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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2010年12月27日

新しい価値観を求めて 

ヒット商品応援団日記No477(毎週更新)   2010.12.27.

例年であると2011年の予測コメントをブログに書いてきた。来年の経済予測について、日経ビジネス、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンドといった経済誌を読んだが、今年は特にそうであるが、ピンとくる記事はなかった。予測は当たらないというのが私の持論ではあるが、各業界の動向についてはそれなりの変化予測はあるものの、生活者変化、生活価値観について特筆すべき何かを書いたものはほとんど見当たらなかった。

今年の年末年始も、昨年同様巣ごもり生活という内向きなものになる。百貨店の福袋は既に販売されており、単に時期が早まったと言うことではなく、従来のバーゲンのバリエーションの一つとなった。福を招き入れるのではなく、お気に入りを安く手に入れるセールである。こうした大人世代だけでなく、若いティーン世代も同様である。ティーンの聖地である渋谷109の初売り「5daysバーゲン」には全国からオシャレ好きが集まり行列をつくるが、数年前から福袋購入後、109の周辺路上には「交換市」が自然発生的に開かれる。お気に入りファッションを互いに交換し、とにかく安く確実に手に入れるといった正月風景が繰り返されて来た。こうした消費心理は年代の区別なく広く浸透してきた。そんな風景を安定したデフレ風景と私は呼んだが、まだまだ続くと誰もが感じている。

今年の社会に敷衍した心理の一つに「パワースポット」がある。全国各地の神社を始めとした「いわれ」を感じたい、そんな世代を超えた人達が訪れた社会現象である。これも1990年代後半から発生した「占いブーム」と根幹は同じである。全てが不確かである時代の特徴で、やはり1990年代初頭のバブル崩壊、特に収入が下がり始めた1998年以降の不安の時代、俗にいうところの失われた20年の時代特徴である。「今」を変えたい、「何か」を突破したい、とした「力(パワー)」願望時代ということだ。

このことは過去回帰、歴史回帰にも良く出て来ている。人は「今」に行き詰まり、未来を思い描くことが出来ない時、力を求めて浮遊する。一昨年の「歴女ブーム」のように、逆境に立ち向かう悲運の人物として真田幸村が一番の人気であったことにもよく表れている。全てが不確かな時代に立ち向かうにはどうしたら良いのか、歴史上の人物に学ぼう、力はどうしたら生まれるのか学ぼうということである。今年売れない書籍、ビジネス書にあって、200万部を越えた「もしドラ」も同じような意味であろう。
未来は不確実であり、確かめようのない世界である。少しでもそうした不安心理を払拭するために、未来へとつながるであろう「過去」に遡り、学ぶということである。過去から学ぶということは未来を描き・展望するということだ。

こうした回帰現象は既に10年ほど前から始まっており、1年半前に私は「過去のなかの未来」というタイトルでこのブログに書いた。

『個人化が進行していくと、情報源であれ、体験であれ、全てが個人単位となる。個人単位の世界を広げるために、SNSといったネットワークや地域&クラブコミュニティに参加し、少しでも判断視野を広げようとしてきた。しかし、そうしたある意味興味関心領域の横への広がりと共に縦への遡及が始まっている。
昭和の時代ぐらいまでは「家」という社会単位で受け継がれてきた常識、やり方や方法に基づいて日常行動や消費が行われてきた。今、そうした過去の常識、例えば「家庭の味」とか「しきたり」「慣習」といったことへの遡及&見直しが始まっている。つまり、自分の中に、いつの間にか横から得た情報によって「作られてしまった」常識を見直してみようという気づきである。』

これが多くの回帰現象の本質である。過去に戻り、何を捨て、何を継続して継承するのか、個人単位での検証が始まっているということだ。そうした個人検証の入り口にあるのが「思い出」である。夥しい思い出消費現象を見ていくと分かるが、これも若い世代・シニアといった年代による違いはない。

