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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年06月19日

パラダイム転換が始まる(1)

ヒット商品応援団日記No509(毎週更新)   2011.6.19.

今年の「父の日」は6月19日であるが、通年はあまり活発な消費は見せないが、今年の母の日ほどではないにしろある程度は動くであろう。これも大震災の影響を受けた消費傾向の一つであるが、人と人との関係を見つめ直す、特に家族との関係を自ら再認識する一つのきっかけとなる記念日市場である。
本来記念日は個人的なものであるが、無縁社会という言葉が流行語になるように関係を失ったバラバラ社会にあっては、こうした創られた「きっかけ」であっても大きな市場機会となる。

大震災をテーマにブログを3ヶ月ほど書いてきたが、少し整理してキーワード化すると以下のようになる。

○奪われた家族・故郷、絆、コミュニティ、自治、
○がれきのなかの記憶と思い出、
○喪失と再生、子ども、生命力、
○公助なき共助、ボランティア、ツイッター、ネットワーク、国内外からの支援、、
○自然への畏敬と感謝、今なお残る自然思想、海に戻る、
○想定外という人災、安全神話の崩壊、科学者であることの恥、
○放射性物質汚染、無計画停電、自己防衛、内なる安全基準、
○情報隠蔽による風評汚染、嘘の蔓延、ダーティジャパン、海外客激減、
○炉心だけでなくメルトダウンする言葉、安全デマ、
○ライフスタイル変化、節電、省エネ、脱原発、自然エネルギー、
○幸せって何!、日本って・・・、

少し前にライフスタイルの変化が始まったとブログに書いた。それはあの3.11の押し寄せる大津波の衝撃的な映像によって、奪われる家族・故郷、そこに人と人との絆の大切さを思い起こさせた。それはまた、がれきのなかの記憶と思い出探しの映像は象徴的であった。以前ブログにも書いたが、3年前に話題となった作家天童荒太が描いた「悼む人」そのものである。
こうした一人ひとりの人生を思い浮かべ、記憶を辿る。無縁社会にあって、近しい人との関係の大切さへと向かい、若いカップル世代であればその徴(しるし)としてのリングの交換や婚約といった道筋まで進んだ。消費という側面を見れば、この延長線上に「母の日ギフト」もあり、父の日ギフトもある。創られたギフト市場ではあるが、これも一つの「縁日」と呼べるものだ。今後もこうした有縁を結ぶ出来事や商品あるいは場が注目される。

福島原発事故に対する自己防衛というキーワードを3.11直後から使い多くの現象を解き明かしてきたが、マスメディアはあまり取り上げないが急激に多様な市場として生起している。
その第一は福島県を中心とした子を持つお母さん達の行動であった。勿論、放射能汚染に対する不安、恐怖に対するもので、関西方面や九州、沖縄へと避難する人が後を絶たない情況だ。3月の時点では政府も原子力の専門家も安全ですと繰り返しアナウンスしてきたが、その安全の「不確かさ」によって不安、恐怖が更に増幅させてしまった。しかも、3.11以降、時間を追うごとに事態の深刻さ、それを表す情報が小出しにアナウンスされるようになった。3月時点ではチェルノブイリと比較すること自体がおかしいと専門家やマスメディア、特に大手新聞はは口を揃えて言ってきたが、最近の政府からのアナウンスメントではまき散らされた放射性物質は77京ベクレルであったという。悲しいことだが、政府のことは信じず、放射線量を計る機器を個人で、お母さん仲間で購入し、自宅や周辺の公園等子が遊ぶ場所を自ら計る行動にまで至った。放射性物質だけでなく、安全デマまでもがまき散らされたということだ。

昨日、仏政府は空輸された静岡県産の茶葉から基準値以上のセシウムが検出され廃棄処分にしたと発表した。国内においても既に汚染問題として発表されているが、静岡県知事は飲用する場合は放射能も薄まるので問題ないとコメントしてきたが、世界の基準・常識ではそんなことはありえないということだ。静岡県産の茶葉の汚染は取り扱っている食材宅配会社「らでぃっしゅぼ〜や」の自主検査によって検出されたものである。しかも、静岡県はその発表を遅らせたと聞いている。
私は自主検査によって基準値以上の放射性物質が検出され公表した神奈川の足柄茶に対し、その考えと行動を高く評価した。それは汚染米事件で風評により倒産寸前まで追い込まれた焼酎宝山が全てを廃棄処分まで行し、公開したその経営ポリシーを高く評価するものであった。神奈川の足柄茶も同様である。誰を信じ、誰に本当の情報を公開するのか、そのことを顧客は、消費者はしっかりと見ているということである。しかし、静岡県知事は福島原発事故の政府の公開性と同じように、誰に対して「問題なし」「安全である」と言っているのか。福島県民、農畜産業、水産業、各種の工場、商店、・・・・住民全てが苦しんでいる課題は静岡県も同様であるとの認識を持たなければならない。

自己防衛とは不信の時代のことである。信じられるもの、それは自らの体験と近しい人だけである。政府も、政治家も、原子力発電も、そして大手マスメディアも、全て「遠い存在」としてある。一年前まで、クリーンエネルギーであると、地球温暖化への切り札であると、エネルギー政策を掲げてきた政府は福島原発事故から一転して再生可能な自然エネルギーへの転換を言葉だけで言う。私は原発推進論者ではないが、嫌な話であるが電力需要が供給をオーバーし大規模停電が置きた時、またもや一転して原発推進政策へと舵を取る。そんなことがころころと変わり得る政府であると不信の目が注がれている。あるいは、マスメディアもそうした政府を擁護するかのような報道を続けてきた。しかし、福島の一部のお母さん達が多くの非難をされるなかで汚染された校庭の土の除去を求めた。この行動は放射能に対するモンスターペアレントというレッテルを貼ったのは教育委員会を始めとした学校関係者であった。そうした事実を知りながら大手マスメディアは一切報じることはなかった。しかし、汚染が深刻であることが徐々に分かるに従って、ホットスポット住民への支援策を、政府も、自治体も、マスメディアも、汚染のモニタリングを実行し、報じ始めた。汚染から3ヶ月も経ってからである。

こうした不信ばかりに取り囲まれた時代にあればこそ、自らを信じ行動する生活者が多数を占めてくる。そして、そうした行動を取ることによって、より価値観は明確になっていく。今回の原発事故によってどんな価値観が生まれてきているか、文明史的な考察が必要となるが、人の手によって作られた、しかし人の手によって制御できない「人工」への忌避感が生まれている。現在は、放射能汚染への不安や恐怖であるが、次第に反人工的世界へと、つまりより自然を取り入れた、自然に囲まれた、少々不便さを感じたり、快適さが失われても、人工的生活を少なくしたい、そんな実感体験してきたライフスタイルへと移行する。これは後戻り、20年前、30年前の生活に戻るということではない。ある意味、LOHAS的生活であるが、10年程前の失敗したLOHASの教訓を踏まえたライフスタイルに向かうであろう。後半ではそのライフスタイルについて書いてみたい。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:54│Comments(0)新市場創造
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