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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2010年02月07日

コンプライアンスの本質

ヒット商品応援団日記No442(毎週2回更新)  2010.2.7.

車の免許証は持ってはいるものの、ここ十数年ハンドルを握ったことがない。そうしたこともあって、減税&補助金による需要先食いがどこまで続くかといったことは考えてはいたものの、HV車新型「プリウス」のブレーキ不良にはあまり注目してこなかった。もっと正確に言えば、HV車やEV車という次世代カーを成立させる技術そのものへの関心は、せいぜい一般紙や経済誌で扱われている程度のものであった。
今回問題となったブレーキ不良は、雪道走行時に使われる「アンチロックブレーキシステム(ABS)」が作動する時の問題で。このABSが油圧、回生両ブレーキ併用状態から油圧ブレーキだけに切り替わる時1秒ほど感覚的なタイムラグがあり、ブレーキが効かないまま走ることになる、そんな説明であった。勿論、2つのブレーキシステムはコンピュータで制御されている訳であるが、そのタイムラグの感覚は、人さまざまである。何か、車のシステムに人の感覚を合わせて乗ることが必要であるかの感がしてならない。

また、昨秋からアクセル不良問題が表面化し、欧米、中国で販売されたカローラやカムリ等のリコールが始まっている。1990年代初頭の米国との貿易摩擦以降、海外での現地生産が行われ、トヨタでは海外生産は全体の4割に及んでいるという。勿論、自動車は2〜3万点もの部品が使われ、今回問題となったアクセルペダルは米国の部品メーカーCTSコーポレーションと報道されている。たった一つの不良品がこうした五百数十万台のリコールという結果を生む、これがグローバルビジネスである。あたかも、リーマンショックを引き起こしたサブプライムローンのように、汚染された証券が世界中にばらまかれたことを想起させる。

先日、トヨタ車の品質問題で豊田章男社長が記者会見を行っていたが、どこかの危機管理コンサルタントの受け売りのような陳謝と説明であった。ジャストインタイム、かんばん方式、カイゼン、といった言葉で表現されるトヨタ生産方式は、1973年の石油ショック、1991年のバブル崩壊、こうした危機を乗り越えるために多くの企業がトヨタから学んできた。モノづくりの精神が現場の一人ひとりに共有され、解決のために考え、アイディアを出し、行動し、結果を自ら引き受ける、つまり人が変わるための日本的な革新であり、モノづくり文化である。こうした日々の結果、世界NO1の自動車メーカーとなった訳である。しかし、技術は輸出できるが、徹底した現場主義から生まれ育ってきたモノづくり文化までは輸出できない。

作家冷泉彰彦氏がJMMのUSAレポートで2度にわたり北米でのトヨタ問題を報告してくれているが、想像以上にトヨタパッシングが激しく、ここぞとばかりにフォードはトヨタからの乗り換え促進を進めているいう。今度はトヨタ自身が危機に直面している。危機はトヨタブランド、安全と品質への不信というかたちで。しかも、日本国内もそうであるが、特に次世代カー「プリウス」の問題は極めて大きい。トヨタブランドを牽引する戦略車種、未来への牽引者種であるからだ。トヨタブランドは何十年にも渡って創られてきたものであるが、ブランドは常にいとも簡単に崩壊する。

こうした問題が起きる度に、危機管理が叫ばれ、危機管理コンサルタントがコメントを出す。記者会見といった広報レベルであれば、百歩譲ってその必要は認めるが、コトの本質解決とはならない。トヨタ自動車を今日のトヨタにしたのは、人、現場の人によってである。これは推測ではあるが、トヨタのことだから「アンチロックブレーキシステム(ABS)」について現場では多くの試行錯誤と検討がなされてきた筈である。従来のガソリン車とは異なる運転スタイルを必要とし、そのための人間研究、身体と心理の研究がなされてきたと思う。HV車は未来の車の入り口である。であればこそ、陳謝は必要ではあるが、運転する人にとっての問題と共に、未来の車のある生活、未来の運転スタイル、未来実感を描くことこそ、真のコンプライアンスとなる。

豊田章男社長の記者会見では象徴的なシーンがあった。外国人記者からの質問で、世界に向けて英語でメッセージを述べて欲しいというものであった。グローバル企業、NO1企業の最大の責務は陳謝と共に未来を語ることであり、そのために具体性をもって明日からの行動を述べることだ。そして、トヨタ自動車の実質的創業者である豊田喜一郎は部品の不具合があれば、即、現場、ユーザーへと足を運んだ筈である。日々問題が起きる現場について、HONDAの創業者である本田宗一郎は日経ビジネスのインタビューに次のように答えていた。

「人間はね、一人ひとりみんな違っているからいいんだよ。みんな同じなら、社長は人を雇わずにロボットをいっぱい買って仕事をさせてりゃいいでしょう。」
(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 13:39│Comments(0)新市場創造
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