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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2010年03月28日

子ども手当と消費

ヒット商品応援団日記No453(毎週2回更新)  2010.3.28.

ここ数週間、京都、沖縄、鳥取へと出かけることが多く、ブログの更新が滞ってしまった。ところで、子ども手当の法案が通り、6月から実施されることとなった。昨年の衆院選挙前、民主党のマニフェストのなかで一番注目していた政策であった。しかし、支給される子ども手当が子どもに使われるのではなく、パチンコに使われるのではないかといった指摘は論外であるが、極めて評判が悪い。保育園など子育て環境全体の整備が必要とされており少子化対策にはならない、あるいは消費ではなく貯蓄に回る、といった論議であるが、この子ども手当の本質は、子育てを終えた世代から子育て中の世代への富の移転にある。大きく言えば財源を含めた税制の問題であり、政府のこうした説明がなされていないこともあって、法案評価が低いことにつながっている。いや、そのことよりも、この半年間「政治とカネ」問題を含め、寄り合い所帯のマイナスとリーダーシップなき迷走、更には閣僚の女性スキャンダルという本来であれば即刻更迭すべき問題も注意処分で終わっている。こうしたていたらくさにうんざりしており、子ども手当の本質にまで行き着かない、というのが現状であろう。

ところで、私の関心事は子ども手当はどんな消費へと向かうであろうかということに極まる。昨年、厚労省から1998年以降10年間で100万円所得が減少したというレポートがあった。このデータには所得の分布(4分位)ごとの減少金額は出ていたが、更に子育て世代という視点から眺めていくと、よりその現実が見えてくる。
確か昨年の5月頃であったと思うが、NHKスペシャルで「35歳を救え」というタイトルで、この子育て世代に焦点を当てた特集が放送されたことがあった。35歳とは、いわゆる団塊ジュニア世代のことである。当時この特集番組を見て、以前私の部下であった女性のことを思い出した。第一次就職氷河期を経験してきた世代であるが、いわゆる有名大学を卒業しても正規社員の道が少なかった。その女性もそうであったが、いくつかの資格も取り、更には後に仕事を終えた後都内の大学に通いMBAまで取得した優秀な女性であった。この世代の所得であるが、確かNHKスペシャルの「35歳を救え」では年間100万円ではなく、200万円減少していると記憶している。

この団塊ジュニア世代の消費については、やはり三浦展氏の「下流社会」(光文社新書刊)がいくつかそのポイントを指摘してくれている。周知の「下流社会」という時代のキーワードを作った三浦氏であるが、その著書の冒頭に『「上」が15%、「中」が45%、「下」が40%の時代がやって来る?』という仮説が書かれている。所得のジニ係数をもとにしたものであるが、この本が書かれた2005年と今を比較すると、推測ではあるが更に「中」が減り、「下」が増えていることは間違いない。こうした傾向はリーマンショックによって更に加速されたと思う。そして、今まで両親と同居のパラサイト状態から、結婚し、子育て中というのが、今回のこども手当の主対象となる。三浦氏流にいうと、「総中流・平等化モデル」から「階層化・下流モデル」ということになる。もっとわかりやすくいうならば、森永卓郎氏が数年前に提案した「年収300万円時代を楽しく生き抜く」ということである。

年収300万円世帯にとって、月額1人1.3万円は家計にとって大きいものだ。しかし、その多くは食費を始めとした生活費の補填に使われるであろう。三浦氏が「下流社会」で指摘していた「中」が減少し、その多くが「下」に移行し、「上」と「下」の2極化が進行したとすると、減少はするが「中」の場合は塾など習い事あるいは休日の家族でのレジャーに子ども手当が回るかもしれない。「上」はと言えば、これからの学費を考えた貯蓄へと回るであろう。
「総中流・平等化モデル」の主たる市場を対象としてきた流通が、以前から私が指摘してきた百貨店であり、商品で言うと新車購入であり、薄型TV等の家電製品といった耐久消費財である。百貨店については不採算店を閉めたり、安いPB商品を開発したり、ネット通販とコラボレーションしたり、あらゆる手を駆使して持ち直しつつある。新車購入はエコカー減税・補助金という官製販促によって一定の売上を見せていたが、ここに来て息切れし始めている。薄型TVもエコポイント制度により売れていたが、この3月期には4月以降の新たな省エネ基準に満たない商品に人気が出ており、つまり安いうちに買うという理由だけであり、4月以降も売れ続けていくか疑問である。

つまり、従来の「中流モデル」に照準を当てた消費は、いわば需要の先食いであり、ほぼ一巡してしまったということだ。それでは子ども手当はどんな消費に向かうのであろうか。この2年間ほど、わけあり商品、巣ごもり消費というキーワードを使って注目すべきライフスタイルについて書いてきた。こうした傾向は、所得が急速に増えたり、新たな雇用が生まれるということは残念ながら考えられないため、当分の間は変わらないであろう。
仮説としてではあるが、キーワードにはなってはいないが、「小さな幸福」消費のようなかたちになる、と私は考えている。小さな幸福を感じるのは、まずは「食」の世界である。外食、特に子どもにも人気がある例えば回転寿司などへ行く回数が増える。回転寿司が焼き肉やステーキに変わっても意味合いは同じである。但し、子どもが喜ぶゲーム性・遊びのある食のメニュー工夫が不可欠となる。また、小さな家族旅行が行われる。勿論、安近短の旅行であるが、1.3万円という価格がキーワードになる。そして、この延長線上には社会実験が行われる高速道無料化も活用されるであろう。つまり、地方への小さなドライブ旅行であり、観光+郷土料理+道の駅のお土産、といった構図となる。結果、高速道が無料化となる地域は活性化されるでこととなる。地方の町起こし、村起こしなどもこうした構図に連動させていくであろう。

定額給付金の時もそうであったが、市町村による地元商店街活性化を目的としたプレミアム付きの商品券なども出て来ると思う。1.3万円という数字をキーワードにしたメニューも続々と出てくるであろう。しかし、誰もが感じているように不安定な雇用はこれからも続き、今また第二次就職氷河期世代が生まれてきている。こうした不況下で、リーマンショック以降、更に目減りしたとはいえ、1400兆円ほどの金融資産の多くをシニア世代が保有している。子ども手当の本質が子育てを終えた世代から子育て中の世代への富の移転であるように、シニア世代と子育て世代の両世代を視野に入れたメニューづくりに着眼すべきである。既に内輪における子や孫への富の移転は行われているが、この市場をこそもっと活性化すべきであり、ヒット商品もこうした着眼から生まれる。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:52│Comments(0)新市場創造
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