前回断捨離について書いたが、新たな価値観を探る動きが出てきている。ここ10数年、「キョロキョロ消費」を続けてきたが、巣ごもりという熟成時間を経て出てきた一つがニュー・シンプルライフだ。まだ読んでいないのでうかつなことは言えないが、日本の禅文化に魅せられフランス人に伝える目的で書かれた「シンプルに生きる(原書/シンプル主義)」(著者ドミニック・ローホー、幻冬舎刊)が話題になることもなく24万部ほど売れている。フランスでは50万部ほど売れたベストセラーとのことだが、足下に埋もれた日本文化にやっと日本人も気づき始めたということであろうか。私のブログを読んでいただくと分かるが、単なるブームに終わらせてしまったLOHASに関連して次のように4年半ほど前に指摘をしていた。

『LOHASが今なお最も生活現場に色濃く残っているのが京都である。「始末(しまつ)」ということばがあるが、単なる節約を超えて、モノを最後まで使い切ることであり、その裏側にはいただいたモノへの感謝、自然への感謝の気持ちが込められている。そして、「始末」には創意工夫・知恵そのもでもある。誰でもが知っている、「にしんそば」も「鯖寿司」も、内陸である京都が生み出した美味しくいただく生活の知恵・文化である。もう一つ素晴らしいのが、季節、祭事、といった生活カレンダー(旧暦)に沿った暮らし方をしており、「ハレ」と「ケ」というメリハリのある生活を楽しんでいる点にある。京都をLOHASの代表としたが、こうした風土に沿った固有の文化ある暮らしは地方を歩けばいくらでもある。好きな沖縄には、今なお沖縄らしさが残っている糸満では、漁師料理である「バクダン」があり、鳥取米子には鯖のぬかずけ「へしこ」がある。・・・・・・・・・・・・地方には京都でいう「始末」という知恵ある生活文化があり、ロハスクラブは「ソトコト」を通じて、宝の知恵を集め公開することに再シフトしなければならないと思う。「地方」が困っているのは、今ある商品へのもう一工夫、都市生活者へのプレゼンテーションが分からないだけである。』

10数年もの間閉塞した時代が続くが、良く言われる「モノの豊かさから心の豊かさ」という言葉も単なる表層をなぞるだけのものから、やっと一歩踏み出そうとしている。過剰なモノを削ぎ落とし、それでもなお残るモノとの生活を楽しむ質的転換が始まったということである。「シンプルに生きる」ではないが、禅語にある「無一物中無尽蔵」という言葉を思い起こす。何一つないところに、すべてのものが蔵(かく)されているという意味で、道元禅師は生きていくのに最小限のものがあればいい、「放てば手に満てり」と教えてくれている。
四十年ほどマーケティングを仕事としてきたが、過剰のなかに不足を見出すというマーケティングの原点に、今一度立ち戻ろうと思っている。
途中更新が途絶えたこともありましたが、にもかかわらずこの1年アクセスしていただき本当にありがとうございました。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 11:07│Comments(1)新市場創造
この記事へのコメント
我々は、ともすれば、消去法で意見を述べようとする。ああでもなければこうでもない、と話す。
消去法は、無哲学・能天気の人に見られる。不満はあっても、主張はない。
結局、不満の主張ということになるのか。
否定文だらけで不毛の内容となる。無為無策でいる。
自分の意見は、自分の哲学で話そう。上手い話を現実の中で辻褄を合わせることが出来れば、建設的な内容となる。

我々は、無いものねだりはできない。
つたない政治家であっても、捨てるわけには行かない。
我々は、助け合って、現実対応して行かねばならない。
指導者は、遠い未来に我々の行き着き先の内容を明らかにする必要がある。
そうすれば、自己の協力者を得ることが可能になる。

だが、未来時制のない日本語を使用していては、それも難しいことなのであろう。
日本語脳の持ち主は、未来の内容を受け入れることが難しい。
激しく離散集合を繰り返しながら、現実の世界を迷走する。
この国の意見発表がまともにならなければ、この国の政治音痴も解消しない。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812
Posted by noga at 2010年12月27日 11:16
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