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「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2009年07月29日

成熟という閉塞感

ヒット商品応援団日記No387(毎週2回更新)  2009.7.29.

ここ1〜2ヶ月、消費にしろ今回の衆院選挙にしろ、若い世代、草食系男子(実際は男女と理解している)と呼ばれる平成世代が気にかかって仕方がない。この世代の特徴の一つとして、まるで欲望を失ってしまったかのように、車離れ、結婚離れ、社会離れ、政治離れ、といった「離れ現象」が数多く見られるからである。そんな平成世代を私は「二十歳の老人」と呼んだが、今ひとつ言い当てていると実感していない。
というのも、私のような団塊世代については、ビートルズ世代、あるいは全共闘世代といった「既成文化」や「既成権力」に対する一種の反抗があり、そうした行動に名前が付けられた。消費面で言うと、戦後の混乱期を終え高度成長期へと向かうモノが乏しい時代。まだオシャレという概念がなかった時代に平凡パンチと共にVANが生まれ、「みゆき族」という社会現象まで生まれた。つまり、まだまだモノが乏しくお金もない時代に欲望を満たそうとした、これも一種の反抗であったと言える。

若い世代の反抗を、未来に責任を負うための自覚の表れであり、決して甘えではないし、決して破壊衝動に基づくものでもないと分かったようなことを言う気持ちはない。つまり、大人になるための、成熟を受け入れるための反抗という一種の儀式を必要としていると、訳知り顔で言う気もないということだ。
反抗するとは、明確な対象があってのことだ。古くは江戸時代、上方に対抗、いや反(アンチ)上方として江戸文化が生まれた。あるいは、「おたく」は市民権を得てオタクとなったが、そのコミックの源流を辿れば1970年代後半のエロ雑誌にあった。1980年代から1990年代にかけて、このコミックやアニメという一種の反抗を担ったのが、新人類と呼ばれたポスト団塊世代であった。オタク文化をサブカルチャーと言うが、その源流はカウンターカルチャー、既成文化への反抗であった。私は「おたく」文化の研究者ではないが、「新世紀エヴァンゲリオン」を最後に、「おたく」はメディアの世界から逃亡することになる。オタクのマスプロダクト化が進み、「おたく」に代わって、秋葉原が観光地になったのは周知の通りである。つまり、マスプロダクト化とは反抗すべき対象を失うことでもあった。この延長線上に、ライトノベルやケータイ小説が位置している。こうしたカウンターカルチャーが「クールジャパン」と呼ばれ、今や外需の注目を集めている。

既成、今まで当たり前であったことへの、反抗、反逆には膨大なエネルギーを必要とする。ここ数年、書籍売り場には「脳力」を始めとした「パワー本」が並ぶ。いかに、「力」、「エネルギー」が枯渇しているかである。一方、言葉に表せない鬱屈した反抗、反逆する心は、いつしか逃亡する術を失い、不特定な人への殺傷へと向かわせたのが、秋葉原殺傷事件を始めとした事件であろう。以前、このブログにも書いたが、「誰でもよかった」と殺傷に向かった世代は、平成世代の上の世代である。つまり、そうした行動を見てきているのが草食系と呼ばれる世代である。反抗する対象も茫洋とし、何に誰に向かっていけばよいのか分からない。しかも、逃亡する術すら失っている、そんな風に見えて仕方がない。

「成熟」という言葉の反対側、つまり成長しない、変化しないものの一つがキャラクターである。人間が年を取り、容貌もこころも変化していくのが常であるが、ディズニーのミッキーマウスも涼宮ハルヒも成熟しないままである。キャラクターとはそうした存在であるが、周知の手塚治虫の「鉄腕アトム」の場合、「アトム大使」の初出版の時には異なる描かれ方をしていたとコミック原作者である大塚英志氏は指摘をしている。
『アトムは宇宙人から「きみもいつまでも少年でいてはいけない/今度会うときはおとな同士で会おう」と言われ、「おとなの顔」をしたパーツを与えられるのだが、この場面は手塚治虫自身によって削除されている』と。
こうしたエピソードを読むと、草食系世代も成熟することを拒否しているかのように思えてしまう。しかし、この世代はいわゆる小学校時代に「ゆとり教育」を受けた世代であり、詰め込み教育では果たし得ない創造的感性を目指した世代である。数年先には、従来とは異なる反抗、アンチとしての創造世界が生まれてくると予感してならない。そのとき、どんな「おとなの顔」をして登場するか楽しみである。(続く)

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Posted by ヒット商品応援団 at 14:21│Comments(0)新市場創造
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