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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年04月28日

切に生きる

ヒット商品応援団日記No500(毎週更新)   2011.4.28.

一昨日、日本百貨店協会から3月度の売上数字が発表された。前年同月比全国▲14.7%、東京地区▲21.5%、横浜地区▲21.7%、東京や横浜の数字は先月末駅ビルデベロッパーにヒアリングした結果とほぼ同じであったが、他の地域にも大きな影響が出ている数字となっている。市場が心理化されていることとその内向き心理は全国へと広がっていることが分かる。
前回、ブログに消費の動向を自粛と自覚とでは大きな違い、根底から異なることを指摘した。自粛は自粛ムードと表現されるように表層的であるが、自覚は一見自粛しているように見えるが、奥深いところには明確な意志があると。マスメディアは東北以外の観光地、特に首都圏では日光などのある北関東の観光地が壊滅的であると報じ、このGWにもまだ予約できる格安旅行のキャンペーンを行っている。しかし、JTBの発表を受けてブログにも書いたように、楽しむための時間は未だ必要としていない。

その象徴が福島原発事故である。国内、海外共に風評被害が蔓延しており、なんとかしなくてはとマスメディアは言うが、風評の原因は政府発表の「不確かな情報」にあり、後だしじゃんけんのように時間経過と共に情報が出されている。好意的理解をするならば、原発の放射能汚染地域の住民の方達のパニックを引き起こさないためであると。しかし、原発事故処理の工程表が出されたが、それもまた半信半疑としか受け止められていないのが現状である。つまり、ジャパンブランドは毀損されてしまったと少し前に書いたように、残念ながら福島は放射能汚染の記号として全世界に流通してしまっている。

ただ、周知のように原発汚染地域の北側にあり、市民がバラバラに分断されてしまった南相馬の桜井市長が南三陸町の菅野医師と共に、米国タイム誌の「世界に最も影響を与えた100人の一人」に選ばれた。南相馬が置かれている窮状をYouTubeに自ら出て訴えたことが、世界の人達が注目し、「何故あの日本が弱者に手を差しのべないのか」と驚き、そして、それでもなお生きる強さに世界が驚嘆した、という選考理由からであった。
あるいは陸前高田であったか、南三陸町であったか忘れたが、これからどう生活しますかという記者のインタビューに、家族をさらった海は憎くて仕方ないが、でも漁師だから海にでる、と答えていた。

少し前に文芸春秋5月号の特集「日本人の再出発」に瀬戸内寂聴さんが病床にあって手記を寄せていた。「今こそ、切に生きる」と題し、好きな道元禅師の言葉を引用して、「切に生きる」ことの勧めを説いている。「切に生きる」とは、ひたすら生きるということである。いまこの一瞬一瞬をひたむきに生きるということである。それが亡くなられた家族や多くの人達に、生きている私たちに出来ることだと。
苦しい死の床にあるこの場所も自分を高めていく道場。道元はこの言葉を唱えながら亡くなったという。「はかない人生を送ってはならない。切に生きよ」道元が死の床で弟子たちに残した最期のメッセージであるが、病床にある寂聴さんの手記と重なって見える。

昨年6月、60億キロの旅を終え、惑星探査機はやぶさが地球へと戻ってきた。わずかな予算で、壮大なゴールを目指し、多くの試練にもめげずに奇跡的な生還を果たしたはやぶさ。宇宙に興味を注ぐ少年や宇宙戦艦やまとになぞらえるオタクもいたが、戦後苦労した人生に重ね合わせて、はやぶさに拍手を送ったシニア世代もいた。
昨年の「新語・流行語大賞2010」の大賞には「ゲゲゲの〜」となったが、周知のように漫画家水木しげる夫妻の半生記を描いたNHKの連続TV小説「ゲゲゲの女房」をもとにした流行後である。これも戦後の極貧生活のなかをひたむきに生きてきた夫婦の絆がテーマであった。
惑星探査機はやぶさ帰還の感動も、「ゲゲゲの女房」への共感も、寂聴さん言うところの「切に生きる」世界である。

前回、自覚している生活者がいるだけで、社会に自粛ムードなどないと指摘をしたが、自覚が向かう先はこの「切に生きる」ことに他ならない。切に生きることによって生まれてくる商品やサービスは何か。それは作り手の生きざまや志しが、ひしひしと感じ取れるものであろう。長く使っても飽きない、いや長く使うほどに手に馴染んでくる。一見平凡そうに見えるが、手に取れば違いは分かる。長く使えるので、結果としてお得。そんな商品であるが、作り手の「切に生きる」姿が実感できる商品である。

さて、3.11以降どんな地平からスタートするのであろうか。数字として表現すれば、3月の百貨店売上は前年同月比▲21.5、駅ビルについても同様の▲20%前後、GWの旅行者数は▲27.6%・・・・・・更に外国人観光客は▲50%、そして、ここ数年東アジアや東南アジアに進出している飲食業、ジャパニーズレストランは壊滅状態になっていると思う。
東北の被災者と同じように、私たちもこのマイナス状態を切に生きなければならないということだ。互いに切に生きることを共感・共有するなかで、新しいビジネスもまた必ず生まれてくる。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 11:02│Comments(0)新市場創造
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