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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2011年02月15日

サービスデフレの克服

ヒット商品応援団日記No484(毎週更新)   2011.2.15.

2年半ほど前のブログであったと思うが、デフレの波はあらゆる業界に押し寄せており、「価格帯市場」へと再編されてきている、と。その象徴例として、ファミレスの元祖「すかいら〜く」(客単価1000円)の最後の1店がクローズし、新たな価格帯業態であるガスト(客単価750円)へと再編されてきたことを取り上げた。周知のように、こうしたデフレの波は航空業界にも及び、世界の航空需要の約4割がLCC(ローコストキャリア)が占める段階まで進んできたと言われている。LCCもそうであるが、人件費を始めとした経営コストの削ぎ落としは言わずもがなであるが、コストカットの方法として有料サービスを選択メニューとし、顧客に選んでもらうサービスを採用している。旅館における宿泊サービスと食事サービスの分離メニュー化、理美容院におけるサービスもカットとシャンプーや顔そりの分離メニュー化、最近ではセルフスタイルの居酒屋まで現れてきたが、こうしたサービスの生産性という視点から市場はいくつかの価格帯市場として再編されてきた。日本の航空運賃の場合、LCC(ローコストキャリア)の導入が遅れているが、恐らく東アジア・東南アジアは1万円市場、ヨーロッパは4〜5万円市場、といった具合に低価格帯市場のなかでの競争になると予測される。

ところで、ちょうど1年ほど前であったと思うが、あの名旅館和倉温泉加賀屋が台湾の台北に日本におけるサービス業態そのままで進出するとの新聞記事を読み、ブログにも注目すべきポイントを書いたことがあった。それは「おもてなし」という日本文化、伝統文化の輸出の可能性という視点からであった。昨年12月にオープンし、マスメディアにも取り上げられてきたが、加賀屋のホームページを見る限りにおいては、日本と変わらず、客室係が現地の女性スタッフによるという点だけである。ちなみに、宿泊料金は一人2食付きで標準32,000円、露天風呂付は46,000円となっている。
現地スタッフへの日本文化の教育、「もてなし」という気遣いの精神文化理解がどこまで実行できるかであるが、もしこのことが実行できればマンガやアニメ、寿司、禅、といった「クールジャパン」の一つになりえる、と私は考えている。世界中に拡大したジャパニーズレストランと同じように、サービスデフレを克服し、新たなホテル業態としてのジャパニーズRYOKANである。

厚労省のデータによると、1985年と2009年の旅館数を比較すると約1/3強減少している。後継者不足、家業から脱却できない経営規模、余暇を遊ぶ選択肢の増加・・・・・・こうした背景から減少してきたと理解しているが、当然元気な旅館も存在している。そのなかで、「クールジャパン」の可能性、新しい市場の芽となりえる国内の温泉旅館がある。それは長野県志賀高原周辺の温泉旅館街で外国人客が急増しているという。その売り物・魅力は3つある。雪質の良さ・パウダースノーを楽しめるスキー場、温泉旅館という日本文化の宿泊スタイル、特に浴衣に象徴される様式美への憧憬、そして近くの地獄谷にある世界で唯一の温泉に入る野生の猿観光、この3つの魅力であるという。

パウダースノーを楽しめるスキー場としては、5年以上前から北海道ニセコには、季節が真逆であるオーストラリアからのスキー客を集めたり、また雪を知らない台湾からの観光客も北海道を観光するようになった。最近では中国富裕層が銀座を始めとした買い物観光以外で訪れたい場所の一つが富士山観光である。クールジャパンとは、外国人にとって「未知の国」であるということだ。つまり、日本旅館、浴衣、温泉、和食(箸の使い方)、雪、富士山、・・・・・・どれもこれも日本人にとってみれば至極当たり前のことばかりである。マンガもアニメも、寿司も、過去も今も全て当たり前のことばかりである。今、八百長事件で問題となっている相撲も、欧米人にとっての興味の核心は、スポーツではあるが、土俵入りに象徴される様式美、未知なる日本文化の魅力である。

従来のサービス産業、サービス市場は無くなりはしないが、従来のままであれば今後もどんどん縮小し続ける。数年前からブログにも書いてきたが、顧客は誰か、誰を顧客とし、そのためのサービスを行うかが課題としてあると。顧客によって市場は規模も質も決まる。市場がグローバルになり、顧客が見えにくくなったことは事実である。しかし、どんなに調査を含めコストをかけても、誰を顧客とするのか、このことだけは明確にしなければならない。
消費現象面では、価格帯市場面で言えば、高価格と低価格という2極化の様相を見せるが、物消費と同じように売れる&売れない理由は多様である。ただ、新しいサービス市場、日本文化市場はグローバル市場であればこそ、面白く、その可能性は大きいと考える。そして、マンガやアニメ、寿司もそうであったが、日本文化が世界にあって未知な魅力として共感を得るにはそれなりの時間を必要とする。つまり、台湾加賀屋の「おもてなし」も、日本のRYOKANスタイルも、クールジャパンビジネスとなるには時間を要するということだ。しかし、世界のSUSHIもカリフォルニアロールを入り口に多くの時間を必要としたが、今や牛丼、ラーメン、そして和食レストランがアジアを拠点に続々と進出し、更には国民食となったカレーライスまでもが海外へと進出し始めている。サービスの生産性を高めると共に、サービスデフレを克服するには足下に広がる日本文化に着目。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 10:55│Comments(0)新市場創造
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