う多数のサーバーのあるデーターセンターを電気料金の安い韓国に既に移している。
自治体はメガソーラーに貴重な税金を1円たりとも使ってはならない。高い電気料金と税金という二重の負担を市民にかけてはならない。
再生可能エネルギーの導入は、立地条件の異なる各電力会社の風力、水力、地熱などの独自の発電計画に委ねるべきである。他人が発電した電力を強制的に高価で買わせるべきでない。
Posted by 盗人・李メドベージェフ at 2011年08月09日 12:56
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